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「全日本EV-GP」第4戦レポート/モデルSが3連勝&サーキットはオールEVデー

「全日本EV-GP」第4戦レポート/モデルSが3連勝&サーキットはオールEVデー

電気自動車によるレース「全日本EV-GP」の第4戦が6月28日に袖ケ浦フォレストレースウェイで開催。新旧王者のライバル対決が再び繰り広げられました。この日はEVによる体験走行などのイベントも行われ、サーキットがEV一色に染まりました。

目次

KIMI選手と地頭所選手の対決に注目

「全日本EV-GP」(全7戦)は、日本電気自動車レース協会(JEVRA)が主催しているレースシリーズ。今季の折り返しとなる第4戦「袖ケ浦60kmレース大会」が、2025年6月28日(土)に、千葉県袖ケ浦市の袖ケ浦フォレストレースウェイで行われました。

エントリーリストを見てワクワクしたのは私だけではなかったはず。前戦を欠場した WIKISPEED EV RACINGの地頭所光選手(2018~21年王者)が復帰。第2戦の筑波、第3戦岡山と連勝して好調ぶりをみせる現役チャンピオン、GULF RACINGのKIMI選手(テスラ モデルS Plaid)との王者対決がふたたび演じられます。

第2戦で不具合が出た地頭所選手のモデルS Plaidは、再調整が間に合わなかったそうですが、赤黒に塗られたモデル3 パフォーマンス(以下M3P)は、同じ袖ケ浦で開催された第1戦でKIMI選手との雨中のバトルを制したマシンです。

午前中に行われた予選のトップタイムは、KIMI選手が叩き出した1分13秒807。2番手は1分16秒637のYUU選手(M3P)で、GULF RACINGの2台がグリッド1列目に並びました。地頭所選手は1分17秒356で3番手。続いて西島真選手(M3P)、モンドスミオ選手(モデル3 RWD)の順で、予選上位は順当にテスラ勢が占めました。

6位に入ったのはモデューロレーシングHonda eの渋谷和則選手。7位ジョー・ジャスティス選手(M3P)を抑えて、テスラの牙城に食い込みました。Honda eをフルカスタムして参戦する時から目標にしてきた「打倒テスラ」を達成できるかどうか注目です。

ほかには、ヒョンデ IONIQ 5Nの柴田知輝選手、日産リーフの本間康文選手、トヨタ ミライ(FCV)の金井ゆき選手、さらにe-POWER組4台の計14台が参戦しています。

朝から快晴で、予選の時点で気温は27℃と、午後の決勝で30℃超えは確実。しかも、いつものEV-GPよりレース距離が伸びている(同じサーキットで行われる2戦目は55km→60km)ので、よりシビアなバッテリーの温度管理が必要。そのためか、上位陣には2~3周しかアタックをしない選手もいました。タイムを詰めるよりも、バッテリーをいたわる作戦なのでしょう。

体験走行会などのEVイベント盛りだくさん

体験走行の様子。

予選終了後、お昼を挟んでしばらくは、レース車両を満充電にするための充電タイムです。その間には、エンジン車のスポーツ走行などが行われるのが恒例だったのですが、今回はTOCJ(テスラ・オーナーズ・クラブ・ジャパン)やヒョンデモビリティジャパンが、EV関連のいろいろなイベントを企画していました。

まずは、マイカーでサーキットを走ることができる体験走行会。隊列を組んで走るためスピードは制限されますが、レーサー気分を味わうことができます。また、コースの起伏や道幅などを実際に走って体験したら、観戦もますます楽しくなるというもの。

このイベントはTOCJが窓口になっていて、参加者の多くはテスラオーナーでした。ペースカーを務めたのはなんと、日本未発売のサイバートラックです。高速走行するサイバートラックは、日本ではなかなか目にする機会はありません。車はEVレンタル事業を手掛けるインターセクト(株式会社ISレンタリース)が保有していて、公道は走れませんが、研究開発用に貸し出しているそうです。

続いてスポーツ走行会。速度制限のないサーキットでEVを走らせることができる機会です。KIMI選手やモンド選手がドライブするテスラに同乗するレーサー同乗走行会も行われました。

ヒョンデはメディア向け発表会を開催。「ドリフトキング」と呼ばれるレーシングドライバーの土屋圭市氏が監修して、オートバックスセブンとのコラボで開発されたIONIQ 5N「DK Edition」のお披露目が行われました(別記事で紹介予定)。ブレーキを強化してローダウン、軽量ホイールや専用エアロパーツを装着しています。メディア関係者によるDK Editionの試乗も行われました。

続いては、IONIQ 5Nによるメディア対抗ワンメイクレース。7人のモータージャーナリストがハンドルを握ってレースを繰り広げたのですが、タイムを競うだけでなく、環境負荷なども考慮された新たなレースのスタイルを提案していたのが面白かったので、これも別記事で詳しくお伝えします。

パドック裏の駐車場は、サイバートラックやIONIQ 5N DK Editionのまわりに人が集まって、新型車の撮影会のような雰囲気に。サイバートラックのサイズがどれぐらいなのか、気になったのでマイカーのHonda eを隣に並べてみたりもしました。最近はあまり自車のサイズを意識していませんでしたが、あらためて眺めるとかなり小さいですね。というかサイトラが巨大なのか。

KIMI選手が制した緊迫のトップ争い

朝から夕方まで、サーキットで電気自動車がたっぷり楽しめる「ALL EV DAY」のメーンイベントとして迎えた決勝レース。ホールショットはボールポジションのKIMI選手が奪いました。すかさずついていったのが予選3位だった地頭所選手。テール・トゥー・ノーズの2台が1分17~18秒台のハイペースで他車を引き離していきます。第1戦でもデッドヒートを演じた両選手でしたが、今回は順位も差も変わらないまま、終盤まで周回を重ねる展開となりました。

「光くん(地頭所選手)の速いところと僕の速いところを頭に入れて、抜かれないように走っていました。4割ぐらいは後ろを見てたかも(笑)。楽しかったですね」とKIMI選手。
一方の地頭所選手は「めっちゃ楽しませてもらいましたが、ちょっと残念ではあります。ただチャンスらしいチャンスはなかったですね。(KIMI選手は)後ろに目がついている感じでした。最後までバッテリー容量は残していたんですが、残り3周で熱ダレしてしまって」とのこと。

KIMI選手は一度もトップの座を譲らず、完璧なポール・トゥー・フィニッシュを決めました。総合3連勝を飾り、2年連続のチャンピオン獲得に向けて着実にポイントをゲット。レース後の表彰式では、2位の地頭所選手が「雨乞いしながら走ってました」、KIMI選手が「公道だったらあおり運転だよね」などとジョークを交えてレースを振り返り、観客や関係者を笑わせていました。

3位にはYUU選手、4位は西島選手、5位にモンド選手が入りました。1~5位はテスラ勢が占め、6位に入ったのはIONIQ 5Nの柴田選手。じつは予選でも6番目のタイムを出していたのですが、EV-1クラスの基準タイムに届いていなかったため、最後列からのスタートとなり、追い上げて上位進出を果たしたのでした。

「一度はモンド選手も抜いたのですが、バッテリー制御が入ったのとタイヤの空気圧が上がり過ぎたことで、すぐ抜き返されてしまいました。最後にワンプッシュしてまた抜けたら面白かったんですけど、ちょっと無理でしたね」(柴田選手)

個人的に注目しているモデューロレーシングHonda eも健闘しました。WIKISPEEDの監督兼ドライバーとして参戦したジョー選手のM3Pを抑えて7位でゴール。ピットに戻ってきた渋谷選手に声をかけると、すかさず笑顔とダブルピースが飛んできました。EV-GPに参戦して以来、バトルを制してテスラに勝ったのは初めてだそうです。

「最初は置いていかれましたが、ラインが乱れてきたので、チャレンジしてみました。終盤はモーターの温度が上がり過ぎて、いつパワーダウンしてもおかしくない中で追い上げられましたが、最後まで持ってよかったです」(渋谷選手)。単純なパワー勝負ではない、EV-GPらしいバトルが演じられていたんですね。

これに対して、ジョー選手は「Honda eはパワーが低い(M3Pの377kWに対して113kW)のに、あれだけ速く走らせる渋谷選手は素晴らしいドライバー。コーナリングを学びました。僕にとってはいい先生です」とニコニコ顔でした。

WIKISPEED EV RACINGを率いるジョー選手は、EV-GPについて「いろいろな性能のEVが一緒に走るJEVRAのフォーマットはとてもいいと思います」と語る一方で、サーキットの充電環境があまり良くないことを指摘していました。「しっかり急速充電器を設置してほしい。そうすればいつかEVで耐久レースもできるようにもなりますよ」。16年目のシーズンを戦っているEV-GPですが、そんな未来につながれば素敵ですね。

この日の来場者は約800人とかなりの盛況でした。丸一日サーキットを借り切って「ALL EV DAY」を企画したJEVRAの事務局長、富沢久哉さんは「初めての試みでしたが、盛り上がってくれてよかった。定期的に開催して、より充実したものにしていきたいですね」と話していました。

次のEV-GP第5戦は、7月27日(日)に栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催されます。詳細なリザルトや今後の日程は日本電気自動車レース協会(JEVRA)の公式サイトに掲載されています。

取材・文/篠原 知存

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この記事を書いた人

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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