著者
充電スポット検索
カテゴリー

第38回オートサービスショー/電気自動車関連で気になるトピックをレポート

第38回オートサービスショー/電気自動車関連で気になるトピックをレポート

自動車整備関連のツールや技術展示が集まる「第38回オートサービスショー2025」が開催されました。今回のテーマは「次世代モビリティと共に歩む整備機器」。モータージャーナリストの諸星陽一氏が、EV関連で気になった展示を紹介します。

目次

エンジンで発電する移動式EV急速充電器搭載車

2025年6月19日〜21日の3日間、東京ビッグサイトの東1・2・3ホールにて「第38回オートサービスショー2025」が開催されました。オートサービスショーは1948年に開催された「自動車整備用機械工具実演展示会」がルーツです。1954年が第1回となる全日本自動車ショウ(現在のジャパンモビリティショー)よりも長い歴史を持つ展示会です。今回はオートサービスショーのなかで気になった2つのブースから、EVに関連した興味深いトピックを紹介します。

最初に紹介するのは東洋電産の「災害用電源車兼移動式急速充電車」です。通称「T救2号」というモデル。つまり、EVの電欠救援車です。

EVユーザーにとって気になる不安のひとつが電欠です。長距離ドライブ中に予定していた充電器が何らかの理由で使えなかったりした場合、電欠になってしまう可能性はあります。このエネルギー切れはEVに限ったことではなく、ガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車でも起こりうることですが、エンジン車はわりとエネルギーの補給が簡単なのに対し、EVではちょっと面倒です。そう考えると水素はもっと不安ですが……。

EVの普及とともにJAFでも救援車を用意するなどして対応していますが、「T救2号」はJAFの救援車とは違った方式です。JAFの救援車はバッテリー充電式の急速充電ユニットを使っていますが、「T救2号」ではエンジンで発電し、それを車載のバッテリーに充電する方式です。また「T救2号」はEVの電欠救援に特化した仕様ではなく、あくまでも災害用電源車兼移動式急速充電車になっているのが特長です。災害時はもちろんですが、イベントなどで臨時のEV用急速充電器が必要といったニーズにも応えて活躍します。

災害時などの非常用電源車としても活躍できる

「T救2号」の仕様を紹介しましょう。ベース車は日野デュトロ(N04C)の冷専シャーシと呼ばれるものを使っています。冷専シャーシとは冷蔵車や冷凍車に架装するためのモデルで、冷蔵や冷凍のために追加のコンプレッサーを搭載できます。

「T救2号」ではこの追加コンプレッサー取り付け位置に、DC300V-50Aの発電機を装着。東芝製のSCIBバッテリー(容量36kWh)と、ニチコン製のNQC-TC5030(最大出力50kW)という急速充電器を搭載しています。「T救2号」の素晴らしいところは、EVの急速充電を提供するだけではなく、非常用の電源車としても活躍できるところで、災害時に避難所や工場などの非常用電源として使えたり、堤防決壊時のポンプ電源や病院の医療機器の電源などとしても使えるマルチパーパスとなっています。

CHAdeMOのプラグでEVからEVへ充電

もうひとつ、EVの電欠救援に関連して興味深かったのは、アルティアが参考出品していた「V2Vレスキュー」という機器です。エンジン車で12Vバッテリーが上がったときは、救援車の12Vバッテリーとバッテリー上がり車の12Vバッテリーをジャンピングコードで接続して、バッテリーを復活させる手法がよく採られますが、同様のことがEVの駆動用バッテリーでできたら便利だろう……という発想で開発中の機器です。

EVの駆動用バッテリーへの充電は、さすがに12Vバッテリーのように単純にコードで繋いでというワケにはいきません。そこでこの「V2Vレスキュー」によって2車の急速充電口(CHAdeMO規格)を接続することで容易に救援車からの充電を可能にしようという機器です。

アルティアではそのほかにも興味深い展示がありました。これも参考出品ですが「駆動バッテリー診断機」は、CHAdeMOの充電口に差し込み、専用アプリを使って駆動用バッテリーの状態を診断するツールです。バッテリーの充電状態はもちろん、充電回数や健康状態なども診断可能となっています。

「バッテリーパック充放電器」はその名のとおりバッテリーパック(単体)で充放電するための機器。海外では整備のためにバッテリーパックを輸送する際などは、放電状態とすることが義務づけられている場合もあり、安全に放電できることが求められているとのこと。日本では法制化されていないとはいえ、放電してから輸送すれば安全性が高まるので放電することが推奨されているといいます。また、今後の法制化も十分に考えられるので、こうした機器の存在を知っておくことも大切だと思います。

バッテリー火災を想定した消火器やブランケットも

EVがらみのニュースでは火災の話題が大きく取り上げられることが多くなっています。万が一の火災について備えたいという方も多いことでしょう。アルティアの展示品で目を引いたのが「クリーンミスト(モリタ宮田工業製)」と名付けられた消火器です。「クリーンミスト」は純水ベースの消火器で、一般的な消火器や水道水などでは対応しづらい電気火災にも対応するとのこと。また、クルマ全体を覆って空気を遮断する「ファイヤーブランケット」も紹介されていました。

さらに、一般ユーザーにはあまり関係ないかもしれませんが、アルティアブースには2柱リフトのアームを交換しEV用とする「EV用マルチサポートアーム」という機器が展示されていました。

一般的な2柱リフトでEVをリフトアップして、床下のバッテリーを取り外そうとしてもリフトのアームがジャマになってしまいバッテリーを下ろせません。そこで、先端が「くの字」に曲がったアームに変更することでバッテリーに干渉せず、スムーズに取り外しできるよう工夫されたものです。

「くの字」の角度は数段階に調整できるようになっていて、EVの整備を本格的に行うならこのリフトアダプターは必需品ではないかと感じました。また、絶縁工具なども展示されており、EVのメンテナンスについて、整備業界もかなり積極的になってきている印象を受けました。

EVの普及台数が増えるほどに、今までのエンジン車とは違う整備機器や技術が必要になってくることでしょう。今回のオートサービスショーはまだまだ「エンジン」関連の出展が中心でした。今後、どのように変化していくのか。注視したいと思います。

取材・文/諸星 陽一

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

コメント

コメントする

目次