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中国のEVが急成長している秘訣? 「バラバラ」展示取材で聞いた衝撃の構造とは

中国のEVが急成長している秘訣? 「バラバラ」展示取材で聞いた衝撃の構造とは

「第18回オートモーティブワールド」レポートの番外編。会場ではテスラやシャオミなどのEV分解展示がいくつもあって注目を集めていました。バラバラ展示の謎を取材して聞いたのは、中国でEV産業が急成長している秘訣でした。日本の自動車産業も、油断している場合じゃありません。

目次

EVのバラバラ展示に注力する三洋貿易

先日、オートモーティブワールドのレポート(関連記事)をお届けしましたが、今回はその番外編。「EVを分解する」というキーワードでお届けします。
※冒頭写真はテスラ「モデルY」の分解展示。

最近の自動車関連展示会で目立つのが先進的なEVをバラバラに分解した展示です。国内の展示会で見かけるのは中国製のEVが多く、日本で販売されていないモデルも分解展示されています。こうした手法、従来のICEモデルではあまり見ることがありませんでした。もしかしたら私が見たことがないだけなのかもしれませんが、すごく目立つようなことはなかったはずです。こうした分解展示を数多く手掛けているのが三洋貿易という企業です。

Sanyo Solution Gallery(プレスリリースより引用)。

三洋貿易では岐阜県瑞浪市の廃校になった中学校の教室や体育館などを再利用したEVの分解展示場「Sanyo Solution Gallery」を開設していて、有料で展示物の見学ができるようになっています。展示されているEVは国内外合わせて25台、部品点数にして13万点(2025年6月時点)という膨大さ。希望する企業などが独自に利用するほか、公的機関が主催する勉強会などで利用されています。

国家が分解したデータを国内自動車メーカーに共有?

モデルYのバッテリー。温度管理用の配管がスゴい!

オートモーティブワールドでは、同展示場の展示車両の一部が公開されていました。今回展示されていたのはシャオミSU7やテスラモデルYなどでした。この展示スペースにいらしたモビリティ第二事業部技術顧問の白濱光晴氏に、前から気になっていた「中国EVは何が凄くて、何が武器なのか」と質問してみました。

白濱光晴氏。

即座に返ってきた言葉は「テスラの弱いところをすべて潰してきているところですよ」というものだった。筆者が「つまり中国の自動車メーカーはテスラを研究して、弱点を見つけて、それを潰した開発をしているということですか?」と返すと、白濱氏は「半分だけ合っている」と言います。「どういう意味でしょう?」という私の質問への答えはなかなか衝撃的でした。

「中国で海外のEVについて研究しているのは自動車メーカーだけではなくて、国家機関なんですよ。国を挙げて海外のEVを研究して、そのデータを中国国内の自動車メーカーが共有して、開発に励んでいるんです。日本でも、自動車メーカーが(ベンチマークとする)クルマを買って研究することはありますが、中国では国が行っているので、費用もほとんどかからずに海外EVのデータが手に入ります」(白濱さん)

なんとも国家主導の色合いが濃い手法です。日本をはじめとした自由主義陣営で、国が率先して海外のEVを購入、分解、解析してデータを公開したら、大きな摩擦が起きることでしょう。しかし、中国ではこうした手法が国家主導で行われているとのこと。まさに国家レベルでの共同研究体制に近い様相です。

国が主導でこうしたデータベースを作ることはできなくても、企業が作ることは何ら問題がありません。逆説的に考えれば自由にできるというところが日本を始めとした自由主義陣営のいいところです。

インフォテインメント関連技術でも同様の動き?

三洋貿易では、分解したクルマを展示しているだけではなく、分解したパーツをまるごと1台分、X線によるCTスキャンにかけ、3D CAD/CAEデータとして再現、使いやすいデータとして提供しています。

会場では解説も行われました。データの内容は公表不可。

中国製EVの車両データ収集について某国内自動車メーカーのエンジニアに話したところ、インフォテインメント関連でも中国はまったく同じような動きをしているとのこと。中国ではGoogleはご法度ですが、それを研究してこそ自分たちのシステムを構築できるわけですから、徹底した解析が行われているとみられます。

中国勢は国を挙げてクルマまるごと、そしてソフトウエアをはじめクルマを取り巻くさまざま要素について徹底的に研究しているので、開発も早く行えるといいます。

こうした事実を伝えるとよく返ってくる言葉が「調べることはできても作ることはまだまだ」というものです。たしかにまだまだの部分はあるでしょう。しかし、そんなことを言っているあいだにどんどん技術は追いついて来ます。日本勢はBYDの下回り防錆が弱いというような弱点を見つけ、優位にあぐらをかいている場合ではないのです。中国全体と日本企業が対決するような構造ではなく、日本も国を挙げて競争できるようにする必要があるのではないかと感じます。

三洋貿易のような自動車開発に役立つ活動をしている企業にはもっと国の支援などが行われ、中国対日本企業ではなく、中国対日本という構図でEV開発が行われるようにならないと、世界が変化するスピードに日本は間に合わない可能性があります。

会場ではバラバラにしたパーツの販売も

分解されたパーツに値札が付いていました。

今回のオートモーティブワールドでは自動車関連の情報発信企業であるマークラインズも同様に分解した状態のパーツを展示していました。マークラインズもベンチマークデータの販売をしています。

マークラインズの展示でちょっとおもしろかったのは、展示しただけではなく分解されたパーツの販売まで行っていたところ。サプライヤーなどにしてみれば、自分の会社が担当する部分のパーツだけが購入できれば、自社において解析が行えるのでとても大きなチャンスとなることでしょう。

分解研究用のレンタカーまで登場

今回の「EVを分解する」というテーマで非常に興味深かったのがNEXT ONEというレンタカー会社が手掛ける研究開発用レンタカー。なんと、このレンタカーは分解してもOKというのです。一般的にレンタカーやリース車は分解や改造は禁止されています。ところがNEXT ONEでは研究開発用車両として、分解可能なモデルをラインアップしているのです。

NEXT ONEはEVに限らずICE車も研究開発用車両として用意していますが、そのラインアップをみるとロータス・エリーゼS、メルセデスベンツG 580 with EQ Technology、BMW i7 M70 xDriveなどのハイクラスEVが用意されています。

ちなみにこれら3車はいずれも、24時間レンタルで33万円、単月契約で月額275万円です。購入すれば2000万円オーバーのモデルが分解可能でこの価格ということなので、調べたい部分が決まっているなら企業としては格安で調査ができるというわけです。

レンタルのルールはまず企業であることで、個人への貸し出しは行っていません。そして分解やパーツ取り付けについては原状復帰での返却が求められています。

バラバラ展示の隆盛に、中国を軸としたEV開発競争の激しさを痛感するオートモーティブワールドの1日になったのでした。

取材・文/諸星 陽一

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この記事を書いた人

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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