西安の街で感じた圧倒的なパワー
少し時間が経ってしまいましたが、ゴールデンウィークに妻の故郷である中国の西安を訪れました。旅の日程は4月28日〜5月8日の11日間。おもに西安に滞在し、帰路の乗り継ぎ地であった上海で1泊しました。
この記事では前編と後編に分けて、中国の最新NEV事情や、西安と上海で感じた街中の様子をレポートします。後編記事の最後には、空港で電気自動車(テスラ)を数日間停めた際の様子や注意点についてもお伝えしますので、テスラオーナーの方は要注目です。
まず、中国へ訪れて強烈に印象に残っているのは2点あります。
①圧倒的な人口と街の大規模さ。車両交通量も段違い
西安は古都として多くの観光客が訪れます。GWシーズンであったため、西安市内は車で混雑していました。どこへ行っても人混みがすごく、車も徒歩もなかなか進みませんでした。ここ数年で西安には地下鉄が開通し、東京メトロ南北線に乗っているような感覚がありました。混雑時は朝の山手線ラッシュに乗っていた頃を思い出しました。
②日本車はどこへ?存在感のある車が多数
あくまで体感ですが、10台に1台日本車を見つけることができれば、ラッキーだと思います。テスラのモデル3やモデルY、ドイツの御三家(BMW/メルセデスベンツ/Audi)を見つける方が簡単です。大部分を占めるのはBYDです。日本車の価格帯(200万円〜400万円)の車がBYDに置き換えられていることが明らかになりました。
3年ぶりの帰省で、妻も日本車を見なくなったと言っていました。遭遇頻度は、中華勢が40〜50%、ドイツ勢が25%、テスラが15%、日系が10%、その他が数%です。中国はBYDを筆頭に、自国のメーカーが育ち、外車を淘汰している現状。長期的に見てこれから成長する国々(インドのタタモーター然り)では必然だと思います。
日本(成田空港)→上海経由→西安
出発は成田空港です。行きも帰りも上海で乗り換えになります。帰りは上海で一泊し、少し観光しました。上海郊外にはテスラのギガファクトリーがあります。現在、日本で発売されているモデル3やモデルYはここで製造され、海を渡って日本にやってきます。モデルSやXは、新型も旧型もアメリカのフリーモント工場で製造されています。
西安現地。ここまでタワーマンションが乱立しているとは思っていませんでした。どこへ行っても都市部はタワーマンションの群れです。うっすらと見える奥の四角い影も全てタワーマンションです。
街の至る所にシェア自転車があり、アプリ決済でいつでもどこでも利用できます。また、タクシーもアプリで呼べばすぐに来て、料金も日本の半分以下です。
紀元前から、ローマに至るシルクロードの起点でもあった西安。訪れた繊維市場には「世界一! 繊維市場」という巨大な看板があり、クッションなどの小物であればその場でミシン縫いの方々が即興で製品化してくれます。オーダーメイドの幅も凄まじく、東京・日暮里の繊維街を想像していましたが、圧倒的な物量を感じました。
ショールームを見てきたNEV一覧
街で見かける度 3段階
稀に見る⭐︎、まあまあ⭐︎⭐︎、たくさん⭐︎⭐︎⭐︎
シャオポン(小鵬汽車)⭐︎、リー・オート(理想汽車)⭐︎⭐︎、AITO(HUAWEI)⭐︎
ニオ(上海蔚来汽車)⭐︎ 、テスラ⭐︎⭐︎⭐︎
ジーカー(極氪)⭐︎⭐︎、ハイファイ(華人運通)未遭遇(後半記事で紹介)
シャオポン(小鵬汽車)⭐︎
最初に立ち寄ったBEVブランドはシャオポン(日本では「シャオペン」とも呼ばれていますが、妻に確認すると「シャオポン」に近かったので)でした。観光地ゾーンにあるショッピングモール内に展示されており、P7/G9の2台が展示されていました。現在はG6という中型SUVも新発売しています。
質感を見ても完全に上質版のテスラだと思いましたが、街中で走っているのは疎らで、想像よりも人気がない印象を受けました。7月末に独VWとの提携ニュースが飛び込んできましたが、テスラに打ち勝つことができるのか、引き続き楽しみなブランドです。
別のショッピングモールでは、「リー・オート・VW・BYD・HUAWEI」の4つのブランドが並んで店を構えていました。思い返すと、ショッピングモールにはことごとくEVブランドのショールームがありました。日本では、テスラがラゾーナ川崎やマークイズ福岡ももちで展開しているショールーム、ヒョンデが福岡のイオンモールで展示しているのが、あちこちにあるイメージです。
リー・オート(理想汽車)⭐︎⭐︎
リー・オートは中型大型SUVのPHEVのみを取り扱っており、BYDやテスラなどとは競合しないセグメントで人気を博しています。値段が倍以上するドイツ勢からの乗り換えが多いとのことです。
また、冷蔵庫が内蔵されていたり、助手席専用の液晶画面があるので、ママが後席へ子供に追いやられているエピソードを聞きました。この車は、めちゃめちゃかっこよくて、質感も高く、欲しくなった車の筆頭です。
AITO(HUAWEI)⭐︎
HUAWEIの実車を初めて見ました。HUAWEIといえばスマートフォンのイメージをお持ちの方が多いかと思いますが、既に車を完成させて販売しているのは驚きです。AppleのEV話は音沙汰なくなりましたし、ソニー×ホンダのVISION Sの量産は実現されるのでしょうか。
「シャオポン/ニオ/テスラ」が入っているショッピングモールです。一帯は新規開発地区で、東京の湾岸エリアを彷彿とさせるエリアです。巨大なショッピングモールをタワーマンションが囲んでいます。都市部の中でもより新しく栄えているエリアで多くのEVが走っていました。
ディーラー店舗へ車を見に行くのではなく、普段のショッピングついでに車を見るのがこちらでは当たり前なのかもしれません。
ニオ(上海蔚来汽車)⭐︎
NIOはフォーミュラEに参戦しているため、モータースポーツファンからはレースの印象が強いかもしれませんが、市販の乗用車は高級車に特化しています。外観からでもNIOであることが一目でわかるプロポーションと、内装はオシャレなリビングルームを彷彿とさせるデザインが特徴です。
NIOは、独自のバッテリー交換サービスやオーナー限定のNIO houseなど、他社との差別化がはっきりとしているブランドです。残念ながら、西安であまり見かけなかったのは価格が高いためです。より富裕層が多い一級都市(上海、北京、広州、深圳)で売れている車だと思います。
テスラ⭐︎⭐︎⭐︎
GW期間中は、テスラストアの外でも新型モデルXの新しいカラー「ウルトラレッド」が展示され、パワーウォールやウォールコネクター、日本未発売のソーラールーフなど、テスラに関するさまざまなものが展示されていました。
やはり、モデルYとモデル3の人気が非常に高く、モデルSとモデルXは数が少ないとスタッフは言っていました。1000万円を超えると、多種多様なEVがある中で、テスラを選択する理由は少なくなるのでしょう。日本でも左ハンドル限定で販売されるのが決定。街で見かけるのを楽しみにしています。
前半は一旦、ここで締めたいと思いますが、現在まで生き残っている中国EVメーカーは熾烈な争いを勝ち抜いてきた猛者たちなのは間違いありません。どの車も完成度が高く、乗ってみたくなるような車ばかりです。右ハンドルの日本にはBYD規模にならないと進出は厳しいと思いますが、どうにかして運転したいですね。再び訪れる機会もあるでしょうから、中国で自動車免許を取得できるよう(中国はジュネーブ条約に加盟していないので日本で取得する国際免許では運転できません)に勉強します。
後編はこちら
写真・文/石井 光春