EVの売り上げが落ちてるって? 4月の世界EV販売台数は25%増加していますよ!

日本の自動車産業は世界を舞台にビジネスを展開しています。でも、日本国内ではEVシフトの実感がつかみにくい現状があります。はたして、世界のEV販売はどんな状況なのか。4月の記事で少し時間が経ってしまいましたが、アメリカのメディア『CleanTechnica』の記事を全文翻訳でお伝えします。

EVの売り上げが落ちてるって? 4月の世界EV販売台数は25%増加していますよ!

【元記事】What Falling Sales? Global EV Sales Grow 25% in April! by José Pontes on CleanTechnica

EVは今、世界で販売されている新車の18%を占めています

全世界のプラグイン車(PHEVやBEVなど外部から充電可能な車)の新車登録台数は2024年4月、昨年比で25%上昇しました。内訳はBEVが14%、PHEVが51%の上昇となります。

結果的に、プラグイン車は自動車市場全体の18%を占めました(BEVのみだと12%)。これは、世界の自動車市場が依然として電動車にシフトしていることを意味します。

昨年と比べて、プラグイン車の市場シェアは1%増え17%(BEVは11%)になりました。

BEVは、4月のプラグイン車登録台数の65%を占め、累計シェアは64%になりました。

4月の世界EV販売ランキングトップ20

4月の売れ筋モデルを見ると、テスラモデルYが約6.9万台で(いつも通り)トップですが、前年同月比で7%減少しています。2位以下はBYDの5車種、2位宋、3位秦プラス、4位シーガル/ドルフィンミニがランクイン。テスラモデル3は2.5万台で、前年同期比36%減の7位に後退しました。

深圳の巨人BYDは、なんとトップ10に6車種もランクインしており、中でも注目は秦プラスの兄弟車のBYDデストロイヤー05です。デストロイヤー05は4月に3万3150台の登録台数を記録しました。BYDは最近「エンジン車に対する戦い」(別名値下げ戦争)を仕掛けており、そうした背景もあってデストロイヤー05の台数が伸びていることは間違いありません。

ランク車種4月台数
1Tesla Model Y68,5865.6
2BYD Song(BEV+PHEV)61,3245.0
3BYD Qin Plus(BEV+PHEV)46,8763.8
4BYD Seagull/Dolphin Mini36,5363.0
5BYD Destroyer 0533,1502.7
6BYD Yuan Plus/Atto 329,6542.4
7Tesla Model 324,8582.0
8BYD Han(BEV+PHEV)22,1641.8
9VW ID.415,2991.3
10AITO M9(BEV+PHEV)15,1391.2
11BYD Dolphin14,0131.1
12Wuling HongGuang Mini EV12,4461.0
13Wuling Bingo12,1411.0
14Aion S11,9311.0
15Aion Y11,8031.0
16LiXing L711,6331.0
17Zeekr 00111,4510.9
18BYD Tang(BEV+PHEV)11,2670.9
19VW ID.311,1690.9
20Denza D9(BEV+PHEV)10,0310.8
その他749,71061.4
トータル1,221,181100

テスラとBYD軍団の他にトップ10入りしたのは2車種。ひとつはファーウェイがバックに付いているAITO(アイト)M9で、過去最高の15,139台を販売し10位で4月を終えました。もうひとつは9位につけたVW ID.4で、フォルクスワーゲンがトップ10入りするのは珍しいことです。

Zeekr(ジーカー)のフラッグシップモデル001は最近マイナーチェンジを行ったため、過去最高の11,451台を販売して17位にジャンプアップしました。

惜しくもランキング入りできなかった車種の中で注目のメーカーはボルボです。EX30は発売4ヶ月目にして9,074台を記録しているため、近いうちにトップ20入りするでしょう。一方、ベテランのXC60 PHEVは、9,153台という素晴らしい成績で関係者を驚かせました。

最後に、4月に8,836台を記録したトヨタbZ4Xも紹介しましょう。これは日本の巨大企業がやっと本気を出す兆候なのでしょうか?

累計EV販売ランキングトップ20

今年度の累計ランキングではBYDの大躍進が最大の注目ポイントです。BYD元プラス/Atto3(アット3)が1つ順位を上げて6位、デストロイヤー05が4つ順位を上げて9位になったため、現在トップ10にBYDのモデルが7つもランクインしていることになります。

BYDの話題が続きますが、BYD唐が19位に浮上し、トップ20リストに返り咲きました。これにより2024年のランキングに8車種もBYDが入ることに。

その他、GAC(広州汽車)のAion(アイオン)シリーズが4月は順位を回復し、セダンのSが15位に、クロスオーバーミニバンのYが16位に上昇しました。

ランク車種2024年台数
1Tesla Model Y331,4437.3
2BYD Song(BEV+PHEV)203,6544.5
3BYD Qin Plus(BEV+PHEV)138,6273.1
4Tesla Model 3131,1052.9
5BYD Seagull/Dolphin Mini109,8702.4
6BYD Yuan Plus/Atto 398,6282.2
7AITO M778,8581.7
8BYD Dolphin67,8421.5
9BYD Destroyer 0566,5391.5
10BYD Han(BEV+PHEV)59,2561.3
11Wuling HongGuang Mini EV56,6641.3
12LiXing L747,1031.0
13VW ID.447,0041.0
14Wuling Bingo46,4141.0
15Aion S42,0320.9
16Aion Y41,6930.9
17Changan Lumin39,0220.9
18VW ID.337,2910.8
19BYD Tang(BEV+PHEV)33,6650.7
20LiXing L933,2520.7
その他2,801,58132.1
トータル4,511,543100

ブランド別ランキング

4月、1位のBYDは競合のエンジン車(と、結構な数の他社EVも…)を価格で圧倒しており、期待通りの活躍で約30万9,000台を登録しました。この1年、販売台数は着実に伸び続けるでしょう。しかし、もし販売台数が目論見通りに伸びなければ、BYDが利益を手放してまで仕掛けた価格戦争は徒労に終わることになります。

テスラに関しては第1四半期に販売台数が減少した後、4月の登録台数も前年同月比15%減の約9万9,000台と、期待外れの結果になりました。とはいえ、それでも3位のBMWの2倍の販売台数ではあるのですが…

そう、トップ2の巨大ブランドの陰で、BMWが表彰台の最後のポジションを獲得したのです。フォルクスワーゲンは意外にも34,662台で5位に入ることができましたが、これは同社の人気モデル、ID.4とID.3の好成績のおかげです。

ランキング後半は、世界的に販売されているbZ4X(8,800台)が好調だったこともあり、トヨタが24,004台と過去最高に近い結果を残したのが意外でした。最近発表されたbZ3Cのような魅力的なモデルがトヨタの主要市場に上陸すれば、販売台数の記録をどんどん更新し続けるシナリオもあり得るでしょう。

トヨタは現在、中国で第3位のブランド(BYDの台頭以前は第2位)で、今後EV事業を急拡大させないと、これまでのように中国市場で毎年何百万台も販売できなくなるでしょう。

ランクブランド4月台数
1BYD309,06225.3
2Tesla98,9478.1
3BMW43,9503.6
4Wuling35,9872.9
5Volkswagen34,6622.8
6Volvo32,9282.7
7Mercedes30,8942.5
8Li Auto28,4712.3
9Geely27,9092.3
10Aion26,4702.2
11AITO25,0732.1
12Toyota24,0042.0
13Kia22,9371.9
14Audi21,5581.8
15Hyundai20,5471.7
16SAIC18,6311.5
17Zeekr16,5171.4
18Changan16,3501.3
19NIO15,7641.3
20Chery15,6801.3
その他354,84029.1
トータル1,221,181100

最後に、16,517台の登録台数でブランド別ランキング第17位に加わったZeekrですが、果たしてこのブランドも、今後注視すべき中国メーカーの一つになるのでしょうか?

4月はフォード、プジョー、ジープといった有名ブランドがトップ20圏外に転落し、代わりに15,764台の登録台数を記録したNIO(19位)のような中国ブランドが浮上しました。ランキング全体を見ると、トップ20のうち、11ブランドが中国メーカーでした。

累積販売数ランキングの上位陣には目立った変化がありませんでした。BYDはテスラを上回っており、そのテスラは3位のBMWにダブルスコアをつけています。しかし、BYDが2桁成長を続ける一方で、テスラの2024年の販売台数は10%減っています…

トップ2社のはるか下ではBMWと五菱(ウーリン)が順位を維持し、フォルクスワーゲンは4月の好成績のおかげで順位を3つ上げて6位に入りました。

ボルボは販売が好調で、順位をひとつ上げて9位となりました。

ランクブランド2024年台数
1BYD918,79920.4
2Tesla485,66110.8
3BMW166,6763.7
4Wuling145,4423.2
5Mercedes123,9872.7
6Volkswagen119,1972.6
7Li Auto117,3982.6
8Geely116,4562.6
9Volvo112,5152.5
10AITO110,4122.4
11Aion93,3692.1
12Audi86,6621.9
13SAIC85,6681.9
14Toyota84,8051.9
15Kia83,7001.9
16Hyundai74,7781.7
17Changan61,3981.4
18Jeep54,1761.2
19Ford54,0981.2
20Chery53,7001.2
その他1,362,64630.2
トータル4,511,543100

11位以下では、Aionが軽快な走りの2モデル、Aion SとAion Yの売れ行きが復調し、3つ順位を上げて11位に入りました。

最後の注目株はトヨタで、2つ順位を上げて14位になりました。もしかしたら年末にはトップ10に食い込むかもしれませんね。

メーカー別EV販売ランキング

メーカー別の登録台数を見ると、1位のBYDは最近の値下げによってシェアを伸ばし、19.4%から現在の20.8%になりました(1年前は21.6%でした)。一方、テスラは4月末日の時点でシェアは10.8%でした(2023年の同時期には15.4%でした)。

3位はGeely–Volvo(ジーリー・ボルボ)で、7.8%と安定しています。2023年4月の6.2%から現在の7.8%へと、トップ5の中で最もシェアを伸ばした中国メーカーです。

テスラの最近のシェア低下とGeelyの著しい成長を考慮すると、年末までに中国の巨大メーカーがテスラの2位の座を脅かすかもしれません。

一方、4位のフォルクスワーゲン・グループ(6.4%から0.1ポイント下がって6.3%)と5位のSAIC(上海汽車)(5.9%から0.3ポイント下がって5.6%)はともにシェアを減らす結果となりました。ただ、2023年同期と比較すると、フォルクスワーゲンが1%シェアを落としているのに対し、SAICはシェアを落としていません。

ランクOEM(BEV+PHEV)2024年台数
1BYD936,44620.8
2Tesla485,66110.8
3Geely-Volvo351,7427.8
4Volkswagen Group285,2386.3
5SAIC252,4695.6
トータル4,511,543100

SAICの次はステランティス(4.3%から0.3ポイント下がって4.0%)が6位につけていますが、2023年4月は4.8%だったことを考えると、大きくシェアを落としています。

7位争いは、BMWグループ(3月から0.1ポイント上昇して3.9%)がChangan(長安汽車)を上回り、8位のヒョンデ・起亜(4月の3.5%から0.1ポイント増えて3.6%)がこの2社に肉薄しています。

BEVだけのシェアで見るとテスラが16.7%で首位をキープしていますが、前年同期比では6.6%シェアを落としています。それでもなお、BYD(1.4%増加の16.2%)を上回っています。テスラが急速にシェアを落としているため、第3四半期あたりにはBYDとテスラが逆転しているかもしれません。

Geely–Volvo(0.2%減の7.2%)はSAIC(7.3%から0.2ポイント下落の7.1%)との差をキープして3位の座を守りました。

5位はフォルクスワーゲン・グループで0.1%増の6.8%。フォルクスワーゲン・グループ3~4位に追いつこうとしていますが、道のりはまだ遠いです。それでも、6位のBMWグループ(4.1%)がまだ離れているため、ここから数ヶ月をかけて失われた時間を取り戻すために挑戦することもできます。

ランクOEM(BEV+PHEV)2024年台数
1Tesla485,66116.7
2BYD469,45016.2
3Geely-Volvo208,2427.2
4SAIC205,5987.1
5Volkswagen Group196,7066.8
トータル2,902,200100

翻訳/池田 篤史(翻訳アトリエ)

この記事のコメント(新着順)5件

  1. 中国共産党の補助金によるダンピングにより販売数が増えてるだけ。新し物好きがひと通りEVを買ったのでダンピングしても売れなくなるのは必然。

  2. 返信ありがとうございます。
    私が書いたのはCleanTechniaに対してのもので、このブログに書いたのは適切ではなかったかもしれません。
    申し訳ありません。
    ただ、CleanTechniaは最初、トヨタ方針をずっと否定し、トヨタを”Circling The Drain”とか “one of the most despicable corporations on the face of the Earth”とか、 “Toyota’s cowardly, sneaking-up-the-back-stairs approach”と言い、さらに、豊田章男氏に対しては、” What kind of horse manure is he smoking?”とまで言っています。
    日本のメディアもこのような記事に乗っかって、トヨタはオワコンとか周回遅れと言っていました。
    このようなサイトが知らん顔をして、手のひらを返してPHEVもEVだからEVが伸びている、というのはあまりに節操がないのでは、と思います。
    ただ、私はホンダユーザーです。

    1. 返信ありがとうございます。
      CTもシェアなどを報じる記事ではかねてEV=BEV+PHEVだと思いますが、多彩なオーサーがいらっしゃるので、個人的見解を強い言葉で示した記事はあるでしょうね。
      ともあれ、トヨタをはじめとする日本の自動車メーカーから、早く「世界で売れるBEV」が繰り出されることを期待しています。

  3. いい加減にして!
    EVはもともとBEVだけで、PHEVはEVから除外してたじゃないか。
    PHEVのトヨタを散々オワコンとか周回遅れとか言っていたくせに。
    BEVがまだ未熟だと言うユーザを馬鹿にしていたくせに。
    PHEVの方が売れ出すと、厚かましくEVに入れてEVが売れているという。
    こんな手前勝手な記事ばかり書くからEV推しのメディアは信用されないんじゃないの。

    1. 日本車ユーザー さま、コメントありがとうございます。
      EVsmartブログ編集長の寄本です。

      まず、この記事はCleanTechnica(CT)からの全文翻訳です。
      また、CTがそうであるようにEV=BEV+PHEVとするのはグローバルな考え方であり、EVsmartブログでも欧州や日本国内の販売シェアをまとめる記事など含め、かねてそのように区分しています。
      さらに「PHEVのトヨタを散々オワコンとか周回遅れとか言っていた」というのは、いったいどの記事のことでしょう?
      メディアとして、また個人的にも、トヨタさんには記事はもちろんさまざまな機会に「世界で売れるEVを!」といった趣旨のメッセージをお伝えしていますが、ご指摘のような誹謗中傷を発信しているとされるのはいかがなものか。

      EVsmartブログでは、これからもEVの魅力や日本のEVユーザーにとって有意義な情報発信を続けていく所存です。

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この記事の著者


					池田 篤史

池田 篤史

1976年大阪生まれ。0歳で渡米。以後、日米を行ったり来たりしながら大学卒業後、自動車業界を経て2002年に翻訳家に転身。国内外の自動車メーカーやサプライヤーの通訳・翻訳を手掛ける。2016年にテスラを購入以来、ブログやYouTubeなどでEVの普及活動を始める。

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