英国政府が障がい者でもアクセスしやすい充電器のガイドラインを策定

英国政府は障がい者支援団体と協力し、電気自動車用充電器の設置基準をまとめることを発表しました。これにより障がいのあるEVユーザーは、自分が使える充電器がどこにあるのか簡単に分かるようになります。

英国政府が障がい者でもアクセスしやすい充電器のガイドラインを策定

すべての人がアクセス可能な充電器のガイドラインを策定

英国政府のウェブサイト上には、

・2022年夏までに、各充電スポットをより簡単にアクセスできるようにするためのガイダンスを提供する。
・縁石の高さ、車止め用ポール間のスペース、車椅子からでも使える高さになっているかなどの要件を考慮に入れる。
・英国規格協会(BSI) 及びMotabilityとのパートナーシップにより、ゼロ・エミッションの未来に向けて全員にアクセス可能な充電器を整備する。

とあります。公用の充電器は「完全にアクセス可能」、「一部アクセス可能」、「アクセス不可能」の3つに分類され、設置者側には障がいのある人でも使える充電器を設置する手助けになるとともに、ユーザー側も自分が使えるのはどの充電器か簡単に分かるようになります。

障がいのある消費者のための研究機関(Research Institute for Disabled Consumers: RiDC)研究によると、調査対象のうち76%が電気自動車用充電器を目にしたことがあり、そのうち73%の人が、充電器にアクセスがまったくできない、または使うことが難しいと評価しました。その理由としては

  • 自分の行動エリアに充電器が存在しない。
  • 駐車スペースの幅が十分ではない:障がい者用駐車スペースのように大きなスペースが取られておらず車から乗り降りができない。
  • 充電器の高さや位置:ユーザーが立って使うことを想定しており、杖を持っている人、車いすに乗っている人では扱えない。
  • 充電にかかる時間が長すぎる。

などが挙げられました。回答者のうち3分の2以上が次回車を購入する際には電気自動車(HV/PHEVを含む)も考慮に入れるとしましたが、外充電をする際の不安が取り除かれなければ、プラグイン車は選択肢から外れてしまいます。

MotabilityのCEO、Barry Le Grys氏は「英国の電気自動車シフトが進む一方で、障がいのある人たちが置いてきぼりになるリスクがありますが、Motabilityはそうならないように万全を期したいと考えています。私たちの電気自動車充電とアクセシビリティに関する研究に政府が興味を示したくれたことを歓迎しますし、ゼロ排出車両局とパートナーシップを結んでさらにプロジェクトを進められることに興奮しています」と話しました。

日本の充電器事情はどうでしょうか。高速道路上のSA/PAやショッピングモールに設置されてある充電器を考えると、お店から遠い場所に設置されていたり、青の障がい者用スポットのように十分な広さが取られていない充電器がほとんどだと思います。また筆者の知る限り、充電器自体もRiDCが指摘したように立って使うことを前提にしたものしか公共の場にはありません。今までは電気自動車普及のためにとりあえず設置が進められてきた充電器ですが、英国を見習ってみんなが使える充電スポット設計を進める必要があります。

【編集部追記】
ジャガー『I-PACE』で国内のEVレースシリーズであるJEVRAにもチャレンジした青木拓磨選手が、国内急速充電インフラの「残念すぎる使い勝手」を指摘した記事(別媒体ですけど)もありました。取材して書いているのは、EVsmartブログにも先日パイクスピークのレポートを届けてくれた青山義明さんです。
「EV時代」到来に「待った」! 車いすレーサーが痛感した「充電器」の「残念過ぎる使い勝手」3つのポイント

【参照記事】
UK government partners with disability charity to set standards for electric vehicle chargepoints
UK: New Charge Point Standards Will Make EVs More Accessible
Study reveals disabled drivers’ concerns about EV chargers
Going Electric?

(文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 今回は英国の話題ですが
    日本においても
    数ばかりに傾注することなく今後は使いやすさも兼ね備えたものになっていくといいですね。

    いろいろなユーザーさんの意見が採り入れられ改善に繋がると嬉しいです。

    車両についての記事が多い中、充電スポットの環境も大切なことだと思います。

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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