電気自動車用バッテリー再生工場『4Rエナジー 浪江事業所』を見学!

EV普及の進展を受けて、バッテリーのリサイクルなどが大切な課題となってきています。
福島県浪江町にある日産リーフのバッテリー再生工場をモーター・エヴァンジェリストの宇野智氏が見学レポート。回収したバッテリーの荷受けから出荷までの全工程を紹介します。

電気自動車用バッテリー再生工場『4Rエナジー 浪江事業所』を見学!

『4Rエナジー 浪江事業所』とは?

『4Rエナジー』は、フォーアールエナジー株式会社の略称・通称名で、2010年に日産自動車が51%、住友商事が49%を出資して設立された合弁会社。回収した日産リーフのバッテリーを再生して販売する事業を行っています。

『浪江事業所』は、2018年に福島県浪江町に開設したバッテリー再生工場です。浪江町は、福島第一原発事故の被害を受けた地域で、今でも帰宅困難区域が残されたままになっています。

浪江町は、日産と長く協業しており、EVを使用したスマートモビリティサービスの実証実験や、RE100を目指すエネルギーマネジメントシステム実用化検証を開始するなどしています。

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バッテリー再生の工程を見学

それでは、4Rエナジーがどのように日産リーフのバッテリーを再生しているのか、荷受けから順番にご紹介します。

1.回収したバッテリーの荷受け

画像左側に積み上げられた青いパレット1枚に、回収された日産リーフ1台分のバッテリーが載せられ、トラックで運ばれてきます。現在回収されているバッテリーは、初代リーフの初代24kWhと、そのあとの30kWhが回収されていますが、今後、2代目リーフのバッテリーも廃車が徐々に増加するのとあわせて、入荷されてくるとのことです。

撮影時は荷受け後のため、空になったパレットが積まれている状況でした。

2.バッテリーの清掃

荷受けしたばかりのバッテリーは、ご覧のとおり相当に汚れています。それもそのはず、廃車になった車両からバッテリーを回収するわけですから。

4Rエナジーは、このバッテリーを1台1台、丁寧に清掃してから次の工程へ進めています。

3.トレーサビリティ

画像左奥は、バッテリーを清掃する作業台。清掃開始と同時に、バッテリーのセル1つ1つに番号を振り、入荷元や再生後のバッテリーがどこで利用されているかなどの情報を管理する「トレーサビリティ」と呼ばれるシステムへのデータ入力作業を行います。

清掃を終えて次の工程を待つバッテリーと、全工程を終えて出荷を待つバッテリーが保管されるラック。

4.『恒温室』でバッテリーを一定の温度に整える

回収したバッテリーは、この後、バッテリー状態の計測に入るのですが、その前に、夏でも冬でも25℃に保たれた『恒温室』と呼ばれる部屋で寝かされ、バッテリー本体も25℃になるまで調整されてから、セルごとの状態を計測する次の工程へと進みます。

5.計測

恒温室の中で25℃に保たれた状態で、すべてのバッテリーの劣化状態などを計測します。

初期型リーフのバッテリーは、48モジュールで、1モジュールに2つのセル、つまり96セルの電池があるという構造になっています。ここでは、96セルの電池1つ1つを計測しています。

6.各モジュールの判定

計測された各モジュールは、A・B・Cの3つのランクに判定されます。このうち、Aランクのモジュールを集め、日産リーフ用のリユースバッテリーに再生されます。Bランク、Cのランクのモジュールは、電動ゴルフカートのバッテリーや、鉄道の踏切の非常用電源バッテリーなどにリユースされます。

7. リーフ用リユースバッテリーへの組み込み

Aランクのモジュールは、リーフ用リユースバッテリーへと組み込まれます。ここでは、ケースへの格納と密閉、バッテリーケースのキズの修復などを行っています。職人技が光る工程です。

バッテリーケースにモジュールが組み込まれた状態。ピカピカ!

8. 出荷検査

リユースバッテリーへの工程もそろそろ最終段階。すべてのモジュールが正常かどうか、ここで厳しくチェックされます。

検査が終わって合格したバッテリーは、チリやホコリが入らないようにビニールが被せられます。この後、ケースカバーが取り付けられ、出荷待ちとなります。

9. 出荷

検査に合格したバッテリーは、ここで出荷を待ちます。

バッテリーケースカバーの色は2種類ある。このうち、黒が北米仕様リーフのもの。リユースバッテリーは、地域仕様に関係なく再利用されているとのこと。

工場ではリユースバッテリーを使った再エネ活用を実施中

工場敷地内には、太陽光パネルが設置されていました。

太陽光パネルで発電した電力は、蓄電池(画像右側の筐体)に蓄えられ、リーフへの充電と事務所への給電を行う再エネの活用と、BCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)対応の運用が行われているそうです。

蓄電池には、リーフ1台分の48モジュールのバッテリーを備える。

工場見学を終えて、頭に浮かんだ疑問

工場見学を終えての第一印象は、「とても有意義なバッテリー再生事業であるものの、工程や規模感などから、まだ実証実験段階ではなかろうか?」でした。これまでに再生されたリーフの台数などがわかれば、実証実験段階なのかの全容も把握できるでしょう。

また、一連の工程の中で、バッテリーの計測時間がボトルネックになっているのではないか、と感じました。全体的に思っていた以上にバッテリー再生までの時間がかかっている印象です。再生のための作業より、バッテリー本体を25℃までするための時間と、計測時間のほうがはるかに長い状況でした。そしてさらに、次の疑問、知りたいことが出てきました。

【ここが知りたい!】
●2018年の工場設立後、何台のリーフのバッテリーが回収、再生されたのか?
●再生されたバッテリーは、どこで利用されているのか?
●バッテリーの再生までの工程は、今後短縮される見込みはあるのか?
●日産 ノートやセレナなどの『e-POWER』のバッテリーは再生されないのか?

工場を案内していただいた林田副社長にその疑問について尋ねたところ、「それでは、4Rエナジーの今後の展開を含めて、代表から直接お答えする」とのことで、牧野社長へ直接インタビューの場をセッティングしていただくことになりました!

次回、『新品より価値あり!4Rエナジーのリユースバッテリーバッテリー事業の実績と課題、今後の展開をフォーアールエナジー牧野社長が熱く語る』と題した記事をお届けする予定です。お楽しみに!

工場見学レポートはYouTubeの動画でも紹介しています!

日産リーフのバッテリー再生工場『4Rエナジー 浪江事業所』を見学!

(取材・文/宇野 智)

この記事のコメント(新着順)4件

  1. 現状、日産もリユースバッテリを積極的に売る気は無い模様。
    環境負荷の事やEV普及を目指すなら補助金を導入してでも積極的に広めて欲しい。
    バッテリの劣化問題について、リユースとは言え安価に載せ替え出来る事が周知されれば、AZE0はもっと魅力的な車になる。
    あとは24に30などのバッテリ搭載が出来れば最高なんだけど。

    1. たしかに電池容量アップができれば最高なんですが…問題はファームウェアをどうするか!?でしょう。
      電動工具や携帯ゲーム機によくある社外品大容量バッテリーの発想でイケるならそれもアリですが、数があまり出回っていない電子部品だと転用が難しい可能性もあります。
      三菱アイミーブにしたって末期の充電中空調ok仕様とそれ以前の空調使用不可モデルとでは結構な格差ですが、現状それができない地点でお察しいただければ幸いです。さすがにマスクROMではないでしょうが(EP-ROMなら考えられる)、書き換えると容量不足になるとかチップへの負荷がかかりエラー頻発するとかでは厳しいですよ!?
      電気自動車をクルマとしてよりノートパソコンなどIT機器として捉えると納得できる話がたくさんあります。「走るガジェット」「動く蓄電池」と形容する人が多くなれば時代は変わるかな!?
      それにしてもリーフ30kWhの電池パック、中古は時折見かけるけど新品は聞かないですね…生産時期が短くユーザーも少ないからですか!?それが真実なら中古価格が低くてもしゃーないですよ!?

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この記事の著者


					宇野 智

宇野 智

エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元「MOBY」編集長で現在は編集プロダクション「撮る書く編む株式会社」を主宰、ライター/フォトグラファー/エディターとしていくつかの自動車メディアへの寄稿も行う。

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