リーフ再生バッテリーで経費節減にも成功していた!〜日産『はたらくクルマ』取材レポート

日産が開催した『#日産あんばさだー #はたらくクルマ3』にモーター・エヴァンジェリストの宇野智氏が参加。電気自動車用リチウムイオン電池の二次利用を進めるフォーアールエナジーの再生バッテリーを使ったクルマに注目したレポートをお届けします。

リーフ再生バッテリーで経費節減にも成功していた!〜日産『はたらくクルマ』取材レポート

【冒頭写真説明】 左から順に、桜オートモーティブエナジー株式会社 赤木 和彦氏、株式会社シンコーフレックス 松井 亮さん、フォーアールエナジー株式会社 取締役副社長 林田 幹夫氏と各社スタッフ

日産リーフの再生バッテリーを活用したクルマに注目

冬の足音が聞こえる11月下旬の晴天のもと、横須賀は追浜にあります『日産グランドライブ』にて今回で3回目となる取材会『#日産あんばさだー #はたらくクルマ3』が開催されました。

この取材会は、文字通り『はたらくクルマ』にフォーカスしたもので、よくある新型車の取材回とはまったく異なるクルマたちを見て触って、乗る(一部車種)ことができるものです。日産のクルマが、さまざまな場所で活躍する姿と実際に働いている方の生の声を聴きながら取材するという貴重な機会です。

さて、筆者的今回の目玉は日産リーフ用バッテリーの再利用する事業を手がけるフォーアールエナジー株式会社(以下、4RE)による再生バッテリーを使用したクルマと『リーフ・タクシー』。特に、4RE製の再生バッテリーがどのように活用されているのかに注目です。

ちなみに、年明けには4RE浪江事業所の見学取材も計画しています。日産×浪江町のEVによる MaaSと併せて取材予定。EVsmartブログでレポート記事をお届けするのでお楽しみに!

再生バッテリー搭載ゴルフカートで経費も削減!

再生バッテリー使用『LIBCART』5人乗り電磁誘導式モデル。

最初にご紹介するのは、再生バッテリー使用ゴルフカート『LIBCART』です。再生バッテリーを使用していないモデルも販売されているため、本記事では日産作成資料に合わせて『再生バッテリー使用 LIBCART』と表記します。

再生バッテリー使用 LIBCARTは、アルミニウムやバッテリー、レアメタルなどの資源再利用を主要業務とする『株式会社シンコーフレックス』とゴルフカートメーカーの『桜オートモーティブエナジー株式会社』が共同開発した『ゴルフカート用リユースLIBユニット』を搭載しています(販売は『桜オートモーティブエナジー』)。

これまでの『LIBCART』の鉛バッテリーを搭載していましたが、フォーアールエナジー製の再生バッテリー搭載モデルを新たにラインナップに追加しました。

再生バッテリー使用『LIBCART』2人乗り自走式モデル。

4REは、2010年の日産リーフデビューとともに、日産自動車と住友商事の共同出資で誕生した会社。日産リーフに搭載されていた中古のバッテリーを国内外から集め、劣化度合いに応じて再製品化。二次利用や再資源化を進めるための事業を行っています。

再生バッテリー使用 LIBCARTは、初代リーフ前期型(バッテリー容量24kWh)に搭載されていたバッテリーの10分の1相当のセルを再利用しているとの説明でした。従って、スペック上のバッテリー容量は、2.4kWhになります。

実用的な航続距離は、電磁誘導式モデルで20km、自走式モデルで30kmとのこと。同じパワーユニットを搭載していますが、車両重量の違いが航続距離の差に出ているとの説明でした。

リーフに比べて充電性能(車載充電器の対応出力)も控えめで、充電時間は100Vで約5時間、200Vで約3時間とのことです。

再生バッテリーで経費削減に成功

とはいえ、鉛バッテリー搭載のLIBCARTの充電時間は、ゴルフカート用リユースLIBユニット搭載モデルの倍以上の、6〜8時間かかっていたそうです。

それでも鉛バッテリーは劣化が早く、特にゴルフ場はアップダウンが多く負荷も高いため、短期間で航続距離が落ちていたとのこと。鉛バッテリーの交換頻度は2年(2年保証)程度、ゴルフカート自体の平均寿命は10年なので、廃車までにおよそ4回の交換が必要だったところ、再生バッテリーの交換頻度は5年(5年保証)で、廃車までに必要となる交換は1回に節約できます。

鉛バッテリーの交換費用は、約20万円/回で、ゴルフカートを寿命まで使用した場合のバッテリー代合計は約80万円。再生バッテリーは鉛バッテリーの価格の半分以下の価格で済むメリットがある、との説明もありました。

車重150kgのシェイプアップはさまざまなところに効果が

さらに、LIBCARTに再生バッテリーを搭載することによって、車両重量が150kgも軽量化できたと強調されていました。鉛バッテリーの重量は180kgだったのが、再生リチウムイオンバッテリーでは30kgになったそうです。

この150kgの軽量化は、タイヤをはじめとしたゴルフカートのパーツ交換頻度をへらすことにも貢献。特に、ゴルフカートは芝生を痛めないように走行できる特殊なタイヤを履いており、とても高価。このタイヤ交換頻度が少なくなることだけでなく、芝生にも優しい走行ができることから、ゴルフ場からはとても喜ばれているそうです。

シート下にバッテリーが格納されている。鉛バッテリーではぎっしりと詰まっていたが、再生バッテリーではスカスカに。画像は5人乗りモデル。
こちらの2人乗りモデルもバッテリー格納スペースはスカスカ。

再生バッテリー使用ゴルフカートの車両価格は高いが、2〜3年で元が取れる

タイヤをはじめとしたパーツ交換の頻度は、おおむね1.5〜2分の1程度に減ったといいます。

車両価格は、5人乗りカートが150万円、2人乗りカートが100万円(いずれも税別)とのことで、鉛バッテリーに比べると車両価格は高い設定となっていますが、バッテリーやタイヤなどのパーツ交換頻度減少で、2〜3年で元が取れるようになったとのことでした。

ちなみに、これまでの販売実績は、5人乗りが200台、2人乗りが150台で、すでに2022年納車分も多数受注し現在部品調達を進めていると伝えてくれました。

ゴルフカート以外の業務用車両への展開にも期待したい

担当者の話によれば、鉛バッテリーは需要が減ったことから価格が上昇、対してリチウムイオンは価格が下降し、以前は3倍程度あった価格差が今では2倍以下まで下がっているとのこと。

現在、再生バッテリーを使用した業務用車両は、ゴルフカートのみの販売となっていますが、今後さまざまな業務用車両に『再生バッテリー使用 LIBCART』が転用できることに期待が持てると感じました。

公道走行できる再生バッテリーEVはまだまだ発展途上

『カニ目』の愛称で知られるトライアンフ TR-3を彷彿とさせるデザインのクルマは、岡山県で工場の生産ラインにある組み立て機械などを開発、生産販売する『コアテック株式会社』が試作した、4RE再生バッテリー使用EVスポーツカー『eFalcom』です。

前二輪、後一輪のいわゆるリバーストライクで、最高出力35kW、最高速度80km/h(カタログスペック上。本当は90km/h出るらしいが抑えたとのこと)、航続距離280kmというスペックで、ボディサイズは全長2,500mm、全幅1,300mm、全高1,200mm、車両重量485kgとなっています。

『eFalcom』の法規上の扱いは『側車付二輪車』で、ヘルメットは不要、普通免許で運転できます。

現在、ナンバー取得申請中とのことで、公道走行可能な状態にまで仕上がっていたのですが、大きなネックがありました。

それは、車両価格。まだ価格は未定とのことですが、どれくらいの価格設定を考えているかを尋ねたところ「利益を考慮すると500万円にしたい。しかし、それでは誰も買ってくれないだろう。実際に販売するとしたら300万円くらいになるのではないか」とのことでした。

量産型ではないクルマなので、1台あたりの車両価格高騰はやむなし。

公道走行可能な再生バッテリー使用車の実用化は、価格の面からまだまだ発展途上を実感した次第。

ホイールの内側にモーターを配置するダイレクトドライブ方式を採用。

再生バッテリー使用のラストワンマイル向けマイクロカーならアリか?

しかし、側車付二輪車に相当するもっと簡便な業務用マイクロカーなら、ある程度まとまった台数の生産が可能で、現実的な価格設定ができるのではないか?とも思いました。

そう思ったのは『はたらくクルマ3』で出展されていた、ローソンの移動販売車を見たからでした。

ベース車両は、日産 NT100クリッパー。

この移動販売車は、ローソンが自治体、地域、行政と連携して、高齢者の閉じこもりやBCP対応(災害やテロなどの異常事態発生時の対応)、買い物が困難な場所への買い場の提供などの社会課題の解決を目的にしているとのことでした。

セブンイレブンでは、超小型電気自動車『COMS』を配達に使っていました(最近、あまり見かけなくなったが…)。ラストワンマイル向けの超小型EVの量産型に、再生バッテリーを搭載、要所要所に配備するというネットワークを構築するのはアリでしょう。

すでにそのような計画を立てているところはありそうですが、車両設計からサスティナブルな再生バッテリーを取り入れていただきたい。もし、読者でこの関係に携わっていらっしゃる方がいたら、ぜひ、4REへお問い合わせを。

再生バッテリーを使用したポータブルバッテリー

こちらはコアテック社の試作品。4REの再生バッテリー1セルを使用し、太陽光でも充電可能なポータブルバッテリーです。

6枚の太陽光パネルを使用すると、3〜4時間で満充電になるとのこと。定格容量は1,200Whで、30WのノートPCで約33時間、100Wの小型冷蔵庫で約10時間の給電が可能となっています。

市販化については現在検討中で、この試作品そのままで発売するより、ユーザーの利用状況や環境に応じてカスタマイズしていく、ソリューションとして発売したいと担当者は語っていました。その背景には、競合製品と同等の価格がつけられず、そのままでは価格競争で負けてしまうといった側面があるようです。

リーフのタクシーに体験乗車

宝自動車交通株式会社の日産 リーフのタクシー。標準バッテリーモデル。

『はたらくクルマ3』取材会では、リーフ・タクシーに体験乗車する機会もありました。

ドライバーに取材すると「LPG車よりEVのほうが、一日運転して疲れない」「ほかのドライバーからうらやましがられる」「お客様からは『静かだね』などと喜ばれる」と高評価でした。

なお、リーフ タクシーの1日の走行距離は、約100km(昼間の都内)とのことで、タクシーの営業で十分使えています。

いっそのこと日本国内のタクシーを全部EVにすることから、EVシフトを始めたら? と思いましたね。内燃機関のタクシーのように交代乗務で24時間の稼働はできないにしろ、配備台数を増やして乗務員とともにクルマを交代させれば、いけるでしょう。お金のかけ方や社会の仕組みを変えることが、EVシフトのポイントになるのではないかとも感じます。

どうでしょう、関係者の方々、全部でなくても一部から、できるところから手をつけてEVシフトを進めてみては?

(取材・撮影・文:宇野 智)

『はたらくクルマ3』全車両のレポート動画はこちら

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 「はたらくくるま」といって「ひらけ!ポンキッキ」を連想したアラフィフですww
    ♪排気ガスを~出さない電気自動車~(電気自動車~)♪
    ※子供のころリアルで流れてたなぁ。

    それはともかく解体したバッテリーが小型モビリティで再利用されるのはエエことやー思いますー。
    以前電気保安でお邪魔したゴルフ場はカートの廃バッテリー処分に悩まされてました…これからは中古リチウムイオン蓄電池に代替されて従来の悩みもなくなっていくんでしょう!? コース一周2~3kmなら一日運用しても大丈夫。
    鉛蓄電池は全容量の半分以上使うと劣化が早くなります。それに寿命もリチウムイオン電池の半分未満。そりゃ価格差二倍ならリチウムイオン使ったほうがエエやないですか。納得
    もちろんこの論理なら工場のフォークリフトも電動になるとみた!!生産ラインの自動搬送機も勿論「はたらくくるま」、ほぼ電動なんで参考になります…実際鉛蓄電池のリプレース用途で東芝がSCiBを供給してますし。
    https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/battery/scib/application/agv-amr.html
    民生より産業用がメインになるのはしっかりコスト計算をしているから。乗用車より商用車で電気自動車が注目されているのは理工系のスタッフが経営工学も駆使しながらよりよいモノを追求してるんです!幸い自身も理工系自営電気技術者、エンジン車と電動車の利点欠点を要素別に分類、各種計算で換算値を求め総合判断の結果i-MiEVを作業車にしてますよ(笑)
    ※自力計算と自己研鑽、それらがないと真に必要な電気自動車は生まれてこないんやないですか!?

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この記事の著者


					宇野 智

宇野 智

エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元「MOBY」編集長で現在は編集プロダクション「撮る書く編む株式会社」を主宰、ライター/フォトグラファー/エディターとしていくつかの自動車メディアへの寄稿も行う。

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