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三菱i-MiEVで日本一周を完走! 159日間で計412回の充電旅で遭遇したピンチとは?

三菱i-MiEVで日本一周を完走! 159日間で計412回の充電旅で遭遇したピンチとは?

バッテリー容量わずか16kWhの三菱「i-MiEV」で日本一周の旅に挑戦していた権田秀夫さんが159日かけてついに完走を果たしました。はたして、どんな旅だったのか。印象的だった場所や出来事についてインタビューしてきました。
※冒頭写真は千里浜なぎさドライブウェイ(石川県)。

目次

急速充電1回で走れる距離は50〜80km

桜島の夕景。

2025年夏のジャパンEVラリー白馬で出会った時に日本一周に挑戦中だった権田さんから「残りの旅程を終えて無事に帰宅しました」という連絡があったのは同年11月末。12月某日、ご自宅がある長野市内で再び取材させてもらうことができました。

白いi-MiEV(2010年式)のボディに貼られた日本列島のステッカーが、あちこち剥げて傷んでいます。長い旅を終えたオーナーの権田さんは、日焼けされていて、精悍な印象でした。

権田秀夫さん。

権田さんが2017年から乗っているi-MiEVの走行用バッテリー容量は16kWh。カタログ上の一充電航続距離は164km(JC08モード)だというものの、経路での30分急速充電1回で期待できる航続距離は50~80km程度。とても長距離走行向きとは言えません。定年退職を機に2025年4月中旬にスタートさせた日本一周は、毎日3~4回は充電するのが当たり前という旅になりました。

「i-MiEVは長距離のドライブ旅行といった用途で作られた車ではないのはわかっています。でもせっかく乗っているんだから、色々と使いこなしたいじゃないですか。制約のある中でどこまで行けるか、試したくてチャレンジを決めました」と権田さん。

7月に開催されたジャパンEVラリー白馬でお会いしたときは、東日本の旅を終えたところでした。

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西日本の旅は8月31日にスタート

角島大橋(山口県下関市)。

6月20日に東日本編を終えた権田さんが、西日本をめぐる旅に出たのは8月31日。航続距離を伸ばすためになるべくエアコンは使わず走りたいので、暑い盛りはパス。「涼しくなったら…と思っていたのですが、ぜんぜん涼しくならなくて(笑)」。たしかに、今年は暦の上では秋なのにずっと暑さが続いて、急に冬がやってきたような感じでしたね。

出発前に、ざっくりしたプランは立案。長野を起点に、北陸から近畿南部、四国へ渡って、山陽から、九州へ。戻りは山陰から近畿北部、東海の順。かなりの航送運賃が必要な沖縄は、行くかどうか悩んだそうですが、結局やめることにしたそうです。

「自分で決めたテーマは『全県全力投球』。もともと旅先でゆっくりするより、時間があったら別の場所も訪ねたいと思う性格なんです。本を参考にしたりして、絶景スポットや観光地をなるべくたくさん回ろうと思っていました」

ルートはかなり行き当たりばったりだったとか。出発前に立ち寄ると決めていたのは、県庁所在地のほかは、個人的な思い出がある金太郎温泉(富山県魚津市)だけ。走りながら行き先を決める自由な旅。じつにうらやましいです。

西日本だけでも300カ所以上のスポットを訪問

「それぞれの地域について知識を深めたくて、一つでもたくさん訪ねようとした結果、訪問スポットは西日本だけで300カ所を超えました。日本一周される方は珍しくないと思いますが、訪問先の数をお話しすると皆さん驚かれます(笑)」

そんなEV旅で試練となったのはやはり充電でした。どうしても走行距離の制約を受けてしまいます。

「SOC(充電率)が30%を切ったら充電スポットを探すようにしていましたが、地形や充電スポットの配置によっては1時間走って30分休憩というようなペースになってしまうこともありました」

ルート上に都合の良い充電スポットが見つからなかったり、あっても休止していたりして、i-MiEVで立ち寄ることを諦めた場所も。そのうちのひとつ、白川郷(岐阜県)は、どうしても行きたかったので名古屋に車を止めてバスで訪ねたそうです。

90日間の西日本編では、急速充電の回数は236回(普通充電は8回)に達しました。前半の東日本編と合わせて159日間で、計412回充電。基本的には、充電料金が安くなる三菱ディーラーを探して充電していたそうです(三菱自動車電動車両サポートサービスは今年6月の料金改定後も、三菱ディーラーでの充電はリーズナブルです)。

西日本で出会った「絶景ベスト3」は?

西日本編の絶景ベスト3を聞いてみました。挙がったのは、「佐賀のバルーンフェスタ」「鳥取砂丘」「南紀白浜」でした。

佐賀インターナショナルバルーンフェスタは例年佐賀市で開かれている世界的な熱気球のイベントです。

「じつは地元の長野でも熱気球のイベントがあるんですが、風が強いと飛ばなくて、私は2回行って2回とも見られなくて、やっと見られたんですよ。70機のバルーンが一斉に飛び立っていく様は本当に絶景でした」。

鳥取砂丘は「スターウォーズの映画を見ているような迫力で、海と砂丘のコントラストもすごくきれいでした」。3度目の訪問だったそうですが「一時期、砂が流出していたのが養浜(ようひん)事業で復活していてうれしかったです」。

そして「透き通った海と真っ白な砂浜のコントラストが見事で、時間が経つのも忘れて見入ってしまいました」というのが南紀白浜。一期一会の絶景は、旅の醍醐味ですね。

i-MiEVの生産拠点を表敬訪問

また、i-MiEVの生産拠点だった三菱自動車水島製作所(岡山県倉敷市)の訪問も、旅のハイライトだったと振り返ります。

同工場は2025年度は小学生以外は見学お断りになっています。でも「i-MiEVで日本一周しています」と連絡してみたら、「見学はできませんが、ぜひお話を聞きたいので来てください」と、表敬訪問することに。i-MiEVの製造に携わっていた技術者がいまも働いておられて「ロングトリップは励みになります」と歓迎され、楽しい時間を過ごせたそうです。

岡山では、白馬EVラリーで知り合ったi-MiEVオーナーとのランデブーも実現しました。

「倉敷と岡山の隠れ名所をあちこち案内していただきました。工場夜景ですとか、すごくきれいでしたね。i-MiEVを担当していた水島製作所のOBの方も呼んでくださって、3台で交流することもできました」

同じ車に乗っているのが縁で交遊が広がる楽しさは、EVに限らずカーライフの醍醐味ですね。権田さんは長い一人旅だったこともあって、トークタイムがうれしかったそうです。

「ずっと一人でいると、孤独感が強まってしまって。車の中でも気づいたら独り言を言ってるぐらいなので(笑)。ほんとうに楽しかったです」

電欠や脱輪などのトラブルに遭遇

大きなトラブルは、東日本編と西日本編で一度ずつ。栃木県内での電欠と、石川県内での脱輪でした。一方通行の日光・いろは坂で電欠停止してJAFに来てもらったのは「手前で充電の機会があったのに、行けると思ってしまった判断ミスです。以降の充電計画ではより慎重になりました」。

上り坂はトライしてみて無理そうなら途中で引き返せばOK(回生される)と考えるのは「EVあるある」ですけれど、みなさんも気をつけましょう。

脱輪は「カーナビに騙されて高速の出口に入りかけてしまい、急いでバックして脱輪してしまいました」。たまたま通りがかった自動車整備士に手伝ってもらって無事脱出。ただアームが曲がってしまって「帰ったら交換したほうがいいですよ」とアドバイスされたそうです。走行不能になったりしなくてなにより。ナビの案内がわかりにくい時はスマホアプリなど「セカンドオピニオンで確かめること」が必要だと学んだそうです。

また、電欠に直結することはなかったものの、ヒヤヒヤさせられたのが充電器の故障や廃止だったとか。立ち寄ってみたら使えなかった、というケースです。

「自分がインフラ関係の仕事をしていたせいかもしれませんが、社会基盤が傷んでいるのを何日も放置するのはどうかと思います。こんなことじゃ電気自動車は普及しないよなぁ、と思ったりしました。逆にアプリの表示は休止中なのに、問題なく使えたところも。他のユーザーのために、アプリやHPに『使えた』『使えなかった』と書き込むように心がけていました」

ユーザーの口コミ情報がインフラのバックアップを果たしているのは、発展期のEV界ならではの「いい話」かもしれませんが、SOC低めで利用不可に出くわした時のため息はいつも深刻。しっかりしたメンテナンスも含めて、充電インフラを充実させてほしい、というのが権田さんの感想です。

「16kWhのバッテリーしか積んでいないi-MiEVでも日本一周ができるということを証明できたのはうれしいですが、ほんとにヒヤヒヤドキドキの連続でした。何度も途中で車を止めて、どうやったら目的地に着けるか頭をひねりました。おかわり充電しておけば良かったと後悔したりとか、たまたま下り坂でなんとか乗り切ったりとか。充電器は増えてきていますが、やっぱり少ないエリアはありますし、ぜひとも均等化を図っていただきたいです」

充電スポットはどんどん新型の高出力のものに置き換えられています。それ自体は歓迎できることですが、i-MiEVのような旧式の車両は充電できないこともあったそうです。

「充電スポットはどんなEVでもスムーズに利用できるようにしてほしいと思います。今回は何とか日本一周することができましたが、次も完走できるとは限らないように感じました」

ほんとにおつかれさまでした。素晴らしい挑戦に、心から拍手を贈ります。

取材・文/篠原 知存
※記事中の旅写真は権田さんにご提供いただきました。

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この記事を書いた人

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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