日産サクラで 白馬→東京 約260kmを充電1回で走破に成功〜平均電費は10.4km/kWh!

7月下旬に長野県白馬村で開催された日本EVクラブによる『白馬EVラリー』に、日産の電気自動車(EV)『サクラ』で参加した後、ふと思い立って、ちょっとしたチャレンジをしてみることにしました。東京まで「充電1回」で帰ることです。結果は大成功。『サクラ』の電費の良さを再確認できたのでした。

日産サクラで 白馬→東京 約260kmを充電1回で走破に成功〜平均電費は10.4km/kWh!

往路の予想は白馬村まで充電2回

夏の暑い日、筆者は日本EVクラブが毎年開催している『白馬EVラリー』のスタッフをするため、日産自動車のEV『サクラ』で長野県白馬村を訪れました。毎年の恒例行事でもあり、EVで白馬村に行くときの距離感はなんとなく身体に染みついています。

『サクラ』はバッテリー容量が20kWhです。ちなみに去年はホンダ『Honda e』で白馬を往復したのですが、往復ともに中央高速道路経由で往路も復路も2回充電でした。

そこから考えると、『サクラ』だと少し慎重に走れば同じく2回充電で十分に行けそうな感じです。そんなことを思いつつ、7月21日の午後3時半頃に横浜市の日産本社を『サクラ』で出発したのでした。

往路スタート直後のメーター表示。

往路は都市高速から東名高速をまわり、海老名のジャンクション経由で中央道を走るコースで、Googleマップによれば約300kmあります。

スタート時、『サクラ』のSOCは100%で、表示上の航続距離は139kmでした。急速充電器だと、『サクラ』は30分で80%くらいまでしか入らないので、充電後の航続距離は8掛けの112kmになります。とすると、メーターの表示通りなら2回充電でちょっと余裕がある感じでしょうか。

思いのほか電費が良くて挑戦したくなる

走り出して20分ほど経った頃、SOCが90%になったにもかかわらず、残りの航続可能距離がまったく減っていないことに気がつきました。

「この調子なら予定より長く走れそうだぞ」と思いつつ、最初の充電予定場所にしていた釈迦堂PAに入ったところ、まだSOCが24%もあります。

次の双葉SAまでは下り基調なので、そのまま距離を伸ばすことにしました。再スタートしてすぐ、SOCが20%になると、「バッテリー残量低下/充電をしてください」の表示がメーターパネルに出て、SOC表示が点滅を始めました。

それでも双葉SAに着いたときには、SOCが14%と余裕でした。横浜からの走行距離は147.7km、平均電費は9.9km/kWhでした。

外気温はメーター表示で29度、エアコンは23度くらいに設定していました。ドライブモードはECOで、e-Pedalは切です。ECOモードとe-Pedalオフの組み合わせだと、アクセルを離したときに回生がないコースティングのような走りになるからです。高速道路はこの方が電費が良くなる傾向があります。

関越道経由で充電1回に挑戦

乗って行ったサクラは試乗会でも大活躍。

往路は結局、双葉SAでSOCを80%まで戻した後、安曇野市内の日産ディーラーで15分ほど充電しただけで、白馬村の宿に着きました。途中、それほどエコ運転をしたわけでもありません。

白馬村に着いたときの平均電費は9.2km/kWh。上りが多い往路の電費としてはかなり優秀だと思いました。

ということがあり、2回充電で帰るのは余裕すぎてなんだかつまらないので、復路は充電1回に挑戦しようと思い立ったのでした。

関越道経由をGoogleマップで見ると、総走行距離は約260kmです。

SOCが100%なら第1スティント(1個目の区間)は160~170km程度は走れそうです。急速充電後の第2スティントは、SOC80%として136kmです。

これなら、ちょうど中間点にある上信越道の横川SAで充電できれば1回充電で帰宅できそうです。そんな万全の計画を立てた、はずでした。

誤算からスタート

ところが。いざ帰ろうと思ったら、筆者の『サクラ』は白馬EVラリーのスタッフ車両だったため、イベント終了後のSOCは80%を切っていたのでした。誤算です。

これでは第1スティントも第2スティントも130km程度になり、計算上の航続可能距離と同じくらいになってしまいます。危険です。

それなら少し補充電を、と思ったのですが、急速充電器で充電すると『サクラ』は70%くらいからけっこうな制限がかかり、80%になると普通充電くらいしか電気が流れないことが気になりました。

実は往路の双葉SAで、他に充電している車がなかったのでおかわりをしてみたら、5分強で、78%から80%までしか増えなかったのです。約5分で2%ということは、電気量は約0.4kWh、充電器の出力は4.8kW程度しか出ていないことになります。

『サクラ』の急速充電時の上限は30kWなので、6分の1くらいです。『サクラ』のおかわり急速充電は時間とお金の浪費になりそうだなあと思ったのでした。そのために場所を占拠すれば、他の利用者の迷惑になりかねません。

そこで思いついたのが、白馬村にある温泉「八方の湯」に入りながら、備え付けの普通充電器(3kW)で充電することです。我ながら効率的だと自画自賛です。
(編集部注/八方の湯で充電中の写真を撮り忘れたのは減点10です……)

これでなんとか、SOCを86%まで戻すことができたのでした。

道の選択を間違えて上り勾配10%に

そうして白馬村を出たのは午後5時頃です。さてどうなるかと思いつつ、県道31号線を進みます。そのままオリンピック道路を経由して長野ICから高速道路に乗るのが定番です。

ところが、Googleマップの案内で走っていたらどういうわけか途中で山の中に入り、いちど国道19号線に出たものの、犀川を渡って再び山道に突入してしまいました。

あとでルートを確認すると、距離は数キロメートル短かったのですが、それよりも勾配がきつくて上りで最大10%を超えることもありました。激坂です。EVの電費にとっては過酷です。

これはまずいと思ったものの、引き返すには遅すぎました。そのまま山と谷を抜けて、ほうほうの体で更埴ICから高速道路に入りました。この区間の電費がどのくらいなのか、見ている余裕もなかったのでした。

SOC13%で第1スティントを終了

激坂で電気を消費してしまったので、上信越道ではドライブアシストを71km/hに設定して、大型トラックの後ろについていく亀の子走法に徹しました。東京までの距離を考えると、横川SAまで行く必要があります。その手前の東部湯の丸SAからだと、自宅のある杉並区まで約180kmなので、SOC80%では難しいのです。

上信越道の上りルートは佐久平まで上って、あとは下りです。まずは佐久平を超えるのが第一目標です。

『サクラ』の航続可能距離を見ていると、ナビの目的地までの距離とほぼイコールですが、上り区間ではどんどん数字が減っていきます。

それでも残り30kmのところで、航続可能距離表示が35kmになったのを境に、徐々に回復していきました。

午後7時ちょっと過ぎ、無事に横川SAに到着です。SOCは13%と、意外に余裕を残した第1スティントでした。

そこで、さあ、充電しよう、と思ったところ、高速充電なびアプリでは空いているはずの充電器に、BMWが止まっています。おかしいなと思って充電器を見に行くと、充電は終わっていました。5分ほど放置されているようでした。

数分、待っていたら、アイスコーヒーを持った男性が戻ってきて、コネクターをはずして出ていきました。モヤッとします。充電が終わっていることを周囲に知らせる表示がほしいところです。時間超過のペナルティー課金もいいかもしれません。

入れ替わりで『サクラ』の充電を開始。待っている間に食堂で腹ごしらえと思ったものの、夏休みのせいか満員で、いつもの釜飯にしたのでした。

航続可能距離が微妙に足りない

充電器の横で釜飯をかき込んで、再出発に備えます。30分で、SOCは77%まで戻りました。

この時の航続可能距離の表示は、119km。Googleマップで自宅近くの杉並区役所までを検索すると、129kmあります。

ありゃま、です。10km足りません。

「おっかしいなあ、なにか計算間違えたかなあ」と思ったのですが、表示は変わりません。

考えたところでSOCが増えるわけではないので、諦めてリスタートしました。第2スティントは最初から、71km/hで亀の子走法に徹しました。

1回充電、ミッション・コンプリート

リスタートしてしばらくすると、航続可能距離の減り方が少しずつ遅くなっていきました。関越道に入った頃には、残り距離と航続可能距離の差は5kmくらいに縮みました。

この数字の変化を見ながら、「これなら充電なしで家に着きそうだな」と、ちょっと安心したのでした。渋滞がほとんどなかったのも幸いでした。

最後、練馬ICで関越道から出て環状8号線に入ったところで、SOCが10%を切り、航続可能距離の表示が出なくなりました。でもここまでくればなんとでもなります。たぶん半径数km圏内に急速充電設備があるはずです。確認はしてませんが。

そんなわけで、午後9時35分頃に自宅近くの日産ディーラーに到着したのでした。到着時のSOCは4%。ミッション・コンプリートです。なかなか楽しいチャレンジでした。

復路の総走行距離は249.8km、平均電費は10.4km/kWh。充電含めて、4時間半で白馬から戻ってきたことになります。優秀です。

電費が悪けばもう1回充電が必要になって30分以上のロスが出るはずで、スピードを出して短縮できる時間と充電時間を天秤にかけると、白馬くらいなら電費優先の方がメリットがあることが、改めてよくわかったのでした。

充電1回で白馬から東京走破に成功。自宅近くの日産ディーラーに到着しました。

ガソリン車でも所要時間は変わらない?

ちなみに、渋滞なしの状態で白馬から東京までをGoogleマップで調べると、3時間50分くらいです。休みなしで一気に走りきれば別ですが、260kmあれば一度は休みをとりそうです。ご飯を食べて30分休めば、約4時間半です。

だとすると、内燃機関の車でも軽EVの『サクラ』でも、トータルの所要時間はあまり変わらないのかもしれません。狭い日本、そんなに急いでどこへ行く、です。

そして、なんかこう、バッテリー容量の最適解も少し見えたような、見えないような、フワっとしたものも涌いてきたのでした。コストも設置場所も含めてできるだけ効率的に充電インフラを整備するにはどうしたらいいのか、その時のEVの性能はどういうものが考えられるのか、などですね。

車は人の趣味嗜好も反映されるので一概には言えませんが、政策を考える上では、最適なバランス点は想定しておいたほうがいいと思うのです。

そんなことも感じた、白馬ー東京充電1回チャレンジでした。次は『サクラ』で、白馬までの往路1回充電にチャレンジしてみようかなとなどと思っている今日このごろなのでした。

●日産『サクラ』 白馬⇒東京 充電1回チャレンジ DATA

走行距離 249.8km
平均電費 10.4km/kWh
走行時間 4時間25分
充電 横川SA/30分
スタート時SOC 86%
横川SA到着時SOC 14%
横川SA出発時SOC 77%
杉並区到着時 SOC 4%

取材・文/木野 龍逸

この記事のコメント(新着順)3件

  1. エアコンについて記載ないけど使っても多分いけるし、この時期は使わないで移動なんて無理じゃね?実際サクラを使ってる自分の感触とそう違わない良い記事だと思うけど。

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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