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出力とトルク、加速の関係
自動車の性能を表す指標には動力性能、安全性能を始めさまざまなものがありますが、こと加速に関して言うと、出力(最大出力)とトルク(最大トルク)があります。出力はkW(キロワット)や「馬力」であらわされ、トルクはNm(ニュートンメートル)やkgf·m(キログラムメートル)であらわされます。1馬力は0.7355kWであり、1kgf·mは9.80665Nmとなります。うーむ細かくなってきましたね。本記事では、国際標準であるSI単位系を尊重して、出力はkW、トルクはNmで表記していきたいと思います。馬力もkgf·mも計算で変換できますので、ここでは忘れてしまいましょう。
出力とトルクはどのように違うのでしょうか?すごく簡単に説明してしまいましょう。重いものを押して動かすところを想像してください。動かすのに必要な力がトルクで、力を加えて動かした距離が出力です。車は非常に重いので、動かすのにパワーが必要になりますが、出力が大きい=一定時間に速く移動できる、ということになります。しかし、出力の大きい車は信号待ちからのスタート(発進加速)が常に速いわけではありません。なぜなら、車のスペック・諸元においては、出力もトルクも最大値が記載されているからです。エンジンで動く車の場合、停止状態から発進する時点ではエンジンの回転する速度が遅く、出力もトルクも最大値よりは低くなるからです。単純には比較できないのです。
一般的な見方としては、最大トルクが大きい車は、発進するときの加速も大きくなる傾向にあると言えます。トルクは「力」なので、止まっているものをグッと動かして発進させる場合、力の強いほうが速く加速できるわけです。実は、電気自動車やPHEVの加速がよく感じられるのは、このトルクが低速でも大きいためですが、スペック表などからは確実に知ることはできません。
加速はどうやって計る?
通常車を運転していて、「この車速いなー」と感じるポイントは、発進加速と追い越し加速ではないでしょうか。このうち、発進加速については測定方法が比較的グローバルに決められており、単純に比較が可能です。発進加速は時速0km(停止)から時速100kmまでの加速にかかる時間であらわされ、短いほど加速のよい車ということになります。
この加速は0-100km/h(数字は異なりますが、米国では0-60mph)と呼ばれていますが、比較する際にはメーカー公称値を使います。というのは、加速はいろいろな方法で行うことができ、測定方法によって多少のばらつきが出るからです。詳しくは省略しますが、例えばブレーキを踏んだ状態でアクセルをいっぱいに踏み込み、エンジンの回転数を最大トルクを発揮できるポイントに保ってからブレーキを離して発進すると、車は傷んでしまいますが、最も速く加速できます。
0-100km/hは通常の車の場合10秒くらいかかることが多いので、真の意味での発進加速とはちょっと異なります。10秒間もアクセル踏みっぱなしにして100km/hまで加速したりはあまりしないですよね。実は、エンジンの車の場合、発進時には最大トルクの70%くらいしか発揮できないのに対し、モーター搭載車では最大トルクが発進時から発揮できます。
電気自動車/PHEVとガソリン車の加速・0-100km/h比較
実際にコンパクトカーからSUV(スポーツタイプのジープ形の車)、スポーツセダン(最低4名乗車でトランクがある)まで、電気自動車/PHEVから代表的車種を7車種、ハイブリッド/ガソリン車から代表的車種を7車種ピックアップして、データを並べてみました。中には公式データが存在しない場合もありますので、分かる範囲で調査したデータとなっています。間違いがありましたらお知らせいただけますと幸いです。
データの見方ですが、エンジンとモーターのパワーを同時に使える車(PHEVでもハイブリッドでもそういう機能を持っているものがあります)の場合、出力やトルクを単純に足し算して求めることはできません。走行状況に合わせて、エンジンとモーターは自動的に制御されますので、総合出力・総合トルクというものがあります。これは、実質出せる出力の最大値となります。総合トルクを開示していないメーカーの場合は、それぞれのトルクをa+bのように記載してあり、前の数字がエンジンの最大トルク、後ろの数字がモーターの最大トルクです。またフロントとリア両方にモーターを搭載している場合、トルクは合計で掲載していますが、このトルクを実際に発揮できるわけではなく、モーターの性能だけをあらわしています。実際の性能は、バッテリーとモーター、そしてバッテリーからモーターに電力を供給するインバーターの能力で性能が決まります。
1 | 電気自動車/PHEV | 出力 | トルク | 0-100km/h |
---|---|---|---|---|
2 | 日産リーフ | 80kW | 254Nm | 11.5秒 |
3 | トヨタプリウスPHV | 100kW(総合) | 141Nm+207Nm | 11.4秒 |
4 | 三菱アウトランダーPHEV | 150kW(総合・推測) | 190Nm+332Nm | 11秒 |
5 | BMW i3 | 125kW | 250Nm | 7.2秒 |
6 | テスラモデルS 70D | 245kW | 525Nm | 5.4秒 |
7 | ポルシェパナメーラS E-ハイブリッド | 306kW(総合) | 590Nm(総合) | 5.5秒 |
8 | テスラモデルS P85D | 376kW | 967Nm | 3.3秒 |
9 | ||||
10 | ガソリン/ハイブリッド車 | 出力 | トルク | 0-100km/h |
11 | 日産ノート(2WD) | 72kW | 142Nm | 11.8秒 |
12 | トヨタ86 | 147kW | 205Nm | 7.6秒 |
13 | トヨタハリアーハイブリッド | 145kW(総合) | 206Nm+409Nm | 7.5秒 |
14 | スバルWRX STI | 227kW | 422Nm | 5.2秒 |
15 | BMW M3/M5 | 317kW/412kW | 550Nm/680Nm | 4.3秒/4.3秒 |
16 | ポルシェ911 カレラ/ターボ | 272kW/397kW | 450Nm/660Nm | 4.2秒/3.0秒 |
17 | 日産GT-R | 404kW | 632Nm | 2.7秒 |
一つだけ例を挙げてもう少し詳細に見てみましょう。トヨタのスポーツカー「TOYOTA 86 GT」は上の表によると0-100km/hは7.6秒とあります。ドイツの車関連サイトAutoBild.deは0-50km/hも計測しており、2.8秒とのこと。リーフは0-100が11.5秒で0-50は3.8秒、i3は0-100が7.2秒で0-50は3.0秒。もちろん最新スポーツカーの86のほうが速いのは当然ですが、電気自動車であるリーフやi3も結構いい線行っていますね。
さてどうでしょうか?実際にリーフやアウトランダーPHEVに試乗してみると、発進加速が良く感じます。その理由は、発進時からモーターのトルクの恩恵を受けられるからなのですね。しかし0-100のタイムはそれほどでもない、ということなのです。0-50のように、より短い時間で比較してみると、出足がクイックに感じるのを数字で確認することができます。またモデルS P85Dは0-100が3.3秒、0-50は1.3秒で、ポルシェ911のターボでなければ時速100kmまでは追いつくことができない(もちろんそのあとは911のほうが速いです!)という事実。これから高性能車メーカーは、スタート時の性能を稼ぐためにハイブリッド化・電動化を進めていくことになるでしょう。
同じ三菱のeKスポーツからアイミーブMに乗り換えましたが…元鉄道マニアとして「気動車から電車に乗り換えた」くらいの違いを感じました。
都会の電車は発進加速が強く、田舎の気動車(ディーゼルカー/レールバス)は電車に比べれば弱いですからね。
理由はもちろん、モーターが低回転から最大トルクを発するのに対してエンジンは高回転まで回さないと十分なトルクを発揮できないことにあります。
これは自動車も鉄道も物理的に同じ陸上交通機関だから違いはあるまい。
しかも減速時の様子も同じ。鉄道の電車は架線を通じて他の電車に電力供給する形で回生していますが電気自動車は架線がないからバッテリーへ戻すことに。
これも気動車にはない特技であります。
※クルマも鉄道も好きな自分、調べれば調べるほど同じ陸上交通機関として車も鉄道も大差ないと実感しました。
やはり低回転からトルクが出る特性が大事ですよねぇ。
アイミーブMでもDレンジだと発進加速が強烈なので少し踏んだだけでも後ろのクルマが簡単に遠ざかってしまいます。
狭い道から広い道へ出るときも発進加速のよさがあるため楽です。
ただEcoレンジにすると結構踏まなければ加速しませんが…でもガソリン車の流れに合わせやすいので普段はこうしています。
多分この発言をした人は一部の特殊な走り方を見ただけで判断している可能性があるため一概には言えませんが、電気自動車に乗ると大概の人は加速の良さに驚くはずですよ。
ヒラタツ様、
>気動車から電車に乗り換えた
なるほど!分かりやすい表現ですね。
>電気自動車に乗ると大概の人は加速の良さに驚くはず
現時点のガソリン車もディーゼル車も、何とか低速でパワーが出ない問題を解決しようとして苦労に苦労を重ねた結果、かなりのチューニングを施していると思います。ですので通常の信号待ちなどで発進するだけでは加速の良さ、レスポンスの良さを実感するのは難しいのだと思います。逆に私が電気自動車の凄さを感じるのは、一時停止のあとの発進や、微妙な速度制御が必要な場所(人通りの多い繁華街やかなり混雑して車間距離が狭くなっている高速道路)、踏み切り、駐車するときの速度制御です。これらの良さを実感するには、やはり1日くらい乗り回さないと分かりづらいかも知れませんね。
はじめまして、
KAZUMIRRと申します、教えてください EV車の航続距離とバッテリーの関係ですが、リーフのバッテリー容量が25kwhくらいときいてますが、50km/hの定速で5kwの出力が要したとすると、4時間ほど走れ、距離は200kmほどとおもいますが、最高出力で走り続けると、10分くらいで走れないと思いますが、どうでしょうか?
まt、ノートEパワーは、モーター出力がリーフと同じなのに、ノートはバッテリー容量が非常に小さい、モーター最高出力はどこから電力を得てるのでしょうか?
前田様。お世話になっております。
>最高出力で走り続けると、10分くらいで走れないと思います
そうですね、フルパワーで何分走れるかはサーキットで試してみないと分かりませんが(アクセル踏み続けてスピードリミッター効いてる状態で走り続けるってことですよね?)、おそらく10分以上は持ちそうに思います。140km/hでしたっけ。あまり根拠のない計算で恐縮ですが、140キロでの走行が100キロの2倍のパワーを必要とすると仮定し、100キロでの航続距離が24kWhリーフでは134km程度ですので、その半分、すなわち67kmくらい。約28分くらいではないかな??と思います!
>モーター最高出力はどこから電力を得てるのでしょうか?
バッテリーからです。バッテリーは、いろんな種類があり、車種によって全く違う性能のバッテリーが搭載されています。ノートe-Powerのようなハイブリッド車の場合は、ピークパワーを出しやすい、しかし容量は少なくて、かつ場所を取るような電池が使われます。逆に、電気自動車では航続距離が一番の優先事項。すなわち、場所をできるだけ取らない電池が選択されます。
電キャブ16乗りです。
回生電力は1回充電で約2kw 、電費7.4km程なので走行可能距離100kmのうち1割は稼いでいる計算ですがそもそも100%充電で走行可能距離110km表示で出発しているので
回生電力分が無ければ80kmも走れないでしょうか?
もっとも、下り坂なのにアクセルを踏まないとならないような状況ではNポジションで消費を押さえるようにしています。
今年の夏に買った私の電キャブ、どのポジションでも回生の強さに体感できる差がないのですが
リコール対応の後ではBポジションでも回生が弱くなっているのでしょうか。
maehiro様、コメントありがとうございます。実際にお乗りの方のコメントは大変参考になります。電キャブ16で110kmくらいですか。Nポジション=コースティングで消費を抑えるのは皆さんやってますね。私はアクセルペダルを調整して0kWにするみたいなことはやったりしています。回生の強さについては、i3とモデルSは強力ですが、他のメーカーは弱めになっていっているようですね。強のほうが、今のユーザーには電費もよくなりますしベターだと思うのですが、エンジン車から移ってきた人に合わせちゃっているのだと思います。回生なんか1週間も乗れば慣れるんじゃないかとも感じますが。
EVsmart様 お世話になっています。
12型のi-MiEV G 乗りです。
リコールでプログラム書き換え後回生ブレーキが弱くなり加速(瞬発力)も悪くなりました。
これではもうi-MiEVはエコランする人にしか売れません。
残念!
猫だワン様、そうだったのですね。エコランする人も元気よく走る人もいるのですから、モードで切り替えができたりすると便利ですね。回生は強くないと不便だと思います!
こんにちは、テスラモデルSに興味がありこちらを興味深く拝読させて頂いております。
私自身は、マツダクリーンディーゼルを利用しおりますが友人がリーフを利用しており、
BEVの良さを伺っております。
さて、リーフの加速能力ですが他のサイトなどの情報ですと0ー96kmの加速では、7秒前後と
いう情報がございますいかがでしょうか。
今度友人のリーフで計測を行おうかとも思っています。
他に2点伺いたいと思います。
テスラモデルSにおけるオートクルーズシステム・自動運転機能に凄く興味があります。
是非、今度詳しく取り上げて頂きたいと思います。
もう1つは、ナノフローセルのBEVをどのように思いますか。
私は、もし販売されるよであれば購入したいと思いますが、テスラに及ぶものになるかは疑問ですが面白いと思っています。
どうぞよろしくお願いします。
FRB様、お世話になっております。コメントありがとうございます!
そうですね、0-96km/h(米国基準)と0-100km/h(日本基準)で異なる数値が出たり、サーキットではなく傾斜が読めない公道などでテストされていたり、正確な計器ではなくスピードメーターで計測されていたりするデータが非常に多いと思っています。そのため、公式発表データである11秒台をある程度信用したほうが良いかと思います。別にスペックを悪く公表する必要はないですからね。またバッテリーは満充電と空では電圧が異なるため、満充電時の計測なのか空の計測なのかによっても異なります。ちなみにテスラは満充電時の計測のようです。
テスラの自動運転機能、いろいろ試したいのですが、私の車は昨年の9月納車なのでオートパイロット非搭載なのです(爆 現時点では、多くの車両に標準で備わっている自動ブレーキ、ブラインドスポット検出、レーダークルーズコントロール、レーン逸脱警告程度ができるのみです。将来的には、ウィンカーを出すだけで自動車線変更、自分の敷地内で(米国は家と土地が大きいですからね)自動車庫入れと自動お出迎え、また自動充電ケーブル接続などができるようになるとされています。
ナノフローセルBEVは、将来の一つの技術として面白いと思います。研究が進み、重量エネルギー密度・体積エネルギー密度・寿命・電解液の交換性がバランス良くなればリチウムイオンを駆逐するかも?知れません。
http://www.nanoflowcell.com/quant/quantino/
これを見る限り現時点では、100kW(リーフが80kWですからミッドサイズガソリンセダンくらいのパワー)、1000km走行可能で、電解液容量が175リットルが2個ですから350リットル・350kgくらいでしょうか。長さ3m x 幅1mのタンク1個に換算するとタンクの高さは液体だけで12cm。入れ物に入れる必要があるのでもっと高くなると思いますが、ギリギリ載せてる感じだと思います。問題なのは電解液の交換ではないでしょうか?350リットルというと大型マンションの1620お風呂が大体300リットルですから、どのくらいの液体を入れ替えないといけないか、、ってところでしょうか。これを専用のスタンドで抜いて入れ替えるわけですね。