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テスラの本場アメリカ訪問記【02】ギガ・テキサス訪問とロボタクシー試乗でテスラのアドバンテージを実感

テスラの本場アメリカ訪問記【02】ギガ・テキサス訪問とロボタクシー試乗でテスラのアドバンテージを実感

テスラの最前線を体験するアメリカ訪問記。前回はサイバートラックでスペースX社のスターシップ発射台のあるスターベース(テキサス南部のボカ・チカ)までFSDで往復したことをレポートした。今回はテスラの本社工場「ギガ・テキサス」の訪問とテキサスでテスト運行するロボタクシーの体験について紹介したい。

目次

テスラの本社工場「ギガ・テキサス」は圧倒的なスケール

今回の旅ではテスラの本社工場「ギガファクトリー・テキサス(ギガ・テキサス)」を訪問することができた。イーロン・マスク率いるテスラは、2021年に本社をカリフォルニアからテキサスへ移転し、ギガ・テキサスを新たな中核拠点に据えたことは記憶に新しい。この巨大工場は、単なる自動車の生産組み立て工場ではなく、テスラのイノベーションの屋台骨で、2021年の着工からわずか2年でモデルYの量産を開始した。

画像提供元:Tesla, Inc.

訪問した印象は、とにかくスケールが大きいということだ。駐車場や建物まで、これまでフリーモントや上海工場も見てきたが、桁違いの大きさだ(敷地面積ではギガ・テキサスが上海の約8倍)。

工場の正面玄関まで、ゲストパーキングから車で10分以上かかる。ギガ・ファクトリーの名称からあるように、テスラの工場は垂直統合を徹底しており、バッテリー生産から車両の最終組み立てまで一貫して行い、サプライチェーンのリスクを最小化、同時に迅速な開発やコスト効率の向上に役立っている。ちなみにカリフォルニアのフリーモント工場は車両の組立てだけなのでギガ・ファクトリーとは呼ばれない。

現在は同社主力のモデルYとサイバートラックを生産し、生産能力は37万5000台以上、2025年は50万台に達すると予想されている。先日の株主総会でイーロンは来年4月からロボタクシー専用モデル「サイバーキャブ」も量産開始になると発表、人型ロボット「オプティマス」の試作もギガ・テキサスで進む。このように、テスラの最先端テクノロジーが集まる工場がこのギガ・テキサスだ。

エントランスに展示されるモデルYのモックアップ。

エントランスに到着するとモデルYのモックアップが迎えてくれる。これを見ると車がどのような部品で構成されているかわかる。そして、奥に進むとギガ・テキサスのフォトスポットになっているネオンのサイン(冒頭写真)があり、オプティマスが展示されている。ブリーフィングルームではギガ・テキサスの概要が分かる動画を見たり、訪問記念としてウォーターボトルが配られたりもした。

巨大なダイキャストマシン。画像提供元:Tesla, Inc.

ギガ・テキサス、さらにテスラの製造で最も象徴的なテクノロジーの見どころは「ギガプレス」だろう。これはイタリアのIDRA社製の超大型ダイキャストマシンで、テスラが開発した独自の製造工程を実現した。

従来の自動車製造では、車体の下部フレームを作るために数百のパーツを溶接などして組み立てる必要があったが、テスラはこれらアルミ合金を一気に6,000トン級の圧力で注入し、単一の巨大パーツとして成形する。これにより、部品点数が大幅に削減され、組み立て時間を短縮し、生産効率が飛躍的に向上した。多くの自動車メーカーが利益の出るEVを作ることに苦慮している中、テスラは垂直統合やギガプレスのようなテクノロジーによって中国メーカーとも渡り合えるコスト競争力を作り出してきた。

工場のゲスト受付の横のスペースには、ギガ・テキサスが開業イベント「サイバー・ロデオ」のプロモーションで使った「Texas Long Horn Model Y」や、初代ロードスター、サイバートラックなどが展示してあり、ギガ・テキサスの歴史とカウボーイ文化を感じ取ることができた。

サイバーロデオでお馴染みのモデルY。

テスト運転中のロボタクシーに乗車体験

テキサスではテスラがオースティンでテスト運転を行うロボタクシーにも乗車することができた。現在は2025年6月からモデルYをベースにしたサービスがローンチし、サービスエリアを拡大している。筆者が泊まっていた空港近くのホテルもサービス圏内であり、市内に行く際に利用した。現在、サービスはソフトローンチの段階にあり利用できるユーザーは限られているが、徐々に対象ユーザーとエリアを拡大しているようだ。

使い方は海外でウーバーなどのライドシェアを使ったことがある人ならわかると思うが、専用アプリで行き先を設定すると近くにいるロボタクシーが迎えに来る。アプリには金額とあと何分で到着というようなETA(予定時刻案内)が表示され到着を待つ。

ロボタクシーが到着したら、乗り込んでリアモニターに表示されるスタートボタンを押すだけだ。現在は助手席に安全監視員が座っているが、特に操作や介入をするわけではない。実際のロボタクシーの乗車については以下の動画にまとめているので参考にしてみてほしい。

市内まで大体20分程度のドライブで、乗車した印象はこれまでFSDで体験したように、運転はスムーズ。危険や不安を感じることはなく、人間の運転より安定してスムーズだ。

完全自動運転によるサービスは実現間近であると実感

リアモニターではYouTubeなどのエンタテイメントを選んだり、必要があればサポートセンターと会話したりすることができる。今後は2025年末までに安全監視員を排除して無人モードになることを目指しているとのこと。テキサス以外にもサンフランシスコでも試運転中で、ネバダ、フロリダ、アリゾナでも許可を取得している。

テスラのロボタクシーは、テスト運転によってサービスの下地を作りながら、2026年にはサイバーキャブが専用モデルとしてデビューする計画だ。これまで、テスラコミュニティーではこのサイバーキャブにハンドルとペダルをつけて、従来言われていた「モデル2」のようなモデル3よりさらに一回り小さいモデルを作るのではないか?(いや作ってほしい?)と噂されていたし、先日の株主総会でも2番目に多い質問であった。しかし、総会でもイーロンは改めて、サイバーキャブがハンドルもペダルもない完全な自動運転車で、このプラットフォームを使ったモデル2のようなさらに小型のモデルとする可能性を否定していた。

このように、2026年はロボタクシーの本格的な稼働、サイバーキャブの生産開始やオプティマスなど、従来にない製品の発表が続いていく。現地での体験によって、テスラはAI自動運転にフルコミットしていることを感じた。

オープンで明るい雰囲気のテキサス

テキサスは個人的にも初訪問だったが、イノベーションにオープンな雰囲気を感じたし、テスラが本社機能をここに移した理由がよく理解できた。

市内ではカリフォルニアと同じように、たくさんのテスラが走っていて、ダウンタウンも西海岸とは違ったカラフルさと活気がある。テキサスという土地柄か、リビアンのEVピックアップも多く見かけたし、ウェイモもたくさん走っているのが印象に残った。

次回は、テキサスを後にしてロサンジェルスに移動。FSDをフル活用してLAの観光名所を巡り、ハリウッドにオープンした「テスラ・ダイナー」などを訪問したレポートをお届けする。

文/前田謙一郎Youtube / x.com

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この記事を書いた人

テスラ、ポルシェなど外資系自動車メーカーで執行役員などを経験後、2023年Undertones Consulting株式会社を設立。自動車会社を中心に電動化やブランディングのコンサルティングを行いながら、世界の自動車業界動向、EVやAI、マーケティング等に関してメディア登壇や講演、執筆を行う。上智大学経済学部を卒業、オランダの現地企業でインターン、ベルギーで富士通とトヨタの合弁会社である富士通テンに入社。2008年に帰国後、複数の自動車会社に勤務。2016年からテスラでシニア・マーケティングマネージャー、2020年よりポルシェ・ジャパン マーケティング&CRM部 執行役員。テスラではModel 3の国内立ち上げ、ポルシェではEVタイカンの日本導入やMLB大谷翔平選手とのアンバサダー契約を結ぶなど、日本の自動車業界において電動化やマーケティングで実績を残す。

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