日本の電気自動車普及は小型商用EVから本格化する? 購入可能な車種をまとめてチェック

ホンダ『N-VAN e:』が10月に発売されますが、現在でも日本国内で購入&リース可能な小型商用EVのバリエーションは意外に豊富です。はたして、今、日本国内でどんな小型商用EVが買えるのか。特長やリースの問い合わせ先など、各車の基本情報をまとめてご紹介します。

日本の電気自動車普及は小型商用EVから本格化する? 購入可能な車種をまとめてチェック

三菱 ミニキャブEV

三菱では2011年にBEVモデル「ミニキャブMiEV」をリリースしました。約10年に渡って生産・販売したのち、2021年には一時的にラインナップより姿を消しましたが、2022年11月に販売を再開。さらに1年後の2023年11月にはパワートレインや搭載バッテリーを一新させるモデルチェンジを実施、車名も「ミニキャブEV」へと改められて現在に至ります。

ミニキャブEVは容量20 kWhのリチウムイオン電池を搭載する「CD 20.0kWh」グレードのみ展開されており、4シーターと2シーターが選択できます。駆動方式は出力41 hp(31 kW)の電動モーターを搭載する2WD(後輪駆動)、最大トルクはかつて販売されていた同形式のガソリンターボモデル(86 Nm)よりもはるかに高い195 Nmを誇ります。一充電航続距離はWLTCモードで180 km。

価格は2シーターが243.1万円、4シーターが248.6万円から。ディーラーで通常通り購入できるほか、三菱では自社のリースプラン「三菱ウルトラマイカープラン」を用意しており、車検やメンテナンス、各種税金、そして任意保険(対人・対物・人身無制限)が含まれています。ミニキャブEVの4シーターであれば5年リースで月額4万8290円(条件:21歳以上)でリースできます。

【三菱ミニキャブEV/リース問い合わせ先】
法人業務部リース営業グループ 0120-989-651(通話料無料)
公式サイト

日産クリッパーEV

日産クリッパーEVは三菱が製造するミニキャブEVと基本的に同一で、三菱が日産へOEMとして供給しているモデルになります。

2024年2月12日に発売された日産クリッパーEV日産クリッパーEVは「ルートバン(Bピラーより後ろの窓ガラスがすべてボディパネルになった2シーター)」、「2シーター」、そして「4シーター」の3グレードで展開、それぞれメーカー希望小売価格は286万5500円、291万2800円、292万500円となります。ミニキャブEVで後部が窓ガラスの2シーターモデルを欲する場合は6万1050円でメーカーオプションとして装備できますが、日産クリッパーEVでは標準で設定されている形です。

日産クリッパーEVをリースしたい場合は、最寄りの日産自動車販売店かお客様相談室にお問い合わせください。

【日産クリッパーEV/リース問い合わせ先】
日産自動車お客様相談室
0120-315-232(通話料無料)
公式サイト

HWエレクトロ「ELEMO」シリーズ

ELEMO

輸入車としては初の軽貨物EVとなる「ELEMO-K」などを販売する「HWエレクトロ」では、お馴染みの「CEV補助金」に加え、事業者向けに環境省が提供している「脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金」を活用したリースプラン「HWEカーリース」を展開しています。

HWエレクトロでは現在、小型貨物車のトラック「ELEMO」、ELEMOベースの軽貨物車「ELEMO-K」、そして2023年にローンチされた全長5.4メートルのバン「ELEMO-L」の3車種を取り揃えています。最も安いELEMO-Kのピックアップモデルであれば、3年リースで月額9800円という破格の値段からリースが可能です。ボックスタイプは3000円高い月額1万2800円となり、フリートの電動化を進めたい事業者にとっては魅力的な価格設定となっています。小型貨物車登録のELEMOであればピックアップが月額1万3800円、ボックスが1万5800円、そしてバンのELEMO-Lが月額2万9800円となります。

ELEMO-L

非常にお手頃なリースプランですが、一方で政府による補助金を活用した残価設定型のプランであり、補助金が枯渇次第終了するとしています。また、一般的なリースプランに含まれている車検費用や任意保険はプランに含まれていません。とはいえ、それを考慮しても純電動の軽貨物車が月々9800円から運用できるのはかなりお得ではないかと思います。

【HWエレクトロ/問い合わせ先】
HWEカーリース 0120-466-062(通話料無料)
公式サイト

ASF2.0

EVベンチャー「ASF」が展開する軽商用EVの「ASF 2.0」は2021年に佐川急便が配送用途に約7000台の導入を発表したことで大きな話題となりました。内外装の設計には佐川急便のドライバーからの意見が反映されており、徹底的に配送用途に適したBEVを目指して作られました。

紆余曲折を経て2023年に販売を開始、現在では佐川急便以外に薬局チェーン店「マツモトキヨシ」や清掃サービスを提供する「ダスキン」が導入を進めている状況です。ASFはいわゆるファブレスメーカーで、実際の製造は中国の自動車会社「柳州五菱」が請け負っており、厳密には輸入車という扱いになります。

2023年7月にはコスモ石油のリースプラン「コスモMyカーリース」での取り扱いが始まりました。コスモMyカーリースが提供するASF 2.0向けプランではメンテナンスなしの「ホワイトパック」、そしてフルメンテナンスの「ゴールドパック」の2種類のプランが選択可能です。また、自家用登録と事業用登録でリース料金も変わるとしていますが、これは先述のHWEカーリースでも適用される環境省の補助金を考慮するか否かによります。

自家用車の場合、「フルメンテナンス・月間走行距離1000 km・6年リース」で月額3万9490円となります。なお、この額面に適用されているCEV補助金は令和5年度分の金額である55万円ですが、2024年3月19日に発表された令和6年度分の金額は45万円と決定したために注意が必要です。また、環境省の補助金が適用できる事業用登録の場合は同条件で月額2万9370円と案内しています。

ちなみにASF 2.0の販売価格は公表されていませんが、CEV補助金を担当する一般社団法人 次世代自動車振興センターに届け出られた定価は237万円と記載されています。

コスモMyカープランが他のリースプランと比べて特徴的である理由のひとつに「ゼロカボプラン」が挙げられます。これはベースとなるカーリースに加え、コスモ石油の電気料金プラン「コスモでんきグリーン」、そして充電器の設置をひとまとめに提供するもので、エネルギー会社ならではの要素と言えるでしょう。

【ASF2.0/リース問い合わせ先】
コスモMyカーリース
0120-530-372(通話料無料)
公式サイト

フォロフライ「F1V」など

京都府に本拠地を置く「フォロフライ」は、中国の国営自動車メーカー「東風汽車集団」傘下の「東風小康」が生産する商用BEVを日本向けに輸入し、販売を行っているベンチャー企業です。

現在は「EC35」がベースのバン「F1V」、そして同じECシリーズ車種GAベースのトラック「F1T」の2車種を販売しています。欧州で一般的なType2の普通充電に対応するベースモデルが410万円で販売されており、その上に日本で一般的なCHAdeMO(急速)/Type1(J1772)方式や、パーキング(P)レンジやESC(横滑り防止装置)を搭載する上位モデルがラインナップされてます。

搭載するバッテリーは全モデルともに容量38.7 kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池(5年間・12万キロメートルの保証)。航続距離はF1Vで268 km、F1Tが215 kmとなります。どちらも後輪に出力80 hp(60 kW)、最大トルク200 Nmのモーターを搭載する後輪駆動(RR)です。

フォロフライから直接購入できるほか、同社に出資する丸紅の100%子会社「丸紅オートモーティブ」も販売チャンネルとしてフォロフライ各車種を販売しています。また、各種リース会社を通してリース契約にも対応しています。

完成車を中国から輸入しているファブレスメーカーの場合、日本向けに道路運送車両法で定められている保安基準に適合させただけと思うかもしれませんが、フレームやビームの補強、パーキングレンジの追加搭載など、想定される過酷な用途でもしっかりと仕事をこなせるように改修が行われています。メンテナンス等アフターサポートも三井住友海上火災保険系列のネットワーク「アスクネット」や「アドバンスクラブ」に加盟する全国の整備工場で対応できる体制を構築しています。

2021年10月から現在までに150台弱を販売、うち7割がバンの「F1V」シリーズとフォロフライは言います。これまでにかじ取り装置のダストカバーなどのリコールはありましたが、このほかに致命的な故障やトラブルは発生しておらず、信頼性の高さに自信を見せています。

なお、フォロフライは2024年3月30~31日に東京ビッグサイトにて開催された「E-Tokyo Festival 2024」にて、次に導入予定の新たなモデルもお披露目しました。新たに導入されるのは2トントラックで名前は「F2」。2025年以降の発売を予定しているとのこと。会場で展示されたのはまだプロトタイプの段階で、これから日本導入に向けた改善作業を行っていくそうです。

【フォロフライ問い合わせ先】
問い合わせフォーム
公式サイト

もうすぐ発売予定の小型商用EV

今年中に発売が予定されているのは、N-VAN e:だけではありません。さまざまなEVベンチャーからも新たな小型商用EVが登場予定。概要などを紹介します。

アパテックモーターズ「TX200L」

2023年から福島県大熊町にちなんで命名された「大熊Car(TX200)」を販売するアパテックモーターズでは、貨物タイプの「TX200L」を展開。2024年中にはTX200を軽自動車の規格に収まるように設計した軽自動車モデルを発売予定。

アパテックモーターズもいわゆるファブレスメーカーですが、福島県大熊町における組立工場開設も年内の本格稼働に向けて着々と進めているとのこと。

アパテックモーターズ自体は自社で直接販売しておらず、大手リース会社と提携、リース形式で各々の法人が活用している形となります。現在はメンテナンスを請け負っている整備工場が埼玉県春日部市にある1拠点のみなために顧客層も関東を中心としているものの、今後は保険会社と提携する整備工場などを多く取り込み、日本各地での導入を目指していくとのこと。リース料金も保険やメンテナンス込みで月額4万9800円とのことですが、これは実証実験の意味合いも込められているとしています。

【アパテックモーターズ/問い合わせ先】
アパテックモーターズ株式会社 IR担当
TEL: (03)5464-8623
●メール info@apatech-motors.com

EVモーターズジャパン「E1/E2」

大阪万博に向けてEVバス100台を納車(関連記事)するなど商用EVに意欲的なベンチャーであるEVモーターズ・ジャパンでは、2024年内にラストワンマイルEV物流車「E1/E2」の2車種の発売を予定しています。

E1(GVW 3.5t、1t積 、全長5.38m、航続距離240km)
E2(GVW 5t、2t積、全長5.9m、航続距離200km)

E1/E2は大容量バッテリーと世界最高クラスの低消費電力システムを搭載し、長距離走行を可能としています。バッテリー劣化と電力消費の増大という悪循環を引き起こしていたこれまでのインバータに対して、同社が開発したインバータは電池の劣化予測・出力最適化制御をバッテリーマネジメントユニット(BMU)が行い、アクティブ・インバータにてダイレクトモーター制御。マイクロ秒単位でのリアルタイムトルク制御が可能で、発進、坂道走行、走行時加減速において、電池消費をコントロールし、極力ピークが発生しないようにスムーズな出力制御を実現しました。バッテリーの長寿命化と航続距離の延長を実現しています。

車室内は作業効率を考慮した設計で1トン積みのE1では120サイズの段ボールが約140個、2トン積みのE2では同じく約160個の積載を可能としています。室内高は立って作業ができる十分な高さ2.1mを確保しつつ、フロア高44cmの低床設計としており、車外からの積込みや積降しも負担が少ないように配慮されています。

また、いずれも普通免許での運転が可能ですが、平成29年3月12日以降に免許取得をした方は「E2」(GVW 5t)の運転に関しては「準中型免許」が必要となります。オプションにてコンテナに座席を搭載し、乗合バスや小型コミュニティバスとしても運行できる架装も可能としています。

【EVモーターズ・ジャパン/問い合わせ先】
[本社/ショールーム] 093-752-2477
[西日本営業部] 092-477-5025
[東日本営業部] 03-6275-2360
問い合わせフォーム
公式サイト

タジマモーターコーポレーション「TVC-700」

数々の国際レースで優勝をはじめとする輝かしい戦績を残してきたモンスター田嶋氏率いるタジマモーターコーポレーションからは、7月にワンボックスタイプで完全5ナンバーサイズの商用バン「TVC-700」が発売されました(後日詳報記事公開予定)。定価は444万円で補助金(R6.4.1以降の登録車)は35万円です。

TVC-700は全長×全幅×全高 ・ホイールベース= 4495×1680×1990・2925mmの小型車サイズの商用バンで、車両重量1390kgの軽量設計が特徴です。最小回転半径は5.5mとコンパクトカー並みの小回り性能を持っているため繁華街や住宅密集地などでも機動力を発揮してくれそうです。最高速度は90km/h、充電時間(普通充電200V 30A)は5.5時間。一充電走行距離(km)は251kmと公表されています。

【タジマモーターコーポレーション/問い合わせ先】
●メール nextmobility@tajima-motor.com(次世代モビリティ事業部)
公式サイト

日本ではすでにハイブリッド車が一般的であることに加え、中国ほど政府が強制的に市場へ電動化を押し付けていないこともあり、乗用車市場における電動化には一定の限界がありそうです。一方でバスやトラックなどの商用車市場ではまだまだ開拓の余地があり、ことにラストワンマイル領域においては電動化のメリットが大きいと思われます。今後もさらに実用的かつ魅力的な車種バリエーションが登場してくることでしょう。

文/加藤 ヒロト

この記事のコメント(新着順)3件

  1. >2024年2月12日に発売された日産クリッパーEVにはミニキャブEVには設定がない後部ガラスがボディパネルになったルートバン仕様もラインナップされており、ルートバン仕様の2シーターは286万5500円、通常の2シーターが291万2800円、そして4シーターが292万500円となります。

    クリッパーEVのコメントにこうありますが、
    クリッパーEVにあってミニキャブEVに無いのは「二人乗りの後部ガラス窓仕様」ではないですか?
    更に付け加えるのなら「値段の差が43万もある理由」まで踏み込んでほしかったです。

  2. この記事に初歩的な間違いが有ります。
    (当方が間違いに気づいて数日間様子を見ていましたが、自主的に修正されないので投稿します)
     
    >ミニキャブEVは・・・前輪駆動となり・・・
    ミニキャブMiEVからミニキャブEVへの改良でも後輪駆動のままで変更されていませんよ!
     
    参考アドレス
    ミニキャブEV > スペック > 主要諸元
    https://www.mitsubishi-motors.co.jp/lineup/minicab_ev/spec/spe_02.html
     
    以前にも同様な記載をしたと思いますが、EVsmartブログは「どこぞの素人オッサンの個人ブログ」ですか?
    下書き原稿を作成している段階はともかく、ネット上に投稿する前に執筆者、編集長など複数人で記事の内容に間違いが無いかでの裏付け確認は行わないのですか?
     
    少なくとも投稿者は「執筆した文章(記事)で収益を得ているプロ」ですよね?
    冒頭のミニキャブEVでこのレベルの記事ならば、それ以外の車種の情報も現状だと「それぞれの情報が正しいか否かを読者自身で裏付け確認しないとダメな情報」だと感じてしまいます。

    1. よこよこ さま、いつもコメントありがとうございます。

      ご指摘の点、修正しました。
      おっしゃるように初歩的な間違いです。

      ご指摘を著者とも共有し、改めて記事内容を確認します。

      執筆陣一同、気を引き締めて精進します。m(_ _)m

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この記事の著者


					加藤 博人

加藤 博人

下関生まれ、横浜在住。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶ傍ら、さまざまな自動車メディアにて主に中国の自動車事情関連を執筆している。くるまのニュースでは中国車研究家として記事執筆の他に、英文記事への翻訳も担当(https://kuruma-news.jp/en/)。FRIDAY誌では時々、カメラマンとしても活動している。ミニカー研究家としてのメディア出演も多数。小6の時、番組史上初の小学生ゲストとして「マツコの知らない世界」に出演。愛車はトヨタ カレンとホンダ モトコンポ。

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