山梨県立の高等技術専門校でテスラ車を使った出前授業

2019年7月9日(火)に、山梨県立峡南高等技術専門校でテスラ車を使って電気自動車について学ぶ授業(最先端技術講習会)が開かれました。この講習会はテスラ・オーナーズ・クラブ・ジャパン(TOCJ)メンバーが協力して実現したもので、今年で3回目(年1回)の開催。講習会終了後には、学生のみなさんがモデルSやモデルXの同乗試乗も体験しました。

Tesla owners show new mechanics the EV future

※冒頭の写真は、テスラ車に使われている電池と出前授業の様子。

最新車両の実車を、見て、触れて、学ぶ講習会

整備士をめざす学生たちは、県内各自動車ディーラーの協力で、実車を見て触れながら最新の車両や技術自動車について学ぶ授業を毎年受けていますが、一連の授業の最後が電気自動車についての講座です。前週には日産自動車によるリーフを持参しての授業も行われました。テスラ車が参加しての授業は今回が3回目です。

同校は自動車整備士を目指す学生が2年間のカリキュラムで学ぶ学校で、卒業生は100%が自動車整備士の国家資格を取得して、ほとんどの学生が大手ディーラーの整備工場に就職しています。山梨県内では、こうした自動車整備科を持つ学校はここだけです。

出前授業は、自動車整備科の実習室で行われた。整備工場と全く同じ環境が整えられている。

今回は3台のテスラ車が参加し、2人の講師がワークショップを行いました。テスラ車の初期からのオーナーであり、電気自動車や再生可能エネルギー関連のボランティア活動をされている中村寿継さんと、同時通訳や翻訳のプロである池田篤史さんが、同校2年生17人の学生たちにプレゼンテーションを行い、その後に質問に答え、最後にテスラ車の試乗が行われました。お二人ともテスラ・オーナーズ・クラブ・ジャパン(TOCJ)の主要メンバーであり、こうした「出前授業」もTOCJの社会奉仕活動の一環として行われています。

山梨県立の高等専門学校でのテスラ車を使った出前授業
日本のテスラ・エバンジェリストとして知られる中村寿継さん。学生たちを前に、世界の動きとイーロン・マスク氏の哲学を説明。

中村さんは、世界のエネルギー問題とそれに取り組むイーロン・マスク氏の哲学や行動を主に説明され、池田さんは主にEVの技術面やバッテリーの状態や劣化について、世界で発表されているデータを基に話されました。

自動車整備科の副主幹、いわば今回の学生たちの「担任」の先生である勝上誠先生によると、「この授業によって、整備が時代と共に変わっていくことを体感して欲しい。知ることによって、無用な不安を取り除いて欲しい」とのことでした。

テスラ出前授業
自分達が実習で詳しく学んでいる知識を基に、テスラを比べて観察する学生たち。

講義の前に、展示してあるテスラ車をじっくり観察している学生の皆さんにお聞きしたところ、「実際に乗ってみたい」、「クルマじゃないみたい」、「このホイール、すごくカッコ良いですね」などプラスの反応が聞かれました。また、「EVは魅力的だけど、充電の不安がありますね」という意見も聞かれました。

講義が始まりました。中村さんが、「イーロン・マスクは事業で成功して、大金持ちになって、プール付きの豪邸に悠々と住むこともできたのに、その収益を使って地球環境のためになることをしようと決断して、電気自動車だけでなく、蓄電池や宇宙開発などに飛び込んでいった」と言うと、学生の皆さんは驚いた様子でした。

また、池田さんが「学生の皆さんがこれから整備のプロとして働かれ、定年退職するのは2060〜65年頃でしょうか。つまり、皆さんがプロとして働いているちょうどその時期に、世界の自動車は内燃車から電気自動車に大転換することになるのです」と言う年表を使った説明をしたときに、学生たちはうなずきながら聞き入っていた姿が印象的でした。やはり、世界の動きを幅広く知るようにして、先を見据えながら変化を予測していくことの大切さに納得していた瞬間でした。

山梨県立の高等専門学校でテスラ車を使った出前授業
池田篤史さんは、具体的なデータを示しながら電気自動車の特徴とバッテリーについて詳しく説明。

最後に中村さんからのアドバイスは「世の中がどう変わるか、良く見極めておいてください」でした。池田さんからは「EVの時代になると、整備工場の役割も変わり、『出張修理』がメインになりそうです。ネットでEVの状態を事前に診断できてしまうからです。なので、パソコンのスキルは大切になります。アルミや樹脂、カーボンの車体が普及するでしょうから、板金も高度な技術が必要になるでしょう。いろいろな事に興味を持って積極的に学ぶようにしてください」というアドバイスが贈られました。

山梨県立の高等専門学校でテスラ車を使った出前授業
両手を離した状態で、自動運転で車庫入れを実演する中村さん。テスラが自動的に前後に動いて微調整する姿に、学生たちが注目。

担任の勝上先生に、授業後の学生さんたちの反応をお聞きしたところ、「自動車整備は従来からアナログな仕事だと思ってきましたが、学生たちはiPhoneやiPad、パソコンが当たり前の『デジタル世代』なので、電気自動車への理解は案外抵抗が少ないようですね」と感想を述べられていました。

講義の後には、2〜3人のグループに分かれて、2台のテスラ・モデルS、1台のモデルXに分乗して試乗会が行われました。学生の皆さんからは、「加速が静かで力強くてビックリ」、「ロードノイズしか聞こえない、風切り音は分からなかった」といった感想が聞かれました。校長の滝田聡先生も試乗に誘われて体験され、「予想以上でした」とテスラの性能に驚かれていました。

山梨県立の高等専門学校でテスラ車を使った出前授業
「狭いかと思ったら、足が伸ばせて案外広い」と、モデルXの3列目に乗った学生たち。試乗を楽しんだ様子でした。

一人の学生さんが「ぼくはコンセプトカーを考えるのが好きです。先日も今ある日本車をモデルにコンセプトカーを考えていましたが、このテスラはまさにコンセプトカーの雰囲気ですね」と話していたのも印象的でした。彼はまた、「初代のモデルSのグリルって、アストンマーチンのようですね」と言う言葉には著者もビックリ! 「若いのに、アストンマーチンなんて、よく知ってますね」と返しました。過去のクルマ・世界のクルマ・現代のクルマ・未来のクルマなど、いろいろなことに興味を持って、知識と技能の幅を広げて欲しい、と教員経験のある著者も思いました。

山梨県立の高等専門学校でテスラ車を使った出前授業
試乗を終えて、出前授業は終了。最後の記念写真では、いつの間にか「テスラ・ポーズ」を決める学生のみなさんも。

今回の学生さんたちが、内燃自動車・電気自動車の整備のプロとして、また「歴史的自動車(旧車)のコンバートEV」などの技術も研究され、大きく羽ばたいていってもらいたいものです。私たちも同じ「クルマ好き」として、これからも未来のクルマ社会を支える学生たちを応援していきたいものですね。

(取材・文/箱守 知己)

この記事のコメント(新着順)2件

    1. dhさま、ご指摘ありがとうございます。タイトルの校名に「学」が紛れ込んでいたので、直しました。

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この記事の著者


					箱守 知己

箱守 知己

1961年生まれ。青山学院大学、東京学芸大学大学院教育学研究科、アメリカ・ワシントン大学(文科省派遣)。職歴は、団体職員(日本放送協会、独立行政法人国立大学)、地方公務員(東京都)、国家公務員(文部教官)、大学非常勤講師、私学常勤・非常勤講師、一般社団法人「電動車輌推進サポート協会(EVSA:Electric Vehicle Support Association)」理事。EVOC(EVオーナーズクラブ)副代表。一般社団法人「CHAdeMO協議会」広報ディレクター。 電気自動車以外の分野では、高等学校検定教科書執筆、大修館書店「英語教育ハンドブック(高校編)」、旺文社「傾向と対策〜国立大学リスニング」・「国立大学二次試験&私立大学リスニング」ほか。

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