上海モーターショー2019で見た! わかった! 中国のEV最新事情【吉田由美】

2019年4月16日〜25日まで開催された上海モーターショー2019。各メーカーブースの主役には電気自動車がずらりと並び、まさに「電気自動車ショー」という印象でした。EVsmartブログチームに新しく参加したカーライフ・エッセイストの吉田由美がレポートします。

上海モーターショー2019で見た! わかった! 中国のEV最新事情【吉田由美】

急激に進化している中国の自動車事情。特に久しぶりに中国のモーターショーに行った私には、かなり刺激の強いものでした。
(正確には去年の「広州モーターショー」にも行きましたが、滞在時間が少なくてトヨタのレビンをみただけだったので)

急速に進んでいる中国のEVシフトを実感!

さて、上海モーターショーの印象は……、とにかく会場が広い! 私が以前、上海ショーに来ていた時の会場も行くたびに規模を拡大している印象でしたが、2015年から会場となっている上海国家展中心は世界最大級と言われる広さを謳っているだけあって、とにかく広い! その中に知らない中国のメーカー多数。しかもほとんどが聞いたことも無い名前のEVベンチャー企業がずらり。そんな雰囲気に圧倒されました。

中国の自動車市場は2018年が年間販売台数約2810万台。すでに10年ほど前から米国を抜き、世界最大の市場となっています。

日本にいるとあまり実感がもてませんが、世界のNo.1市場の中国は、電動化、人工知能(AI)化の競争でも避けては通れない最重要市場です。

そのうちNEV車(New Energy Vehicleの略。日本語で「新エネルギー車」)は124万台。中国政府は2020年にNEV車を200万台、2025年には700万台を目標に、NEV車の普及を推進しています。
※NEV車=EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)。HEV(ハイブリッド車)は除外。

中国政府は今年からNEV法を施行し、メーカー各社に一定比率のNEV車生産を義務付けました。(2019年には全体生産量の10%、2020年は12%)
なぜ、HEV(ハイブリッド)をNEVの対象外にするかというと、日独米など他国のメーカーに技術優位性があるHEVを擁護しても自国中国のメーカーのメリットにはならないからです。

NEV法は「クレジット制」をとっていて、例えば100万台生産メーカーのNEVノルマは10%(10万台)だとします。航続距離やエネルギー密度などにもよりますが、そのメーカーが生産するEVのNEVクレジットが4ptsだとすると10万台÷4=2.5万台。つまり2.5万台のEVを生産しなければなりません。各社この「NEV法」に対応するために、積極的に電動化を始めているのです。

また、上海や北京などの大都市部ではクルマの数が多くて車のナンバープレートが取りにくい状況にありますが、ガソリン車よりもEVのほうがナンバープレートが手に入りやすいということもあり、大都市部でのEV購買意欲は高いそう。とはいえ、中国でも航続距離(電欠)の心配があるとのことからPHEV(プラグインハイブリッド)の存在が見直されているとの声も。

さらに政府は、HEVをベースに構築しやすいPHEVをNEV法の対象から外す可能性もあるとのことで、その動向から目が離せない状況です。

今後は、インフラの整備とのバランスもあり、急激で圧倒的なEVシフトとはならず、暫くはPHEVとEVでうまくすみ分けていくのではないか、と多くの人は思っているようです。

『今はまだ、従来の自動車メーカーや新興メーカーが入り混じった混戦状態です。しかし今後数年間で淘汰され、「勝ち組」が明確になることでしょう。これまでのように単純に「作って売る」だけでなく、シェアリングサービスのような「使う」という価値に長けたものも求められるので、そういった面からも中国のITソースを活用できるかがカギになると思います』
というのは某日本車メーカーの広報さん。

現在、中国も自動車メーカーは約220社とも、100~200社との話もあります。小規模なベンチャーも多く、誰もその正確な数を把握できていないということのようです。

そして現在、最も中国で注目されているのは「NIO(上海蔚来汽車)」「BYTON」「LYNK & Co(リンク・アンド・コー)」。このうち、残念ながら「BYTON」は上海モーターショー2019への出展は無し。「BYTON」は今年初めの「CES」には出展していたとのことで、戦略的に上海モーターショーは辞退した模様。

というわけで、『EVsmartブログ』では、「NIO」と「LINK & Co」を中心に、中国のEV最新情報をご紹介したいと思います。次回記事をお楽しみに。

(吉田由美)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 中国EVにも日本のNTNや日本電産の技術が入っているらしいですね。
    日本の企業が技術の高さで世界のEVをリードしてくれることに期待します。

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この記事の著者


					吉田 由美

吉田 由美

短大時代からモデルをはじめ、国産自動車メーカーのセーフティドライビングインストラクターを経て、「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の目線で、自動車雑誌を中心にテレビ、ラジオ、web、女性誌や一般誌まで幅広く活動中。

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