フェラーリも着々電動化〜4車種目のプラグインハイブリッド『296 GTS』を日本初公開!【吉田由美】

フェラーリが本国で4月に発表したプラグインハイブリッドのオープントップミッドシップモデル『296 GTS』。2022年6月24日、鈴鹿サーキットで日本初公開となりました。カーライフエッセイスト、吉田由美氏のレポートです。

フェラーリも着々電動化〜4車種目のプラグインハイブリッド『296GTS』を日本初公開!【吉田由美】

車名にも、フェラーリならではの意味がある

自動車業界は続々、電動化モデルが増えていますが、あのスーパーカーブランド、フェラーリも例外ではありません。

2022年6月24日、三重県・鈴鹿サーキットにてフェラーリの市販車として4番目のモデルとなるプラグインハイブリッドモデルである、『296 GTS』の日本初お披露目が行われました!

フェラーリ初のプラグインハイブリッド車は世界限定449台の『ラ・フェラーリ』で、市販車初は『SF90』。クーペタイプの『SF90ストラダーレ』とオープンモデルの『SF90スパイダー』という2車種が登場しています。

ちなみに「SF」は、スクーデリア・フェラーリ創設90周年を象徴するモデルとして作られました。フェラーリ創業40周年には「F40」、50周年のときは「F50」など、頭にフェラーリを表す特別な名称である「F」を与えています。フェラーリ初のプラグイン・ハイブリッド「SF90」にスクーデリア・フェラーリを示す「SF」という名前が与えられたことからも、今後のフェラーリの方向性をうかがうことができそうです。

というわけで、「296 GTS」は、SF90に続くフェラーリ史上4車種目のプラグインハイブリッドモデルとして登場しました。先に発表されたのがクーペタイプの 296 GTB。モデル名の「296」は排気量である2992㏄の6気筒という意味で、「GTB」はグランツーリズモの「GT」とイタリア語でスポーツクーペの意味である「ベルリネッタ」の「B」の略。

296 GTS は、296 GTB ベースのオープンモデルであることを意味していて、最後がスパイダーの「S」となっています。

特長的な「トンネルバック」が復活

296 GTB は2021年10月に日本で初公開されました。すでに日本でもデリバリーが始まっていて、今年の「フェラーリ・サーキット・ディ」でもサーキットを元気よく走っている姿を見かけました。残念ながら私は試乗できませんでしたが。

296 GTS は2022年4月にフェラーリのサイトで発表されましたが、日本でのお披露目の場として選ばれたのは、三重県の鈴鹿サーキット。コロナ禍の影響で4年ぶりの開催となった「フェラーリ・レーシング・ディズ2022」。メディアと一部のオーナーさんには開幕前日、同じ鈴鹿サーキット内の会場で、ひと足早くお披露目されました。

296 GTSの一番のポイントは296 GTBのオープン版だということ。ハードトップのルーフが約14秒で開閉し、45㎞/h以下でなら走行中も開閉可能。

エクステリアデザインでは、ルーフからテールまでなだらかに下がる後方のサイドラインと、ルーフの後ろに直立するリアウインドウのフォルムが特長的。これは『308GTB』や『512BB』『F355』など歴代のフェラーリモデルにも採用されてきた「トンネルバック」と呼ばれるスタイル。296 GTBで復活して、296 GTSも屋根が閉まっているときには「トンネルバック」となっています。

ほかにもF1からの技術として、フロントの下部分には初採用の「ティートレイ」が設定されています。ラジエーターを車体両サイドにし、中央下部分に少し出っ張った「ティートレイ」を装着したことで、フロント部分の空力をボディ下に流してダウンフォースを発生させるそう。

リアの「アクティブ・スポイラー」はリアのライトの中に隠されていて、必要な時にはダイナミック制御システムが稼働し姿を現し、コーナリング時のダウンフォースを増加させます。

マフラーの位置は、今のスーパースポーツカーの流行でもあるリアの中央部分にあり、これによってディフューザーが大きくなり、後ろから見てもインパクトがあります。

EVモードの選択も可能

エンジンは3ℓのフェラーリ初のV6ツインターボエンジンに167PS(122kW)の電気モーターを組み合わせたミッドシップの最新プラグインハイブリッド。トランスミッションは8速F1 DCT 。エンジンの最高出力は663PS(約488kW)、と最大トルク740Nm 、システムの総出力は830PS(約610kW)。バッテリー容量は7.45kWhで、電気モーターのみでのEV走行距離は25㎞。約3.4km/kWhの電費は、一般的な電気自動車の半分くらい? な感じですけど。実用的な電費は……、とか、あまり気にする人はいなさそう。

V6のバンク角がは120度に開いているのもトピック。また、エンジンルームはオブジェのようですが、エンジンフードを開けても見える部分はかなり少なめ。そしてかなり下部分に設置されているのがわかります。これは新しく120度ホットインサイドVにしたことで、エンジン自体を短く軽く、低重心が可能に。また、角度を大きく開いたせいでエンジンの爆発が等間隔で行われため滑らかで、しかも12気筒並みの素晴らしいフェラーリサウンドが実現したそう。オープン時にはルーフをエンジンコンパートメント内に格納されます。

エンジンルームの上部分は樹脂製の「レキサン」。充電口は左側、給油口は右側に設定。

車内はスッキリ、シンプルなのに先進的でさすがフェラーリ!という印象。高級なレザーとカーボンをふんだんに使用しています。

アナログが残っているのはシフトゲートのパターンが昔のフェラーリ風ですが、実はバイワイヤになっています。

パネル系はデジタルで液晶パネル。ステアリングで80%の操作ができ、エンジンスタート/ストップもステアリング下部分で。ほかにステアリング右側の十字をスライドするとメーターが変わったり、いろいろ呼び出して操作する演出が楽しい!

ステアリング左側の下部分はドライブモードセレクター「eManettino(イーマネッティーノ)」で「ハイブリッド」、チェッカーフラッグマークが「スポーツ」、最大のパフォーマンスを出す「クオリティファイ」、そして「EV」モードを選択できます。

中央のコンソール部分にはオープンのスイッチなどもあります。そしてそこにひときわ華やかなのがフェラーリのエンブレム。ピッタリ収まっていますが、実はこれが296 GTSのキー。まるでオブジェの様です。

フロントにはトランクがありますが、かなり小ぶり。

タイヤはミシュランの「パイロットスポーツS4」。

6月25〜26日の「フェラーリ・レーシング・デイズ2022」では日本中からフェラーリオーナーが1000名以上集結しました。
296 GTSの発表のほか、歴代フェラーリF1マシンやXXプログラムのマシンが走ったり、東京からここ鈴鹿サーキットにフェラーリのマシンで向かう「Road to Suzuka」があったり、暑い鈴鹿がますます熱く盛り上がっていました。

残念ながら今回は乗れませんでしたが、早く乗りたい!

(取材・文/吉田 由美)

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この記事の著者


					吉田 由美

吉田 由美

短大時代からモデルをはじめ、国産自動車メーカーのセーフティドライビングインストラクターを経て、「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の目線で、自動車雑誌を中心にテレビ、ラジオ、web、女性誌や一般誌まで幅広く活動中。

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