日産リーフの電池を作るAESCが中国に初の工場を建設

元は日産自動車の子会社で、現在は中国の再生可能エネルギー関連企業「エンビジョン・グループ」の傘下にある「AESC(オートモーティブ・エナジー・サプライ)」が、中国に初めての自社工場を建設します。完成すると年間20GWhの蓄電池が生産され、従来の同社生産量が3倍になる計算です。

日産リーフの電池を作るAESCが中国に初の工場を建設

Bloomberg(2019年4月15日)などが伝えたところによると、AESCの新しい蓄電池工場が建設されるのは、中国の東部沿岸にある江蘇(Jiangsu)省の無錫(Wuxi)市です。(ある年代以上の人には、歌などで馴染みのある地名ですね。)


(YouTube)

日産LEAF e+のモーター、インバーターなどと蓄電池。日産の公式サイトより。
日産LEAF e+のモーター、インバーターなどと蓄電池。日産の公式サイトより。

4月14日に上海で行われたインタビューでは、エンビジョン・グループ(Envision Group)を率いるCEOの張磊(Zhang Lei)氏は、「中国では、電気自動車用の蓄電池メーカーが不足しているというわけではないが、『安心して家族を乗せられる』という絶対的な安全性を顧客が感じられるような製品が欠けている」と述べています。すでに10年近く、安定して日産リーフに安全な蓄電池を供給しているAESC(Automotive Energy Supply Corp.)と言うブランドが、中国のユーザーやメーカーに充分訴えるものを持っていると考えているのでしょう。

今回の動きから、AESCは日産リーフだけでなく、中国のEVメーカーに向けても蓄電池の供給を目指していることが分かります。信頼性の高い蓄電池を武器に、世界最大のEV市場でより多くの顧客獲得を目指すことでしょう。

2019年の上海モーターショーでの日産シルフィー(電気自動車)。リーフをベースとして、信頼性で魅力を訴える。日産の公式サイトより。
2019年の上海モーターショーでの日産シルフィー(電気自動車)。リーフをベースとして、信頼性で魅力を訴える。日産の公式サイトより。

エンビジョン・グループは、北米日産会社が保有していたスマーナの蓄電池生産事業、英国日産自動車製造会社が持っていたサンダーランドの蓄電池生産事業、それに神奈川県にある日産の追浜、厚木、座間にある蓄電池開発・生産技術部門を2019年1月末に買収していますが、開発・生産の拠点と本部はこれまでずっと神奈川に置いてきました。これらの施設を全て合わせて蓄電池の年産はこれまで「7.5GWh」でしたから、新工場の年産「20GWh」は、従来の「ほぼ3倍に拡張」と言えます。

なお、AESCがエンビジョン・グループに譲渡されたあとも、日産自動車は同社の株式の25%を保有しています。将来的には本部も中国に移すのでしょうか。今後も追ってゆきます。

(箱守知己)

 

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この記事の著者


					箱守 知己

箱守 知己

1961年生まれ。青山学院大学、東京学芸大学大学院教育学研究科、アメリカ・ワシントン大学(文科省派遣)。職歴は、団体職員(日本放送協会、独立行政法人国立大学)、地方公務員(東京都)、国家公務員(文部教官)、大学非常勤講師、私学常勤・非常勤講師、一般社団法人「電動車輌推進サポート協会(EVSA:Electric Vehicle Support Association)」理事。EVOC(EVオーナーズクラブ)副代表。一般社団法人「CHAdeMO協議会」広報ディレクター。 電気自動車以外の分野では、高等学校検定教科書執筆、大修館書店「英語教育ハンドブック(高校編)」、旺文社「傾向と対策〜国立大学リスニング」・「国立大学二次試験&私立大学リスニング」ほか。

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