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BYD『シーライオン7』日本発売/82.56kWhの大容量バッテリー搭載で価格は495万円〜

BYD『シーライオン7』日本発売/82.56kWhの大容量バッテリー搭載で価格は498万円〜

BYDオートジャパンは、SUVタイプの電気自動車『SEALION 7』を日本市場に導入しました。EVの進化の速さを実感できる出来の良さに加えて、82.56kWhの大容量バッテリーを搭載しながら後輪駆動が495万円〜というコスパの良さは、BYDならではといえる挑戦的な価格設定です。

目次

抜群のコスパで登場したシーライオン7

BYDオートジャパン(BAJ)は2025年4月15日、プレミアムクラスのモデルが多いDセグメント(ミッドサイズ)のラインナップに、SUVタイプの電気自動車(EV)『SEALION 7(シーライオン7)』を追加、発売しました。

駆動方式は後輪駆動(RWD)と四輪駆動(AWD)があり、価格はそれぞれ税込みで495万円〜、572万円〜です。いずれのタイプもバッテリー容量は82.56kWhで、一充電での航続距離はRWDが590km、AWDは540kmです(国交省申請値)。

●SEALION 7(シーライオン7)の価格
バッテリー容量:82.56kWh
価格:RWD 495万円〜/AWD 572万円〜

BAJは2024年6月に、同じDセグメントでスポーツタイプEVの『SEAL(シール)』を発売しました。シーライオン7はバッテリーやモーター、シャシーなどの基本構成はシールと同じですが、動力性能が若干向上したほか、装備も充実し、それでいて価格は495万円からになり、528万円からのシールより税込みで30万円も下がっています。

性能が向上しても価格が下がるのは、まるでパソコンなどの電子機器のようです。BAJは4月初旬にEVの価格を改訂して、コンパクトサイズの『DOLPHIN(ドルフィン)』は300万円を切ってきました。シーライオン7も、この時の値下げに合わせた価格設定になっています。

【関連記事】
BYD 『DOLPHIN(ドルフィン)』が299万2000円に実質値下げ〜EVがどんどんお手頃になる!(2025年4月1日)

国のCEV補助金は35万円とやや控えめ

購入時の補助金は、国の「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」(CEV補助金)が35万円に決まりました。これとは別に、東京都ならゼロエミッションビークル(ZEV)購入補助金として45万円が補助されます。

さらに自治体でEV購入補助をしているケースがあり、例えば東京都葛飾区では国の補助額の4分の1(上限30万円)が補助されます。ぜひ、お住まいの地域の状況をご確認ください。

初期購入時の特典として、2025年6月30日までにシーライオン7を購入、登録完了した場合に、ETC車載器、ドライブレコーダー、カラオケマイクまたはV2Lアダプターが無償で提供されます。

カラオケマイクは車に乗っている時のエンターテインメントを重視している中国メーカーらしいサービスですね。実用性の高いV2Lアダプターか、カラオケマイクか、日本ではどちらが人気になるのでしょうか。

なおV2Hについては、ニチコンのV2H機器への対応で、シールが変圧に伴う損失が大きかったため非対応扱いだったのが、シーライオン7では損失が軽減されたことで公式に対応車種となりました。

リアモーターのトルクがアップ

シーライオン7は、シールやドルフィン、『ATTO 3』に共通のEV専用プラットフォーム『e-platform 3.0』をベースに、BYDが開発したブレードバッテリーを車体の構造物として組み込んだ「CTB(Cell to Body)」技術を採用しています。

バッテリーはBYD得意のリン酸鉄(LFP)リチウムイオンバッテリーで、容量は82.56kWhです。

余談ですが、BYDによれば、バッテリー容量は実際の容量(グロス値)と、いわゆる実用域(ネット値)で違いがありません。このためバッテリーの充電量(SOC)が100%に近い時には回生ブレーキでの回収量を減らし、機械式ブレーキをメインに使用して制動をかけているそうです。

モーターは、RWDモデルは永久磁石式交流同期モーターをリアに、AWDはリアに永久磁石式交流同期モーター、フロントにかご形三相誘導モーターを搭載しています。AWDモデルでは、前後モーターのトルク配分などを制御して走行を安定させる「インテリジェンス・トルク・アダプテーション・コントロール(iTAC)」も装備しています。

ここまでのパッケージはシールと同じ組み合わせになっています。バッテリー容量も同じです。

ただ、リアモーターの最大トルクが、シールでは360Nmだったのが、シーライオン7ではRWDモデルもAWDモデルも380Nmに向上しました。

0-100km/h加速はシール比で、RWDモデルは0.8秒落ちの6.7秒、AWDモデルは0.7秒落ちの4.5秒です。でも車両重量がシールに比べてRWD/AWDモデルともに130kg増えているSUVだということを考えると、動力性能は必要十分以上ではないかと思います。

RWDモデルの足まわりは刷新

RWDモデルの足まわりも、シールからグレードアップしています。シールではAWDモデルにのみ、路面状況や走行速度に応じてダンピングレートを変化させる可変ダンピングアブソーバーを前後に装備していました。

これに対してシーライオン7では、AWDだけでなくRWDモデルにも、前後に可変ダンピングアブソーバーを装備しました。

改めて記しておきますが、モーターの性能向上に加えて足まわりも刷新されたシーライオン7は、シールより税込み価格で30万円も価格が下がっています。物価高もあってモノの価格が全般的に上がる中、ラインナップしているモデルの価格改訂に合わせてシーライオン7の価格を低く設定してきたBYDには、日本市場に対する本気度を感じるのです。

バッテリーの予熱機能を採用

この他の重要な変更点と思われるのは、充電前にバッテリーの温度を上げる予熱機能を採用したことです。シールでもバッテリーの温度制御はしていますが、予熱機能はありません。

シーライオン7では、通常の温度制御に加えて、手動で予熱ができるようになりました。他社のEVでも、仮に温度制御機能があるのなら予熱機能は標準になってほしいところです。

外観については、ドルフィンやシールと同様に海洋シリーズのデザインを取り入れています。フロントフェースは、大きなエアインテークがシールを継承している印象です。ただ、シールのようなヒゲを思わせる細いラインは入っていません。

RWDモデルとAWDモデルの外観上の違いは、タイヤサイズがRWDは19インチ、AWDが20インチになっているほか、AWDモデルだけブレーキキャリパーがインパクトのある赤に塗装されています。

ガジェット感があって使いやすいモニター表示

内装に目を移すと、目につくのはスマホのワイヤレス充電トレーが手の届きやすいところに設置されていることと、冷却用の吹き出し口があることでしょうか。スマホによっては夏場にすぐに熱が上がって充電が止まるので、冷却機能はありがたいです。

センターモニターは、BYDらしく大型15.6インチのタッチスクリーンで、タテヨコに回転します。

興味深いのはユーザーインターフェース(UI)です。モニターの操作によって、窓やドアミラーの開閉、チャイルドロックのコントロール、シートの操作などができます。表示の動きもとてもなめらかです。

「おお」と思ったのは、画面に「ON/OFF」スイッチが並ぶだけでなく、窓やリアゲートが実際の状態を反映したイラスト表示になっていることです。テスラ車でも同様の表示がありますが、こういうのはちょっと楽しいです。

窓については、モニターに表示される窓のイラストをなぞることで開閉の調節ができて、ガジェット感にあふれている印象です。同じようにルーフの電動シェードもモニターから調節できます。

高出力で充電できるスマホワイヤレス充電トレーはクーリング機能付きで、使いやすい位置にある。

スマホにNFCカードを追加してキー代わりに

シーライオン7では新たに、スマホやスマートウォッチにNFCカードを追加して、キーの代わりにできるようになりました。NFCカードの追加で、スマホなどから鍵の施錠と解錠、メインスイッチのオン動作ができるようになります。

スマホではその他、設定された位置へのシート調整や、車両位置の特定もできます。広い駐車場で自分の車の場所がわからなくなった経験がある人には重宝しそうです。盗難対策にもなります。

電子装備関連では、ヘッドアップディスプレイ(HUD)に表示される情報量が増えたほか、今後はOTAによるアップグレードで、ナビ表示の矢印もHUDに投影する予定です。

などなど、様々な機能アップ、動力系の性能向上があるのですが、今のところ詳細を実車で確認することができていません。BAJは3月末にメディア向け試乗会を行ったのですが、時間の関係もあって試乗記にするほどの距離を走ることができませんでした。

EVsmartブログ的にはもう少し長く走って、急速充電の性能なども確かめたいところです。

ただ、ほんの短い時間ながらも、乗り心地の良さのポテンシャルは感じました。値段もクラスも違うので厳密に比較できるものではありませんが、数年前に乗った日本デビュー当時のATTO 3と比べると大幅に進化しているのは明らかです。同様にATTO 3も現行モデルではかなりブラッシュアップが進んでいると聞きます。

このあたりの変化がはっきり見えるのは、新興メーカーならではの部分と、中国メーカーの進化の早さの表れと、両方の要素があるように思います。いずれにしてもロングドライブ試乗が楽しみなEVです。

長澤まさみに「ありかも」と言われたからだけではなく、シーライオン7を初めとするBYDの進化を今後も追いかけたいと思います。

取材・文/木野 龍逸

BYD SEALION 7 主要スペック

SEALION 7SEALION 7 AWD
全長×全幅×全高4830×1925×1620mm
ホイールベース2930mm
車両重量2230kg2340kg
定員5人
最小回転半径5.9m
タイヤサイズ前:235/50 R19/後:225/45 R19245/45 R20
駆動RWDAWD
モーター永久磁石式交流同期前:かご形三相誘導/後:永久磁石式交流同期
最高出力230kW前:160kW/後:230kW
最大トルク380Nm前:310Nm/後:380Nm
0-100km/h加速6.7秒4.5秒
一充電航続距離(国交省申請値)590km540km
駆動バッテリー
種類リン酸鉄(LFP)リチウムイオンバッテリー
総電力量(ネット)82.56kWh
急速充電の対応出力105kW
普通充電6kW
V2H・V2L対応
価格(税込)495万円〜572万円〜

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この記事を書いた人

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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