世界的にEV(電気自動車)市場の減速が指摘されるなか、世界最大級のテクノロジーイベント「CES」では何が起きているのか。3年連続で現地を訪れた筆者が最新のトレンドをレポートします。時代は「EV+自動運転」の実用段階に移行していることが印象的でした。
※この記事はAIによるポッドキャストでもお楽しみいただけます!
大手OEMによるEV展示はトーンダウン

CES 2026は1月4日(メディアデー)から9日まで、アメリカ・ラスベガスのLVCC(Las Vegas Convention Center)で開催されました。筆者は4日からの参加を予定していましたが、航空機欠航により成田で足止めとなり、1日遅れの5日午後からの視察となりました。
「Consumer Electronics Show」として始まったCESですが、主催者自身が「もはや家電の展示会ではない」と宣言して久しいです。近年は特に自動車関連の展示が集まるWEST HALLが整備され、EVや次世代モビリティ技術の発表の場として存在感を増しています。
今年のCES 2026を俯瞰すると、筆者が注目したキーワードは、AI、自動運転、ロボット、そしてNVIDIAの4つでした。
一方で、世界的なEV減速の流れは会場でも明確でした。EVの展示台数は昨年よりさらに少なく、この3年間で最も小規模に感じられました。広大な展示ホールを回ればその減り方は一目瞭然で、HYUNDAI(韓国)、ZEEKR、GWM(いずれも中国)など一部を除き、大手OEMの出展はかなり限られていました。会場外のBMWパビリオンも含め、EV単体での「お祭り感」は明らかにトーンダウンしていると感じました。
「EV+自動運転」関連展示に注目
そのような状況下でWEST HALLを訪れた際、筆者の目を引いたのは、昨年からその傾向が鮮明になっていた「EV+自動運転」の組み合わせでした。今年は特に自動運転関連の出展が一段と増加しており、この自動運転車に焦点を当ててご紹介します。
【1】WAYMO(Alphabetグループ)

Googleの自動運転開発部門から独立したAlphabet傘下のWAYMOは、米国ですでに商業運行を行うパイオニアです。日本でも試験走行のニュース(GO、日本交通と東京で実証実験を開始)が聞かれる中、米国では5都市でサービスを展開し、11都市で試験運行中、さらに10都市でのサービス計画が進んでいるとのことです。
CES会場では、3台の自動運転タクシーが展示されていました。現在運行中のJaguar I-PACEとHyundai IONIQ 5に加え、I-PACE生産終了を受けた次期車としてZEEKR OJAI(ジーカー オハイ)が並び、いずれもEVです。特筆すべきは、I-PACEが第5世代のWaymo Driver(自動運転システム)を搭載しているのに対し、IONIQ 5とOJAIには第6世代へと進化したシステムが搭載されている点です。

筆者は昨年、今年とロサンゼルスでWAYMOに複数回乗車していますが、第6世代のモデルでは発進・停止や車線変更の滑らかさなど、全体の完成度が格段に向上した印象を受けました。すでに全米で約1,500台が試験・商用に使われ、4,000万マイル(約6,400万km)の実走行と、200億マイル(約320億km)のシミュレーション走行という膨大なデータが蓄積されています。
第6世代車では、カメラにウォッシャーノズルとワイパーを備え、悪天候時の視界確保を図るなど、細部にわたる運用ノウハウが反映されているのが特徴的です。ラスベガス市内では、試験走行中のZEEKR OJAIを実際に目撃しました。ハードウェア、ソフトウェアともに第6世代で大幅な進化を遂げているものと思われます。

カメラ部にワイパーが装着されています。
【2】ZOOX(Amazonグループ)

Amazon傘下のZOOXもまた、自動運転ロボタクシーの有力プレーヤーです。一昨年からラスベガス市内でAmazon社員を乗せた試験走行や一般道テストが頻繁に見られていましたが、昨年末からは市内での商業運行を開始しました(現時点では無料で乗車可能)。
運転席を持たない4人乗りEVで、レベル4自動運転を前提とした設計です。筆者も実際にこのZOOXロボタクシーに乗車しており、その詳細は別途試乗レポートとしてまとめる予定です。

また、市内ではトヨタ RAV4 に似たSUVタイプの試験車両も走行しており、こちらも近い将来、商業運行へ移行するのではないかと感じました。
【3】Motional(Hyundai & Aptiv)

Hyundaiとアイルランドの自動運転技術企業Aptivによる合弁会社Motionalは、レベル4自動運転仕様の IONIQ 5 をHyundaiブースの中に展示していました。すでにシンガポールやラスベガスを含む米国の複数の都市で試験走行および一部商業運行を進めており、ラスベガス市内でも昨年から実車を何度か目にしています。
【4】MOIA(VW & Apex.AI)
昨年までイスラエルのMobileyeブースに置かれていたVWのMaaS車両(およびサービス名称)である「MOIA」は、今年は自動運転オペレーションシステムを手がける米国のApex.AIブースに展示されていました。VW ID. Buzzをベースにしたレベル4自動運転シャトルで、テキサス州オースティンでの試験運行が進行中です。
【5】TIER IV(日本)

日本発の自動運転ベンチャーTIER IVが、今年も連続出展していました。今回は左ハンドルの Hyundai IONIQ 5 をベースにレベル4仕様へ改造した車両を展示し、雪道でのテスト走行動画でその技術力をアピールしていました。
日本ではBYD J6ベースの自動運転バスやPIX Movingとの協業車両のイメージが強いですが、IONIQ 5ベース車は筆者にとって初めての出会いでした。TIER IVは建設機械なども含め、国内外のさまざまな用途に自動運転を展開する、日本を代表するベンチャーになりつつあります。
【6】AUTOLIV と TENSOR

自動車安全システム大手のオートリブ(Autoliv)は、スタートアップのTENSORと共同開発した「格納式ステアリングホイール」を、CES 2026のTENSORブースで初公開しました。
これは、レベル4自動運転を前提とした世界初の「個人所有可能な自動運転車」として開発中の「TENSOR RoboCar(テンサー・ロボカー)」向けコンポーネントです。従来の手動運転と自動運転の両モードに対応する二重機能を備えており、自動運転時にはステアリングを格納し、必要に応じてドライバーが手動操作できるよう引き出すことが可能です。
TENSOR RoboCarは2026年後半に量産準備が整う見込みで、米国・EU・中東市場での提供が計画されているとのことです。
EV単体の展示は減少した一方で、自動運転技術は分野を問わず広がりを見せていました。
自動運転といえばFSDでテスラが独走している印象もありますが、多くのプレイヤーが実用段階への移行に向けて追撃を進めていることが実感できました。
CES2026にテスラは出展していませんが、会場周辺の交通機関として定着したベガスループをさらに延伸。一部区間でFSDによるサービスを導入したと聞いています。
そのほかの注目ポイント
4,100社以上が出展したCES2026のすべてをお伝えすることはできません。いくつか、筆者が注目したポイントを挙げておきます。
INDY AUTONOMOUS CHALLENGE

昨年のレポート記事でも触れたドライバーレスのインディカーレース「INDY AUTONOMOUS CHALLENGE」の車両が、今年はdSPACEブースに展示されていました。サーキット走行デモはなかったものの、ソフトウェアと制御技術の進化は着実に進んでいることを示していました。
大型モビリティへの応用

WEST HALLだけでなく、家電中心のCENTRAL HALLにあるBOSCHブースには、自動運転大型トレーラーヘッドが展示されていました。これは、自動運転が乗用車にとどまらず、物流を支えるトラックや、日本のクボタなどに代表される農機など、より広い産業分野へと実装が進んでいくことを強く示唆するものでした。自動運転の実装は、電動化とともに進展していくと思われます。

革新的な車載ディスプレイ(LG)

サプライヤーブースに目を向けると、LGが自動運転時代に向けた先進的なコックピット体験を提案していました。フロントガラス全体がスクリーンとなるコンセプトや、インパネ全面を網羅するディスプレイ技術は、車内における情報表示とエンターテイメントの融合を加速させるものとして注目を集めていました。
EV市場の減速が叫ばれる一方で、CES 2026では「EV+自動運転」が次世代モビリティの主役として存在感を放っていることを感じました。とくにレベル4自動運転の進化と、NVIDIAを中心とした様々な企業による商用化への具体的な動きは、この分野の技術が着実に実用段階へと移行していることを強く実感できました。

後編ではEV充電関連などの注目ポイントをレポートする予定です。
取材・文/福田 雅敏






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