国内現行EV車種が、ほとんどぜんぶ集まった
秋が深まったものの、ポカポカと暖かい日が続いていた中の11月15日、富士山の麓にある『あさぎりフードパーク』(静岡県富士宮市)で、「世界に届け!! 広がれ! WE♡EV!! 愉しさ伝える! Japan EV Meetup!!」を合言葉に、「Japan EV Meetup」(JEM)が開催されました。イベントでは、EVで「クルマ文字」を描いてドローンで撮影するという興味深い趣向もあり、EVsmartブログとしても参加しないわけにはいきません。編集チームからは寄本編集長がジャガーアイペイス、石井さんがモデル3、そして私がEQCと、3車種3台で参加しました。
都内からだと中央高速道路を通っていくので、混む前に現地に着こうと思ってちょっと早めに出発し、一路、青空の中の富士山を目指します。メルセデスベンツからお借りした「EQC」で、1日走ってみた詳しい様子は、後ほどプチ長距離試乗記としてまとめたいと思います。
さて、目的地のあさぎりフードパークに着いたのは午前8時半過ぎ。すでに多くのEVが集まって、広場に並んでいました。ぱっと見た感じは、やっぱりテスラ、それも「モデル3」が多いなあという印象でしたが、リーフもけっこう来ています。
参加者は、三角形の広場の2辺に沿うように車を駐車していました。残りの一辺は協賛会社のブースが並んでいました。
EQCは主催者さんの指示で、三角形の真ん中のスペースに並べました。この場所にはEQC以外にも、ジャガーの「アイペイス」、アウディの「e-tron」、フォルクスワーゲンの「eゴルフ」、日産「e-NV200」などなど、全部で12車種のEVが揃いました。現在、国内で発売されている現行EV車種のほとんどが集まったことになります。
ちょっとびっくりしたのは、EVsmartブログでもまだ試乗テストができていないプジョー「e-208」が来ていたことです。個人所有で、まだ納車されたばかりだそうです。なんと、関東地方の第1号車だそうです。
ちなみにEQCも、日本ではまだ数が少ないことから来場者の注目を集めていました。筆者が着いたとたんに数人が集まり、内装やエンジンルームなどをマジマジと見ながら、「これ、見たかったんですよ~、どうでしたか?」などといろいろ質問を受けたのでした。
集まったEVは124台、総バッテリー容量「8.5MWh」
『Japan EV Meetup』、略称JEMは、今回が第1回目の開催です。それにもかかわらず、参加したEVは124台、参加者数は約250人で、大盛況と言っていい雰囲気でした。申し込みのあった車はその他に、内燃機関(ICE)の車が38台もあって、150台以上が富士の裾野に参集しました。
主催者発表によれば、集まったEVのバッテリーの合計は、セル数にして約87000本、総容量は約8.5MWhになったそうです。総務省統計局の調査では、2014年の1世帯あたりの電気使用量は月に約428kWhなので、単純に割り算すると約20か月分になります。なかなか壮大な数です。
このイベントを主催したのは、リーフ、テスラとEVを乗り継いできた濵田龍哉さん(Twitterアカウント @hammernocar)を中心とした有志グループです。濱田さんはこれまで、仲間と一緒にテスラのオーナーズ・ミーティングを開催してきましたが、今回は車種に関係なく集まる初めてのイベントになりました。
濱田さんに、イベントの目的やきっかけを聞きました。
「もっと電気自動車のオーナーが増えれば、充電ネットワークが広がったりして、今のオーナーさんにもメリットがあると思ったんです。電気自動車に乗る人が増えて、それに応じて経済が回っていけば、充電器を設置しようというホテルや飲食店も増えるだろうし。Wi-Fiがあっという間に当たり前になったことと同じことを、電気自動車でも起こしたいと思ったんです」
「そのためには、電気自動車のユーザーが増えないといけない。とにかく電気自動車を買ってくれる人を増やそう、楽しさを伝えようと思ったんです。だから今回は、テスラとかリーフとか車種ごとではなくて、BEVっていうくくりにしました。それに電気自動車で参加する方には2500円をご負担いただいているんですけど、一般のICE車の方には無料でお入り頂いているんです」
「今回のイベントはあくまでも、電気自動車のオーナーではない人達への発信が第一の目的です。外に向けたオープンな発信をしたいんです」
その思いに賛同した仲間と協力して参加者を集め、Twitterやメールなどで協賛企業を募集してきたそうです。そうして集まった初回の参加者、参加台数について、濱田さんは「はるかに予想を超えていました」と、驚いていました。
また協賛も、本ブログのオーナー「EVsmart」をはじめ、日産自動車、Looop(ループ)(電力)、ユアスタンド(充電設備)、ニチコン(V2H)、GCストーリー(太陽光)、ビーライト(テスラのオリジナルパーツ)などEVに関係のある会社のほか、主催者グループの仲間の声かけに賛同した革製品の手作り工房など、多彩な18社が集まりました。バラエティー豊かで、イベントの幅を広げていました。
「空ぶかしは禁止!」のかけ声でイベントスタート
午前10時、濱田さんが開会の挨拶に続けて、「諸注意事項ですが、空ぶかしは禁止です!」と鉄板ネタを披露し、イベントが始まりました。さらに続けて濱田さんが、協賛、参加企業のブースをひとつずつ訪れて紹介。たくさんの来場者がブースの周りに集まり、熱心に濱田さんや企業関係者の話に耳を傾けていました。
ブース紹介が終わると、参加者は思い思いに気になるブースで話を聞いていました。駐車スペースでは、トランクの自動開閉が付いていないテスラのために、その場でオートトランクのパーツに交換するという実演もあり、注目を浴びていました。
ここでちょっと、来場者の方達にお話を聞いてみました。神奈川県から「e-NV200」で参加した方は、1年近く納車を待って入手したそうです。家には太陽光パネルや、リーフの再生バッテリーを手がけているフォーアールエナジーの蓄電池も入れていて、あとはEVを待つばかりになっていたと言います。また、EVは仕事で荷物を積むために使っているのですが、「できれば普通のセダンタイプの電気自動車も……」と考えているそうです。
会場にはテスラが多いので、声をかけるとテスラオーナーさんの確率が高いのは当然なのですが、今回、お話を聞けた方は、モデル3が9月に納車されたばかりという方々でした。
愛知県から来場した30代の男性の参加者は、イベントを主催者のブログで見て知ったそうです。テスラの前はトヨタのFJクルーザーに乗っていて、「電気自動車でもエンジン車でもどっちでもよかったんですけど、ソフトウエアのアップデートで車がどんどん変わっていくのがおもしろそうだった」ので、テスラに決めたそうです。
充電に関しては少し心配していたものの、「実際に乗ってみたらなんの不便もないなって思いました。自宅がマンションなので充電設備はないので、会社で人が少ない週末にやらせてもらっています。月に1000キロくらい走っています。FJの時は年間に5000キロくらいしか走っていないので、距離は長くなりました」と、直近のEVライフを話してくれました。
もうひと方は、ご夫婦で東京都から参加したモデル3オーナーさんです。この方、独身時代はプジョーの306、結婚後はスバルのR2のマニュアル仕様だったそうです。そこから、今のモデル3になったとのこと。
「R2の次にどうしようかなって考えたときに、リーフも見ていたのですが、モデル3はいいなと。充電は、自宅にチャージャーは付けていますが、出先でも充電できるので、何かあったときに使うくらいです」
ここで一緒にいた奥様が、「都内の公園やショッピングモールでも充電してます。家の近所で充電しちゃって、家であまりしなくていいんです」と笑っていました。東京都は、公園の駐車場が低公害車割引をしていて、駐車料金が1時間無料になる上に、充電もできる所があったり、都庁や区役所も、充電をすると言えば駐車場に停められるので便利だそうです。
「EVsmartブログで、EVで便利に使える都内の場所を特集してくれるとすごくうれしいです」と、ニコニコしながら要望されてしまいました。なるほど、それはいいかもしれない。寄本編集長におまかせしましょう。
最後は車文字で「WE♡EV」!
ところでこのイベントの目的の第一は、まだEVオーナーではない人たちにEVを知ってもらうことです。というわけで、ICE車(内燃機関のエンジン車)で来ている人の話も聞いてみました。まず山形県からトヨタのパッソで来ていた若者は、「電気自動車だからということではなくて、出典している会社に興味があった」そうです。それでも、休みを取ってテスラの試乗をしたりしていてEVにも関心はあり、「リーフのe+が中古車価格がすごく安いのを知っているので、いつが買い時だろうなって」考えているそうです。
埼玉県からハイラックスサーフのディーゼル車で来場した方もいました。10年くらい乗っていて、壊れるまでは乗り続けようと思っているそうです。とはいえ、いつ壊れるのかわからないので「次のクルマなにがいいかなって思ったときに、テスラに興味があって」イベントに参加したそうです。
でも、EQCにも興味津々で、筆者が乗っていったEQCを熱心に観察していました。ちなみに今回は子ども3人を含む家族5人で参加。ブースにも関心はあったものの、「子どもがほとんど興味がなくて、あまり見れてないんです……」と苦笑いしていました。でも、EVの実車をたんまりと見ることができて、収穫は大きかったようでした。
さて、朝霧フードパークのバターチキンカレーをお昼にいただいた後、午後1時過ぎにいよいよ車文字を描く作業が始まりました。スタッフの指示に従って1台ずつ、所定の場所に駐車していきます。駐車場所は、前日にスタッフみんなでラインを引いたそうです。お疲れさまでした。
車文字は、濱田さん操縦のドローンで撮影しました。フィーンっという羽虫のような音を残して上昇していくドローンに向かって、みんなで手を振りながら集合写真を撮影して、イベントは無事に終了です。
濱田さんも満足げに「もう、来年どうしようか考えています」と話すなど、気持ちは次回開催に向かっているようでした。
富士山は途中から霞んでしまって見えなくなってしまいましたが、広い空の下でEVざんまいな1日になりました。骨を折ってイベントを主催したスタッフの皆さんも、来場、参加した人たちも、ありがとうございました!
また次回、富士の麓でお会いしましょう!
(取材・文/木野 龍逸)