EVやFCV「東京2020オリンピックで活躍する次世代車」ってどんなクルマ?

『TOKYO2020』で活躍している、はずの次世代車たち。オリンピック、パラリンピックともにほぼ無観客となったこともあり、会場周辺に住まいなどがある方以外は、ほとんど目にすることもないのでは? 晴れ舞台で活躍真っ最中の電気自動車やFCVなどを、カーライフエッセイストの吉田由美さんがご紹介します。

EVやFCV「東京2020オリンピックで活躍する次世代車」ってどんなクルマ?

※冒頭写真提供/WORLD BASEBALL SOFTBALL CONFEDERATION

選手の皆さんを全力で応援します!

2021年7月23日に開会式を迎えた「東京2020オリンピック」。8月8日の閉会式まで、アッという間に駆け抜けた17日間。

新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、1年後に行われることになった「東京2020オリンピック」。2021年に開催されるのに「2020」を名乗るのは、ちょっと違和感があります。

私は今回のオリンピック開催には反対でした。こんなコロナ禍に世界的な大イベントを開催するのはリスクが大きすぎると思います。

しかし、開催されるからには、選手の皆さんを全力で応援します!

会場などでトヨタの次世代車が活躍

今回のオリンピックはご存知の通り、ほとんどの会場で無観客。マラソンやロードレースなど一部の競技では沿道での観戦もできなくはなかったようですが、東京の夏は暑いし、行っても密になることが容易に想像できるので、今回はテレビ観戦です。同じような人が多かったらしく、テレビの視聴率は良かったようです。ただ、ホスト国なのでもう少し他国の選手にスポットを当てても良いかなと思います。

そんな中、いろいろなシーンで目に留まったオリンピック・パラリンピックのためのクルマたち。

すべてトヨタ車です。というのも、トヨタ自動車は東京オリンピック・パラリンピックのトップスポンサー。基本、オリンピックでは1業種1社なので、自動車関連はトヨタがすべて担います。

今回、トヨタとレクサスの車両約3000台を提供し、うち9割がハイブリッドなどの電動車。

東京都心部は大会の少し前から、東京オリンピックのラッピングをした水素燃料電池車の「MIRAI」やプラグインハイブリッド車「プリウスPHV」、ミニバンの「ノア/ヴォクシー」や「アルファード」「ヴェルファイア」などを見かけるようになりました。

信号待ちで並んだ『プリウスPHV』

選手村ではトヨタの電気自動車(EV)の自動運転バス「e-Palette」(eパレット)で移動。と言ってもオペレーターが1名乗っての20名乗り。車イスでも乗り込むことができ、車いす4名、立ち乗り7名が乗車可能。航続距離は約150㎞。最高速度は19㎞/h。

選手村で活躍、自動運転の『e-Palette』。

そして選手村と言えばもう一台。選手村やオリンピックスタジアム、有明テニスの森などで活躍した「APM」(アクセシブル・ピープル・ムーバー)。こちらもEVですが、こちらはドライバー+5名乗り。航続距離は約100㎞で、こちらも最高速度は19㎞/h。

『APM』(アクセシブル・ピープル・ムーバー)。

そして私が最も注目したのは、野球。

リリーフピッチャーが登場するときに乗ってきたリリーフカーです。これは選手村などで活躍したEV「APM」のカスタム仕様で、ピッチャーが座る後部座席がグローブ型!もともとは3列シートなので前後が広々と取られ、海外では「コロナ禍なのでソーシャルディスタンスをとっています」的に紹介されているようです。こちら「AMP」同様、時速19㎞/h。

写真提供/WORLD BASEBALL SOFTBALL CONFEDERATION

このリリーフカーの写真は、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)から許可を得て掲載していますが、WBSCからの情報によると、オリンピックで使用されたリリーフカー、オリンピックのためのオリジナル設計。

交代するピッチャーが座る後部座席はグローブ型で斬新なデザイン。フロアマットにはグラウンドが描かれています。「AMP」の屋根を取り外して外から乗っている選手が良く見えるようにしてあって、アクセスも楽々。

リリーフカーを運転する人は、少しトレーニングを受けるそう。また、リリーフカーは2台あるそうです。

東京以外の街でも活躍

競技では、自動車ロードレースも大注目でした。東京都府中市の「武蔵野の森公園」から静岡県小山町の富士スピードウェイまでの244㎞を走るレースでは、ものすごい数のトヨタ車の大行列。中でも選手たちの後を走る、屋根に自転車を載せたサポートカーの「カローラ・ツーリング」が目に留まりました。でもこれはガソリン車のようですが。

そしてもう一台。

TOYOTA Concept-愛i(東京2020オリンピック・パラリンピック仕様)

これは私のお友達からも問い合わせがあったぐらい、大注目だったのがマラソンの先導車。2017年のCESで世界初公開されたときは「Concept-愛i」(コンセプト愛)という名前でしたが、2019年の東京モーターショーでは「LQ」と名付けられていました。

EVで航続距離は約300㎞。エクステリアデザインも未来型ですが、インテリアも未来的。自動運転のレベル4と人工知能など、新しいテクノロジーがたっぷり盛り込まれています。

ですが、マラソンで伴走しているときに自動運転だったかどうかはわかりません。世界初の覚醒・リラックス誘導機能付きシートが採用されていて、ドライバーが眠気を感じたら、シートに内蔵した複数の空気袋(エアブラダー)が膨らんで背伸びのような姿勢をサポートし、シート空調の冷風刺激によってドライバーの眠気を抑えます。逆にリラックスしたいときは、シートバック内のエアブラダーをゆっくり膨張&収縮させて腹式呼吸をサポートし、リラックス効果へといざないます。

また、アイシン化工株式会社、株式会社キャラクターと共同開発した「大気浄化塗料」をラジエーターファンに塗布し、オゾンを酸素に分解。光化学スモッグの原因となる地表付近の分解するため、「走れば走るほど、空気がきれいになるクルマ」だそう。つまり、マラソンのような競技にピッタリなわけですね。

ちなみに大きさは、全長4530㎜×全幅1840㎜×全高1480㎜で、ホイールベースは2700㎜。乗車定員は4名。車両重量は1680㎏。リチウムイオン電池と54.3kWhのバッテリーを搭載し、モーターの出力は204psです。

オリパラの会場などでは、このほかにも燃料電池のバスや、歩行領域EV、ロボットなどが活躍しています。

本来ならば会場にいる多くの観客が撮影した写真や動画で世界中に発信されたはずなのに…。

せめてEVsmartブログをご覧の方には知っておいていただきたい「東京2020オリンピック」で頑張っていたクルマたちの活躍をご紹介しました。

(文/吉田 由美)

【編集部注】
東京2020パラリンピックは8月24日から9月5日までの日程で開催(オフィシャルサイト)されます。新型コロナ感染拡大はますます厳しい状況ですが、選手のみなさんの活躍を応援しています。

7月末にアメリカメディアの翻訳記事をご紹介したように、今回のオリパラはトヨタにとって次世代車をお披露目する晴れ舞台にもなるはずだったのが、会場に入れない私たちにはあまり情報が入ってこないように感じます。スポーツも次世代車開発競争も、がんばれニッポン! と叫んでおきます。

この記事のコメント(新着順)4件

  1. マラソンの先導車をテレビで見て「昔見たヤツだな・・」と。
    LQって言うんですね。コンセプトカーなら最新の物を出さないと・・
    すでに時代遅れ感を感じてしまいました。

  2. 個人的にはBEV以外、特に充電できない車両を電動車と呼ぶのはやめて欲しいです。

  3. 信号待ちで並んだ『MIRAI』とキャプションの付いた車両は、トヨタプリウスPHVだと思います。特徴のあるリアゲートは、プリウスPHVのみの特徴です。

    1. プリウスPHV乗り さま

      ご指摘ありがとうございます。急ぎ修正いたしました。
      ハンドルネームから察するに、愛車への誤記、大変失礼いたしました。

      ありがとうございました。

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この記事の著者


					吉田 由美

吉田 由美

短大時代からモデルをはじめ、国産自動車メーカーのセーフティドライビングインストラクターを経て、「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の目線で、自動車雑誌を中心にテレビ、ラジオ、web、女性誌や一般誌まで幅広く活動中。

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