「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」多彩な個性で会場を彩る電動バイクに注目!

東京ビックサイトで開催されている「東京モーターショー」改め「ジャパンモビリティショー 2023」(一般公開日は10月28日~11月5日)。コンセプトモデルから市販車まで、会場で見かけた電動バイクたちをご紹介します。

「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」多彩な個性で会場を彩る電動バイクに注目!

ヤマハブースは多様な電動バイクがズラリ!

プレスデーだった25日、ヤマハのブリーフィングは全日本選手権にも参戦している電動トライアルバイク「TY-E 2.2」(冒頭写真のモデル)の模擬走行で幕を開けました。そのラストに登場して度肝を抜いたのがコンセプトモデル「MOTOROiD2」です。ダンサーと一緒に舞台に登場して、ボディをくねらせて踊ったりします。乗り手と呼応して形態を変化させたりとか。もはやバイクと呼んでいいのかどうかも怪しいのですが、じつに未来っぽい二輪のパーソナルモビリティです。

MOTOROiD2

そんな「MOTOROiD2」の研究から派生した電動バイクたちも展示されています。「ELOVE」は電動スクーターに不倒機構を搭載したモデル。 姿勢センサーと操舵アクチュエータ、走行用モーターが連動して、姿勢を制御しています。

ELOVE

「倒れないとは言い切れませんが、かなり倒れにくくなっています。乗り慣れている人向けの機能ではなく、ハンディキャップのある人も含めて、バイクに乗れない理由を減らしたい。入り口を広げるための技術開発です」と担当者が説明してくれました。

面白かったのは「倒れない」ことだけを目指すなら、人間が何もしない方が実現しやすいという話でした。そうなると自動運転です。でも、やはりバイクは「操る喜び」がないと面白くないですよね。

ヤマハは今回、展示テーマのひとつに「鍛錬の娯楽化」を挙げていました。うんうんと百回ぐらい頷きたくなる言葉でした。練習してうまくなることもエンターテインメント。事故防止はもちろん大切ですが、望まれるのはライダーの楽しみをサポートしてくれる技術だと思います。

E-FV

「楽しみ」側に振り切ったバイクも展示されていました。スポーツタイプの電動ミニバイク「E-FV」です。フルカウルのレーサーレプリカ、TZM50Rをベースに、トライアルバイク「TY-E」のパワーユニットを組み込んでいます。サーキット走行の動画が流れていましたが、「一充電でヘトヘトになるぐらいまで走れますよ」とのこと。ワンメイクレースなどをぜひ開催してほしいですね。

もう1台、ヤマハのプレスブリーフィングで、日高祥博社長が「ホンダさんのバッテリーを搭載した初めてのヤマハのバイクを展示しています」と紹介していたのですが、これがなかなか見つからない。別棟で開催している「Tokyo Future Tour」というイベント展示の一角でやっと発見しました。

NEO’S

しっかりとした説明がないと、チラ見では意味がわからないかもしれません。でも「HY戦争」を知る世代には感慨深い協業です。欧州で発売中の電動スクーター「NEO’S」の着脱式バッテリーを、国内二輪メーカー4社の共通仕様である「Mobile Power Pack e:」(ホンダ製)に換装しています。国内だと原付二種タイプ。すぐにでも発売できそうなので、現行の電動バイク「E-Vino」に続いてラインアップされる可能性も、なきにしもあらず。ぜひ探してみてください。

カワサキのEV Ninjaは欧州ではすでに発売中

Ninja e-1

カワサキは「伝統と革新」をテーマにしていて、メグロS1やW230といったレトロムードの新モデルをワールドプレミア(世界初公開)。かなり注目を集めていましたが、EVsmart的に気になるのは、「Ninja 7 Hybrid」と共に「革新」サイドに展示されていたフル電動バイクの「Ninja e-1」でした。

コンセプトモデルではなく、れっきとした市販車。国内では発売未定ですが、すでに欧州では販売が始まっています(納車はまだらしいですが)。あちらは都市によって内燃車が入れない場所などがあるので、そうしたニーズも想定しているとのこと。

Ninja e-1はEUの免許区分である「A1ライセンス」に対応しています。内燃車では排気量125cc以下相当なので、日本では原付二種扱い。最高出力は9kW(12馬力)で、航続距離は72km(WMTCモード値)だそうです。

1512Whの可搬バッテリー(重さ11.5kg)を2本搭載していて、取り外して充電することもできるし、100Vの充電アダプターを車両に直接つないでも充電可能。価格は日本円に換算すると120万円前後とのことで、ちょっと高価です。

とはいえ「リミッターが作動するので最高速度は限られるものの、発進加速はリッターバイク並みですよ」(説明担当者)なんて話を聞くと、乗ってみたいですね。日本でもぜひ販売を。

ホンダも魅力的な電気バイクをお披露目

SC e: Concept

ホンダは、コンセプトモデルの「SC e: Concept」を初公開しました。2人乗りのスクーターで、Mobile Power Pack e:を2つ搭載。出力や航続距離などは非公開でしたが、原付二種のニューモデルという位置付け。なるべくこのまま市販してほしいグッドデザインです。

ブースにはMobile Power Pack e:の交換ステーションとともに、私も9月に購入したホンダ初の市販電動バイク「EM1 e:」も展示。この車両については開発担当者のお話を聞くことができたので、別記事で詳しくお伝えします。

Motocompact

往年の名車「モトコンポ」(50ccバイク)を電動化した「Motocompact」もありました。エンジンじゃないとこんなに薄くなるんですね。11月に北米で発売予定。日本ではどういう規格になるのかわかりませんが、これもぜひ発売してほしいです。

Pocket Concept

モトコンポ系列では、サステナブル素材を使うというコンセプトモデル「Pocket Concept」も展示。これは機能やコストとはまたちょっと違う方向の新しい価値観もアピールしていました。

ほかにもいろいろ。水素エンジンバイクも目立ってました

e-choinoriとe-PO

スズキのブースで目立っていたのは、かつてのヒット車種「チョイノリ」を電動化した「e-choinori」。使用しているバッテリーは電動アシスト自転車用。折りたたみ電動モペット「e-PO」と並んでいました。航続距離が短くていいと割り切れば、こういう選択肢もありますね。電動アシスト自転車やマイクロモビリティと電動バイクとの境界は、どんどんあいまいになっていくのかもしれません。

e-BURGMAN

Mobile Power Pack e:を使った原付二種「e-BURGMAN」も展示されていました。こちらは4~6月に都内で実証実験をしていたので、市販も近そう、と期待していたのですが、どうやらお蔵入りのようです。収集したデータは今後の電動スクーターの開発に生かしたい、とのこと。もったいない気もしますが、新機種に期待しています。

大手メーカー4社をあとにして、次世代モビリティの展示コーナーを歩いていたら、目に止まったのが電動チョッパーです。つくば市に本社を置くEVベンチャー企業「アクイラ」が制作したプロトタイプの電動バイク「AQ 020」。社長の鷲尾景樹さんが「バイクは電動化で設計の自由度が飛躍的に上がった」と説明してくれました。

AQ 020と鷲尾さん

「EVというと、エコだとか、コスパがいいとか、そういうことばかり注目されますが、楽しく遊べる、ということもアピールしたいですね」。話を聞いていると、自作EVの面白さが伝わってきました。少しサイズダウンして原付一種で登録する予定だとか。これを見た人は、自分でも作りたくなるかもしれないですね。

おまけです。電動バイクではないのですが、今回のショーには、水素エンジンのスクーター2台が初見参。一台はヤマハ「BW’S」(125cc)をベースにしています。思わずニヤッとしてしまいましたが、座席後部に積まれた水素タンクのインバクトが強烈すぎます。直前まで展示予定はなく、サプライズ出展だったそうです。

ヤマハの水素エンジンバイク。

実験グループのリーダーが解説してくれました。「研究のために100km以上の長距離を走り続ける必要があります。そのために、見た目は置いて、研究に特化した車両として作りました。本気で水素エンジンに取り組んでいるからこそ、この機会に展示して課題を共有してもらうことも必要だと考えました」。なるほどです。バイクに水素タンクをどう搭載するかがクリアすべき課題のひとつというのが一目瞭然ですね。

もう一台はスズキの水素エンジン「BURGMAN」(400cc)です。こちらの水素タンクは、足元にきれいに納まっていましたが、エンジンをオフセットする必要があったので、ロングホイールベースになっています。取り回しはやや大変かもしれません。ただ、個人的には好きなデザインでした。

エンジン実験グループの担当者によると「極めて薄い水素を燃焼させるようにしてNOx(窒素酸化物)を発生させていない」のが特徴。なので水素BURGMANのマフラーは触媒不要で、純粋な消音器なのだとか。「馬力は追求せずに、どこまでエコに振れるのかを考えた設計です」。

水素エンジンはそうやって「水しか出さない」も実現できるし、セッティング次第ではガソリンエンジンの8割程度の性能も出せるところまで開発が進んでいるそうです。ただ、水素関係の法令やインフラが未整備で課題が山積。たとえば街にある現行の水素ステーションでは充填圧力が合わず、バイクは充填できません。どこで入れるんでしょうか?

電動バイクの普及もなかなか進みませんが、水素バイクはさらに道険し、のようです。これまで水素バイクのことはほとんど知りませんでしたが、脱炭素社会を目指す多様な挑戦を垣間見られるのも、こういう総合イベントのいいところですね。みなさんも楽しんでください。

取材・文/篠原 知存

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この記事の著者


					篠原 知存

篠原 知存

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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