世界遺産の薬師寺(奈良市)で、JAIAが輸入EVなどの展示&試乗会を開催しました。今までEVを知らなかった人たちへ何かが伝わったのか。モータージャーナリストでこのイベントにインストラクターとして参加した諸星陽一氏のレポートです。
EV試乗で「このクルマは何cc?」という質問にびっくり

日本自動車輸入組合(JAIA)は2025年11月26日に世界遺産である奈良県の法相宗大本山 薬師寺にて「JAIA創立60周年記念イベント in 奈良 輸入電動車DX/GXの取り組み」と銘打ったイベントを開催しました。
このイベントは大きく2つのパートに分かれていました。ひとつはオープンエリアで行われた誰もが見学できる電動車展示と体験試乗。もうひとつは事前申し込みが必要で関係者を対象としたトークセッションでした。
オープンエリアでのイベントはEVやPHEV、水素燃料車などの車両展示と、充電やリサイクルなどGX(Green Transformation = 脱炭素と経済成長の両立を目指す取り組み)、DX(Digital Transformation = デジタル技術やデータの活用)に関する展示です。車両展示については、一部車両と電動バイクは終日展示、試乗会で使用されたクルマについては試乗時間終了後の15時から展示が行われました。
試乗会には筆者も同乗インストラクターとして参加しました。インストラクターは11人の自動車ジャーナリストを中心に担当。試乗用に用意された車両は10ブランド16車種。そのうち13台がBEVで、PHEV、FCEV、HVがそれぞれ1台でした。

筆者が担当したのはヒョンデのインスタークロスでした。試乗を希望した参加者に助手席や後席に乗ってもらい、EVとはどういうものか? といった基本的な部分を含めてクルマの解説を行うのが役目です。EVのトルク感や静粛性をはじめとした特性を知ってもらうとともに、高速道路を走行して先進運転支援機能の快適さと、EVとの親和性の高さも解説しました。
ちょっと衝撃的だったのが「このクルマは何ccですか?」と質問されたこと。日本EVクラブのイベントなどさまざまな機会で同乗や助手席同乗のインストラクターをすることがありますが、こうした質問を受けたのは初めてでした。EVに興味のある方とそうではない方との知識や意識の違いがまだまだ大きいことを実感しました。

急速充電体験の機会も提供
筆者の試乗時には急速充電体験もしていただきました。今回、使用した充電器はテンフィールズファクトリーのフラッシュ(関連記事)です。

ご存じの方も多いと思いますが、フラッシュの急速充電器では一般的に普及しているイーモビリティパワー(提携含む)の充電カードは使えません。通常はクレジットカードなどで充電料金を支払いますが、今回はデモンストレーションということで支払い操作は行わず、テンフィールズファクトリーの関係者が充電器操作のデモンストレーションを行ってくれました。
初めて充電体験した参加者は、ケーブルの重量に驚きながらも、意外に簡単に充電できることに驚いた様子でした。しかし、充電にとって大きな壁となるのは認証・課金の操作なので本当は認証のところから体験してもらいたかったと感じています。
世界遺産の名刹に輸入EVが勢揃い

体験試乗が大きなウエイトを占めていた今回のイベントですが、展示についてもなかなか興味深い内容でした。会場入り口付近にはアウディA6スポーツバックe-トロンパフォーマンス、ヒョンデ ネッソ、メルセデス・ベンツG580ウィズEQテクノロジーエディション1、フォルクスワーゲンID.Buzzプロ・ロングホイールベースの4輪車4台と、BMW CE02の2輪車1台が展示専用車として並びました。いずれも街中で見かけることがまだ少ないモデルでもあり、通りがかりの人も足を止めて見入っていました。

また、充電・リサイクル関連事業社などの展示もおこなわれました。そもそもEVは充電とリサイクル関連サービスとの関連が深く、エネゲート、JFEエンジニアリング、ニチコン、オオノ開發、テンフィールズファクトリー、東光高岳、プロト、UDトラックス、ボルボ・トラックセールスなどが展示を行いました。今回のイベントには役所関係の参加者も多く、東光高岳の最大350kW出力の急速充電器やオオノ開發のリサイクル関連展示に注目が集まっていました。
「阿弥陀三尊浄土図」に見守られてトークセッション

試乗会が終了した午後からはJAIAメンバー各社幹部によるDXおよびGXについての最新情報紹介などを含むトークセッションが行われました。トークセッションの会場は薬師寺の食堂(じきどう)と呼ばれる場所。創建は天平2年(730)頃、度々の火災で焼失し、2017年に再建された際に奉納された「阿弥陀三尊浄土図」が見守る大空間で厳かな空気に包まれたものとなりました。
トークセッションには自動車ジャーナリストの清水和夫氏がコメンテーター、JAIA副理事長兼専務理事の入野泰一氏がモデレーターとして登壇。第一部にはインポーターのキーパーソンが登壇し、第二部ではインポーターとエネルギー産業、リサイクル関係企業などの方々が登壇しました。
トークセッションの内容をまとめると第一部、第二部を通してバッテリーEV、プラグインハイブリッド、マイルドハイブリッド、燃料電池車など「多様な選択肢の提供」。自動運転技術レベル2&3の開発状況、バッテリーリサイクルやカーボンニュートラルへの取り組みなどの「サステナビリティ」、「協調領域と競争領域のバランス」が今後のポイントとなるということでした。
トークセッションの模様は、YouTubeのJAIA公式チャンネルでアーカイブされています。
JAIA創立60周年記念イベント in 奈良(YouTube)
輸入EVの車種はここ数年でどんどん増えて、バリエーションが広がっています。EV普及がなかなか進まない日本で、輸入EVのプレゼンスが確実に高まっていることを感じるイベントでした。
取材・文/諸星 陽一






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