日産が新型「日産リーフ」のグローバル発表を6月17日に行うことを予告。先行して公開した魅力を紹介するインサイトビデオシリーズ3部作が出揃いました。新型リーフはどんな電気自動車になるのか。日本に蔓延するEV懐疑論を吹き飛ばす人気車種になるのか。注目ポイントを紹介します。
ワールドプレミア(発表)は6月17日21時〜
日産が以前から2025年に発売することを予告していた電気自動車、新型「日産リーフ」(新型リーフ)のグローバル発表を6月17日(火)21時から行うことを公式サイトなどで公表しています。併せて、新型リーフの魅力を深掘りするインサイトビデオを順次公開。エピソード1から3までの3本が出揃いました。
日本はもちろん世界でも市販EVのパイオニアであったリーフですから、新型の発表に期待して注目していた方は多いかと思います。また、EVが気になるけど、国産の魅力的な車種が少ないと感じていた方にとっても、興味深いはず。
はたして、新型リーフはEVとしてどんな進化を遂げているのか。インサイトビデオの内容をもとに注目ポイントをピックアップしてみましょう。
※記事中画像はインサイトビデオから引用。
2010年から累計70万台の実績をアピール
何がどう進化したのか。3本のインサイトビデオにわかりやすく構成されているので、その内容に沿ってピックアップしてみます。
新型「日産リーフ」Ep1 : なめらかで大胆、考え抜かれたデザイン | 日産(YouTube)
まず「なめらかで大胆、考え抜かれたデザイン」と題されたエピソード1。冒頭から解説に登場したグローバルプロダクトストラテジーVPのリチャード・キャンドラー氏が強調したのはリーフの実績です。
2010年の発売以来、グローバルで累計70万台を販売し、累計走行距離は「280億km」を超えていることを紹介し「お客さまのニーズを見極め、そのニーズがどのように変化しているのかを見つめ続けてきた」ことをアピールしています。
販売台数については、テスラ「モデルY」は2023年の1年で122万台を販売、エンジン車を含めて世界でいちばん売れた乗用車になっており、リーフの累計販売台数がことさら「すごい」わけではないものの、15年の歴史を刻み、日産の屋台骨を支えるべき中心車種になることを期待される新型リーフに、日産が注ぎ込んだ思いの強さを感じ取ることができました。
新型リーフは「エンジン車やハイブリッド車に代わる信頼できる選択肢となることを目指した」ことを紹介。その目標を実現するために注力した3つの領域を強調します。
新型リーフ開発で注力された3つのポイント
●なめらかで力強いデザインを追求
家族が求める現実的なクルマでありながら情緒にも理性にも訴えるクルマの実現。
●長距離移動の実現
高速走行時の効率性を追求し300〜500kmという休日のロングドライブも安心。
●ストレスのない充電体験
EVユーザーの平均的な充電時間である約14分で最大250km走行分の充電が可能。
北米ではプラグアンドチャージに対応
ここで注目すべきは充電性能でしょう。急速充電の最大出力や電費などの詳細はまだ明らかにされていませんが「250km走行分」は電費が8km/kWhとして14分で充電できる電力量は31〜32kWh程度に相当します。急速充電性能としては日産アリアと同じ最大130kWだろうと推計できます。
高電圧システムを採用してさらに高出力での充電を可能にしているヒョンデIONIQ 5などの車種には及ばないものの、とくに日本においては、すでに高速道路SAPAやコンビニ駐車場などへの整備が進んでいる90kW〜150kW器の性能を存分に享受できる実用的なスペックといえるでしょう。
また、説明のなかでキャンドラー氏は「米国市場向けにはプラグアンドチャージ機能にも対応する」ことを明言しています。プラグアンドチャージ(PnC)とは、テスラ車が独自のスーパーチャージャーで充電する際のように、EVにプラグを差し込むだけで認証課金まで完了するシステムのこと。日産は北米で「NACS(North American Charging Standard)=テスラの充電規格をもとに策定された国際規格」を採用することがすでに発表されており、PnC実現はその恩恵といえるでしょう。ただし、テスラスーパーチャージャー以外の第三者が設置したNACS対応の充電器でトラブルなくPnC充電ができるのかどうかは、まだよくわかりません。
新世代のEVとしてフルモデルチェンジ
インサイトビデオに紹介された内容から見えてくるのは、新型リーフは新世代のEVとして評価すべき着実な進化を遂げているということです。
最大のポイントが、EV専用に開発された「CMF-EVプラットフォーム」を採用したこと。初代、そして現行のリーフはエンジン車のプラットフォームを流用しており、EVならではの長所を活用しきれていませんでした。
さらに、モーターやインバーターなどを一体化した新開発の3-in-1ユニットによって従来比で10%小型化。エアコンユニットを車室側からエンジンルーム内に移動して室内空間を最大化するとともに、フルフラットフロアを実現しています。
エピソード2では、チーフビークルエンジニア(開発責任者)の磯部博樹氏が登場。リアにマルチリンクサスペンションを採用して横剛性が66%向上したこと、最小回転半径を10センチ短縮して5.3mになったこと。そして、エンジニアリングチームの最優先事項が「熱マネジメントの最適化」であり「バッテリーが生み出すエネルギーを一切無駄にしない」ことを追求したことなどの詳細を紹介します。
磯部氏は2代目リーフのCVEでもあり、2019年、ZE1リーフの「e+」発表時にインタビューしたこともあります。
【関連記事】
新型日産リーフの磯部博樹CVEインタビュー 『e+』が目指した航続距離信仰からの脱却(2019年3月26日)
インタビューで伺ったところ、磯部氏自身が中古で購入した初代ZE0リーフ(24kWh)のオーナーとのことでした。当時から「急速充電を繰り返した時の熱ダレ(バッテリー温度が上昇して充電速度などに制限が掛かる)をなんとかしてほしい」や、「走る蓄電池というのならアクセサリーコンセントの装備を」など、ユーザー視点でぶしつけな質問(というかお願い)をしていましたが……。
待望のアクセサリーコンセントも装備!
インサイトビデオのエピソード3では「車内にコンセント」があること。また、普通充電口に接続して電気を取り出す「アクセサリーコネクター」が用意されることも紹介されました。
EVsmartブログで記事にしてきた「いろんなこと」は、ZE0オーナーでもある磯部氏にとっては重々承知。e+からおよそ6年、満を持して手掛けた新型リーフで、ユーザーの期待に応える新世代のEVを生み出してくださった! ということなのだと思います。
インサイトビデオでは、Google mapと連動して目的地に向かう途中の充電スポット案内などをしてくれる「インテリジェントルートプランナー」を採用。また、ナビのルート情報に基づきバッテリーの温度を最適な状態に制御してくれる「バッテリーコンディショニング」機能を搭載していることもアピールされていました。
どのくらい実用的な機能かどうか、試乗できる日が楽しみです。ともあれ、2代目への進化がやや中途半端だったことを思うと、3代目となる新型リーフは磯部氏を中心とした日産の方々渾身の作。文字通りのフルモデルチェンジを遂げたのであろうと期待しています。
ビデオでは紹介されていませんでしたが、きっと、運転席のシートも電動になっているはずと期待しています。
日本でもEV普及が進展していくために不可欠なのは、いろんな記事で繰り返しているように「多くの人が欲しくて買える国産EVの車種が増えること」です。新型リーフが、新世代の魅力的なEVに進化したことは間違いありません。あとは、値段です。
搭載されるバッテリー容量や車両価格は、17日のグローバル発表で明らかになるはず。新型リーフが、EV購入に踏み切れなかった多くの日本のユーザーの心に刺さるクルマになることを願っています。
新型「日産リーフ」- Ep2: パフォーマンス、快適さ、効率性 | 日産(YouTube)
新型「日産リーフ」ーEp3: EVライフをより快適に | 日産(YouTube)
取材・文/寄本 好則
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