テスラMODEL XとジャガーI-PACE、アウディE-TRONの電費を比較

ドイツの電気自動車レンタカー会社「nextmove」が、自社が所有するテスラ「Model X」、ジャガー「I-PACE」、アウディ「e-tron」という3台の高級SUVの電費を実走比較した結果を、ドイツのウェブメディア『FOCUS Online』が伝えています。結果は、Model Xの電費性能が他の2台を凌駕しました。

テスラMODEL XとジャガーI-PACE、アウディE-TRONの電費を比較

『Tesla schlägt Audi und Jaguar beim Verbrauchstest um Längen』(FOCUS Online)

電気自動車を上手に活用するためには、電費性能、つまり、同じ電力でどのくらいの距離を走行できるかを知っておくことが大切です。日本ではJC08モードやWLTCモードによる電費がカタログなどに表記されていますが、実際にそんなに走れないのは常識となっています。アメリカのEPA基準による電費が実情に近いというのもよく知られたことですが、電気自動車を運転すると、電費の変動はエンジン車の燃費変動よりもデリケートで、ドライバーの技術や速度、地形などの影響が大きいことを実感します。

つまり、実際の電費を確認するには実走してみるのが一番。実は、EVsmartブログでも日本国内で購入できる電気自動車の実走電費検証企画を考えていたのですが、ドイツのレンタカー会社に「先を越されちゃったな」という感じです。

テストした車両の条件など

FOCUS Online の記事が伝えている、nextmove社による電費比較テストの概要を紐解いていきましょう。まず、テストに使用した車両についてです。ホイールサイズはe-tronのみ21インチ。あとの2台は20インチということです。

●アウディ e-tron
バッテリー容量/95kWh
※アウディから同社に提供された量産前のテストドライブ用車両。

●ジャガー I-PACE
バッテリー容量/90kWh
※同社所有レンタカー用車両

●テスラ Model X 90D
バッテリー容量/90kWh
※同社所有レンタカー用車両

さらに、テスト場所や条件についても紹介されています。

●ミュンヘン〜ランツフート間のアウトバーン(片道約87km)を往復
●最高速度130km/h、平均速度120km/hを目安
●3台とも冬用スタッドレスタイヤを装着
●外気温8℃、車内温度は20℃に設定

3台の運転は電気自動車に慣れたドライバーが担当し、途中でドライバーを変更することで運転技術による電費への影響を平準化。スリップストリームの影響が出ないよう、十分な車間距離を取って走行したそうです。

気になる実走テストの結果は?

実走テストの結果は、100km走行当たりの消費電力で示されています。図にしてみました。

最も電費がよいという結果になったテスラModel Xは、100KM当たり24.8kWhの電力消費。アウディe-tronは23.5%多い30.5kWh、ジャガーI-PACEはModelXに比べて26%多い31.3kWhを消費しました。このテストはメーターに表示されるオンボードコンピューターの数値ということなので、厳密には少々の誤差があるかも知れませんが、おおむね「実電費」といっていいでしょう。

現在、すでにテスラModel X 90Dは市販されていません。電費比較テストのデータをもとに、Model X 100Dを加えて、満充電からの航続距離比較も紹介されています。

とくに100Dを比較対象とした場合、車両価格もI-PACEやe-tronに比べて高額ではありますが、そもそも「同じ電力あたりで走れる距離でテスラのほうが優れている」のが事実、ということです。

電気自動車に対する「魂」の差ではないだろうか?

自動車メーカーとしてテスラは新参者に過ぎません。ところが、電費性能を比較してみると、アウディやジャガーというエンジン車で豊富な実績があるメーカーの、現時点でのフラッグシップEVと比較して、テスラのほうが圧倒的に優れているという事実は興味深いところです。

詳細に検証するのであれば、空気抵抗値やメカニズムの違いを事細かに挙げていくべきなのでしょうが、最大の違いは技術以前、電気自動車に向き合う「魂」の差ではないかと感じます。電気自動車専門のベンチャー企業として着実に歩んでいるテスラに対して、ジャガーやアウディに限らず、従来のエンジン車メーカーはエンジン車の役割を「置換」するツールとして電気自動車を捉えているのではないでしょうか。

「電気自動車として最高峰の性能を与えるために大容量電池を搭載」するテスラ。それに対して「エンジン車からの乗り換えユーザーができるだけ不満を抱かないよう大容量電池を積み込む」既存メーカーの電気自動車。同じように90kWhオーバーの大容量電池を搭載するにしても、この違いは大きいのではないかと思います。既存メーカーが電気自動車のフィールドで先行するテスラを捉えるには、もう少し時間がかかるのかも知れません。

(寄本好則)

この記事のコメント(新着順)3件

  1. 私も もうじき 70代入りします。
    公営バスが1日2本しか走らない 地方小都市の団地住まいなので
    日々の暮らしに車が欠かせません。
    とりあえず 昨年サポカー(暴走防止機能付き)に乗り換えましたが
    いずれ数年先以降の移動手段確保が 現実問題。

    電気でもエンジンでもかまいませんが
    適切な自動運転車と安全な道路環境整備を
    急いで整備されることを強く望んでいます。

    とくに幹線国道の横断を必要としますが
    交差点は 長距離運転手の高齢化、労働環境の劣悪で
    超危険地帯化しています。

    近い交差点で
    信号停止している高校生を乗せたバスの後方から
    高齢過労運転手の運転する長距離トラックが追突する重大事故も起き
    生活車両側の対策だけでは済まない。

    大型トラック・バスへも
    速やかに暴走防止装置や安全装置の設置義務付け(法制化)と
    助成制度の拡充で 速やかに完全装備される政策の促進活動を強く希望します。

  2. 電気自動車には20年前から期待していました。
    ガソリン車を超えるテスラの登場は想定外でその高性能は評価しますが本来電気自動車は電池とモーターの単純な組み合わせで小型で軽量安全な低価格車を実現するべきだと考えて現在使用中の車を15年前に新車で購入した際次は電気自動車であろうと考えたのですが既存のメーカーは低価格車が普及する事を良しとしないのかあらゆる性能向上が遅れていると思います。

    1. ワタナベ様、コメントありがとうございます!小型で軽量安全というのが理想というのは同意いたします。現実には電池がどうしても軽量にならない一方、価格については少しずつ低価格化が進み、中国Great Wallや中国Kandiが先端を走っています。
      現実問題として、バッテリーの低価格化は生産量に直結します。販売台数が見込める中国メーカーやテスラが低価格な車両を作れる理由はそこにあります。日本国内程度の販売台数では、電気自動車で利益を出すのは非常に難しいのが現実です。ただこれから日本でもNKMV
      http://nmkv.com/
      さんが軽自動車規格でのEVを発売されるのではないかと思います。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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