これも電気自動車? 日本発の「空飛ぶクルマ~SkyDrive SD-03」が空を飛んだ日

空飛ぶクルマ「SkyDrive SD-03」。動力は電気モーターなので、これも電気自動車と呼んでもいいのでしょうか? 8月25日に行われた公開試験飛行について、カーライフエッセーストの吉田由美さんからのレポートをお届けします!

これも電気自動車? 日本発の「空飛ぶクルマ~SkyDrive SD-03」が空を飛んだ日

開発したのは「スカイドライブ」というベンチャー企業

今は2020年。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」では、とっくに車が空を飛ぶ時代が来ていると思われていました。しかし、実際には車は車。もちろん進化はしていますが、空を飛ぶことはできません。。

しかし、海外のモーターショーに行くと、有人ドローンをはじめ、人が乗る「空飛ぶクルマ」がちらほら展示されるようになり、着々と「実現」が近づいていることを感じます。

そして日本でも、ベンチャーのSkyDrive(スカイドライブ)が開発を進め、2020年8月25日には最新の空飛ぶクルマ「SD-03」の有人飛行の公開試験を行いました。私も現地に行ってきましたよ。

場所はスカイドライブの開発拠点である愛知県の豊田テストフィールド。敷地面積は約1万㎡。今回は一人乗りの「SD-03」が世界初公開されて、さらに初めての飛行試験が公開されます。

スカイドライブは2012年に有志団体CARTIVARORとして発足し、2017年に1号機「SD-01」を設計開始。2018年には株式会社SkyDriveを設立し、今回お披露目された「SD-03」は3機目となります。

2機目として作った無人の運搬用の小型ドローン「CargoDrone」は、積載重量物を30㎏まで輸送でき、2020年5月からすでに販売を行っています。

4分間の飛行が披露されました

そして今回、お披露目された「SD-03」。

全長4m、全幅4m、全高2mの世界最小の空飛ぶクルマ。ただし、こちらは「空飛ぶクルマ」の「クルマ」部分はまだ無くて、陸上は走行せず、空を飛ぶということに特化したタイプです。

駆動方式は電動で、ローターは4か所に2つづつ配置されています。8個のローターを採用したことで、万が一どこかにトラブルが出ても安全に飛行を続け、着陸できるそうです。

デザインのキーワードは「プログレッシブ」(先駆性・先進性)&「クール」とのこと。メインボディはサイドから見たときに一体感を保ちながらS字に大きく分割され、プロペラのような躍動感を表現。フロントランプと赤のテールランプは機体が飛んでいるときに下から機体の方向が分かるようにデザインされています。

「夢とカリスマを盛り込んだ空飛ぶクーペ」を目指し、ボディカラーのパールホワイトは未来の空に飛ぶ白い鳥、空飛ぶ雲をイメージ。青は安全な未来の空をデザインしたそうです。

この空飛ぶクルマをデザインしたのが元シトロエンのデザイナー、山本卓身氏。山本氏はフランスで活躍する日本人デザイナーで、2008年のパリサロンにて「GT by シトロエン」というスーパーカースタイルのコンセプトカーをデザイン。もともとは「グランツーリズモ」の中に登場する車でしたが、世界に一台の実車を作り、パリのモーターショーに出展したのです。

山本氏はその後、PSAプジョーシトロエンを退社し、「グランツーリズモ」のポリフォニー・デジタルのデジタルディレクターを経て、2017年にTakumi YAMAMOTOを設立。2018年よりスカイドライブの前身CARTIVATORのデザインディレクターに就任して、これまでの3台はすべて山本氏が手掛けたデザインです。

コンパクトで安全であることが特長です

最高技術責任者の岸信夫氏によると、前世代機と比較すると、安定して飛行制御ができるようになったことや、操縦しやすく安全性が高くなったのが特長。電動推進システム、飛行制御システム、機体構造などの設計、試験、機体構造、飛行試験中の機体状況モニター装置などを導入しているそうです。「SD-03」の強みは、軽量でコンパクトであること。そして安全性を挙げていました。

具体的な進化の内容としては、バッテリー効率が年に7%づつ上がり、プロペラやモーターの効率を良くし、全体的に軽量化を実現できたとのこと。しかし、詳しいバッテリーの情報は公開されませんでした。

自動運転の実現も目指していますが、今回の公開試験飛行は「自動運転」ではなく、「手動運転」で行っていたそう。安全のため、私たちは金網とアクリル板に囲まれているフィールドの外から見学しましたが、「SD-03」は、垂直に2メートル飛び上がり、ぐるっと1周。約4分間の飛行を見せてくれました。

それにしても結構、音がうるさい。実際の飛行の様子は、私のyoutube「吉田由美ちゃんねる」で紹介しているのでご覧ください。

最新『空飛ぶクルマ』有人飛行試験取材 #吉田由美ちゃんねる

スカイドライブのフライトを専属でこなすパイロットの安藤寿朗氏の着ていた服が気になったので聞いてみると、名前は言えないそうですがバイクメーカーの新素材を使ったもので、革のつなぎと同等の強度と耐火があるらしい。アンダーウエアも自動車のレース用で、自身も体重を10㎏落として今回のテストフライトに臨んだそうです。しかも試験機にはエアコンが無いため、テストの度に毎回1㎏くらい体重が減るとか。

スカイドライブでは「空飛ぶクルマ」を2023年に実用化することに向けて、全力で進んでいます。2023年には東京や大阪の湾岸エリアにおいて2~3か所を巡るおもに観光用のサービスを始めるプランも。エンタテイメント、エアタクシー、救命救急などでの活躍を期待しているそうです。

またスカイドライブ社に対する企業の視線も熱く、100社以上の企業がスポンサーとして応援しています。メイドイン・ジャパンの「空飛ぶクルマ」ができるだけ早く実現してくれることに期待しています!

(取材・文/吉田 由美)

この記事のコメント(新着順)6件

  1. 九州大学で超電動モーターを使った航空機の研究を行っています。超電導にすれば、軽量化・小型化・ハイパワー化が可能になります。乗員200人程度の中型航空機を想定しているようですが、スピンアウトして「空飛ぶ自動車」も開発したいみたいです。400〜500kmの航続距離をめざしているそうです。
    問題はバッテリですが、指摘のとおり重くて容量が少ないので、最初はジェット燃料を使ってガスタービンで発電してモーターを回すみたいです。それでも、燃費は今のジェット機の3割程度になるそうです。CO2排出もかなり削減できます。
    ただ、これには機体の形をNASAのN3-Xみたいにして、モーターを複数主翼の後ろに配置する必要があります。
    大学の研究なのですぐに実現という話ではありませんが、ボーイングと共同開発しているそうです。
    なお、ドローンではありませんが、セスナ型の電動飛行機はスロベニアの会社が販売しています。

  2. 技術の事は分かりませんが、今の自動車が世の中に出始めた頃、
    「こんな鉄の塊が走り回ったら危なくて仕方ない」
    という声はきっと沢山あったんだろうと思います。
     
    危なくて仕方ないのはその通りですが、だから普及しなかったか?というとそうではないわけで、こういう物についても、今は「こんなのがその辺飛び回ったら危なくて仕方がない」という声も沢山有ると思いますが、きっと100年後にはそういう声が笑われる世界になるのかな?

  3. オスプレイの様なVTOLなら水平移動には翼が使えますから
    航続距離を稼ぐには圧倒的に有利でしょうね。
    ただし、揚力を稼ぐには翼は巨大になり、とても車二台分の
    スペースには置けなくなるでしょうし、翼で高速飛行すると
    都市部では衝突事故が不安ですね。
    飛行機ではなく「空飛ぶクルマ」というコンセプトだと
    マルチコプターの方が似つかわしく思えますが、そうなると
    エネルギー密度がポイントになりますね。

    1. SaiSaiJpn様、コメントありがとうございます。勉強になりました。VTOLは都市部では現実的じゃないですね。とはいえドローンみたいにすると密度・航続距離でEVと同じ問題が出てくるわけですね。
      まだまだ先の技術なのかも知れません。

  4. これを電気自動車と呼ぶとして、BEVでは重量エネルギー密度的に
    実用的な航続距離を出すのは無理でしょうね。
    車と違って大容量のバッテリーを積めば重くて飛べませんし、
    空では電欠は死に直結します。
    電動にしてもシリーズHV方式にすれば僅かな燃料で長大な航続距離
    を実現できると思いますが。

    1. SaiSaiJpn様、コメントありがとうございます。飛ばすとなると難しいんでしょうね。特に重量が増えると、、エネルギー密度が問題になります。
      ただあのイーロンマスク氏もVTOLに興味を持って研究しているらしいので、もしかすると将来何かブレイクスルーがあるかも知れません。このドローン方式よりはVTOLのほうが密度は少なくて済むように思います。どうでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					吉田 由美

吉田 由美

短大時代からモデルをはじめ、国産自動車メーカーのセーフティドライビングインストラクターを経て、「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の目線で、自動車雑誌を中心にテレビ、ラジオ、web、女性誌や一般誌まで幅広く活動中。

執筆した記事