ソニー・ホンダモビリティの新型EVは2025年発売〜具体的商品像は謎のまま

2022年10月13日、6月に設立を発表していた新型EVを開発・販売するための新会社「ソニー・ホンダモビリティ」の設立発表会見を開催。2025年内に発売することは表明されたものの、具体的にどんなEVとなるかは来年1月のCESで発表予定。スマホジャーナリストの石川温(つつむ)氏によるレポートです。

ソニー・ホンダモビリティの新型EVは2025年発売〜具体的商品像は謎のまま

具体的なEV像はCESで発表する予定

ソニー・ホンダモビリティが設立記者会見を行った。3月に行われた記者会見は、ソニーからは吉田憲一郎社長、ホンダからは三部敏宏社長が登壇し、両社による「モビリティ分野における戦略的提携に向けての基本合意」に関する説明であった。

今回は、すでにソニー・ホンダモビリティ株式会社という会社ができており、ホンダ出身の水野泰秀会長兼CEO、ソニー出身の川西泉社長兼COOによる、新会社の意思表示、方向性などが示された。

具体的な商品は、2025年前半から先行受注を開始し、同年中に発売。デリバリーは2026年春から北米でスタートし、2026年後半から日本という流れになる。

価格帯、車種などは明らかにされなかったが、2023年1月4日、ラスベガスで何らかの発表があるとアナウンスされた。1月4日は、例年、ラスベガスで開催されているテクノロジー見本市「CES」のプレスデーにあたる。

ソニーにとってCESはとても思い入れの強い場所と言える。

ソニーが世間に初めてEVのコンセプトカー「VISION-S」を発表したのも2020年のCESだった。その2年後となる2022年のCESでは、VISION-Sの第2弾となるSUVタイプも発表。さらにソニーとしてEV事業参入を本格検討するため、「ソニーモビリティ」という会社を設立するとまで発表したのだ。

ソニーモビリティとしての第1弾商品が北米から発売されることを考えても、CESという世界的に情報発信できる場所を重視していることがわかるし、アメリカでかなりのシェアを持つ「テスラ」を相当、意識しているのだろう。

ソニーとホンダの戦略と役割分担は?

今回のプロジェクトに関して、ソニーグループには、ホンダと出資比率50%同士で設立した「ソニー・ホンダモビリティ株式会社」と、ソニーが単独で出資する「ソニーモビリティ株式会社」という2つの会社が存在している。

果たして、その違いは何なのか。

ソニー・ホンダモビリティは、実際に両社の技術を掛け合わせ、2026年に向けて新しいEVを作っていく会社だ。車台のプラットフォームは新規で起こし、製造はホンダの北米工場で行う。販売はオンラインが中心だ。

記者発表では「高付加価値」をアピールしていたことから、高級車路線になることだろう。EVに関してはすでにホンダはGMと組んでいるが、こちらは「量販価格帯のグローバルEVシリーズ」と言及しているため、ホンダとソニーモビリティのクルマは棲み分けされていくものと思われる。

一方、ソニー100%出資の「ソニーモビリティ」はモビリティ向けのプラットフォーム開発だけでなく、aiboやドローンなどAIロボティクスの開発を担う会社だ。これまで川西氏が手がけていた事業をまるごと担当するイメージだ。

ソニーモビリティが行う「モビリティ向けプラットフォーム」の開発とは、車内空間において、クラウドとつながり、エンターテインメントなどを提供するプラットフォームという意味合いになる。

もともとソニーがVISION-Sを開発した当初、会社としてはクルマ自体を作り売りたいというわけではなかった。ソニーとして、車載用のイメージセンサーをもっと売りたいため、具体的にソニーのイメージセンサーの性能がいかに素晴らしいかのアピールするための「ショーケース」的な位置づけであった。

また、今後、自動運転が実用的になれば、ドライバーはかならずしも運転に集中しなくても良くなってくる。車内空間を過ごすのにも余裕が出てくることから、もっとエンターテインメントを楽しめるようになる可能性が出てくるため、ソニーとしては、自社の持つコンテンツを楽しめる車内空間をつくりあげようという商機を見いだしたのであった。

そうしたプラットフォームを作るのが「ソニーモビリティ」という会社である。ソニーモビリティは何も「ソニー・ホンダモビリティ」だけにプラットフォームを提供するという考えではないようで、完成したプラットフォームをソニー・ホンダモビリティ以外の自動車メーカーにも売り込むつもりのようだ。

ソニーモビリティとすれば、まずはホンダが展開するすべてのEVに採用してもらうというのが手っ取り早かったりもするのだが、一方でホンダはグーグルと提携し、Google MapやGoogle アシスタントなど、車載向けコネクテッドサービスで協力すると発表済みであり、2022年後半の新型車から搭載するとしている。

さらに2022年6月、アップルはiPhone向けOSであるiOS 16のCarPlayにおいて、車両のパラメーターをリアルタイムに表示し、クルマの設定なども変えられる操作性を導入すると発表。そのパートナーメーカーとしてホンダのロゴを掲出している。

ソニーとしては、EVを事業化するためにようやく組めた本命のパートナーがホンダだった感があるが、一方のホンダにとってソニーはグーグルやアップルなど、様々なパートナーと組んでいるうちのひとつという見方もできる。

ソニーモビリティは、ソニー・ホンダモビリティのクルマでグーグルにもアップルにも真似できない「高付加価値」を作り上げ、ホンダのEVとの差別化を図っていく必要がありそうだ。

ソニー・ホンダモビリティ株式会社 設立発表会(YouTube)

※冒頭写真、握手のアップ写真はYouTube動画から引用。

(取材・文/石川 温)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. ソニーと書けてホンダと説く、その心は?
    1.創業者のカリスマ性
    2.社内の自由闊達さ・ワイワイガヤガヤ社風
    3.いずれもモノづくりの本場・中部圏発祥
    …これだけ共通点があればコラボも当然と判断します。目指せジャパニーズドリーム!

    さて本題へ、個人的に Honda e と Vision-S の中間となる車種が出てくれることを祈ります。両社の技術思想を融合すれば面白い車が作れると信じて。
    そしてホンダも軽EV参入を表明しているから、まずはそちらが先決。N-BOX/N-VANをEV化すれば日本の少子高齢化傾向にもマッチするし三菱自工が提案した「EVは軽規格から」にも合致するからそこで地盤を作るべきかと。商用はN-VAN EVでホンダらしさを、乗用はN-BOZへソニーの提案をどれだけ盛り込むかがカギと見ています。
    ※それ以前に政府や行政が庶民の生活を向上させる根本的手段を補助金以外で達成させるべきですが!!(爆)政治が腐敗してたら絵に描いた餅やで。

    あったらコワイ、プレイステーション付き電気自動車www でも充電中に30分くらいで終わるゲームがプレイ出来たら面白いとは思いますが。アクションゲームやったら1~2ステージクリアで30分程度なんで急速充電放置もなくなるんやないですか!?
    ※それを逆手に車内でしかプレイできないゲームを作る手が出てきそうです。グランツーリスモあたりが最適!?

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					石川 温

石川 温

月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜午後8時20分からの番組「スマホNo.1メディア」に出演(radiko、ポッドキャストでも配信)。NHKのEテレで「趣味どきっ! はじめてのスマホ バッチリ使いこなそう」に講師として出演。近著に「未来IT図解 これからの5Gビジネス」(エムディエヌコーポレーション)がある。ニコニコチャンネルにてメルマガ(https://ch.nicovideo.jp/226)も配信。

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