ドイツの自動車賞表彰式でイーロン・マスクが「ベルリン付近にギガファクトリーを作る」と明言

2019年11月13日、ドイツ最高峰の自動車賞のひとつといわれる『ゴールデンステアリングホイール賞2019』表彰式に、テスラCEOのイーロン・マスク氏が登壇。「ベルリンの近くにギガファクトリーを作る」と発表して会場を沸かせました。また、フォルクスワーゲングループ会長のHerbert Diess(ヘルベルト・ディース)氏と軽妙なトークを展開。興味深いコメントが飛び出しました。

ドイツの自動車賞表彰式でイーロン・マスクが「ベルリン付近にギガファクトリーを作る」と明言

モデル3がミドルクラスで最高賞を受賞

ゴールデンステアリングホイール賞は、ドイツの「Bild am Sonntag(ビルド日曜版)」と自動車専門誌「Auto Bild(オートビルド)」が主催する自動車賞で、今年43回目、ドイツはもとよりヨーロッパで最も権威ある自動車賞のひとつに位置づけられています。

受賞車種は読者投票や自動車ジャーナリストなどから構成される審査員の評価に基づいてクラス別に選ばれます。今年の受賞車種を見ておきましょう。

スモール/ AUDI A 1 Sportback
コンパクト/ BMW 1 Series
ミッドサイズ/ Tesla Model 3 (EV)
スモールSUV/ Mazda CX-30
ミッドサイズSUV/ Jaguar I-Pace (EV)
ラージ SUV/ Audi e-tron (EV)
スポーツカー/ Toyota Supra
Most attractive car Auto(最も魅力的なクルマ)/ BMW 8 Series
Best car under 25,000 euros(25,000ユーロ以下のベストカー)/ Skoda Kamiq
Best car under 35,000 euros(35,000ユーロ以下のベストカー)/ Kia XCeed
Best innovation(ベストイノベーション)/ Michelin airless tires

スポーツカー部門では、トヨタのスープラが受賞したんですね。また、スモールSUV部門では、マツダのCX-30が受賞。おめでとうございます。

モデル3は「ミッドサイズ」部門で受賞。イーロン・マスク氏はトロフィーを受け取るために登壇。壇上でのインタビューの中で「実は発表があります。歓迎してもらえると良いんですが・・・テスラのギガファクトリーをベルリン付近に作る決定をしました」と発言し、会場から大きなどよめきが上がったのでした。

その後、同じ壇上にフォルクスワーゲングループ会長のヘルベルト・ディース氏が登場し、マスク氏とともに司会者などからの質問に答えていきました。

表彰式の様子は、YouTubeで、Auto Bild誌のチャンネルにライブ中継の様子がアーカイブされています。マスク氏の登場は41分過ぎくらいです。


※記事中の画像はYouTubeからの引用です。

気になるコメントをピックアップ

壇上での、司会者を交えたマスク氏とディース氏のコメントの中で、少し気になる言葉をピックアップしておきましょう。

【司会者】おめでとうございます。(今回の結果は)あなたにとって驚きの結果ではなかったですよね?
【マスク氏】ありがとうございます。モデル3を作るすべてのテスラスタッフの分も言っておきます、素晴らしいです。実は発表があります。歓迎してもらえると良いんですが……、テスラのギガファクトリーをベルリン付近に作る決定をしました。
【司会者】それはニュースですね! この会場にビッグニュースとともに来てくれたんですね、すごい!

海外メディアの授賞式を伝えるニュースでも「ベルリンにギガファクトリー」というこの発言が大きな見出しになっているものが目立っていました。いわゆる、おいしいところをかっさらってしまうあたりは、さすがイーロン! というべきでしょうか。

【司会者】(ディース氏が登壇し)さて、お二人はお互いを良く知っていますよね。カリフォルニアで時々会っているようですね? 何をするんですか?
【マスク氏】ロックスターのように激しいパーティをしているよ。……車について話します、未来の車の話を。
【ディース氏】まずはじめにここドイツで、他の車を差し置いての受賞、おめでとうございます。素晴らしい偉業です。私達は頻繁に会うわけではないですが、数年来の知り合いです。私達は「CO2排出量の削減は電気自動車なくしてはあり得ない」というヴィジョンを共有しています。また「自動車がインターネット機器になってきている」という考えも共有しています。コネクテッド化され、オンラインになっていて車はとても安全になります。完全に環境にも優しいものになります。
私達は時々会っていて、情報をアップデートするのは良いことだと思っています。(イーロンに向けて)この分野のパイオニアになって、私達を引き上げてくれてありがとう。イーロンはとてもイノベティブで皆をドライブしてくれます。バッテリーやコンセプトについて話す時間は価値が高いもので、彼は先見の明を持っています。

表彰式の席でのお祝いの言葉でもありますが、自動車業界の雄であるフォルクスワーゲンのトップが、イーロン・マスク氏に対して最大限のリスペクトを示しています。電動化への強い決意も感じます。

【司会者】問題は、ドイツがe-モビリティに関して非常に遅れていることです。もしかすると10年も……。どう思いますか?
【マスク氏】まず、私はドイツがそこまで遅れているとは考えていません。(中略)テスラを始めた時は、皆が私達を馬鹿だと思っていました。正直自分でも馬鹿だと思いました。でも、究極的には、持続可能なエネルギーを使う未来を作り出すのが大事だと思ったし、環境に良い社会を実現できても、最終的に石油は使い果たされます。石油はリサイクルできないですし。僕が電気自動車に興味を持ったのは高校生の頃で、環境保全が重要になると思ったし、物理的な面でも持続可能で、長持ちする、経済的なものが必要だと考えました。
【ディース氏】電気自動車は競争力を持ち、競争は開かれたものです。実現可能なのが見えたんです。テスラ、イーロンが証明しました。(中略)e-モビリティは楽しくて、クールで車はより感情を見せるようになると思います。さらにイーロンが私達を引き上げてくれたことを嬉しく思っています。しかし現在ドイツ産業もEVにかなりの投資をしています。(イーロンに向かって)あなたが警戒せざるを得ないようにしますよ。
【マスク氏】ドイツは間違いなく素晴らしい車を作ります。最高の車はドイツで作られてきましたし、皆それを知っています。ドイツでギガファクトリーを作るのもそういう理由からです。エンジニアリングとデザインセンターもベルリンに作る予定です。ベルリンには世界でも最高のアートがあると思うからです。

この後、司会者からの質問にマスク氏が答え、ギガファクトリーの建設予定地が「ベルリンエリアの新しい空港の近く」であることを明かします。

【司会者】最後の質問です。あなたのプライベートでの自動車は何ですか?
【マスク氏】最近は子供も大きくなったのでモデルXに乗っています。でも普段使いはモデルSです。(他社のクルマは? の質問に答えて)4台のモデルT(20世紀初頭のフォードの名車)と、67年の初代ジャガーEタイプも所有しています。
【ディース氏】今はまだ(EVとガソリンの)間にいます。数日前からIDにも乗っています。でもプライベートな車は今も愛するゴルフGTIです。世界でも最高の車の一つだと思います。また e-up! にも乗りまして、これは運転が楽しかった。もうすぐ(EVに)変えるでしょう。

ヘルベルト・ディースさんは、もうIDに乗っているんですね。うらやましい!

ベストイノベーション賞は「エアレスタイヤ」が受賞。カテゴリー別の受賞車9台のうち、EVはモデル3のほか、ジャガーアイペイス、アウディe-tronと、3台も選ばれています。発売される車種の数から考えると、EVは優れたクルマになりやすい、とも言えそうです。

(文:寄本 好則 / 翻訳:杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 流石に日本に作っては寝言か…はぁ
    今EV界のiPhoneがテスラだとすればandroidスマホで1位2位の地位を争えるメーカーの椅子争いをしてるけど、この時期にこれだと独や中国がその地位に納まりそう…
    日産はリーフで培った技術やブランドを手放さなけりゃ残れそう

    今更町乗り程度しかできない小型車を出すようなところは無理かなあ…

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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