著者
カテゴリー

テスラ2025年第1四半期の台数速報/失速回避にEV車種の増加が不可欠か?

テスラ2025年第1四半期の台数速報/失速回避にEV車種の増加が不可欠か?

EVメーカーのテスラ社は2025年4月2日に、2025年第1四半期の生産台数と納車台数の速報を発表しました。生産台数、納車台数ともに前年同期から大きく減少し、2022年第3四半期の水準まで落ち込みました。

目次

生産、納車台数が大幅に減少

電気自動車(EV)メーカーのテスラ社は2025年4月2日(現地時間)に、2025年第1四半期(1~3月)の生産台数と納車台数の速報値を発表しました。

●生産台数推移

画像をクリックすると拡大表示します。

生産台数は『モデル3/Y』が34万5454台、『その他』が1万7161台、合計36万2615台で、前年同期の43万3371台から16%減少しました。

●納車台数推移

納車台数は『モデル3/Y』が32万3800台、『その他』が1万2881台、合計33万6681台で、前年同期の38万6810台から13%の減少でした。

一方でエネルギー貯蔵設備の導入量は10.4GWhで、前年同期の4.1GWhから約2.5倍に増加しました。

株価の動きは複数要因あり

昨年同期も生産、販売台数の大幅減があり、この時は一時的に株価の下落も起きました。でも今回の発表を受けた株価の変動は限定的というか、むしろ4月1日から2日にかけては他の要因もあって少し上昇しました。

3月31日の終値259.16ドルは、4月2日には終値282.76ドルになっています。もっともその後のリアルタイム取引では260.1ドルまで下げているので注視が必要です(日本時間4月3日15時の時点)。

欧州や北米でのテスラ社の販売減は今年に入ってから何度も報じられています。速報値の発表直前の3月31日にはロイターが、アナリストが予想する納車台数の平均は約37万3000台だと伝えました。

同じ記事でロイターは、ドイツ銀行のアナリストチームは34万〜35万台、テスラ社株主のグロバルト・インベストメンツのシニア・ポートフォリオマネジャーは35万台まで落ち込むかもしれないという予想をレポートしています。事前のレポートを考えると、株式市場はテスラ社の台数減を織り込み済みだったと言えそうです。

株価に予想外の動きを呼んだのは、主にワシントンDC周辺の動きを伝えるニュースメディアのポリティコなどが、テスラ社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が近くトランプ政権を離れる可能性を報じたことでした。マスク氏の去就問題を追っていた米ABCニュースがすぐに後追い記事を出したこともあり、この話題は世界に広がりました。

もともとマスク氏の特別政府職員としての任期は130日間で、5月下旬か6月上旬までと見込まれていました。これに関してポリティコは、トランプ大統領が側近に、今後数週間で現在の役職から引くと伝えたと報じました。

ホワイトハウスはこの報道を否定しましたが、報道を受けて4月2日のテスラ社の株価は約5%上昇しました。

実のところ、報じられた退任の時期と本来の任期との間にそれほど大きな差はないのですが、それでも株価への影響は大きいようです。テスラ社の株価は業績の反映よりも、マスク氏の動向の影響が大きいと言えそうです。

失速の理由はマスク氏の言動だけではない?

ただし、現実としてテスラ社の業績は横ばいになっています。その原因については、マスク氏の政治的立ち位置、発言が挙げられることは多いのですが、問題はそれほどシンプルでもないように感じます。

日本経済新聞は4月1日に、テスラ社の販売台数が3月に欧州各国で大幅に減少したことを報じました。例えばフランスでは37%減の3157台、オランダは61%減の1536台、デンマークでは66%減の593台などとしています。一方でノルウェーでは1%減の2211台だったとしています。

日経に限らず、欧州でのテスラ社の販売減は、マスク氏の言動への反発が不買運動を呼んだことなどが原因という報道は少なくありません。もちろんその影響は無視できないと思います。

しかし、それとは別に欧州以外の市場でもテスラ社の販売が減っていることも気になります。特に最大の市場である中国での減速は、今後も継続する課題になる可能性があります。

ロイターは4月2日に、中国乗用車協会(CPCA)の統計でテスラ社の中国製EVの3月の販売台数が前年同期比11.5%減の7万8828台だったと伝えました。前月比では156.9%増でした。記事では、テスラ社が2月下旬に新型『モデルY』の納車を開始したことにも触れています。

ただ前月から大幅増だったにもかかわらず、前年同期比で減少しているのは気になります。2月の落ち込みがかなり大きかったことになります

なにより、欧州での販売減がマスク氏の影響だけであれば、マスク氏がトランプ政権から離れればある程度は収まりそうですが、中国市場でその影響があるとも考えにくいのは問題ではないでしょうか。マスク氏の言動以外の要因があるとしたら、解決は容易ではなさそうです。

新型モデルY(画像:Tesla, Inc. )

中国市場も厳しい状況

4月2日付ロイターによれば、中国市場でのBYD(比亜迪)の3月の販売台数は23.1%増の37万1419台でした。

CPCA(中国乗用車協会)の統計を見ると、3月の新エネルギー車(NEV)の販売台数は114万台で、前年同月比37%増です。BYDに続く2位はジーリー(吉利汽車)の11万9696台、続いてテスラ中国、上汽通用五菱と続きます。

テスラ以外のメーカーはプラグインハイブリッド車(PHEV)も多く含んでいるのでひとくくりにはできないことと、新型モデルYへの生産ライン切り替えで生産キャパシティーが一時的に落ちている可能性があることなどを考えても、拡大基調にある中国EV市場の中で苦戦しているのは間違いなさそうです。

苦戦状態が解消されるかどうかは、新型モデルYの販売動向や、2025年に投入予定の新型車にかかっています。テスラ社の2024年第4四半期決算資料によれば、より手頃な価格帯のモデルを含む新型車は2025年前半に生産を開始する予定です。

またテスラ社のタネジャ最高財務責任者(CFO)は1月の決算説明の中で、2025年には「複数の新商品を投入する計画」であり、その後もラインナップの拡充を続け、2025年の自動車生産台数を2024年に比べて60%増にすることができるはずという見通しを示しています。

販売台数の多くを占める中国市場を筆頭に、企業規模が巨大化したテスラ社は車種の増加が不可欠と言えます。これはマスク氏の言動とは別の問題で、既存の大手自動車メーカーと同じ土俵に向かっていることを示しているのではないでしょうか。

仮にマスク氏が政権を離れても、市場に受け入れられる車がなければ成長は困難でしょう。この点は今後も注意深く見ていく必要があると思います。新型車がどうなるのか、また販売台数の減少が業績にどう影響するのか。テスラ社の2025年第1四半期決算の発表は4月22日(現地時間)の予定です。

文/木野 龍逸
※冒頭画像はテスラ2024Q4決算資料から引用。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

コメント

コメントする

目次