「テスループ社(Tesloop)」は、カリフォルニア州のロサンゼルス郡の南西部にある「ホーソーン(Hawthorne)」を拠点として、「乗り合いバス」のように「自家用車」で人を運ぶサービスを提供している会社です。都市と都市を結ぶ「シャトル・サービス」を運行をしており、たとえば「ロサンゼルス ⇔ パーム・スプリングス」間や「ロサンゼルス ⇔ サン・ディエゴ」間で旅客を運んでいます(乗降地点はこのマップを参考にどうぞ。)
ここに2016年8月末に導入され、「Deuxy(ドゥーイー)」と名付けられた黒色の「モデルX 90D」は、就役から2年経たずに走行距離「48万キロ(30万マイル)」を超えたとテスループ社が2018年8月2日に公式サイトで発表しています。これまで数千人の乗客を運んだこのモデルXも含め、同社の車輌は月平均でおよそ「2万7千キロ(1万7千マイル)」を走行しています。
テスラ・モデルX 90Dの「Deuxy」はこれまで、納車時から「走行用バッテリー」と「ドライブ・ユニット」を替えることもなく、「1kmあたり4.1円ほど(1マイルあたり0.06ドル」で走っています。テスループ社には、この「Deuxy」のほかに、「64万キロ(40万マイル)」を超えたモデルSと、もう1台の「48万キロ(30万マイル)」を超えたモデルXがあります。「Deuxy」の充電を含めた記録はこちらに公開されています。
テスラ社は、走行用バッテリーの寿命を最大限延ばすため、日常の充電は80%程度までにするようユーザーに奨めていますが、テスループ社では「スーパー・チャージャー」による急速充電を毎日4回、しかも95%まで行ってきました。こうした、走行用バッテリーにとっては過酷な条件下での使い方を2年近く行ったためか、新車時と比べると「12.6%の劣化」を記録しています。過去のデータから、「新車時からおよそ9ヶ月までは劣化は進むが、その後の劣化はゆるやか」と同社は見ています。
走行用バッテリーもドライブ・ユニットも新車時のままですが、およそ「34万5千キロ(214,592マイル)」時点でフロント左側のハーフ・シャフトをアセンブリー交換、およそ「45万4千キロ(282,515マイル)」時点では車体外装に小さなリペアを施しています。数千人の乗客と運転者を運んだものの、車内の様子は今でも問題はなく、「ウルトラ・ホワイト・ヴィーガン」のシートもほつれも擦り切れも出ず、交換もリペアもせずに使えています。
このモデルX 90D「Deuxy」は、これまでの2年間でおよそ「12万キロワット・アワー(kWh)」の電気を急速充電してきました。テスラのスーパー・チャージャーのサポートの情報では、カリフォルニア州の電力料金は「1キロワット・アワー(kWh)あたり0.26ドル(29円)」ですが、ガソリン車を運行する際のコストとのおおよその比較がこの表です。
このテスラ・モデルXの運行を「カーボン・フットプリント」の観点から見るてみましょう。「アメリカ合衆国環境保護庁(EPA: Environmental Protection Agency)」によると、「1ガロン(3.8リットル)」のガソリンを燃やすと、「8,887g(19.59ポンド)」の二酸化炭素が発生するとされています。一般的なガソリン車は「1マイル(1.6km)」走行あたり「404g(0.89ポンド)」の二酸化炭素を出すとされているので、このDeuxyだけで「121トン(26万7千ポンド)」の二酸化炭素排出を「抑えた」とテスループ社は見ています。
さらに、この車輌は複数の人を運ぶ「乗り合い」を前提に運行されているので、「1人あたりの二酸化炭素排出『抑制』量」はずっと大きくなります。過去の乗車状況から見積もると、このテスラが大気圏に排出されるのを抑えた二酸化炭素量は「272トン(60万ポンド)」にのぼります。アメリカの一般的な内燃車は年間に「4.6トン」の二酸化炭素を排出しているので、Deuxyだけでもアメリカの平均的な内燃車「59台分」の二酸化炭素排出を抑えたことになります。今のところ、スーパー・チャージャーは街のグリッドから電気を供給していますが、これがもっと再生可能な電力で運用されるようになると、二酸化炭素抑制効果は莫大なものになる可能性があります。
テスループ社では、まだまだテスラを運行するつもりですし、実際可能でしょう。この先、数年間にわたって数千マイルは可能であると見ています。しかし、乗客と乗員の安全のため、いずれ走行用バッテリーとドライブ・ユニットは交換するとしています。
(文・箱守知己)
文中の画像とチャートはすべてテスループ社の公式サイトより転載しました。
いつも思うのですが、100kwh程度のバッテリーであれば、5km/kwhで1000回充電でも50万キロはいけますよね。
初期のリーフでは実質20kwh程度で7km/kwhで1000回だと14万キロです。
リーフの方が航続距離は短く、充電震度も大きく、バッテリーの温度管理もされていないし、もともと劣化が大きいバッテリーなので、10万キロ程度でかなり劣化しますよね。
テスラのバッテリーの劣化が少ないのは、大容量で充電震度が浅く、温度管理もバッチリしているからかと思います。
まあ、リーフの安全性最優先の考えとバッテリー管理不足は否めませんが。
テスラの航続距離による劣化に関しては、計算上でも50万キロは持つ計算ですから、特に、驚くことではなく、理論道理じゃないでしょうか?むしろ、経年劣化がどうなるか気になります。10年たったら、急激に劣化するとかないでしょうかね?パナのバッテリーだから大丈夫なのかなぁ。
凄い、48万キロ!
自分もバッテリーの劣化の件は色々調べ、テスラ モデルS100Dを購入しました。
年間2万キロ走行予定で、10年で20万キロ位の走行になる見込みでしたが、20年目まで行けそうですね。
たとえ中古車として所有者が変わっても、CO2排出による環境破壊無し。
我が愛車は、納車5ヶ月で1万キロを突破しました。その間の充電は、無料チャデモと無料スーパーチャージャーでお金は使っていません。
20年乗れて、燃料費が安ければ、家計にもお得な車です。
任意保険も以前乗っていた200万円位の車両保険と同じ価格。
メンテナンス費用はかかるようですが、安全面で考えると高くはありません。
この車は運転が楽で高速での自動運転はもう手放せません。
しかも運転が楽しい。
今後完全自動運転も楽しみです。
妥協ゼロ、排気量ゼロ 凄い車に出会いました。
今まで、充電の知識が無くてチャデモで、何度か満充電してしまいました。
今回の記事は非常に勉強になりました、ありがとういございます。
YasukawaHiroshi様がおっしゃる通り、
日本でも、再生可能な電力で運用される事を目指し異常気象が早く改善され事を願います。
G様、コメントありがとうございます。無料チャデモと無料スーパーチャージャーだけで運用されているのですね!それなら燃料費タダ。テスラのオートパイロットにしろ、日産のプロパイロットにしろ、非常にレベル2自動運転の評価はオーナーからは高いですね。私も高速道路ではほとんど前を見ているだけです(笑)
再生可能エネルギー、、重要ですよね。私もわずかながら、自宅の電力契約を再生可能エネルギー100%の会社に切り替えてみました。
いつも勉強させて頂いております。
スーパーチャージャーで毎日4回95%充電を繰り返し、2年でバッテリーが12.6%劣化という結果でしたが、モデルXを家の「100v朝まで充電」で95〜100%を繰り返したらどうなるでしょうか?
弱い電力で90%以上充電を繰り返した場合、バッテリー劣化は起きにくいとお考えで
しょうか?
教えてください。
スウィーツ様、コメントありがとうございます!
充電速度は、ある程度遅ければ、特に遅ければ遅いほど良いというものでもありません。例えば75kWhのテスラの場合、0.1Cが普通充電の基本となりますので、7.5kW=200V 37.5A程度での充電までは特にバッテリーの寿命を気にせず充電できます。またテスラでは、普通充電は240V 72A=17.3kW前後くらいまでは問題ないとしていますので、全く気にする必要はないと思います。逆に、重要なのは充電する最大の%と、その%でどのくらい放置するのか、そしてその時の温度によります。高温で、長時間、高い%で放置されればされるほど、バッテリーは速く劣化します。普段の充電は90%以下を上限にしておくのが良いと思います。また90%を超えた値に設定して数日経過すると、(旅行のときだけにしてね)と警告が表示されますよ。
なお、100V充電は私もたまに使いますが、はっきり言って結構時間がかかります。というのは、細かい話となりますが、テスラモデルS/Xはコンピュータが一般のガソリン車などより大きく高性能で、かつ通信なども常時接続しているため、平常時の消費電力が大きめです。充電中はコンピュータは起きて稼働している状態のままになりますので、100Vで充電中は、バッテリーに入っていくはずの電力の一部がコンピュータにより消費されてしまいます。例えば仮に待機電力を300Wとすると、3kWの200V普通充電時における待機電力の割合は10%に及びます。これが100V充電中は1.2kWとなるわけで、そのうちの300Wは25%にも及ぶのです。つまり、100V充電中はあまり役に立たないコンピュータに25%の無駄な電力を消費されてしまい、充電効率があまりよくありません。テスラはどんなコンセントでも充電できるのが一つの特徴ではありますが、可能であるなら、電気代がちょっともったいないので200Vを使用されることをお勧めします。