トヨタの超小型EV『C+pod』に乗ってMaaSを体感できるモビリティサービス

トヨタブランドとして初めてのリチウムイオン電池を搭載した電気自動車ともいえる『C+pod』に乗るチャンス。神奈川県横浜市で始まった『C+podヨコハマ』を、モーターエヴァンジェリストの宇野智氏がレポートします。

トヨタの超小型EV『C+pod』に乗ってMaaSを体感できるモビリティサービス

「MaaS」ってどうなんだろう?

今回は、2021年7月22日から横浜都心臨海部でスタートした新しいモビリティサービス『C+podヨコハマ』をレポートします。併せて、MaaSについてよく知らない方へのサービス紹介から、『C+pod(シーポッド)』に乗るときの注意点などを初心者向けにまとめてお伝えします。かく言う筆者も、MaaS初心者。初めてのMaaS取材でした。

元町にて。C+podを駐めた真横の店の主が出てきて、興味深そうに車を見ながら乗り心地や充電などいろいろ尋ねてきた。

MaaSとは、「Mobility as a Service」の頭文字をとった新たなモビリティサービスを意味する用語で、国土交通省は「地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス」と定義しています。

今回取材したC+podヨコハマの場合、「経路検索」と「予約」と「支払い」が、アプリひとつで完結しますよ、というサービスが提供されています。

専用のMaaSアプリ『my route(マイルート)』でサービス連携されたC+podヨコハマ。ちょっとややこしいので、順を追って解説します。

「C+podヨコハマ」とは?

発表会のフォトセッションにて。一番手前は神奈川県オールトヨタ販売店アンバサダーの丸りおなさん。

C+podヨコハマとは、トヨタレンタリース横浜および神奈川の2社が提供する「ショートタイムレンタカー」で、トヨタの超小型EV『C+pod』が借りられるサービスの名称です。

ショートタイムレンタカーとは、通常のレンタカーとは異なる短い時間単位で借りられるサービスのこと。C+podヨコハマは、1時間 800円(税込)、6~12時間の利用では4,800円(税込)という安価な料金設定となっています。

C+podを借りられる店舗は、都心および臨海エリアの駅ちかくにあるトヨタレンタリース計7店舗。返却はこのうちのどこの店舗でも可能となっています。

『my route』とは?

my routeの主要機能。経路検索結果にカーシェアやレンタルサイクルなども表示されるところがMaaSアプリの特徴。ミュージアムなどの入場予約もできるのは、入場者数制限が実施されるコロナ禍ではありがたい機能。

my routeは、トヨタの子会社「トヨタファイナンシャルサービス」が運営するMaaSアプリの名称です。鉄道やバスなどの公共交通やタクシー、シェアサイクルなどさまざまな移動手段を組み合わせたルート検索をした上で、レンタカーやシェアサイクルなど一部サービスの予約や決済を行うことができます。C+podが借りられるのは今のところヨコハマだけですが、my routeによるMaaSサービスそのものは、富山市エリア、福岡市エリア、北九州市エリア、糸島市エリア、水俣市エリア、宮崎市エリア、日南市エリアでなどですでに展開されています。

my routeで連携する移動手段は多彩で、エリアにより違いがありますが、鉄道、バス、レンタカー、レンタルサイクルなどが利用でき、駐車場サービスとも連携しています。

my route横浜エリアでは、C+podが借りられるトヨタレンタカーのほか、トヨタシェア、日産レンタカー、日産e-シェア、横浜コミュニティサイクル、横浜市交通局などと連携しています。

C+podヨコハマとmy routeがタッグを組む。その座組みとは?

発表会が行われたのは、横浜トヨペット本社ショールーム。

「C+podヨコハマ」は、神奈川県オールトヨタ販売店(神奈川トヨタ自動車株式会社・横浜トヨペット株式会社・トヨタカローラ神奈川株式会社・ネッツトヨタ神奈川株式会社)と、株式会社トヨタレンタリース神奈川、株式会社トヨタレンタリース横浜が協力して誕生した、ショートタイムレンタカーのサービスです。

このショートタイムレンタカー「C+podヨコハマ」を、「my route」とつなげるのは横浜の観光情報を中心に発信するWebサイト「@YOKOHAMA(アットヨコハマ)」を運営する、株式会社アットヨコハマ。同社は、株式会社KTグループ(元は神奈川トヨタ自動車株式会社を親会社と事業会社に機能分割、トヨタモビリティ神奈川をはじめとする全13社の持ち株会社)と、横浜トヨペット株式会社が共同出資する会社。この企画の中心的存在となっているようです。また、アットヨコハマは、自治体と協力関係を構築、横浜市交通局がmy routeで連携できるようになりました。

多くの会社が絡み合う複雑な座組みをお伝えしたのは、このMaaSの枠組は公共交通機関、地元企業、自治体がタッグを組んで誕生した賜物だということを知っていただきたかったから。

「C+podヨコハマ」には、トヨタのディーラーも絡んでいます。公共交通機関やレンタカー会社がMaaSに関係することは理解しやすいですが、地元の住民や企業が商売相手となるトヨタディーラーが、MaaSに関係するのはなぜか、気になりませんか?

筆者は「C+podヨコハマ」の発表会に参加したのですが、その会場は、横浜のトヨタディーラー「ウエインズグループ」の本社にある店舗でした。担当者に、なぜディーラーが関係しているのかを尋ねてみました。

その回答は、「観光をはじめとして地域を盛り上げることへ、地元企業として貢献したいから」でした。筆者は冗談交じりに「ぶっちゃけ、このプロジェクトでは儲からないですよね?」と水を向けると「儲けではない」と即答でした。CSRの側面も強い取り組みなのでしょう。

日本国内では最大級の観光都市、横浜であってもそれにあぐらをかかず、地道で献身的な企業努力もあるからこそ、この街の魅力が保たれ、輝いているということに気付かされました。

モーターは後輪。最高出力9.2kW(12.5PS)、最大トルク56N・mを発生。バッテリーはシート下部に配置、容量は9.06kWh。

良かったところと注意点

試乗コースは、トヨタレンタリース横浜 横浜駅西口店→元町→中華街→港の見える丘公園→赤レンガ倉庫→みなとみらい→ベイブリッジ→トヨタレンタリース横浜 横浜駅西口店の約30km。試乗して、サービス面も含めて「良かったところ」と、気になった「注意点」がいくつかあったので箇条書きにまとめます。

良かったところ

・レンタカー料金が安い(1時間 800円~、6~12時間4,800円 ※ともに税込)。
・駅近のトヨタレンタリース7店舗で借りられ、返却はその7店舗どこでもOK。
・小回りが効き、縦列駐車が楽。

注意点

・2人乗りで荷室が狭い。
・最高速度60km/hで高速道路、自動車専用道路に乗れない。
・加速が弱い。
・パワステがついていない。
・ブレーキのタッチが硬めでやや心許ない。
・実航続距離約50km(真夏でエアコン使用)と短い。

C+podの試乗インプレッションの細かい点は冗長になるため割愛しますが、C+podヨコハマ利用体験取材の視点でまとめると上記のようになりました。

「C+podヨコハマ」は、1時間単位で利用できるショートタイムレンタカーで、税込800円/時間~というリーズナブルで借りやすい時間設定が最大の魅力。また、軽自動車よ比べても約20cm車幅が狭く、約1m短い全長のボディサイズは、当然ながら取り回しは楽でした。特に後退するとき、運転席から近い距離にあるリアウィンドウからの直接目視で広い後方視界が確保できるところは、超小型モビリティならではの扱いやすさを感じます。

対して、2シーターで荷室が狭い設計となるため、2人乗ってたっぷりお買い物といった使い方には不向きです。前述した注意点は、車の設計構造上からくるもので、観光MaaSで利用するということにおいて、あくまで注意点に過ぎないもので、さほどネガティブな要素ではないとは思います。

記事末尾掲載の動画の中でもお伝えしていますが、遊園地内を移動する乗り物に乗るような、アトラクション的な移動手段として利用すれば、横浜観光の楽しさのプラスαになってくれるでしょう。

トヨタレンタリースの担当者は、夏日での実際の航続距離は50km程度とのことで、筆者が試乗したときもそれくらいでした(試乗時の走行距離は約30km。バッテリー残量計の目盛りからの概算)。60km/h以上スピードがでないことと、加速が弱く交通の流れに乗りにくいといったことから、平均速度は15kmぐらいでした(メーターに平均時速の計測機能がないため概算)。横浜市内の1日観光で、いろいろなところに立ち寄りながらであれば、十分まかなえる航続距離といえるでしょう。

『C+podヨコハマ』の今後の課題

横浜でもmy route活用を企画した、観光サイト「アットヨコハマ」の担当者へ、今後の課題についていろいろお話を訊くと、いかにサービス利用率を高い水準で持続させるかが課題であることが感じられました。

「C+podヨコハマ」の発表会には、地元テレビ局、新聞、自動車メディアなど多数のプレスが集まっていました。発表後しばらくはメディア露出の機会があるため、利用者数の目処は立てやすいでしょう。しかし、メディア露出が減ってくると、サービス事業者側の告知、広告といったマーケティング活動が重要となります。この点、アットヨコハマ担当者は、今後はYouTube広告などを主軸に、プロモーション活動を推進していく、と語っていました。

企業努力も大切ですが、一般の方々も、MaaSを利用してSNSなどで口コミを広めたり、問題点があるなら事業者へ意見を出したり、事業者側はサービスのブラッシュアップを図るといった、全体的かつ持続的な行動をしていかないと、せっかくのサービスも消滅の危機にさらされてしまうでしょうね。

C+podヨコハマとmy routeを初めて利用して、MaaSの利便性の高さを体感しつつ、MaaSや超小型EVの課題にも気づいた試乗取材でした。さらにMaaSの取材を重ね、この課題についてもお伝えしたいと考えています。

今回の試乗取材の様子は、下の動画でもまとめています。ご覧ください!

●【注意点】「C+podヨコハマ」MaaSアプリ『my route』&ショートタイムレンタカー取材試乗レポート@横浜ドライブ(YouTube)

(取材・撮影・文/宇野 智)

この記事のコメント(新着順)7件

  1. 先日半日借りて乗った感想です。参考になれば。
    ・最大で150km走れるが、エアコンをつけると50kmが限界
    ・モーターの音がうるさすぎる
    ・アクセルをベタ踏みしてもあまりスピードが上がらない
    ・最高速度は60km/hなので自動車専用道路や高速道路は走れない
    ・ハンドルが固くて回しても動力がなめらかに伝わらない
    ・両側の窓が電動ではなくて手動で上下する仕組み
    ・荷物はリュックが1つ載るくらいなので買い物用途には使えない
    レンタカーで借りるなら、日産リーフの方が実用的です。

  2. 街中では電動キックボードが増えていますが、ルールと本人確認をしっかりすればMaaSとして有用な気がします。
    一方スマートKならC+podとほぼ同じ長さ、幅は軽サイズで側突安全性もあるし高速にも乗れる。トヨタがどんな立ち位置を考えているのか取材していただけたらと思います。

  3. 記事のご指摘通り、最初は物珍しさで利用者多いと思います。しかし、1年後は殆ど無いような?
    この手のサービスは次から次へと利用者がある場合でも、普通充電しか出来ないので真夏にエアコンフルで使って返されると、直ぐに次の利用者に貸せないのが問題です。主様の様に真夏や真冬に30キロも走行して返されると残量30%です。そこから3時間は充電の為に貸せない時間帯が存在する事です。私の職場にあるシェア用の電動ミニカーのLala がそんな感じです。
    シェア用の電動レンタカーは急速充電対応にすべきです。
    利用者が少なくなれば、充電問題は解決されますが、事業として成り立たなくなります。

    1. それならばむしろカセット式にするべきでしょうね。
      AIDEA社のaaカーゴは最大容量4㎾ですね。最近出たEFDELTAproは3kw級で重量30kg超えてますがギリギリといったところでしょうか。
      さすがにMiEV級のバッテリー容量だと100kg越えますから不可能ですが
      50kg程度までなら現場運用は出来ると思います。
      資格が必要になるのかどうかはヒラタツさんにお任せしますが。

      急速充電に対応させるということはその分のコストがかかるわけですから。
      それよりも急速充電器を整備/維持することを考えるとあまり現実的とは言えませんね。
      広い意味でV2Hならアリかもしれませんが。

    2. 加えてコメントします。
      カーシェアリングなどのように長距離を走ることがないのなら
      日中の追加充電もあまり気にならないかと思います。
      充電器を一般に開放するわけではないでしょうからコンセントつけるだけですしね。
      カタログスペックで150kmなら返却時に普通充電器につないでおけば
      まぁ、なんとかなるかな?

      それでも不安なら容量を減らしてでもカセット式にするかでしょうかね。
      そういう仕様があってもいいと思いました。

    3. 軽貨物さま

      ご意見ありがとうございます。
      電池交換式はありだと私も思います。
      しかし、最初テスラがアメリカ本国でそれやったら何故か交換の需要が殆ど無くて、サービス終了になりましたね。交換が面倒だったのかもしれませんが、、。

      急速充電対応の件ですが、ディーラーなら単相200v120Aの電気ぐらいは引いてる(と思う)ので20kwくらいの急速(中速)充電器なら設置可能だと思います。
      ヒラタツさんいかがでしょうか?

      私が言いたいのは、長い充電時間のかかる普通充電で運用する場合の回転率では小型EVのシェアカービジネスが成り立つのか疑問だと言う事です。メーカーのモード電費150kmと言ってる航続距離は記事によるとフル冷房で実際はたったの50km!なんです。似たような電池容量のアイミーブMはモード電費120kmに対してフル冷房で75キロ走れるのにシーポッドなら90km走れても良いはずです。頻繁に充電が必要なのに充電が間に合わないから貸せないという事にならないか心配です。
      シーポッドは3台用意しても貸すのは2台、1台電池空で戻ってきたら充電済みの3台目を貸して、戻ってきた1台は充電完了するまで貸さないみたいな運用方法も考えました。しかし、2台同時に空で戻ってきても貸せるのは1台ですけどね。やっぱり効率悪い!

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この記事の著者


					宇野 智

宇野 智

エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元「MOBY」編集長で現在は編集プロダクション「撮る書く編む株式会社」を主宰、ライター/フォトグラファー/エディターとしていくつかの自動車メディアへの寄稿も行う。

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