集合住宅電気自動車用充電器設置事例【5】資産価値向上と安心安全のために〜横須賀市のタワーマンション

電気自動車(EV)用充電設備を設置した集合住宅の方に、導入の経緯や利用状況、コストなどを取材するシリーズ企画。今回は横須賀中央駅の目の前にそびえ立つ地上26階建てタワーマンション「サンコリーヌタワー横須賀中央駅前」です。計画開始からわずか3カ月で設置が実現しました。

集合住宅電気自動車用充電器設置事例【5】資産価値向上と安心安全のために〜横須賀市のタワーマンション

情報収集力と決断力でスピード設置

2015年築。総戸数約280戸のマンションです。※Click to big.

今回、お話を伺ったのは、管理組合の理事長を務める宗原昭夫様。現役時代は証券会社にお勤めで、引退した今も新聞等から情報収集をして「マンションにとってよいことであれば即断即決で改善を行う」という非常に決断力のある方でした。

充電器設置のきっかけは、実は横須賀市からの「EV用充電器設置費補助金のお知らせ」というチラシ(横須賀市のPDFファイルにリンク)でした。すでにニュース等で「EVの時代が来る」「千葉の台風被災地をEVが救う」といった情報を目にしていたため、防災の観点からサンコリーヌタワーもEVフレンドリーであるべきと考え、見つけたパートナーがユアスタンド株式会社でした。

ユアスタンド担当者の飯塚様曰く、「サンコリーヌタワーでは理事長の強力な推進もあり、とてもスムーズに設置が進みました」とのこと。

【編集部注】ユアスタンドでは集合住宅へのEV用充電設備設置を、計画から設置、運用が始まってからの管理やアプリ課金までトータルでサポートする事業を展開しており、この「設置事例紹介」企画についても情報提供などの協力をしていただいています。
ユアスタンド株式会社公式サイト

実際、2020年の8月にチラシを見て9月にはユアスタンドと相談開始、11月には総会で決議、12月には設置完了と、話がトントン拍子に進んでいます。もちろん他の12名の理事の中には反対する方もいました。しかしそこはマンションの資産価値向上と非常時の安心安全のためと、根本的な設置理由を説き、助成金だけでは足りない費用については、共用部の電気事業者を東京ガスに乗り換えたことで年間150万円以上節約できたことなどを例に出して、「生きたお金を使う」ことを提案して理解を得ました。

飯塚様(左)と宗原様(右)が充電器の前でエルボータッチ。※撮影時以外はマスクを着用しています。

コンセント3基と外部給電機器を導入

正面エントランスのすぐ近くにある充電ポスト。

大まかな費用感ですが、200Vの充電ポスト(コンセントタイプ)3基の設置と、パワームーバー(EVから電気を取り出して100V電源として使う外部給電機器)の購入を国と市からの補助金を得て、住民(理事会)の負担は税込で約50万円程度にとどまりました。これは横須賀市が他の自治体に比べて高額の助成金を出しているから住民の持ち出しが少なく済んでいるのですが、言い換えると補助金の多い自治体の方は、補助金があるうちに導入したほうがお得だということです。

運用方法についてはユアスタンドがひな形を持っているため、建物や住人に合わせて料金プランや使い方のルールを容易に設定できます。3月に予定している臨時総会で利用規則を決議する予定になっており実際の運用はまだ始まっていませんが、さっそく電気自動車を購入し4月に納車される住民の方がいらっしゃるそうです。

アプローチの私道に3基の充電ポストを設置。公共の充電器ではなく、マンション住民専用です。
設置されたのはコンセントタイプの充電ポスト。

充電するには、EV所有者が充電器を初めて利用する際に申込書(車両登録)を管理組合に提出して承認を受け、専用アプリをダウンロードします。このアプリからは予約も可能。クレジットカードを登録し、実際の使用時間に応じて自動的にコンセントに通電されて、課金が行われます。充電料金は設置施設ごとに設定できるようになっており、今回は100円/1時間を予定しています。

今回のケースでは非常用給電設備としてパワームーバーも導入しました。当然、活用するには電気を供給するEVが不可欠ですが、充電器利用開始時にEV所有者が管理組合へ提出する申込書(車両登録)には有事の際の電源供給に関する記述があり、同意を得ることになっています。

【参考情報】
ユアスタンドアプリ(充電設備)の使い方

現在の課題は、充電器を設置したことや使い方について住人に周知することです。現在は掲示板への掲出を行っており、5月には立ち上げる計画のホームページでのアピールも考えているようです。地域コミュニティ活性化のために隣接した公園でBBQ大会を行うことがあるとのことだったので、そこでパワームーバーを活用して屋台や音響設備の電源に活用すれば、住人に興味を持っていただけるのではと、私なりのアイデアを理事長にお伝えしておきました。

今回の事例から、充電器設置がEVオーナーの利便性の向上という側面だけでなく、マンションの「防災力」を高める効果がスムーズな導入を決定する理由になったことが分かりました。これからも多様な事例を紹介し、様々なステークホルダーの視点から充電器設置のメリットを考えて行きたいと思いますのでご期待ください。

(取材・文/池田 篤史)

この記事のコメント(新着順)10件

  1. リゾートマンション管理組合理事会で普通充電器設置しました。充電器を鍵付きボックス内に入れて、管理人に鍵借りるって原始的なシステムです。料金設定で悩んでいるのですが、どのくらいが妥当でしょうか? 一晩phv500円くらいEVが1000円を一応考えていますが….

  2. 充電コンセントでも通電制御が出来るのですね。どんなコンセントを使っているのでしょうか?数千円の簡易なものでは無さそう?デマコン等設置して、ユアスタンド社のアプリで制御信号を飛ばしているのでしょうか。
    コンセントなら安く設置しやすそうで魅力的に感じます。一方で私のマンションの駐車場は地下にあり電波が届かない可能性があるのでうまく通電制御信号が送れるか不安ですね…

    1. Yossie さま、コメントありがとうございます。

      > どんなコンセントを使っているのでしょうか?

      コンセント自体は、写真にもあるようにパナソニックの普通のEV用コンセントでした。
      通電制御の詳細については、ユアスタンドさんのノウハウでもあるでしょうし、今回の取材時、細かくは伺っていませんでした。折りをみて取材を重ねたいと思います。

  3. 停電時に、屋上タンクに水を送れないので断水するのがタワーマンションの欠点ですよね。
    バケツに汲んだ水を階段を使って十数階も上がるというという苦行のような目にあった人もいるようです。
    いざという時にEVの電気を使って屋上に水をあげれる予備電源として使えるようにすればいいのにと思いますね。
    屋上やカーポートに太陽電池パネルとセットでおけば災害時に役に立つでしょう。
    普段使用でもマンションの共益費を下げるのに役に立ちそうです。
    EVオーナーには駐車料金や電気代を安くするとかの条件が必要だと思いますけど。

    1. 一族共同で8階建ての賃貸マンション管理やってる者です。

      >>>いざという時にEVの電気を使って屋上に水をあげれる予備電源として使えるようにすればいい

      なる程、入居者様は停電時に水に苦労なされるのですね。
      利用の公平性や電源容量の関係で既存の賃貸マンションにEVの充電器を多数設置するのは困難ですが、、、
      電源の外部入力なら簡単低価格で実現出来そうですね。
      停電時にマンション共用部分にEVから電源供給出来れば良いのなら、日本製EVなら急速充電プラグから取り出し出来ますね。停電時に私のEV接続すれば良いわけですから簡単です。ひとつのアイデアとして賜っておきます。
      しかし、、、、
      流石に三相200Vが必要なエレベーターを動かす電力はEVから供給するのは無理な気がします。EVの単相100V 1500Wから三相200Vに変換してエレベーターに必要な電力を容量計算出来ると言う方、よろしくご教授お願いします。

    2. なんか停電時の電源供給で呼ばれた気がするので…電気工事士・電気主任技術者の有資格者がお答えします。
      受水槽への揚水は大概三相200Vで数kWのモーターが使われています…その三相200Vに対応する蓄電池は現在見当たらず、仮に停電したとすりゃ発電機を持ち込むほかなさそうですね。
      単相100Vを三相200Vにするインバータ(電力機器)はモノタロウなど業務用機器サイトで見かけますが基本0.4kWまでなので明らかに出力不足!そもそもモーターを回すときの起動電力が定格負荷の3~4倍あるんで仮に100V15A使えるとしてもモーター出力は1/4程度になりますー。
      単相200V出力okなら1.5kWまで使えますが…僕が知る限り蓄電池と単相200Vパワコン(田淵電機EIBS7など)がないとツライでしょ。
      …集合住宅に潜む最大の強敵はEV充電より停電などインフラダウンやないですかー。そんなこと考えたら一戸建てやないと安心できまへん。
      ※ホンマ日本は停電災害対策への法整備遅すぎやー!
       僕の心配は人類には早すぎるモノばっか、世間一般が心配してへんことが心配ですねん。

    3. ヒラタツさま

      詳しく回答して頂きありがとうございました。

      私のアイミーブMでは災害時の停電で入居者さまのお役に立てる事は少なそうですね。
      ま、ケータイの充電と電気釜でご飯炊くくらいなら数日使えそうです。
      念のため三菱のパワーボックスを導入して、いざと言う時のお役に立てる様にマンションの配電盤のなかにでも備え付けておきます。
      PHEVの入居者さまがおられますので、無料で貸し出しもできます。
      災害対策として経費が認められるのかはどうかは税理士さんとも相談です。

    4. Farfetchdさんへ:期待に添える答えではなかったようで申し訳ないです。
      あれから深く調べ直しました…エレベータの仕様は定員11名機種で定格重量750kg、モーター定格3.5kW。起動電力が3倍必要とすると10kVAの容量が必要と考えます。
      つづいて産業用3相インバータ+蓄電池を検索…出力10kVA、蓄電量7.7kWhの機種がありますが価格は要見積で多分1台数百万円、しかも屋内用なので設置場所の制約も考えられますね。
      屋上設置であれば土建屋仕様の10kVAディーゼル発電機も考えられますが1台百万円します。単相100/200Vと三相200Vを同時に出力できるため非常停電時は役に立ちますが、電線を分電盤へ接続すれば電気事業法上「自家用電気工作物・非常用予備発電設備」に該当し電気主任技術者も要選任、電気保安協会あるいは電気管理技術者に委託しても毎年5~6万円の出費は避けられませんよ…もう日本の法体系が厳しすぎて行政のオナニー状態、まさかへの備えすらできてまへんよ!?

      仕事柄、一般人が気づかないポイントまで語っちゃいました!!(自爆)
      それにしても高層マンションの非常電源対策は面倒かつ高額なので後回しにされてる気がしないでもないですよ!?

  4. 写真を見ると、「充電設備の設置って、べつに、簡易でも良いんだなぁ」と改めて感じますね。

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この記事の著者


					池田 篤史

池田 篤史

1976年大阪生まれ。0歳で渡米。以後、日米を行ったり来たりしながら大学卒業後、自動車業界を経て2002年に翻訳家に転身。国内外の自動車メーカーやサプライヤーの通訳・翻訳を手掛ける。2016年にテスラを購入以来、ブログやYouTubeなどでEVの普及活動を始める。

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