デザインに一目惚れして衝動買い!
EVのことを何も知らなかった2年前にHonda eを衝動買い。シロウトゆえのドタバタやEV好きな人々との出会いについて、コラム「EV放浪記」を夕刊紙に連載してきたが、このほどEVsmartブログへ移籍させてもらうことになった。初回は、自己紹介を兼ねて2年間のEVライフの概略を。
Honda eを選んだきっかけは、自動車雑誌を読んで、レトロモダンなデザインに惹かれたから。都内のディーラーで試乗させてもらって、一発で買う気になった。後輪駆動のHonda eは機動性抜群で、交差点を曲がるだけでも楽しい車。最小回転半径が4.3mと小回りが効くのもストレスフリー。唯一気になったのが、後部座席の狭さだ。
4人家族で4人乗りなのはいいとして、リアシートはリクライニングしてくれず、バッテリーが配されている床面も高め。身長175センチで中肉中背の私はリラックスできない。改めて家族で試乗させてもらった。子供たちはあまり気にならなかったようで、2021年4月末に納車の運びに。ちなみに中3になった長男の身長はそろそろ私を抜きそうだが、助手席が空いていても後ろに座りたがる(広さ狭さは二の次で親の隣がイヤなのだと思われる)。
購入時には自宅充電設備も考慮せず「野良EV」に
EVに必要不可欠な充電をどうするかは、購入時にはあまり考えていなかった。自宅は東京都中央区内のマンションで、駐車場には充電器も未設置。いわゆる「充電難民」とか「野良EV」とか呼ばれる状態。とはいえ、公共充電器がガソリンスタンドの数ぐらいはあるんだし、それを使えばいいんでしょ……と気楽に構えていた。
乗っているうちに、EVや充電インフラのことも少しずつ理解してくる。自宅充電に数々のメリットがあることも実感。公共充電器を使うよりもコスト面で有利だとか、太陽光発電を導入したら100%再生可能エネルギーで走れて気分が良いとか。しかしなんといっても最大の利点は、いつでも満充電から走り出せることだろう。
自宅充電なしだと、充電率(SOC)100%という状態はまず考えられない。日常的にはSOC20~70%台で乗っている。つまり、いざ長距離ドライブというときに、航続距離はいつも2~3割引き。能力をフルに引き出せていないことになる。
うちのHonda eは、現在は設定がなくなったベーシックグレード。バッテリー容量は35.5kWhで、航続距離は283km(WLTCモード)。実電費はその8掛けとして約226km。これは満充電から電欠まで走る前提で、SOCが一桁台ではさすがに走り続ける勇気はなくなるから、現実には無理な数字だ。
じつは昨年秋、自宅マンションの駐車場に共用充電器(4kW)が導入されて、100%からスタートできる環境を手に入れた。おかげで「チキチキ東京-大間キャノンボール対決」の際に、都内から東北道の那須高原SAまで走って1充電203kmを達成することができたが、このあたりがほぼ限界だと思う(いやいやHonda eはもっと走れるよ、という方がいらしたらぜひご教示ください)。
とはいえ、自宅充電ができないならEVはあきらめるべき……とは思わない。もちろん仕事で毎日何百キロも走るような人に、いますぐEVはお勧めしない。でも私の使い方は、買い物や家族の送迎といった街乗りがメインで、取材で月に数回は関東圏のあちこちへ走り、時々ロングドライブもする、という感じ。自宅充電が無かった約1年半も、とくに不便に感じたり困ったりすることはなかった。
出先での充電時間を楽しむスタイル
2年間の走行距離は約3万7000キロ。マイカーの平均走行距離の目安は「年1万km」だそうだから、それなりに走っているほうだろう。メーター読みで平均電費は8.0km/kWh(125kWh/km)。これまでに行なった急速充電は290回、普通充電は50回。1回の充電で約109キロが平均値だ。
つまり100~120キロごとに充電が必要になるわけだ。でも急速充電器は全国各地どこにでもある。半島の隅っこや山間部などでドキドキさせられたことはあっても、まだ電欠した経験はない。訪問先で充電して帰路につき、自宅近くの急速充電器やマンションの共用充電器でまたチャージしてから帰宅、というのが習慣化している。
当初、長い距離を一気に走れないのはストレスになるかも……と思ったが、意外と苦にならない。SOCが減ったら、最寄りの充電スタンドを検索。知らない町や通ったことのない道を走って(走らされて)、旅程にない充電器に立ち寄るのが、じつは楽しい。行き当たりばったりの旅が好きなのだ。ただ、福島県への取材でアポイントメントの時間に遅れかけて焦りまくったことがあって、仕事での移動では充電プランはしっかり立てるようになった。
「充電時間」というこれまでになかった体験を、せっかくなのでプラスに考えようと思っている。ライター稼業は、文字起こしや記事執筆という作業がルーティンなので、ノートパソコンを開くことも多いんだけど、仕事だけじゃつまらない。充電器のある道の駅はちょっと遠回りでも訪ねてみたくなるし、自動車ディーラーの充電器でもよく周辺を散歩している。充電スポット周辺でグルメを楽しむ情報交換サイト「EVごはん」にも参加させてもらっている。悪天候の時はダウンロードしておいた動画を見たり、EV関係のSNSを眺めたり。最近は短歌にもハマってます。
回生ブレーキの楽しさに開眼!
と、停車中の時間も楽しんでいるが、EVを運転するようになってドライビング自体が激変した。特有のワンペダル機能がその理由だ。ホンダは「シングルペダルコントロール」と呼んでいるが、Honda eはアクセルペダルだけで加速・減速、完全停止までしてくれる。
運転免許の教習車にはアクセル・ブレーキ・クラッチとペダルが3本あったけれど、乗ってきたマイカーはすべてオートマでノークラッチのペダル2本。それがとうとう1本になってしまった。いや実際には2本ついているけれど、ブレーキペダルはほとんど使っていない。実際、丸一日ドライブして、一回もブレーキを踏まなかったこともよくある。
ワンペダル、最初は戸惑った。「踏む」ことは自然にできても、じわじわと「緩める」感覚には慣れていない。いつもと違う筋肉なので、下腿がピクピクして実際に攣ったりもした(やばっ、と思ってすぐ休憩)。でも、慣れてくると、これが面白いのだ。アクセルを離した時の回生ブレーキの強さは、ハンドルについているパドルで3段階に調整できる。パドルをカチカチして回生ブレーキの強さを変えながら、きっちり停止線の手前で止まるようにコントロールする。
車の速度や道路の勾配に合わせて効率のいいブレーキングを考える。ここでいう「効率」は、ブレーキをかける時間をなるべく短くするというサーキット的なテクニックとは真逆。なるべくエネルギーロスを減らし、回生ブレーキを活用して電費を伸ばすのが楽しいのだ。
この、ブレーキを楽しむ、という感覚はEVシフトの恩恵だろう。内燃車に乗っていた時は、アクセルを踏むこと、つまり「加速」がドライビングの快感につながっていた(あくまで個人の感想です)。静止状態から最大トルクを得られるEVも、内燃車に劣らない(時にはより過激な)加速を楽しめるのはご存知の通り。さらに、回生ブレーキというエネルギー創出手段がドライバーの手に(足に)委ねられたことで、「減速」まで楽しみになったというのは、画期的な変化だった。
今後も、Honda eに乗りながら感じたあれこれを、ユーザー目線でお伝えしていきますので、よろしくお願いします。
Honda eのプロフィール(2023/6/10現在)
総走行距離:37127km
平均電費:8.0km/kWh
取材・文/篠原知存
北海道 函館に住んでいるものです。
やはり、「100~120kmごとに充電が必要」ってところが、EVを選択できない理由になってしまいますね。
私の場合、長距離ドライブで片道600kmを夜間の下道メインで走行する可能性があり、となると、田舎で24時間利用できる充電設備が北海道では十分整備できているとは言い難いと思います。
ですので、現時点だとハイブリット車がベストな選択肢かなと思い、フィットハイブリットに乗っています。
北海道の田舎の下道でも安心して充電できる環境が早く実現してほしいです。
古河瑞穂さん
コメントありがとうございます。
下道で片道600km!!まさに北海道って感じですね。
充電インフラの充実がEV普及のカギだというのは、
ひしひしと感じています。
乗りたい人が安心してEVを選べる環境になるといいですね。
ぜひ一度、Honda eで北海道を訪ねてみたいと思っています。
自分もhonda eに乗っているので
楽しさはよくわかります
2年半で10万㎞近く
家に充電ナシ
電費は8.7kWh
最長距離は252kmです
地方のせいか未だに充電中や街中で
同じ車種の方に会った事がなく情報は記事頼りなので久々に見かけたhonda eの記事でテンション上がりました
是非一度honda eについて詳しく聞いてみたいです
ばにらさん
コメントありがとうございます。
ほんとにお仲間にほとんど会わないですねー(笑)
走行距離もすごいですけど、
電費に驚きました!!!
どうやったらそこまで走れるのか、聞いてみたいです。
よかったら情報交換させてください。
インスタグラムでev_hoboにDMいただけたら幸いです。
https://www.instagram.com/ev_hobo/
まだEVオーナーではありませんが、購入の検討にあたってディーラーからお借りしたことがあります。
ワンペダルのコントロールは慣れると楽しいですね。特にワインディングロード。
逆に平坦で速度変化が少ない道のりは逆に疲れました…(これも個人の感想です)。
EV運転していて思うのはMT車と意外と感覚が似ていますね。ダイレクト感はもちろんですが、道の勾配やエンジンブレーキの効き具合等を予測していい具合にもっていくのが楽しかったです。
MT車といえば攻めた走りばかり見られがちですが、効率を考慮した運転も楽しく、いつも走る郊外路をWLTC-Mでの公称燃費と比較して達成率99%で走れています。
結局、普段の移動距離と充電環境の悪さ(県内高速道路に1箇所だけとか、テスラSCもようやく県内1箇所目設置とか)、充電を含めた移動時間が見合わずにEV購入は見送りましたが、次に乗り換える予定の10年後あたりのEVラインナップと環境整備を楽しみに待ってようと思います。
個人的にはMTシミュレーションが気になってしかたがありません…。
ごましんさん
コメントありがとうございます。
私も高速道路では足キープでなくACC任せです(笑)
MT車はほとんど経験がないのですが、
バイクではミッションの操作も楽しんでます。
10年後……ほんと、どうなってるんでしょうか。
リーマンショック後に、一度低下したガソリン代が再びじわじわと上昇していた2013年、毎月のガソリン代が3万円を超えるようになり、日産のお店でリーフを試乗し「欲しい!!」となって、「毎月3万円の支払いで済むなら買う!」って交渉が成立してリーフオーナーになりました。
私も、EVに乗るようになって、運転の仕方も運転の楽しみ方も大きく変わりました。もちろん、考え方も。
そんな私が、一番大事にしている走り方について、ちょっと報告させてください。
それは、エネルギー保存の法則です。高校の物理で習う「物体の運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定である」というものですね。
位置エネルギーって、あまりその存在を実感として感じられないですが、EVの回生ブレーキを使うことで「なるほど!」となるのです。
坂道を上ると平地を走るときと比べて電費が悪くなるのは何故か。それは、位置エネルギーとなって蓄積されるからって気付いたとき、めっちゃ嬉しくなりました。上手に坂を下れば、電費が良くなるだけでなく走るための電気が溜まってくる。内燃機関では、上手に下っても、ガソリンは増えないですよね。
この原理に気付いてから、普段の走りでも運動エネルギーを大事に回収しようって考えるようになりました。あくまでも、周りの車に迷惑をかけないように意識しながらですけどね。
内燃機関のくるまが、信号赤なのにそれなりのスピードで信号近くまで走って、ブレーキで止まっているのを見ると、「あぁぁ~、もったいない」と思ってしまいます。
なので、篠原さんの記事、同じような気付きの人きっとたくさん居るんだろうなあって嬉しく読みました。
カズさん
コメントありがとうございます。
ですよね!その「もったいない」感覚、めっちゃわかります(笑)
エネルギー保存の法則も、なるほどなるほどと拝読しました。
私は車間距離をしっかり取るようになりました。
回生ブレーキ効果って、思ったより大きいのかもしれないですね。
記事、楽しく読ませていただきました。読み直したくらいです。
私はEVオーナーではないのですが、年内オーナーを目標にいろいろと勉強しているところです。
当初は今乗っている内燃車がこの9月で10年を迎えることもあり、この9月頃納車を
目標にしていたのですが、我が家の大蔵省(妻)から「EVはまだ早いのでは?」
の一言から始まり、熱き戦いの最中であります。(某国会議員のように暴れたりはしませんが)。
「出先での充電時間を楽しむスタイル」素晴らしい言葉ですよね。
これまで仕事も遊びも駆け足だった人生ですが、大好きなドライブくらいはEVと一緒にのんびり景色を楽しむのも良いものだと、改めて感じました。
TOMMYさん
コメントありがとうございます。
楽しく読んでもらえたというのは、ライター冥利に尽きます。感謝です。
私も、のんびり、のほほん、ぶらぶら、といった言葉が大好きでして(笑)
まだまだ選べる車種もそんなに多くはないですが、
ご家族のライフスタイルに合ったEVが見つかるといいですね。