EV放浪記2.0【019】Honda eの車検でバッテリーの劣化度測定を依頼してみたら……

愛車を走らせつつ電気自動車関連の話題をレポートする連載の第19回。Honda eが1回目の車検を迎えました。3年間で走行距離は5万5000km強。気になるのはバッテリーの劣化度(SOH)です。車検時に測ってほしいと思っていたのですが……。

EV放浪記2.0【019】Honda eの車検でバッテリーの劣化度測定を依頼しようと思ったら……

満充電からの航続距離表示は3年前より増えていた!

EVに乗っていて、よく聞かれるのが「バッテリーって劣化するんでしょ?」という話。でも、私のHonda eは3年乗っても、とくにパワーや航続距離が減った印象はありません。満充電時に表示される航続可能距離は230〜240km。スマホを探してみると、満充電で216kmと表示されている約3年前の写真が出てきました。まさか増えていたとは(笑)。

とはいえこの数字、乗り方などによって変動するので、あくまで参考程度にしかなりません。オーナーとしては、もう少しきちんと知っておきたい。せっかく車検で預けるので、ディーラーに持ち込む時に「バッテリーのSOH(State of Health=健康状態)を測ってもらえませんか」とお願いしました。

ホンダのホームページからアフターサービスに入ると「HondaのEV車メンテナンス」というコーナーがあります(EV車という表記はママ)。そこにバッテリーの容量保証があることが明記されていて、「保証による交換は8年または16万km、および診断機でバッテリー容量が70%に満たない場合とします。」とされています。

70%が保証の要件になっているんだから、きっと、診断機で現在のバッテリー容量を測ってもらえるはずだと思ったのですが、「劣化測定はしていません」と断られてしまいました。「リチウムイオン電池にはメモリー効果の影響もないので、電池の容量を長く使えるようになっています」という一般的な説明をしてもらいましたが、うーん。

おっしゃることは一応わかるんですよ、はい。EVについて無知なまま、デザインだけで衝動買いしてしまった私ですが、3年間つきあっていると、いろいろ知識もついてきます。EVに詳しい友人もできましたし、最近はHonda eオーナーズクラブの仲間とも情報交換をしています。

ディーラーの回答にある通り、Honda eは「容量を長く使えるように」、バッテリーの劣化防止にかなり気をつかった設計になっています。各社の最新EVもバッテリーの劣化対策に取り組んでいるはずですが、Honda eに限っては、過保護じゃないですか? と思えるほど。公共の急速充電器で30分充電したときに期待できる充電量は、充電率(SOC)が低くて気温が高くて、といった好条件でも15~17kWh。受け入れ電力がかなり抑えられています。

したがって、オーナーとしては、それほど劣化の心配はしていません。そもそも容量保証はメーカーとして製品の品質に自信を持っているということでもあります。なので、ディーラーでも「はいはい」と測ってくれて、「ほら、心配ご無用ですよ」という展開を期待していたのですが……思うようにはいきませんね。

なんとか実際のバッテリー容量を知る方法は?

なんとかSOHを測る方法はないものか、といろいろな人に相談していたら、コンバートEVのスペシャリストから「0から100%まで充電して、電力量を把握しておくのは悪くないかも」とアドバイスされました。「ネット」と「グロス」じゃないですが、たしかにHonda eの場合はカタログ上の35.5kWhと実際に車が使える電力量に違いがありそうです。

乗り始めた頃から充電の記録は取っていて、充電量とSOCの増加量を考え合わせると、実効容量は30kWh前後だろうと思っていました。単純な話、SOC50%分増えた時に充電量は15kWh前後という感じなので。カタログより控えめなのは、0%表示でもバッテリー容量を使い切った状態ではなく、100%でもいくらか余裕があるのでしょう。いずれにしても、リアルに「使える電力」を知っておいて損はありません。これを機に、試してみることにしました。

自宅マンションの共用充電器で測定できれば一番楽なのですが、ユアスタンドの利用履歴には充電時間しか表示されません。1時間4kWなので概算はできますが、やっぱり数字として見てみたい。なのでエネチェンジの充電器を探すことにしました。

EV充電エネチェンジのアプリは、EVsmartアプリと統合リニューアルされた2023年6月から使っていますが、じつは最近まで、充電量は表示されないと思い込んでいました。でも「メニュー」から右上のプロフィール画像をタップして「マイページ」を開き、充電履歴に入って、個別の情報をタップすると、利用日時などと共に充電電力量が見られるようになっています(EVイベントで中の人に教えてもらいました)。私みたいに気づいていない人もいそうなので、お役立ち情報として書いておきますね。

さて、充電量ゼロで公共充電器にたどり着くには、慎重な検討が必要です。万一の電欠ストップを考えて幹線道路は避けたいですし、たどり着いても充電器が使用中なら詰んでしまうので複数口は必須。自宅の周辺から検索範囲を広げて、見つけたのが東京都江東区の「東京イーストサイドホテル櫂会(かいえ)」の駐車場でした。6kW充電器が4つ。駐車場は有料ですが最大料金あり。止めっぱなしにできます。条件バッチリです。

テスト当日まで充電を控え目にして、SOC20%近くになったHonda eを電欠状態にするべく、ご近所周回をスタート。航続可能距離表示を気にしながらぐるぐる走りました。4%で「POWER REDUCED 出力が制限されます」という表示が点灯。このサインはリセットしてもすぐにまた表示されます。ほんとにヤバいよ、というアピールですね。さらにアクセル控えめにホテルの近くを行ったり来たり。

充電量はついに0%に。いつ止まってもおかしくないと思うとドキドキします。ベテランEVユーザーからは「0%でも数キロは走れる」なんて話も聞いたことがありますが、試す気になれません。すぐにホテルの駐車場に入りました。

6kWの充電器4つはすべて空いていて、e-Mobility Powerの提携カードが使える「モデル2」でした。カード利用料金は各社によって違うのですが、私が利用中のHonda Charging Service(ホンダ・チャージング・サービス)は、かなりお得。なので今回はEV充電エネチェンジアプリではなく、カードを使うことにしました。ホンダ・チャージング・サービスのシステムでも充電量は通知されます。

ピッとタッチしたら、いつものように充電がスタート。SOC0%でも、動作に違いはありません。しかし、充電ランプが青く点灯するだけで、これほどホッとするとは。やっぱり「0%」は精神衛生上よろしくないですね。今回は意図的でしたが、あまり経験したくはありません。

私の場合、充電タイムはお仕事タイム。外気温は19℃と良い具合なので、助手席でパソコンを広げてもいいのですが、100%までに5時間ぐらいはかかるはず。近くで仕事ができそうな場所を探しているうちに、ついお散歩モードに。仕事はやめてウォーキングに切り替えます。クルマの充電中に、自分も健康をチャージ。気がつけば駅2つ分歩いちゃってました。

0〜100%の充電量は29.8kWh

そろそろ100%という時間を見計らって、駐車場に戻りました。95%からは車内で観察。メーターとにらめっこしていると時間が長く感じられ、99%から100%はじりじりさせられました。でも無事に、0%での充電開始から5時間19分で満充電になりました。ほどなくホンダ・チャージング・サービスからメールで届いた利用明細によると、充電量は29.8kWhでした。

ま、そうですよね、というのが率直な感想。充電ロスとか細かいことはいろいろあるのでしょうが、実質30kWhという予測は一応当たったわけです。ただし、これでSOHが何%と判明したわけではありません。新車時に同じようにして測っておけば、変化がわかったんですよね。でも、後の祭りというやつです。私のHonda eは3年、5万5000キロの時点で実効容量が29.8kWhだったということを記録しておいて、また気になった時に比べてみるしかありません。とりあえずは、基準値がわかったということで満足することにします。

本筋とは関係ないのですが、利用明細を見て驚きました。約30kWh入って478円(税抜き)というのは安すぎますね。時間制ゆえですが、6kW充電器を想定していなかったのでしょうか。来年3月末でサービス終了してしまうホンダ・チャージング・サービスを、しばらくはありがたく使わせていただきます。

マイカーのSOHって知ってますか?

このSOH問題、続きがあります。その後、Honda eオーナーズクラブのメンバーから、OBDツールとスマホアプリを使ったSOHの測定法を教えてもらいました。また、この記事を執筆するために、ホンダ本社などにいろいろ問い合わせた結果、ディーラーから改めて「測らせてもらいます」と声をかけていただきました。日時は未定なのですが、その経緯や結果なども含めて、続編でご報告したいと思っています。

あれこれ調べたりしているうちに気になってきたのですが、他のEVに乗っている皆さんはSOHをどうやって把握されているのでしょうか。日産リーフの場合は、バッテリー充電率のスケール自体が減っていく「セグ欠け」でSOHが可視化されていますよね。でも、他のEVについては、試乗などをした時もSOHについてチェックしたことがありませんでした。各社ともバッテリーの保証はアナウンスしているようですが、肝心のユーザーがSOHを知る手段がないのはいかがなものかとも思います。みなさんが乗られているEVは、SOHの表示ができるようになっていますか? それとも検査時にディーラーで教えてもらったり? よかったら、コメント欄で教えてください!

私のHonda e(2021/4/29~2024/5/20)

総走行距離:5万6433km
平均電費:8.9km/kWh
累計充電回数:急速401回、普通104回

取材・文/篠原知存

この記事のコメント(新着順)19件

  1. 電費表示について
    一般的に車両表示される電費計算される電気量は電池放電量と推察しています。
    本来の電費は、外部給電量(すなわち充電量)から計算しないと、ガソリン車の燃費計算と同条件でないなぁと感じています。
    なぜなら、ガソリン車は給油量で計算しますよね。
    なので我が家では、自宅充電器の上流に電気計量器を設置して実電費計算ができるようにしました。ただし、急速充電や宅外充電では計量できないので、充電前後の電池残量を元に計算した電気量を給電量として計算しています。
    まだ、データ蓄積がされていませんが、車両表示8.3km/kWhに対して実電費6.9km/kWhでした。単純比率実電費に対して車両表示120%程度である。

    1. まっくんちさん
      コメントありがとうございます。
      なるほど、と思いました。
      自宅に限らず、公共の充電器などでも、
      車両側で充電量がSOC(%)だけでなく、kWhでも表示されて、
      充電サービス側の給電量と比較ができるようになれば、
      充電時のロスなども可視化されることになりますね。

    2. 追記
      記事内の電池容量35.5kWhに対して充電量29.8kWhとすれば、単純計算で84%程度、これは、まさしく充電効率だと思われます。

      日本自動車研究所(JARI)の「バッテリ式電気自動車の電費性能について」というレポートを目にしました
      この資料によると普通充電効率が85%と記載され、ちなみに急速充電効率は91%でした

  2. 我が家にはH26年製三菱アウトランダーPHEV、H25年製アイミーブM、R6年製日産SAKURAの3台があります。アウトランダーは2年前に約10万キロで容量70%以下となり、無償交換しました。現在は13万キロで85%ほど。普段はOBD2とアプリで確認しています。また、三菱は充電プランをプレミアムで加入すると年1回充電容量測定無料クーポンとナビの充電スポット更新クーポンが2枚付いてきます。アイミーブMはまだ5万キロですが、東芝製バッテリーの為か劣化はほぼなく、10kwh表示。SAKURAは父が先日購入しましたが、メーター内に様々な情報が出て、SOHもSOCも確認できます。バッテリー保証はセグ欠けと表現され、%ではなく、ちょっとわかりにくいですが、営業マンによると点検で確認できて、無償交換になる車両はほぼなく、劣化はあまりしないとのことでした。そのため、急速充電は充電器の表示で75A以上、普通充電は8A以上で充電されないように制御されていると説明がありました。実際、アイミーブは急速で125A、SAKURAは75Aでした。劣化を抑えるためとはいえ、充電時間が長引くのはマイナスポイント。アイミーブMに搭載のバッテリーSCiBって優秀なんだな、と感じました。ホンダeとの比較ができませんが、EVライフを長く楽しむ為に他メーカーユーザーとの交流は大事です。

    1. アウトランダー弐号機さま
      情報提供ありがとうございます!
      これだけの実体験は本当に貴重ですね。
      なんと無償交換まで体験されているとは!
      SAKURAのSOHが常時確認できるというのも初めて知りました。
      市販EVを長く提供し続けている三菱と日産は、さすがというか、
      ユーザー目線で対応してくれている感じがしますね。

      あと、メーカーを問わない交流が大事という話、
      私も心から同感です。

  3. 現在のEVはバッテリーの温度管理がしっかりされているので、余りユーザーの方はバッテリーのSOHについて気にする必要はないのではないか?と思っています。初期のEVはバッテリー冷却が不十分(空冷式)で、フル充電で高温放置されるとバッテリーが顕著に劣化した様です。
    カリフォルニア州ではZEVに対して、10年、24万Kmの耐久保証が求められていきます。(https://ww2.arb.ca.gov/sites/default/files/barcu/board/books/2022/082522/22-10-1pres.pdf)
    日本でも今後リサイクル要件も含め、同様の耐久保証が求められていくと思います。

    1. ピーターさま
      貴重な情報をありがとうございます。
      たしかに、環境負荷という側面からも
      バッテリーの劣化対策って大切ですね。
      気に入ったクルマに安心して長く乗れるのが一番だと思います。

  4. 容量保証をうたっておいて、容量測定をしないのはダメなのでは?
    容量測定は有償で5万円です・・・で、こちらの都合でやらないのはよいと思いますが。
    とりあえず測定をお願いできるようなったみたいで良かったです。

    1. たきりんさま
      コメントありがとうございます。
      測定してほしいユーザーにはしっかり対応する、
      というのが当たり前になってほしいですね。
      有償もあり得ると思っていますが、価格なども含めてリポートします!

    1. 松岡さま
      コメントありがとうございます。
      専門家の方には物足りない内容かと拝察しますが、
      EVに乗っていて疑問に感じたこと、知り得た事実を
      みなさんと共有していきたいと思っております。
      劣化について詳しくご存じでしたら、ぜひご教示ください!

  5. 充放電時の発熱によるロスがありますので充電した量=放電できる量ではありません。正味は25kWhという所ですかね。

    1. やすさま
      ご教示ありがとうございます!
      実際にはメーター表示よりも電費がいい(1kWhで走れる距離が長い)ということですね。なるほどです。
      バッテリー容量や電費の表示というのは、いろいろな誤差も含めて統一してもらいたいですね。

  6. SOH測ってくれないって・・ なんかチカラの入れ方が足りないというか
    抜けてるというか・・ 
    自分の場合、三菱電動車両サポートのBasic(500¥/月)なのでSOH測定は
    有料ですが、車検時に測って貰いました。6万キロ走行時で104%。
    7000キロ走行時は105%だったので劣化してるというか誤差範囲??かもと。
    で、6万キロ走行時の測定で、最初は80数%くらいと出てきて、
    ずいぶん劣化したなとおもったが、データシートよく見ると計算式が書いてあって、10.5kWh仕様と16kWh仕様で係数が違っていて、
    自分のMグレードは10.5kWhなのに16kWh仕様の係数で計算されてました。
    この係数を治して104%ってことでした。
    ディラーさんも馴れては居ないようですが、SOH測ってー といえば 了解! と
    返事はもらいたいもんですね。

    1. ミーブ乗りさま
      コメントありがとうございます。おっしゃる通りで、
      さくっと了解してほしいと思いました。
      曲折はあったとはいえ、測ってくれることになったので、
      またご報告しますね。

  7. リーフ30kWhで、SCHセグがけしてきたのと4駆が必要だったので、volvo XC40 twin に乗り換えました。ご懸念のとおりSCH表示がありません!!!!
    いたしかたないので、自分でチェックするしかないなということで、毎回、充電量とSOC(%)増加分をメモしています。まわりからは「おたく」に見られていることでしょう。
    あらためて、SOH表示のあるリーフは(正直で)素晴らしい、と感じた次第です。

    1. 江部広治さま
      コメントありがとうございます。XC40 Rechargeも表示はありませんか。リーフのような正直設計のほうが珍しいのかもしれませんね。
      私も3年間ずっと充電記録を取っております。趣味なので「おたく」でいいと思います!

  8. 現時点、日本で販売している自動車メーカーの中、三菱の対応が最高最強だと思います。
    毎月1500円(税抜)を払って、電動車両サポートに加入すれば、年に1回無料測定してもらえる。
    それ以外のプランや電動車両サポート未加入の場合も一万円対応しているようです。
    70%保証と言いつつ、測定する手段を提供し無ければ、絵に描いた餅しかなりません。

    1. 13年目のアイミーブ乗りさま
      貴重な情報をありがとうございます。年一回の無料測定、いいですね。
      製品に対する自信を感じます。
      じつはホンダディーラーで測定をお願いすることにはなったものの、
      工賃とかはどうなるのかなぁ、と気になっていました。
      またご報告いたします。

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この記事の著者


					篠原 知存

篠原 知存

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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