EV放浪記2.0【025】Honda eで往復2000kmドライブ〜「充電は休憩」と実感

愛車のHonda eを走らせつつ電気自動車関連の話題をレポートする連載の第25回。Honda eオーナーズクラブのメンバーが北九州市でカフェを経営しています。東京から往復約2000km走ってキーマカレーを食べてきました。充電15回の長距離ドライブをレポートします。

EV放浪記2.0【025】Honda eで往復2000kmドライブ〜「充電は休憩」と実感

愛車のHonda eで最長のロングドライブ

製造終了してしまったHonda eですが、おかげさまでオーナーズクラブのメンバーは増加中。その一人である猫のステッカーを貼った白eのオーナーは上西義人さん。北九州市小倉南区で自家焙煎コーヒーとスパイスカレーのお店「びー玉キッチン」を経営しています。

インスタグラムのページは写真が素敵でじつに美味しそう。コーヒー豆の通販もしておられるので、定期的に購入しています。私のお気に入りは浅煎りのシングルオリジン。様々な生産国のコーヒーを楽しんでいます。

Honda eオーナーズクラブのメンバーは関東圏が多めで、続いて東海・中部圏。ジャパンEVラリー白馬や、EV-GPなどのイベントで顔を合わせたり、個別にランデブーしたりはしていますが、九州はぽつんとお一人。なかなか会うこともないはずなのに、今年に入って立て続けに二人が中部と関東からわざわざお店を訪問して報告してくれました。

クーラー必須だった酷暑もやっと和らいでドライブが楽しい季節になったので、私も訪ねてみることにしました。Googleマップで検索すると、東京の自宅からお店までは、東名高速―新東名高速―伊勢湾岸道―山陽道―関門道というルートで片道1000kmちょっと。これまで最長のワンデードライブだった「チキチキ東京―大間キャノンボール対決」(片道約830km)を超えるロングドライブです。

SOC95%から新東名静岡SAまで走破

新東名静岡SA下り線

まずは道中の記録から。平日の朝8時半に、充電率(SOC)95%で自宅を出発。いつものように電費優先で左端車線を定速走行します。Honda eでこっち方面に出かける時は、東名高速最高地点(標高454m)の御殿場ICを超えて駿河湾沼津SAまで無充電で行けたら御の字なのですが、この日はほぼ満充電からスタートしたので、さらに伸びて静岡SAまで走れてしまいました。出発から187km走ってSOC18%残しというのはなかなか優秀。エアコンオフで走れる季節はいいですね。30分で充電電力量は16.7kWh。SOCは91%まで回復しました。

それ以降の高速道路での充電は以下の通り。

【2回目】出発から356km、区間169km
伊勢湾岸・湾岸長島PA(充電17.0kWh、SOC 9→78%)
【3回目】441km、区間85km
名神・草津PA(充電11.2kWh、SOC 39→80%)
【4回目】617km、区間176km
山陽・福石PA(充電16.6kWh、SOC 7→74%)
【5回目】772km、区間155km
山陽・小谷SA(充電16.7kWh、SOC 6→70%)
【6回目】887km、区間115km
山陽・下松SA(充電14.3kWh、SOC 24→78%)

名神草津PA下り線

草津PAの充電量が少ないのは、途中で打ち切ったからです。本当はもう少し先まで走りたかったのですが、京都市内で20km以上の渋滞表示。安心のために継ぎ足し充電しました。山陽道に入ってからは、SOCを減らしてから充電する、効率のいい充電旅ができました。

岡山以西の複数口高速化未整備を実感

ただし、山陽道の吉備SA(岡山市)から西側は、まだ複数口と高速化整備が進んでいません。充電器は40kW器が1ヵ所1口ずつ。並行して走る中国道も1ヵ所1口です(一部は50kW器)。走ってみると、充電待ちの不安はかなり大きいものでした。EVに乗り始めた頃は1ヵ所1口が標準でしたが、ここ数年で首都圏や東京=大阪間は格段に進化。便利さには慣れるものですね。最近進んだ複数口設置がどれだけストレスを減らしてくれたかを実感します。

そんななか、小谷SAで、めずらしい風景に出会いました。40kW器1口なので、充電待ちにならないことを願いつつ向かったのですが、夜遅くなって、SAPAには時間待ちや仮眠のトラックが増加。どこも満車状態です。最近ときどき聞くのが、駐車されたトラックでSAPAの充電区画に入れなくなるトラブル。充電残量ギリギリでたどり着いた小谷SAも、入り口から渋滞中。大きな車体で視界が妨げられて、先が見えないので不安いっぱい。もし使えなかったら一般道に出るしかないですが、電欠ピンチです。

ヒヤヒヤしながらたどり着いた充電区画には、交通誘導員が立ってくれていました。別に私を出迎えてくれたわけではなく、SA内が工事中で充電区画の出入りが難しくなっていたためですが、うれしくなりました。これならスペースを塞がれることもないですし、バックで出る時にも後続車を止めてしっかり誘導。EV充電専用ガードウーマンのようだったおねえさん、ありがとうございました!

クルマに積んだ自転車で旅を満喫!

深夜に山口県下関市に入りました。スタートから約18時間。もう着いたも同然なので、路傍の駐車スペースを見つけて仮眠を取ります。といいつつ爆睡してしまって、起きた時にはしっかり朝でした。

それでもまだ時間があるので、まずは寄り道スポットのひとつ「関門トンネル人道」を訪ねます。公共駐車場にクルマを止めて、積んであった自転車を組み立てます。最近、ソロドライブではEV+自転車という「ゼロエミッション2&4」がお気に入り。旅先での自由度が大きく高まります。

関門トンネル人道は、関門海峡の海底に掘られた全長780mの歩行者用トンネルで、本州と九州を歩いて渡れます(自転車は押し歩き)。途中に県境の表示も。珍しいもの好きとしては、いつか行ってみたい場所だったので、大満足でした。対岸で観光スポット「門司港レトロ」周辺をポタリングして、帰路は渡船で戻ってきました。

自転車を積み直して、あらためて北九州へGO。自動車用の関門トンネルは3km以上あります。海底部分は人道トンネルと二層構造になっているそうです。ついさっきテクテク歩いたところを、さくっと通過して九州上陸。まだ時間があるので、最後の充電をしておくことにしました。

ENEOS Charge PlusのSSで、充電前にセルフ洗車。こうすると充電している間に拭き上げができます。旅先でもクルマがきれいにできると気持ちいいですね。7回目の充電は17.1kWh(SOC 17→82%)でした。

オーナーの上西さんがHonda eにひと目ぼれした理由

いよいよ、旅の目的地だったお店「びー玉キッチン」の駐車場にクルマを入れます。トータル1041km。お店に入って「こんにちは」と自己紹介。突然の訪問にもかかわらず歓迎してくださいました。店主の上西さんとは、これまでオンラインでやり取りをしているので、初対面という感じがしません。

かわいいイラストがあちこちに描かれたお店は、2016年7月にオープン。店内もグリーンがいっぱいで居心地の良い空間です。定番メニューのキーマカレーをいただきましたが、旨みが深くて心地よい辛さ。カップ入り特製サラダや冷製スープも美味。ランチセットがお得で、自家焙煎コーヒーが飲み放題です。コーヒーの仕入れから焙煎、グラインド、抽出まで担当しているのは妻の環さん。せっかくなので、美味しい淹れ方をレクチャーしてもらいました。

EV談義も盛り上がりました。BMW M3 クーペやアバルト500、ホンダNSXなどを乗り継いできた上西さん。昨夏「シビック タイプRを試乗したい」とホンダディーラーを訪ねたら「Honda eならありますよ」と言われて試乗。すぐに購入を決めたそうです。

オーナーの上西さんご夫妻。

「とにかく乗り味に衝撃を受けました。その場で回るようなコーナリングに惚れ込んで、『これだ!』と思いましたね。店のガレージが少し狭いのですが、サイドミラーがないのでぴったり収まる。それも良かったです」

納車は2023年8月。以来、お店が休みの日に夫婦でドライブするのが楽しみになったそうです。「よく出かけるようになりました。ガソリン車では高速道路を使って遠くまで走っていましたが、航続距離が短いので、行ってもせいぜいお隣の県ぐらいまで。近くの面白い道を探して走っています」とのこと。

絶景やワインティングが楽しめる道路についての実走情報で知られる「ツーリングマップル」を買って、地図を見ながら走っているそうです。1000km走ってきて言うのもなんですが、近場でもドライブの楽しさは変わりませんし、どこでだって新しい発見はあるものです。デジタルガジェットっぽいHonda eと、アナログな紙の地図との組み合わせを新鮮に感じました。

営業中にもかかわらず、歓迎してもらって楽しい時間を過ごせました。同じクルマということで縁がつながって、ふらっと訪ねる場所ができるというのは、ほんとうに素敵です。しかもカレーもコーヒーも美味。近くだったら週1ローテは確実なところ。少し遠いのですが年1回ぐらいは訪問したいと思いました。

復路に備えて「充電ついでの日帰り温泉」を満喫

さて、最大の目的は果たして、せっかくなので、もう1ヵ所だけ寄り道することにします。関門海峡を再び戻って、向かったのは絶景スポットとして知られる角島大橋(山口県下関市)。曇天の夕方だったので、コバルトブルーの海というわけにはいきませんでしたが、全長1,780mの橋がすーっと海上に伸びていて、見入ってしまいます(冒頭写真)。ついまた自転車を下ろして島まで往復。歩道もない2車線道路で、覗き込むとすぐに海。海上サイクリングの雰囲気を楽しみました。

とやってる間に夕暮れになって観光も終了。1000kmの帰り道に備えて、日帰り温泉を探します。お隣の美祢市に「道の駅おふく」という充電器付きの温泉施設を発見。掛け流しのお風呂は文句なし。旅先で入るお風呂は本当に気持ちいいですね。風呂上がりに充電を、と思ったのですが、道の駅は営業終了していて、あたりは真っ暗。30kW器で効率も悪いので、15分で切り上げました。充電量は6.7kWh(SOC 13→46%)。

山陽道佐波川SA上り線。

小郡ICから中国道に乗って、すぐに山陽道へ。あとは往路を逆にたどります。充電記録はこんな感じ。

【9回目】出発から1228km、区間距離48km
山陽・佐波川SA(充電15.2kWh、SOC 28→85%)
【10回目】1394km、区間166km
山陽・小谷SA(充電15.7kWh、SOC 7→71%)
【11回目】1506km、区間112km
山陽・吉備SA(充電14.5kWh、SOC 23→76%)
【12回目】1637km、区間131km
山陽・淡河PA(充電15.6kWh、SOC 14→76%)
【13回目】1780km、区間143km
新名神・鈴鹿PA(充電15.5kWh、SOC 15→76%)
【14回目】1922km、区間142km
新東名・浜松SA(充電15.1kWh、SOC 18→77%)
【15回目】2066km、区間144km
東名・足柄SA(充電16.5kWh、SOC 9→74%)

ほぼ走りっぱなしで2日目。さすがに疲れも溜まってきて、だんだん「充電時間=うとうとタイム」になってきます。明け方に充電した鈴鹿PAで、充電後にプラス数時間の仮眠を取りました。走り慣れた新東名高速に入ると、なんだかもう帰ってきたような気分になっていました。

新名神鈴鹿PA上り線

今回の東京―九州往復は2165kmを走行。メーター読みの平均電費は9.3km/kWhでした。「街なかベスト」を謳うHonda eのバッテリー容量は35.5kWh(しかもマイeは劣化で実質約30kWh)しかありません。正直、長距離走行には向いていませんが、急がなければ、どこまでも走れるものですね。

1時間半~2時間ごとの充電ストップは計15回で、トータル7時間ぐらいはガソリン車より余計にかかっています。でもその分、良いリズムで休憩が取れています。気分転換したり、ストレッチしたり、目や頭も休められるので、体力の落ちてきたオジサンでも、結構ハードなロングドライブができちゃいました。まぁ、1日1000kmも走るような旅は、みなさんめったにしないと思うので、なんの参考にもならないかもしれませんが。

帰着時のメーター表示。

なお、Honda eオーナーズクラブでは、11月16日(土)に岐阜県海津市の木曽三川公園センターで、第1回オフ会を計画しています。飛び入り大歓迎。参加希望の方は、コメント欄でお知らせください。

私のHonda e(2021/4/29~2024/10/21)

総走行距離 6万4704km
平均電費 8.8km/kWh
累計充電回数 急速446回、普通121回

取材・文/篠原 知存

この記事のコメント(新着順)4件

  1. はじめまして。
    2000kmの旅、本当にお疲れさまでした。比較的小さな車で長距離運転は結構厳しいものですが、充電というちょうど良い休憩タイミングが訪れるのはよいですね。
    さて最近ディーラーの片隅にひっそりと座っていた3年落ち2000kmというブルーのHONDAeを手に入れ、主に家人が近場の移動に利用し始めました。自宅充電もまだ1回しかしていない完全なEV初心者ですが、将来はV2Hに挑戦し災害時に備えようとしています。
    既に生産も終了した車なのでこの車の扱い方をどうしようかと悩んでいたところ、こちらのサイトを発見して救われました。できればお仲間に入れていただき情報を頂ければと思います(今のところお出しできるものがなくてすみません)。オフ会の場所の近くに住んでいますがあいにく当日所用があり伺えないのが残念です。
    どうぞ宜しくお願いいたします。

    1. matzさん

      こんにちは。はじめまして。
      2000kmならほぼ新車ですね。私と同じ青e、ナイスです!
      V2H計画もいいですね。集合住宅なのでうらやましいです。

      みなさんとお繋ぎしますので、お手数ですが、
      asobou524@gmail.com
      にメールいただければ幸いです。

      オフ会はまた次の機会にでもぜひ。
      よろしくお願い申し上げます!

  2. お疲れさまでした。
    30kWh相当にSOHが減っているとはいえ、40kWhリーフよりも格段に長距離走行に向いていますね。
    5回目や15回目の充電でも16kWhもの電力量が入るのは元リーフユーザーから見ると驚きです。リーフで同じシチュエーションならバッテリー過熱のため10kWhぐらいでしょう。
    バッテリー冷却装置の必要性を感じます。
    HONDA eやMX-30 EVは35.5kWhのバッテリー搭載量ですが、大容量より冷却装置搭載を優先していたことは正解だったのだと思います。

    深夜の仮眠トラック、今回は誘導員がいてラッキーでしたが、誘導員は大抵いません。
    深夜の仮眠トラック問題は、喫緊の課題だと思います。

    1. シーザー・ミランさん

      コメントありがとうございます!
      40kWhリーフにはそういう問題があったのですね。
      サクラにもN-VAN e:にも冷却装置がついているようですし、
      コンパクトEVも着実に性能アップしていますね。

      充電区画に限らず、深夜のSAPAが無法状態なのは、
      関係者の皆さんもご存知のはずなので、なんとかしてほしいですね。
      一時退出を自由化するだけでも、だいぶ変わると思うのですが。

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この記事の著者


					篠原 知存

篠原 知存

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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