愛車のHonda eを走らせつつEV関連の話題をレポートする連載の第28回。絶版になったHonda eですが、オーナーズクラブは元気に活動中。5月11日に栃木県茂木町のモビリティリゾートもてぎで第2回オフ会を開催したところ、なんと19台も集まる大盛況となりました。
国内販売台数の1%が集結
1ヶ月も過ぎてからレポートというのも遅きに失した感はありますが、考えてみればHonda e が19台も集まったのは大ニュースです。記録しておくのも大切かなと思って筆を取ることにしました。
「たったの19台?」と思った方もいるかもしれませんが、Honda eはそもそもかなりのレア車。参加メンバーの調べによると、オフ会時点での国内販売台数は1,947台。生産終了がアナウンスされた2023年12月の時点で販売台数は約1,800台でしたが、その後もディーラーにある在庫などが販売されたようです。それでも2,000台には達していません。
そのうちの19台ですからね。じつに国内販売台数の約1%が集まったことになります。日産リーフだったら1,500台以上が集まるようなもの。そう考えれば、なかなかの出席率ではないでしょうか。
2025年5月11日(日)に開催されたHonda eオーナーズクラブの関東オフ会。会場はホンダの聖地のひとつに数えられる「モビリティリゾートもてぎ」。利用を予約したのはホンダコレクションホールのすぐそばにあるS2駐車場です。創業期から現代に至るまでの歴史を学べるコレクションホールには、2輪、4輪の名車などが並べられています。ホンダファンなら一度は訪ねてみたい場所で、オフ会会場には最適です。実際、同じ日に、近くの駐車場でN-VANのオフ会も開かれていたようです。
今回のオフを仕切ってくれたのは、白eに乗っているいなみさん。集合にあたって、ちょっとしたアトラクションを企画してくれました。それはパレードラン。モビリティリゾートに集まる1時間前に、約25km離れた栃木県芳賀町の「かしの森公園」に「来られる人は集合!」と声をかけたのです。じつはこの公園、クルマを総合的に研究開発するための最先端設備を備えた本田技研工業四輪開発本部のすぐお隣。ホンダ社員の皆さんには説明不要の場所なのでした。
集合の目安は10時半だったのですが、9時半ごろから続々とHonda eが公園の駐車場に到着します。街で同じ車を見かけることもないので(ごく稀にすれ違ったら手を振ったりしてしまいます)、4台、5台と並ぶだけでうれしい限り。それが、気づけば10台を軽くオーバー。
プレ集合の時点で、初開催だった中部オフの集結台数を軽々と超えてしまいました。集まってしゃべっているだけで楽しいので、なんならここでずっと過ごしてもいいのですが、本番はこれからです。
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約25kmのパレードランからオフ会がスタート
10時半に、パレードラン開始! 本来の集合場所であるモビリティリゾートもてぎを目指します。同じ車がぞろぞろと連なっているのは「なんだこれ!?」感が満点です。最初は真ん中あたりを走ったのですが、前も後ろも見渡す限りHonda e。製造や輸送の現場で働いている関係者ならともかく、普通の人はこんなの見かけたりしないでしょう。さすがに隊列が長過ぎて、途中の赤信号で途切れ途切れのパレードにはなりましたが、道中立ち寄った道の駅では、かなり視線が集まったりして、ちょっと照れ臭さも。
EVライフの楽しさやHonda eの魅力をアピールするためのパレードランなので、「目立ってなんぼ!」ではあるのですが、1人のドライバーとしてはあまり目立ちたくない心境もあり、ちょっと微妙。ただ、抜群に面白かったことは間違いありません。
同一車種でのランデブーは、自分ではどう見えているのかわからないマイカーのことを、客観的に見られるいい機会です。ビルのガラス壁に自分のクルマが映ると、つい見てしまったりしますよね。あれがずっと続く感じ。ほんと、Honda eは走ってるところが絵になるなぁ、と再確認しました(個人の感想です)。
開発チームの方々によるトークセッションも
到着したモビリティリゾートもてぎでは、S2駐車場をかなり自由に使えたので、色分けして並べてみました。白が7台、赤と青が3台ずつ、黄色とガンメタが2台ずつ、黒が1台の計18台。最初に19台と書きましたが、じつはプレ集合の「かしの森公園」だけ参加してくれたユーザーが一人いらっしゃったのでした。短時間なのにわざわざ来てくれたのはうれしい限りです。
今回は「お膝元」ということもあって、Honda e開発チームのメンバーも含めてホンダ社員の皆さんも多数参加してくれました。さすがのチームプレーで、整列した車のそばにテントやテーブル、チェアが手際よく設置されて、コミュニティー空間のできあがり。
そこで繰り広げられたのは、開発チームの面々によるHonda eトークショーでした。コンセプトモデルがそのまま街に飛び出して来たようなデザインと「コーナリングマシン」と呼びたくなる運動性能がHonda eの魅力なのですが、量産車としてはかなり冒険的と言っていいでしょう。
つるっとして丸っこいボディは、何にも似ていません。サイドミラーの代わりにサイドカメラが採用されているとか、運転席から助手席まで5つの液晶ディスプレーが水平に連なったインパネとか、次世代っぽさが満点。リア駆動を採用し、プラットフォームから新設計して運動性能を追求。前後左右の重量配分50:50を達成しているのも特徴です。かなり費用も手間暇もかかっているはず。
発売当時から実用上の難点と言われてきたのは、一充電走行距離が短いこと(カタログ上はWLTCモードで259km)。ただ、バッテリー容量を増やすのは重りをつけるのと同じ。電費も悪くなるし運動性能的にも不利になります。「航続距離だけがクルマの価値ではない」という思想に、個人的には共感できます。とはいえここまで割り切ったものを実現させるのは簡単ではなかったはず……。
ホンダに受け継がれる「ワイガヤ」の現場を実感
オーナーとしては、気に入ったクルマを存分に楽しめばそれでいいのですが、どうやってこんな斬新な製品を実現させたのかも気になるところ。それを中の人たちが惜しげもなく語ってくれました。
「えーっ、そうだったの?」と驚くような開発秘話も次から次に。オフレコというのが約束だったので、内容については書きませんが、感心させられたのは、社員や元社員の皆さんの話しっぷりです。大先輩の話に「いやいや、そうじゃなくて……」とツッコミが入ったり、それについてまた別の意見が飛び出したり、遠慮がありません。ホンダが企業文化のひとつとして掲げている「ワイガヤ」が、どういうものなのか見せてもらった気がしました。
【参考情報】
受け継がれる思想(Honda公式サイト)
公式説明によると、ワイガヤというのは、新しい価値やコンセプトを創りだす場として「年齢や職位にとらわれずワイワイガヤガヤと腹を割って議論するHonda独自の文化」だそうです。まさにHonda eが、そうやって作り出されたプロダクトで、実際にこの方たちがこうやって会議をしていたのかぁ、と想像すると、ついつい笑顔になってしまします。
そしてなにより、開発に携わった皆さんがマイカーとしてHonda eに乗っている、という事実が、オーナーにとってどれだけうれしく、誇らしく感じられたことか。
駐車場でのトークが一段落したところで、ホンダコレクションホールをみんなで見学。ここでも各フロアでの裏話的雑談が抜群に面白く、楽しい時間を過ごすことができました。ただ、ホールのどこにもHonda eが展示されていなかったのはちょっと残念。いやいや、「ホンダ初の量産EV」が展示される日はそう遠くはないはずです。
私のHonda e(2021/4/29~2025/6/22)
総走行距離 7万0500km
平均電費 8.8km/kWh
累計充電回数 急速483回、普通135回
取材・文/篠原知存
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