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ホンダの軽乗用EV『N-ONE e:』で南房総・館山へプチ長距離試乗/プラグアンドチャージはやっぱり便利

ホンダの軽乗用EV『N-ONE e:』で南房・館山へプチ長距離試乗/プラグアンドチャージはやっぱり便利

ホンダの軽乗用EV『N-ONE e:』試乗記の第2弾です。片道約100kmの房総半島の館山へ日帰りドライブしてきました。翌日はCHAdeMO規格で初めて実装されたプラグアンドチャージも体験。いずれは全EVに標準装備してほしい機能だと改めて感じました。

目次

最大出力150kWの「赤いマルチ」を目指す

前回の試乗(関連記事)では、N-ONE e:の広報車を借りて東京=箱根を往復しました。かなり好電費のEVだと感心しましたが、認証なしで自動的に充電できる「プラグアンドチャージ」機能を試すことができなかったので、もう一度1泊2日でお借りすることになりました。

再び埼玉県和光市内のホンダ施設へ。用意されていたホワイトのN-ONE e:は、前回と同じ車です。カーナビやアルミホイールが標準装備の「e: L」グレード。第1回と違う条件は、寄本編集長と一緒だということ。今回は二人乗車での試乗になります。

「プラグアンドチャージ(Plug & Charge = PnC)」体験にはホンダ関係者が立ち会ってくれることになって、翌日に都内で落ち合う予定です。1日目はフリーですが、目的地の一つは決まっていました。「赤いマルチ」と通称されている最大150kW出力(ブースト時)のマルチコネクタタイプ充電器を試すことです。

市原SA(上り線)の急速充電スポット。

じつは、N-ONE e:のオーナーさんが、SNSに赤いマルチの写真とともに「これは使えなかったのはなぜ?」と投稿されていたのを見かけて、どういう不具合なのか、確かめたかったのです。

「充電できなかった」と聞いて思い浮かべたのは、マイカーのHonda eで「充電不可」を食らった経験でした。2021年12月、同じニチコン製のマルチコネクタタイプ充電器「青いマルチ」が登場した初日に、首都高の大黒PAまで試しに行ったものの充電できず、Honda eをCHAdeMO 2.0に対応させるアップデートを待って、充電できるようになるまで1ヶ月以上かかりました。

【関連記事】
大黒PAの新型急速充電器に一番乗りで使い勝手を検証してみた【不具合情報も確認】(2021年12月19日)
『Honda e』を大黒PAの新型急速充電器で「やっと充電できた」レポート(2022年1月30日)

赤いマルチでN-ONE e:が充電できなかったのは、単純な故障だったり、接触不良だったり、例外的なトラブルということも考えられますが、Honda eのようにシステムに起因する不具合なら、しっかりフィードバックしたほうが充電ネットワークの利便性向上につながります。調べてみると、館山道の市原SA(上下線)に設置されているので、そこを目指すことにしました。

南房総・館山の絶景スポットへ

和光市出発直後のメーター表示。SOC95%で航続可能距離は184km。

でも、電費のいい運転だったので、航続可能距離表示は走るほどに増え、約16km走行後にはSOC89%で192kmになりました。

とはいえ、充電のためだけに往復するのもつまらないので、足を伸ばしてドライブも楽しむことに。千葉方面なら……ということで、同乗の寄本編集長が提案してくれたのは、房総半島の「絶景スポット」です。今年5月にテスラ モデル Yでドライブをしたときに訪ねた(関連記事)という、沖ノ島海水浴場を目的地に決めました。

和光市を出て、高島平ICから首都高速に乗り、川崎浮島JCTから東京湾アクアライン、木更津JCTで館山自動車道へと乗り継ぎます。120km以上あるので帰路のことも考えて電気の節約を心がけ、80km/h程度をメドに左側車線をキープ。

館山自動車道を走っていて思い出したのは、いまのところ高速道路SAPAで唯一の従量課金制急速充電器があること。ハイウェイオアシス富楽里に設置されたPower Xの充電器です。せっかくなので休憩がてらに立ち寄って記念写真をパシャ。

ここまで来たら目的地はまもなくです。館山道を終点で降りて、海岸沿いの道路を走ると、海上自衛隊の基地に出ました。海側に回り込むと視界がぐっと開けます。左手には基地の有刺鉄線。右手は護岸が続いています。あとは空と海。強風が茶色い砂を巻き上げていたせいか、なんだかマッドマックス感のある荒涼とした空間を、行き止まりまで進みます。

沖ノ島は、砂州で島と陸地がつながった陸繋島(りくけいとう)。その周囲だけ砂浜の海水浴場になっていて、砂が橋のように島まで伸びています。自然の不思議な力を感じさせてくれる景色(冒頭写真も沖ノ島で撮影)でした。

二人乗りでもさすがの好電費を確認

和光市からここまでの所要時間は3時間弱。途中、SAで2回休憩しただけで無充電で到着しました。借り出し時に98%だったバッテリーの充電率(SOC)は、約130km走って45%まで減っています。平均電費の表示は9.5km/kWh。二人乗りでも相変わらずの好電費です。

帰路は館山道を戻ります。試してみたい「赤いマルチ」がある市原SAまで約80km。航続可能距離は104kmと表示されています。おそらく大丈夫でしょう。市原SAの150kW器が本当に使えなかったら、冷や汗をかくかもしれませんが……。

館山道も80km/hの定速クルージング。のんびり走りながら、N-ONE e:についてあれこれ話しました。以前にホンダの軽『N-BOX』にも乗っていた筆者にとってはかなり好印象です。静粛性が高いし、爆速ではないものの日常使いには十分にトルクフル。

あと、Honda eでは使い勝手がイマイチな車載ナビの「充電スタンド検索」が、N-ONE e:ではほんの少し、進化していました。マイカーのHonda eで検索すると、現在地から近い順にリスト表示されますが、距離と満空情報だけで、方向も充電出力もわかりません。低出力で近くにコンビニもトイレもない「ポツンと充電器」に案内されたりします。なのでひそかに「充電ロシアンルーレット」と呼んでいました。最近はもっぱら充電サービス各社のアプリ頼りになっています。

それがN-ONE e:では、距離順リストで最上位の充電器が地図付きで表示されるようになっていました。充電器が進行方向にあるのかどうかや、周辺情報もマップで見られます。できれば充電出力や使用中の場合の経過時間なども表示してもらいたいところですが、一歩前進には拍手です。さらなる改善にも期待しています。

いろいろしゃべっているうちに、目的地の市原SA(上り線)に近づいて、オレンジ色の充電残量警告灯が点きました。航続可能距離は35km残っていて、もし赤いマルチが充電不可でも、少し先の市原市内にある急速充電器まで届きます。

「赤いマルチ」で問題なく充電できることを確認。ただし……

SOC14%で滑り込んだ市原SAには、e-Mobility Power(eMP)の「赤いマルチ」が4口設置されています。みなさんご存じの「EVおでかけ推進プロジェクト」(関連記事 ※実施期間が2026年3月31日までに延長されました)の対象充電器なので、筆者のEV充電エネチェンジアプリでもポチッと充電できるのですが、広報車用のeMP会員カードもお借りしていたので、ありがたく利用させてもらいます。

充電器のスタートボタンを押すとき、ちょっと緊張しましたが、すぐにカチカチッと通電チェックが始まって、問題なく充電開始。ほっとしました。SNSに投稿したN-ONE e:オーナーが「充電できなかった」のは、個別の事情があったようです。

ありがちなのは、充電プラグがしっかりはまっていなかったりすること。充電がスタートできなかったら、一度抜いて挿し直してみると、うまくいくかもしれません。また、充電器自体が不調のこともあります。遠隔リセットで回復する事例も聞いていますし、充電器に電話番号が掲示されているコールセンターに遠慮なく電話してみましょう。

しっかり30分充電して、SOCは14%から78%まで回復しました。第1回試乗でも書きましたが、急速充電が「警告点灯から30分で80%」というカタログ表記は、ほぼ実現されていることが確認できました。

正直なところ、バッテリー容量が29.6kWhで最大出力も50kW前後のN-ONE e:には、150kW器はオーバースペック。加えてeMPのビジター利用では50kW超と50kW以下で料金が違うので、筆者はなるべくSAPAの90kW器や150kW器を使わないで済むように充電計画を立てます。とはいうものの、必要に迫られてピットインすることもありますし、N-ONE e:でもちゃんと「赤いマルチ」が使えることが確認できたのはよかったです。

Honda Chargeでプラグアンドチャージを試してみた

明けて試乗2日目。いよいよプラグアンドチャージ機能を試しに行きます。充電しないまま都内の自宅マンションに停めておいたN-ONE e:に、朝から再び寄本編集長を乗せて、大田区のホンダカーズ東京中央池上南店へ。駐車場に「Honda Charge」の黒い急速充電器がありました。充電出力は最大50kW。取材日は休業日だったのですが、このディーラーさんの充電器は365日24時間利用可能です。

ホンダディーラーに設置されているHonda Charge以外の充電器は、私の車を担当してもらっている店も含めて営業時間内しか使えないものが少なくありません。Honda Chargeの充電器は原則的に24時間運用としているようです。移行・拡大に合わせて使い勝手が良くなるとうれしいですね。

さて、プラグアンドチャージとは、充電プラグを車に挿すだけで自動的に認証されて、充電から決済までできてしまうという機能です。テスラ車が独自ネットワークのスーパーチャージャーで充電する際には当然のようにプラグアンドチャージですが、日本で普及しているCHAdeMO規格ではなかなか実現されていませんでした。

Honda Chargeの急速充電器におけるプラグアンドチャージは、プラゴとホンダが共同開発した技術で「& GO(アンドゴー)」という名前がついています。CHAdeMO規格の急速充電器では初めて実装されました。いまのところ、使える車種はN-ONE e:だけです。

早速、つないで試してみます。充電器の画面に「認証中」という文字が出て、約20秒後、画面表示が切り替わって充電がスタートしました。専用のサーバと通信していて、平均的にこれぐらい時間がかかるそうです。待っていると少し長く感じましたが、これは最初の一歩。どんどんスピードアップしていくのでしょう。終わったら、充電プラグを抜くと自動的に課金されます。

充電プラグを抜き差しするだけで他は何もしなくていいというのは、やっぱりお手軽です。充電カードを探したり、充電器に対応したスマホのアプリを立ち上げたり、たいしたことのないひと手間とはいえ、この手軽さは慣れると戻れなくなりそう。プラグアンドチャージは、EVでしか実現できないサービスなので、ぜひ標準装備にしてほしいものです。

プラグアンドチャージを利用するには事前登録が必要

今回のプラグアンドチャージ体験取材には、ホンダの広報担当者や技術担当者も立ち会ってくれました。「& GO」を利用するには「ホンダトータルケア」というオーナー向けサービスの会員になって(会費は無料)、事前に決済方法を登録しておく必要があります。試乗車については本来、設定されていなかったところを、私たちの取材のために技術担当者が自分の車として仮登録してくれました。

せっかくなので、スマホのアプリ上でどんな表示が出るのかも、見せてもらいました。充電状態をチェックすることもできますし、途中で充電を打ち切ることもできます。アプリが起動していなくても、待ち受け画面上にポップアップで通知されるようになっていました。充電料金は登録したクレジットカードで支払います。

ちなみに、スマホが手元になくても、プラグアンドチャージは利用できます。たとえば、マイカーを登録している本人が不在でも、家族が運転中に「& GO」対応の充電器につないだら何もしなくても充電できて、登録者に利用通知がいくようになっています。

ちなみにわが家にHonda eが来て4年半、妻はときどき運転はするものの一度も充電をしたことがありません。「よくわからない」と言い張っていますが、プラグアンドチャージなら充電してくれるかもしれません。

いまのところ「& GO」でのプラグアンドチャージ(PnC)に対応している急速充電器は、Honda Chargeとプラゴのものを合わせても全国92基(12/1時点)。 残念ながら実用性は今後に期待、と言ったところ。ただ、担当者のみなさんと言葉を交わして、ホンダが充電ネットワーク構築にかける意気込みも実感できました。プラグアンドチャージが便利なのは間違いなく、対応する充電器と車種が増えていくことを期待しています。

V2Lの電気で淹れたおいしいコーヒーで試乗を締めくくり

最後に、N-ONE e:で試したかったことのひとつ、外部の家電製品に給電できる「V2L(Vehicle to Load)」を実際に使ってみることにしました。環状八号線を走って、羽田空港を望める公園に行きました。

N-ONE e:は、パワーサプライコネクター(標準装備)というAC外部給電器を使うと、走行用バッテリーからAC100V/最大1500Wの電気を取り出すことができます。災害時など万一の備えにもなりますし、キャンプなどで家庭用家電製品を使うことができるのはうれしいポイント。

V2Lでのコーヒータイムを楽しみます。コネクターを普通充電口にカチッとはめて、コンセントにIHコンロの電源プラグをイン。コネクター本体についている給電開始ボタンを「2回連続で押す」という手順がわからず(マニュアル読んどけって話ですが)、ちょっと手間取ったものの、そのうちに通電を示すインジケーターがブルーに変わって、無事に作動させることができました。

お湯を沸かしている間に、持ってきた豆をミルでゴリゴリ手挽きします。ドライブ中のコーヒーは自販機のものでも十分おいしく感じるものですが、せっかくなので手間も楽しみます。

外部給電中は、車内のメーターにも表示が出ていました。「使用可能電力 0.7kW/使用可能時間 14h」。IHコンロが800Wなので、0.7kWというのはおそらく使える残り電力。そのままあと14時間経過しても大丈夫ということですね。これからの季節だと小型の電気ヒーターなども一緒に使えそうです。お湯を沸かしている間に、SOC表示は77%から76%に減りました。

あつあつのコーヒーを、空港を間近に望める海水浴場まで持って行き、のんびりと一服。どうぞ座ってくださいな、と人を招いているような流木があったりして、ここもフォトジェニックなスポットでした。

その後、編集長を送り届けてから、和光市でN-ONE e:を返却。プラグアンドチャージでしっかり充電したこともあり、SOCは67%残っていたので、今回は追加で充電せずにお返ししました。

結局、同じ広報車を2泊4日お借りして、海へ山へとドライブ。走行距離は計671kmに達しました。電費は9km/kWh後半から12km/kWh前半。2回目はほぼ全行程が2人乗りでしたが、気候が良くエアコンオフにできたこともあって、電費は10km/kWh台でした。

静粛性、好電費、シングルペダルコントロールの心地よさ、V2Lの利便性、といったところがN-ONE e:に感じた魅力です。プラグアンドチャージについては、対応する充電網が整備されたら、かなりの加点ポイントになるでしょう。日産『サクラ』と三菱『ek クロス EV』が広げてきた軽乗用EV市場が、N-ONE e:の登場で再び活気づくことを期待しています。

取材・文/篠原 知存

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この記事を書いた人

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

コメント

コメント一覧 (1件)

  •  今までもなんちゃってプラグインは実装されていたみたいで、YouTuberの方で、日本でもプラグインチャージは実装はされているという話で、実際には「認証後に充電開始ボタンを押さなくても始まる」だけだったので、微妙な感じでした。

     とはいえ、ホンダとプラゴの「& GO」は、終了時にプラグの操作だけで充電が止まって抜けるのかが気にはなっています。

     私的には「車に課金」ではなく「鍵に課金」という感じまで行くと嬉しいと思っています。
    スマホが車のキーになり、そのスマホのアプリに支払い情報があるとすれば、その鍵を使って電源を入れてればそこに請求が、そうしたくない場合はカードキーを使えば良い感じです。

     6kWの普通充電も良いですですね。日本全国すべてのエリアとは言えませんが、充電器が少し多い地域では、自宅で充電できなくても不便はないかもしれません。
     私のは軽EVで3kWしか受け付けませんが、日常の買い物などで70%から出かけて、スーパーで買い物や他の施設に行き、その中の2カ所に充電器があったので繋いでおいたのですが、トータル30kmぐらい走って計60分ちょいぐらい充電してたと思います。自宅に帰って69%でした。6kWならプラスになると思います。

     よく急速充電にこだわっている人も多いですが、そんなに遠出している人は少数派だと思います。 急速充電が1つある店よりも、複数ありの目的地充電がどこにでもあり、それが気軽に充電できるPnCやエネチェンジの充電器で充電カードをかざすぐらいの簡単さであれば日々の生活でも感じになってくると思います。

     外での普通充電が9.6kWになり車も対応して欲しいかなと思っています。

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