新型スモールEV「インスター」先行体験会に一般参加/想像通りに「気持ちいい!」

週末、ヒョンデの新型スモールEV「INSTER(インスター)」の先行体験会に参加してきました。駐車場内の特設コースをくるりと走っただけですが、想像以上に「しっかり」感があるコンパクトカーであることが確認できました。各地の体験会はまだ空き枠があるようです。

新型スモールEV「インスター」先行体験会に一般参加/想像通りに「気持ちいい!」

コスパ抜群の新型EVにいち早く試乗するチャンス

2025年2月15日土曜日、東京お台場(青海臨時駐車場)で開催された「INSTER先行体験会」に参加してきました。この体験会はヒョンデが日本でのヒットを期して投入する新型コンパクトEV「INSTER(インスター)」の先行予約開始を記念して開催。2月14日〜16日の東京を皮切りに、週末ごとに愛知、兵庫、埼玉、福岡と全国各地で実施されます。

そもそも、日本で市販されている電気自動車にコンパクトカーの車種は少なく、軽EVは搭載するバッテリー容量が20kWh、実用的な満充電からの航続距離は「まあ150kmくらいかな」って感じの控えめで、購入には不安を感じる方が多いのが現実でした。

インスターが搭載するバッテリー容量と車両価格は、エントリーモデルの「Casual(カジュアル)」でも42kWh(284万9000円)。ロングレンジバージョンの「Voyage(ボヤージュ)」(335万5000円〜)とフル装備モデルの「Lounge(ラウンジ)」(357万5000円〜)は49kWhです。

細かな説明はざっくり割愛しますが、約49kWhのKONA(コナ)カジュアルがマイカーである私の経験からしても、普通の人が普通にマイカーとして乗る中で「航続距離に不安や不満を感じることはまずない」と言っていいでしょう。コンパクトでコストパフォーマンスが高くて実用性能も十二分。インスターは、日本のEV普及における大きな課題をまとめてクリアしてきたと感じます。

日産リーフとバッテリー1kWh当たりの単価を比較してみるとインスターのコストパフォーマンスの高さがわかります。

【リーフとインスターなどのkWh単価】

車名グレード容量車両価格円/kWh
インスターカジュアル42kWh284万9000円約6万8000円
インスターボヤージュ49kWh335万5000円約6万8000円
インスターラウンジ49kWh357万5000円約7万3000円
日産リーフX40kWh408万1000円約10万2000円
日産リーフ e+X60kWh528万3600円約8万8000円
<参考>
ヒョンデ コナカジュアル48.6kWh399万3000円約8万2000円
ヒョンデ コナボヤージュ64.8kWh452万1000円約7万円
BYD ドルフィンベースモデル44.9kWh363万円約8万1000円
BYD ドルフィンロングレンジ58.56kWh407万円約7万円

参考として、ヒョンデのKONAとBYDドルフィンも表に入れておきました。サクラを入れるのはあまりに酷なので自粛します。ともあれ、kWh単価はユーザーがEV車種のコストパフォーマンスを知るための具体的な指標です。当然、装備の差で価格は変わってしまいますが、インスターはベースモデルのカジュアルでも必要十分な先進運転支援機能などを標準装備していることを考えると、とてもお買い得なEVであることがわかります。

あとは、丸目×ピクセルデザインの個性的な顔立ちなどが、好みに合うかどうかって感じでしょうか。なにはともあれ「値頃なEVがあればなぁ」とか「コンパクトで使い勝手のいいEVが欲しいなぁ」と思っている方には、まずは試乗してみることをオススメします。

メディアよりも早く実車に試乗できるチャンス

モニター画像のわかりやすさなどを確認しつつの駐車体験も用意されていました。

インスターは、ヒョンデとして初めて日本の型式認証を取得する(今までは輸入自動車特別取扱制度=PHP を利用していて年間5000台以下の上限があった)とのこと。インスターに賭けるヒョンデの思いを感じます。すでに先行予約を開始しているものの、現在はまだ国土交通省の認可申請中の段階で、一充電走行距離などのスペックは未公表(一充電走行距離を当てよう! INSTER 1台プレゼントキャンペーン実施中)であり、公道を走るためのナンバーが取得できません。そのため、先行体験会では全国各地の各会場に特設試乗コースを設置して実施されます

自動車メーカーが新型車を発売する際、ディーラーなどでの一般試乗ができるようになる前にメディア向け試乗会を開催してアピールするのはよくある話。ヒョンデ・モビリティ・ジャパン(HMJ)からはEVsmartブログにもメディア試乗会などの案内はいただいていますが、インスターのメディア向け試乗会は「ナンバー取得後に予定」ということで、いち早く実車に試乗できるチャンスがこの先行体験会でした。個人的にも「とにかく一度乗ってみたい」思いだったので、ひとりのヒョンデ車オーナーとして申し込み、土曜日朝一番の枠で試乗してきた次第です。

パイロンで仕切られたコースを1周しただけ(一緒に行ったライターの木野さんとひとり2周の割り当てを分け合いました)なので、詳細なインプレッションをお届けできるほどの走り方はできないものの。少し乗っただけで感じた印象をいくつか挙げておきます。

ペラペラ感がなくて気持ちよく走れる

まず、始動しすぐに感じることができたのは、比較的廉価なコンパクトカーにありがちな「ペラペラ感」がないことでした。EVならではのスムーズな加速フィーリングは当然備えていて、気持ちよく走れるコンパクトSUVに仕上がっていることを実感できました。

また、会場の青海臨時駐車場の路面はかなり荒れていたのですが、足回りのバタつきや振動が気になることもなくすごくスムーズ。質感の高い走り心地でした。試乗後、HMJのシニアスペシャリストである佐藤健氏に伺うと、インスター日本仕様のサスペンションは「F29 R32」という開発コードネームが与えられているとのこと。すでに韓国や欧州でヒットしているインスターですが、日本のために、日本国内で専門のドライバーがテストとセッティングを繰り返し、フロントは29回目、リアは32回目のパーツ選択とセッティングを施した足回りが与えられていることを示しています。

シニアスペシャリストの佐藤健氏。

他のメーカー、他の輸入車種でどのくらいの回数のテストを繰り返すのか知らないですが、インスターの走り心地はとても「よくできている」と実感できたのでした。

使いこなすのが楽しそうなコンパクトカー

次に実感できたのが、シートアレンジのユニークさと、いろんなシーンで使いこなすのが楽しそうだなあということでした。

インスターの前席はベンチシートになっていてウォークスルーが容易です。IONIQ 5やKONAにも装備されている室内V2LのAC100Vコンセントが前席のセンターコンソール下部に配置されているのが、使いやすそうだと感じます。

定員はあえて4人として後席の快適性を高めるというコンセプト。後席の前後調整やリクライニングが可能であることは知っていましたが、実車で座って試してみると前後調整やリクライニングできる幅は思った以上に大きく、想像していた以上に快適な印象でした。

試乗前のオリエンテーションでもシートアレンジの自由度の高さが強調されていました。運転席と助手席もフルフラット状態に倒せるのが特徴で、たとえば「2人で後席に座って前席を倒し、テーブルのように使って食事やノマドワークができる」といった例示があって、小さくても使いやすそうだという印象が高まりました。

ひとつだけ気になったのは、試乗車はフル装備のラウンジでセンターコンソールにスマートフォンワイヤレスチャージャーが装備されているのですが、トレイが少し奥まっていて、スマホを置くと画面が見えなくなってしまう点でした。マイカーのKONAでも車載ナビの信頼度が今ひとつで、私はいつもスマホのナビを併用しています。トレイに置くと画面が見えなくなってしまうのはちょっともったいないというか、不便に感じてしまうだろうなという感想でした。

あと、強いて挙げれば「後席にもドリンクホルダーがあるといいな」ってことくらいでしょうか。とはいえ、前席シートの背面やドアに後付けアクセサリー用の「ぽっち(呼び方わかりません)」があったので、アイデアいろいろの専用アクセサリーが登場してくるのだろうと思います。それはそれで、楽しそうですね。

事前説明で紹介された「3つのオールマイティ」

試乗前のオリエンテーションでは、インスターの特長として「3つのオールマイティ」が強調されました。

【3つのオールマイティ】
① かっこいいデザイン&絶妙なボディサイズ

かわいいフォルムとSUVらしい力強さを兼ね備えた扱いやすい登録車ミニマムサイズ。
②高度なEV性能&運転支援システム
優れた航続距離と動力性能。便利で高度な運転支援システム。
③自由に使えるスペースユーティリティ
仕事、日常生活、レジャーなど、マルチに使用できる広い室内空間。

インスターはEVのメリットを最大限に活かした設計が特長です。兄貴分のKONAが「全長:4,355mm、ホイールベース:2,660mm」に対して、インスターは「全長:3,830mm、ホイールベース:2,580mm」と、全長は525mm短いのに、ホイールベースは80mmしか違いません。もちろん、ラゲッジスペースの収納力などは大きく違いますが、コンパクトEVとしてミニマムでオールマイティな使い勝手を突き詰めたサイズ感を実現しています。

EV性能のなかでも注目したいのが充電性能です。認可前なので詳細は未発表ではあるものの、チャデモ規格の急速充電で「最大電流260Aくらいではないか」という情報もあります。49kWhモデルの総電圧は310Vですから、最大電流が350Aの150kWで充電する場合「310V×260A=約81kW」程度の最大出力で急速充電できる計算になります。急速充電は常に最大の出力が続くわけではないので、おおむね30分で30kWh充電できると考えると、ロングドライブでの利便性&満足度はかなり高いはずだと思います。

「適度なバッテリー容量と合理的な急速充電性能」は、EV普及=大衆的な価格のEVの満足度を高めるための重要なポイントであり、インスターは現時点の市販EVにおける「最適解」を提示してくれるのではないかと期待しています。

ちなみに、普通充電の最大受入出力も未公表ではありますが、少なくとも6kW以上(KONAは最大9kWです)に対応しているはず。魅力的なコンパクトEVとするために、何を突き詰めて何を諦めるべきなのか。インスターは、世界の自動車メーカーがベンチマークとすべきひとつの模範解答になると、断言しちゃおうと思います。

インスターのキャッチコピーは「想像より、相当たのしい」です。実際に先行体験で実感できたのは「想像通り、相当気持ちいいコンパクトEVになっている」ってことでした。

【公式サイト】
INSTER先行体験会(要事前予約)

事前オリエンテーションを担当していたHMJの山﨑貴弘さんに伺ったところ、各地の先行体験会はまだ空きがあるとのことでした。なんなら具体的な購入予定はなくてもOKでしょう。「EVって、これでいいんだよな」とか「このくらいがちょうどいい」ってことを知るためにも、できるだけたくさんの方に、インスターを体感してほしいと思います。

シニアスペシャリストの山﨑貴弘さん。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)3件

  1. 記事の執筆お疲れ様です。
    Insterは日本におけるEV普及の大きな要素である「価格と航続距離のバランスの良さ」に加え、現状日本で殆ど選択肢がないコンパクトサイズという点でちょっとしたゲームチェンジャー的存在になれるのではと思います。
    方向音痴なので多少価格が上がってもARナビの簡易版などナビ回りがもう少し充実していたら言うこと無しだったんですが、あのサイズでそこまでの装備を求めるのは流石にわがままですからね。

  2. KONAのVoyageに乗っている者ですが、INSTERに関してはKONAと違ってCasualグレードは要注意だと思っています。カタログの装備表を見る限りでは、ADAS関係がかなり削られていること(ACC無し、ヒョンデならではのブラインドスポットビューモニター無し、サラウンドビューも無し)、冬場の電費に利く筈の、前席シートヒーターも無く空調のヒートポンプも無しです。
    もちろんこれでも良いというケースも有ると思いますが、IONIQ5やKONAと同じ感覚でグレード差を見ると危ないのではないかと感じました。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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