『インスター』先行体験会で参加者の声を聞いてみた/サイズ感と扱いやすさに高評価

サイズ感や値段が大衆車に近くなってきた感のあるヒョンデの新型コンパクトEV『INSTER(インスター)』。先行体験会に訪れた参加者のみなさんはどう感じたのでしょうか。リアルな感想インタビューをお届けします。

『インスター』先行体験会で参加者の声を聞いてみた/サイズ感と扱いやすさに高評価

全国でインスターの先行体験会を開催

陽光と風の優しさに春の到来間近を感じる好天に恵まれた2月15日。お台場の青海臨時駐車場(東京都江東区)で開催された「INSTER先行体験会」に行ってみました。

ヒョンデの新型電気自動車『INSTER(インスター)』はまだ国交省の型式認定申請中で、ナンバーを取得していないため公道で走ることはできません。でも先行予約を開始していることもあり、より多くの人に乗ってもらいたいという思いから、ヒョンデ・モビリティ・ジャパン(HMJ)は一般の人向けに先行体験会を開催中(特設サイトから要予約)です。

「INSTER先行体験会」今後の開催日程

●2月22日~23日
イオンモール常滑平面駐車場 A区画(愛知県常滑市)
●3月1日~2日
三井ショッピングパーク ららぽーと甲子園 G駐車場(兵庫県西宮市)
●3月8日〜9日
アリオ上尾 東平面駐車場(埼玉県上尾市)
●3月15日〜16日
ジアウトレット北九州 内特設会場(福岡県北九州市)

お台場で開催された先行体験会は、3月中旬まで全国行脚する体験会の第1回です。ヒョンデによれば、東京の試乗枠は早々に埋まったそうですが、今後の開催地はまだ空きがあるとのこと。

実車への試乗は駐車場内の特設コースを2周ほど。短い時間ではありましたが、クランク状のコースや駐車スペースへの駐車体験などで、取り回しのしやすさや、ウインカーと連動したカメラがコーナーの死角を映し出す安全機能などを実感できるようになっていました。

筆者も試乗してみて、EV経験者も初めての方も日本市場ではまだ数が少ないコンパクトEVを体験できるよい機会になると感じました。すでに編集部の参加レポート記事を公開済みですが、一般の参加者の方々がどんな感想を抱いたのか、インタビューしてみました。

会場には IONIQ 5 NをはじめとするヒョンデのEVが展示されていました。

初めて買う車を探していてインスターに

では参加者の感想を紹介していきたいと思います。まずは埼玉県から来ていた20歳代のご夫婦です。

来場したきっかけは「小型の車が欲しくてネット情報を探していた中で、ヒョンデの『キャスパー』が気になって見ていたら、インスターの日本発売と先行体験会があることを知ったから」でした。

もともと、気になっていたのはガソリン車のキャスパーでした。でも「同じデザインだし、コンパクトというのがどのくらいなのかというのを期待しているのと、ヒョンデのEVは『IONIQ 5』が日本でも海外でも多くの受賞歴があって、小さい車だけどそういう技術がどんな感じなのかが気になって見に来ました」と、ご主人が話してくれました。

今は車を持っていないのですが、初めて買う車は「電気自動車がいいなと思って探している」そうです。

「日産とかBYDも見ていたんですけど、安心感や技術力みたいな部分で、今、ヒョンデが一番の候補になっています」とのこと。

運転に慣れていないのでコンパクトが安心

ヒョンデのEVは、カーシェアでIONIQ 5に乗ったことがあるそうです。その時の印象もあってヒョンデのEVについては、「結構、気に入っている」と言います。ただ、「妻があまり運転得意じゃないのでコンパクトな方が安心」ということで先行体験会に参加したそうです。

その奥さまはインスターについて、「以前から小さめの扱いやすい車を探していたんですけど、ちょうどいいサイズ感でした。中も思ったより広くて、単純に小さいだけじゃないなって思いました」と満足そうでした。

インスターは、後席をそのまま使用するとトランクスペースがそれほど広くとれないのですが、ご主人は、「スーツケースを立てて入れられるようだし、今は子どももいないので、後席を半分倒す使い方もあるかなと思います」と、小さいことによる不便さはそれほど感じなかったようです。

試乗した感想は、「軽自動車に近い大きさなのでもう少し軽い感じなのかと思っていたけど、重厚感もあって満足度が高いEVでした」とのこと。「乗ってみることができてよかったです」と夫婦揃って笑顔で話してくれました。

1年で25000km走った『サクラ』の次のEV

数台並んでいたサクラのほか、いろんなEVでの参加者が多かった印象です。

次にお話しを伺ったのは、50歳代のご夫婦です。今回は、日産『サクラ』に乗っている奥さまが「買い換えるなら何にするか」を検討するために参加したそうです。聞けば「サクラは購入から1年弱で2万5000kmを走った」そうです。かなりヘビーです。

自宅に太陽光発電パネルを設置し、EVへの充電もできるようにしているそうですが、仕事で都内と埼玉を往復したり、とにかくあちこちに行くため1日の走行距離が200km以上になることが多く、頻繁に急速充電をしています。

そうした使い方をしていたら、バッテリーの劣化が進んだのか、満充電での航続距離が当初の180kmから、今は150km程度まで落ちてしまったとのこと。今後、130kmまで落ちたら買い換えるしかないと考えているそうです。

日産の販売店にも相談したところバッテリー交換をすると200万くらいかかると言われたことに加え「同じサクラに買い替えても航続距離を考えると厳しいので、次はもっと長い距離を走ることができるEVを探している」そうです。

でも、そんなに走るのならなぜ軽EVという選択になったのかと疑問に感じたのですが、奥さんのお話を聞いて納得でした。

「自宅に入る私道が幅2mしかないので大きなEVはだめなんです。それと、私は車の免許を持ってなかったんですが、必要になって免許を取って、初めて乗ったのがサクラでした。その時は、こんなに距離を走るとは思ってなかったんですよね」

サクラで年間2万5000kmはすごいと思います。しかも高速道路の走行(必然的に頻繁に急速充電器を利用)が多かったそうです。バッテリーには、さぞ厳しい条件だったのではないでしょうか。

EVは気に入っているので次もEVに

ともあれ、EVそのものは夫婦揃って気に入っています。「ガソリン車の軽自動車だと加速の遅さに不安を感じることが多い高速道路の合流も余裕でこなせるし、高速走行も違和感がないと感じている」と言います。

それに、せっかく太陽光発電でEVに充電できる設備も設置したので、「それを使わないのもどうかと思うんですよね」と奥さま。

そう考えていくと「次もEVに」と思うものの、小さな車は限られます。ホンダが今年中に出す予定の『N-ONE』のEVモデルなども考えたそうですが、「やっぱり航続距離が300kmないと買い換える意味がない」(奥さま)ということに。

その理由は、夜間の外充電について奥さまは少し不安があるからというものでした。

「切実なんですよ。夜遅くに外で急速充電することも多いんですが、トラックがいっぱい停まっている中、ひとりで充電待ちするのは心細くて……。充電しているといろんな人に話しかけられたりするのもちょっと微妙で、やっぱり一気に都内の自宅まで帰れるほうが安心です」

そんな中で選択肢に上がってきたのがインスターでした。

「価格もサクラとあまり変わらないけど航続距離が長いし、自宅の太陽光発電で充電すれば電気代もかからない。私の条件に合う幅が小さいEVってこれしかないじゃないですか」

ただ、「韓国車って乗っている人も周りにいないし、なんとなくイメージがあまりよくなかったので。一度乗ってみないことにはわからないと思って試乗会に来てみました」と奥さま。

そして実際に乗ってみると、「これなら十分です。一緒に長旅にも出られそうな感じでした」と、手応えを感じたようでした。2人でどの色がいいかも話していて、ポチするのは時間の問題に見えました。値頃感のある小型EVが出ると、関心を持つ人が増えることを実感しました。

HEVからEVに買い換えを検討

最後は千葉から来た40歳代の男性です。今の愛車はハイブリッド車のトヨタ『アクア』ですが、2011年のモデルでかなり年数が経っているため買い換えを考えていて、次はEVにしようと思っているそうです。

これまでに三菱自動車『i-MiEV』やホンダ『HONDA e』、『N-VAN e:』などを検討してきたそうです。

「やっぱりコンパクトな方がいいじゃないですか。Honda eもいいんですが、中古でもまだそこそこ高いし、航続距離の心配もあって。その点インスターは航続距離が長いみたいだから、気になって見に来ました」

乗ってみると、加速も良く、扱いやすいと感じたそうです。

特設コースにはパーキング体験のコーナーも。

「試乗コースの車庫入れも体験しましたけど、コンパクトで、本当に取り回しが楽だと思いました。アクアもそれで選んだんですよね。あと、ヒョンデは『KONA』もありますけど少し大きいし、正直、値段もね、ひと回り高いですよね」

今回の試乗会では最上級グレードの「ラウンジ」しかなかったのですが、この男性は「ボヤージュがあれば乗ってみたいです」と話してました。一番下のグレードの「カジュアル」はエアコンがヒートポンプではないことなどが気になるそうです。

ボヤージュはタイヤが15インチなので「きっと乗り心地が変わりますよね。可能であればボヤージュにも試乗してから、購入をどうするか決めたいなと思っています」とのことでした。

話を聞いた参加者の人たちは、すでにEVユーザーの人、初めての車を探している人、ハイブリッド車からの買い換え検討中の人などいろいろでした。それだけ幅広い人たちがインスターに興味を持っていることが実感できます。

大きさ、価格に加えて航続距離というEVならではの基本性能が高く評価されていることがわかります。先行体験会の参加者に話を聞いて、4月頃と見込まれている発売がますます楽しみになってきたのでした。

取材・文/木野 龍逸

この記事のコメント(新着順)1件

  1. SAKURAにはバッテリークーラーも搭載されているので、1年弱2万5000km走ったくらいで、バッテリーはそこまで劣化しないと思います。
    そもそも180kmと150kmというのは季節が違うなんてことはありませんか。
    もし25000kmの走行で16%もSoHが劣化したというなら、とんでもないゴミになります。

    私はリーフ(2017/40kWh)で6年ほどで10万km乗りました。
    ほぼ急速充電のみで、1回の走行距離が1,000kmを超えるような過酷な走行を幾度かしていましたが、売却時のSoHは82%でした。
    新車購入時と、売却時のダッシュボード上の航続可能距離はそれほど変わっていません。

    適切なタイヤ空気圧、極度なエアコン設定、極端なスピードなど無ければ、急速充電をいくら頻繁に使っても1年弱2万5000kmでバッテリーを交換するほどの劣化はありえないと考えます。

    なので、EVメディアとして、インタビュー内容を鵜呑みにして公開するのはどうかなあと考えました。これを読んだ人は、「25,000km走ってバッテリー交換に200万!EVはやっぱりゴミ!!!」って思うのではないでしょうか?

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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