非対面で借り出しや返却が可能
『Anyca(エニカ)』とは、株式会社 DeNA SOMPO Mobility(以下、DSM)が2015年にサービスを開始した個人間カーシェアリングサービスのこと。ヒョンデでは、日本再進出にあたり、電気自動車の『IONIQ 5』と水素燃料電池車の『NEXO(ネッソ)』を、東京都内を中心にAnyca Official シェアカーとして提供。1時間から借りられる設定として、5月31日までは初回1時間無料となるサービスを行っています。いわば、ディーラー網代わりの試乗機会としてカーシェアリングサービスを活用していると考えていいでしょう。
通常のエニカでは個人が所有する車を貸し借りするので、オーナーさんからキーを受け取って出発、といった手順が必要ですが、Anyca Official シェアカーはDSMが所有するレンタカーという仕組みなので、よくあるカーシェアリングサービスと同様に非対面で、24時間、借り出しや返却が可能。予約した人の運転免許証で解錠や施錠を行います。
5月2日〜5日まで、3日間のゴルフ三昧計画
私自身、数年前からエニカのアプリはダウンロードして会員登録はしていたものの利用する機会がなく、今回、初めて利用してみました。
IONIQ 5 を借りたのは、5月2日20時〜5月5日20時までの丸3日間。旅程としては、2日の夜から八ヶ岳南麓にある知人の別荘に泊まってのんびり過ごし、4日には4人乗車で小淵沢カントリークラブでのファミリーゴルフ。5日は単独行動で大月インター近くで仕事仲間とゴルフ。そのまま東京に戻ってクルマを返却するというゴルフ三昧計画でした。
マイカーの30kWhリーフではなく、わざわざ IONIQ 5 を借りた理由は3つ。まず最初の理由は、IONIQ 5 で八ヶ岳南麓をドライブしてみたかったこと。この時期、鮮やかにカラマツの新緑が映える八ヶ岳南麓を、静粛性抜群の IONIQ 5 で走るのは「気持ちいい!」に決まっています。
あと、復路の渋滞を覚悟していたので、高性能なACC付きのクルマがいいな、という思いもありました。
2つ目の理由は、バッテリー容量計が11セグになったAZE0リーフでは、片道約150kmで標高1000m超えの別荘まで無充電で走ることは不可能で、初日の夜、到着までに2回は充電しなきゃいけないのがちょっと面倒だったこと。IONIQ 5 を借りた時のバッテリー残量は78%で「そうか、満充電で出発ってわけにはいかないよな」と感じましたが、バッテリー容量は72.6kWhですから、78%でも約57kWh、つまりマイカーリーフの倍以上の電力があるわけで。SOC(残量)30%ほどで別荘に到着することができました。もし、「満充電で出発」なら、東京=八ヶ岳南麓を無充電で往復することもできそうです。
そして3つ目の理由は、IONIQ 5 にキャディバッグを4つ積んで4人乗車でゴルフに行けるのか? を確認したかったことでした。もしかすると、リアシートをひとつ倒さなきゃ入らないかなと思っていたのですが、下に積むバッグを少し斜めにして、問題なく4つのキャディバッグとボストンバッグを積み込むことができました。トノカバーを外して頑張れば、5バッグで5人乗車もできそうです。
IONIQ 5 が手軽にカーシェアできるなら「脱マイカー」もアリ
いくつか、気付きをまとめておきます。
まず、エニカ(Official シェアカー)の使い勝手と利用料金。今回は、丸3日間の利用で、料金の内訳は「3日パック」が3万3000円。距離料金が20円@1kmで7480円(374km)。合計で4万480円となりました。
設定料金は1200円@1時間〜で、1日当たり1万1000円のパック料金ということで、丸一日利用するコストとしては、私がしばしば地方取材でノートeパワーとかを借りるレンタカー料金と同じくらいで、「むしろお得」な印象でした。免許証で解錠&施錠して、24時間、非対面で借り出しと返却OK。アプリで予約してクレジットカード決済も手間要らずってあたりが、店舗で手続きしてサインして、といったレンタカーよりも数段便利です。
もちろん、ガソリン代なんて不要です。
車両の検索や予約は、スマホアプリで行います。今回、私の自宅&オフィスがある三軒茶屋付近で検索してみると、「世田谷代田」と「三軒茶屋」の2カ所にありました。最初は「三軒茶屋」で、と思ったのですが、予約しようとしたのが利用日の一週間ほど前で、すでに予約が埋まっている時間があり、希望通りの3日間空いていた「世田谷代田」をチョイス。どちらのステーションも自宅からは1kmほどで、歩いて行ける距離で2台の IONIQ 5 が借りられるようになった好運に感謝です。
前述した「初回1時間無料クーポン」のキャンペーンは5月31日までですが、IONIQ 5 の Anyca Official シェアカーとしてのサービスそのものについて、とくに期間などは明示されていません。ぜひ、長く続けて欲しい、もっと拡大して欲しい、と感じました。
私自身、2013年に「もうエンジン車は要らない」とアルファロメオを売り払ってから、2018年に今のリーフを購入するまでの5年間は「脱炭素なライフスタイルを進めるには、EVシフト以上に脱マイカーだよね。まして、東京でマイカーは必要ないな」と思いつつ、カーシェアライフを送っていました。徒歩圏内で手軽に IONIQ 5 を借りられるなら、もう一度マイカーを持たない生活に戻るのも選択肢のひとつ。なんなら、リーフを停めている自宅ガレージを空けるから、IONIQ 5 の Official シェアカーを置いてくれないかな、と思うほどです。
50%以上で返却するための充電計画が大事
3日間の八ヶ岳遠征で、急速充電は4回行いました。もちろん、ただ往復するだけなら、どこかで1回充電すれば問題はなかったでしょう。でも、IONIQ 5 に備え付けの説明書に「電池残量半分以上で返却」というお願いが書かれていたのです。
別荘に普通充電設備はありません。幸い、別荘から散歩でも行けるところに「生長の家 森の中のオフィス EV充電スタンド」がありました。出力50kWの急速充電器が1台、24時間利用できます。数年前から設置されているのは知っていましたが使うのは初めて。なんと無料で、バイオマス発電や太陽光発電によるオフグリッドという、ありがたい急速充電器でした。
実際に使用した際の出力は「406V 100A」で約40kW。30分間で約20kWh充電できました。とはいえ、1回30分の充電で回復するのは約20〜30%程度です。この充電器では、3日の朝と4日の朝、目覚めの散歩がてらに2回充電させていただきました。
ただし、東京に戻って50%以上で返却するには、まだ少し足りません。そこで、5日の朝、大月インター近くのゴルフ場へ行く途中、釈迦堂PAに新しく設置されたABB製の56kW×2口の新型器を試しがてら&トイレ休憩で軽く10分ほど充電。GWということもあり、あまり間を置かずに使う人がいるかも知れないし、80%くらいで返却しようと思い立ち、小仏トンネルの大渋滞を抜けた後、急速充電器が空いていた石川PAに立ち寄って84%まで充電。未舗装路も走り回ったので洗車(車載の洗車用カードを使わせていただきました)して、予定より早めの18時ごろ、残量80%で返却することができました。
せめて90kW出力の急速充電器がふんだんにあれば、あまり気にしなくても残量を回復できますが、40kW程度が多い現状の急速充電インフラで、70kWh以上のバッテリー容量をもつ IONIQ 5 を「50%以上で返却」するためには、できればルート上の急速充電スポットの場所と出力を確認して計画を立てておき、こまめに充電するのがおすすめです。
ともあれ、IONIQ 5、改めて魅力的なEVでした。
(取材・文/寄本 好則)
2回目のionic5のトークショウでお世話になりました。そうか、例えば、一緒に同伴したゴルフ仲間に、エニカから招待メールを出して、ドライバー登録をしてもらえば、up主様にも「お駄賃ポイント」が付与されるので、さらに自己負担が軽くなる訳か。ionic5、5月2日の発売日に、日本割り当て分が、1時間で完売したそうなので、色々な国民感情を超えて、日本に定着していく事を願っています。
「次はIONIQ5」の雰囲気満々なレポートをありがとうございました。
片道150km、標高差1000mの高原に満充電の50%弱で行けてしまうということは、実用航続距離も楽々400km超えかな?と思いますが、実際いかがでしたでしょうか。お教えいただければ幸いです。
hatusetudenn さん、コメントありがとうございます。
今回往路、トリップメーターの写真を確認すると距離は176km、標高差はGoogleマップで確認して1200mほどですね。走行ペースは、思ったより通行量も多かったし、制限速度を超えすぎない程度に流れにのって走った感じです。SOCは東京出発時78%→八ヶ岳到着の翌朝26%なので、消費した電力は52%。満充電から普通に走れば無充電往復はできるでしょうって感じです。
実用400kmについては、先日公開した「松阪焼肉遠征」の際、新東名120km区間も流れに乗って走り、254km先の長篠設楽原PAに残量33%で到着しています。概算電費は 約5.5km/kWh。72.6kWhで単純に計算すると399.3kmですが。電費優先で少しペースを落とせばさほど苦もなく420kmくらい(電費にして6.0km/kWhペース)はいけるのではないでしょうか。
ただ、400kmを超えるようなロングドライブの場合、航続距離の限界うんぬんよりも、90kWで充電できるスポットの間隔が大事ですね。
寄本さん、ありがとうございます。
実用航続距離400kmというのは私にとって(他の人にとっても?)かなり大事で、400kmを超えれば殆どの場合、途中充電なしで目的地(日帰りなら自宅)に到達できます。充電スポット選びから解放されるわけです。目的地充電6kW以上は必須となりますが・・
hatusetudenn さま、おはようございます。
>実用航続距離400kmというのは私にとって(他の人にとっても?)かなり大事
お気持ちはよーくわかります。
一方で、2010年、日本EVクラブの舘内さんが18650を満載したミラEVで東京-大阪無充電走破のギネス記録を出した時、チャレンジのキャッチフレーズが「そんなに走ってどうするの?」でした。
実用400kmのためには、最低でも70kWhくらいのバッテリーを搭載する必要があります。個人的には、30〜50kWhくらいで軽快な街乗りができて、遠出の際は2C充電くらいはできて温度管理もちゃんとしているお手頃EVが理想です。
そのためにも、高速道路SAPAに高出力(当面は90kWでいい)複数台設置のインフラが整うことが大事ですけど。
ICE車の「実用」を置き換えるのではなく、EVならではの「実用」ってどうなんだ? を体感し考えることは、私がEVsmartブログでいろんな検証をやる際の共通課題でもあります。