欧州でマツダ『MX-30』先行予約を開始〜日本でも年内発売の見込み

今年1月に創立100周年を迎えたマツダが、初めての電気自動車「MX-30」の先行予約を開始しました。といっても、今のところは欧州でのお話。日本での発売は、1月6日に行われた丸本明社長の年頭会見によると2020年内が目標とされています。

欧州でマツダ『MX-30』先行予約を開始〜日本でも年内発売か

※冒頭写真は英国マツダの予約ページから引用。

割安感のある価格設定とバッテリー容量に興味津々

MX-30は、マツダが初めて量産する電気自動車(EV)です。おおまかなスペックはすでに2019年の東京モーターショーの時に発表がありました。EVsmartブログでも、社長の年頭会見に合わせて紹介しています。

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今回は、実際に予約が始まったこともあり、新たにわかった仕様などを中心に紹介していきます。ちなみに日本での見通しをマツダ広報に確認したところ、社長会見での発表から変更はなく、2020年内の発売を予定しているとのことでした。

ということで、まず気になるMX-30のお値段は、英国では2万7495ポンドから、ドイツでは2万7420ユーロからとなっています。いずれも環境対応車の補助金を受けた場合の価格です。新型コロナウイルスの影響で円高が進んでいるため比較が難しいですが、英国は約357万円、ドイツは約330万円になります。

また英国の場合は限定500台と発表されているほか、先行予約分は家庭用の普通充電器がセットになっています。

【参考】
Mazda Motors UK Limitedの予約ページ

この価格は、同クラスのSUV「CX-30」が英国で2万2895ポンド~3万3495ポンドに設定されていることを考えると値頃感があるのではないでしょうか。その理由は主に、後述するようにバッテリー容量が35.5kWhと、他メーカーの最新モデルと比較すると少なめになっているためだと思われます。とはいえ必要量は各ユーザーの考え方次第なので、どういう反応が出てくるのか、ちょっと楽しみなところがあります。

よくある議論ですが、EVのバッテリー容量をやたらに増やすのは、使わないオモリを背負って走るようなものだという考え方もあり、ホンダが発表した「Honda e」もMX-30と同じ35.5kWhのバッテリー容量を選択しています。

90年代はバッテリーが今よりはるかに高価だったため最小限に抑えようとする傾向もあったので、その当時から、EVを手がけていたトヨタやホンダなどのメーカーほどこのイメージが強いのかもしれません。

一方で、どのあたりが適正、というか、売れ筋になるのかは市場が決めるものでもあるため、メーカーの考え方や説明がユーザーに納得されるか否かは出してみるまでわかりません。ホンダに先だって市場に登場した、バッテリー容量少なめのEVがどう欧州市場に評価されるのか、注目したいところです。

欧州のほとんどの国と地域で販売

そんなMX-30はどの国で売っているのだろうとニュースリリースを探したのですが、探し方が悪いせいか見つからず、しかたがないので各国のマツダのWEBサイトをざっと見てみました。そうすると、西はポルトガルやアイルランドから東はルーマニアやモルドバ、南はイタリア、北はノルウェーやフィンランドまでと、広い市場をカバーしていました。バルト3国も含まれています。

【参考】
エストニアをカバーしているInchcape Motors Finland OYのWEBサイト

エストニアの予約ページ。

一方で、今のところ販売されてない(予約サイトが見当たらない)のはギリシャやトルコ、ウクライナ、ロシアなどです。このうちギリシャはオーストリアのディーラーがカバーしているのですが、同じディーラーはすぐ隣のアルバニアを含むバルカン半島ではMX-30の予約を受け付けています。なぜギリシャが抜けているのかは、ちょっと不思議な感じがしました。

これらの国ではどこでも先行予約が始まっていますが、デリバリー時期は、例えばドイツが2020年の後半、英国が2021年前半を予定しているように、少し幅があります。

それよりも心配なのは新型コロナウイルスの影響です。欧米中などでは自動車の生産停止が相次いでいます。今後は各社とも、様々な計画の見直しを迫られる可能性がありそうです。

急速充電は50kWまでの対応

さて、改めてMX-30の仕様を見ていきましょう。車のサイズは東京モーターショーでの発表時と変わっていません。また35.5kWhのバッテリー容量、355Vの電圧も発表時のままです。バッテリーのタイプは角型リチウムイオン電池で、メーカーなど詳細は非公表です。

新たにわかったのは、まず急速充電時の対応出力で、50kW(125A)でした。対応規格は既に発表されているように欧州標準のコンボです。バッテリー冷却が水冷なのか空冷なのかは不明ですが、床下に搭載しているので、万が一空冷だと厳しいことになるかもしれません。交流の通常充電は出力6.6kWです。

その他の主要なスペックを表にまとめました。

MAZDA MX-30 主要スペック

モーター出力
最大出力105kW (143ps)/4500-11000rpm
最大トルク265Nm/0-3242rpm
動力性能
0–100km加速9.7秒
最高速度140km/h
バッテリー
容量35.5kWh
電圧355V
航続距離
WLTP(複合/都市)200km/262km
EPA推計値約178km/約234km
WLTP消費電力(複合)19kWh/100km(5.26km/kWh)
サイズ
全長4395mm
全幅(ミラーなし)1795mm
全高1570mm
ホイールベース2655mm
車両総重量2108kg
乗車定員5人

※スペックは欧州各国のニュースリリースから作成

ぱっと見た感じでは、車両の大きさに比べて出力が抑え気味なのかなという印象を受けました。0-100km/h加速が9.7秒というのは、ヤリスなどの小型車と同じくらいでしょうか。街中で使う分には十分という「選択」でしょう。バッテリー容量も多くはないので、必要十分なレベルを確保したというところかもしれません。

今回、欧州で予約が始まったのは「ファーストエディション」と言う名称の、先行発売に特化したモデルです。マツダコネクトやカーナビ、パーキングセンサー、ヘッドアップディスプレー、メモリー付電動シート、自動防眩ミラーなどが標準装備されているほか、特別色の内装も選べるため、ドイツの予約サイトでは2600ユーロも得になるという説明があります。

またニュースリリースでは、内装の特徴として、100年前にマツダが東洋工業コルクカンパニーとして出発したことに敬意を表し、センターコンソールトレイにコルクを使っているそうです。

装備や価格帯、走行性能、バッテリー容量や航続距離を考え合わせると、MX-30は初めてEVを手にするユーザーのためのセカンドカーにはちょうどいいのかもしれません。マツダモーターヨーロッパの青山裕大社長兼CEOも、MX-30について「顧客のニーズを満たすセカンドカーになると予想しています」と述べています。

いずれにしても、MX-30がヨーロッパの道を走り出すまで、まだ1年近くあります。その間、欧州ではEVの数が確実に増えていきます。その中でMX-30がしっかり根付くことができるかどうか。セカンドカーのマーケットが確立されるのかどうか。注目したいと思います。

(文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)5件

  1. ギリシャ・ウクライナ・ロシアなどでの予約が開始されていないと仮定すると、マツダの「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」と関係しているのかもしれません。

    エネルギーの採掘、製造、輸送段階のCO2評価も組み入るとのことですが、このあたりの国々は電力確保について再生可能エネルギーの利用割合が低いようです。

    ギリシャは石炭発電、ロシアは天然ガス、ウクライナは原子力・火力に、それぞれ依存しているようです。

    この考察がもし正解だとしたらマツダの一貫した姿勢は筋金入りだと言えるかもしれません。

  2. コルクの素材がリサイクルされたペットボトルの繊維というのはどういうことでしょうか?

    マツダのHPには以下のように書かれています。
    ”コンソールトレイに採用しているヘリテージコルクは、素材そのものの触感と温かみのある表情を活かして仕立てています。また、ドアトリムには繊維素材を採用。空気を含んだかのような風合いにより、室内空間に素材による開放感を表現しました。この繊維素材はペットボトルからのリサイクル原料からできており、またコルクも伐採ではなく木の表皮を収穫することで作られる環境負荷の少ないサステイナブルな素材です。”

    1. MASAさま、ご指摘ありがとうございます。
      ご指摘の点、訂正(削除)いたしました。

  3. マツダのW2W計算方法には疑問を感じるものの、無闇に大きなバッテリーを積まないというコンセプトには個人的に共感出来ます。ただ、それには車体の軽量化で航続距離を確保する必要があるのに、そういう努力がされているようには見えないのが残念です。

    本命はREX/PHEVと考えてるんですかね。

    結果、同世代のBEVと比較して異様に短い航続距離になっていて、購入の際に選択する気が起きるか、心配です。地場にFIAT500eやプジョーe-208、ルノーZoeもいますし、格安のVW ID.3と兄弟車も登場間近です。これらもセカンドカーとして十分使える訳ですから。

    小型バッテリーで設計するなら、重いSUVボディとの組み合わせは疑問ですし、2名乗りと割り切るならもっと小型の車体ベースでも良かったように思います。

    更に、CX-30と同じ寸法なのであれば、わざわざセンターピラーを無くして後席ドアを観音開きにする物理的な必要性も見当たらず、スチールボディでは重量面でデメリットになってるのではないかとさえ思います。

    なんというか、もう少し理詰めで設計するべきなのではないか、と思ってしまいます。

    1. MZYさんへ:たぶん三菱の動向をよく見ての判断だと思いませんか!?
      i-MiEVが航続距離不足で敬遠され、アウトランダーPHEVが売れたように。
      マツダもデミオEVを試作したものの主に航続距離の絡みでレンジエクステンダーのほうが適すると判断したと思われます。
      ただ三菱はミニキャブミーブなど商用車も製作販売しており実際日本郵便が採用したなどファーストペンギンとしての存在価値があり、その地点でマツダは出遅れ感アリアリだったり。
      個人的に出した各メーカーEV張り切り度を箇条書きします。
      1.日産 リーフを専用車体で出してきた地点でダントツ
      2.三菱 世界初量産電気自動車i-MiEVを出したがガソリン車との共用車体ゆえにこの位置。ただファーストペンギンなので日産とは僅差である
      3.ホンダ フィットEVを試作ながら早めに出し、ホンダe市販に向けて動いている。日産三菱とは大差だがコンパクトEVに期待は出来そう
      ※マツダ・トヨタ・スズキ・ダイハツなどは以上三社にはキャリアで敵わないと判断。スバルはキャリアはあれど撤退したのが残念(プラグインステラがi-MiEVに負けて軽撤退した地点で望み薄)

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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