佐賀県唐津市を舞台に開催された全日本ラリー選手権の2025年第2戦に日産リーフが参戦しました。結果はともあれ、モータースポーツを持続可能にするためにもEVが本気で走れる舞台は大事。10年落ちのテスラモデルSを衝動買いしたフォトジャーナリスト、青山義明さんのレポートです。
全日本ラリー選手権にリーフが出場
自動車評論家で日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員でもある国沢光宏さんが日産リーフで全日本ラリー選手権に参戦したのは2013年~2014年のことでした。そこから11年、また全日本ラリーの舞台に日産リーフが帰ってきました。
2025年4月11日(金)から13日(日)まで佐賀県唐津市周辺で「全日本ラリー選手権第2戦 ツール・ド・九州2025 in唐津」が行われました。12のSS(スペシャルステージ=競技区間)、合計105.32km(総走行距離324.87km)が用意されました。
競技自体は土日の2日間、両日ともに競技時間中は好天に恵まれました。ただ土曜の夜から日曜朝にかけての雨の影響で、2日目の最初のステージはハーフウエットという路面コンディションの中、全64台(オープンクラスを含む)が競技に臨みました。
この全日本唐津戦に、久しぶりにEVの参戦がありました。JN-Xクラス(昨年までのJN-6クラスに変わる、2500cc以下のハイブリッド車や電気自動車など環境対応車が該当するクラス)にゼッケン58をつけて参戦した「日産福岡アルテックレーシングリーフ」です。ドライバーは常慶明秀選手、コ・ドライバーには徳永琢磨選手です。このリーフ、昨シーズンのJAF九州ラリー選手権(地区戦)に参戦しており、AT限定クラスであるRH5クラスで3勝を挙げ、チャンピオンとなっています。
充電できない戦いがリーフには厳しい
常慶選手は日産のディーラーに勤めていることもあって「日産車で参戦したいということでe-Power(シリーズハイブリッド車)の車両も検討したことはあったのですが、リーフにしまして。3年前からラリーをしています。そして今回初めて全日本ラリーに参戦することになりました」と語ってくれました。
コ・ドライバーとしてペアを組む徳永選手は九州大学の現役大学生。自動車部の学生が代々引き継ぐ形でコ・ドライバーを担当しているといいます。リーフではレッキノートの読み上げだけでなく、車両の状態などチェック項目が多くあって「リーフは他のガソリン車よりもコ・ドライバーの仕事量が多い」といいます。
たまたま今回この唐津戦のオープンクラスにミライース(No.64 チーム ミライースターボ with ベストカー)で参戦していた国沢光宏選手は、今回のリーフの参戦について「タイムコントロールが厳しいラリー競技の中で、サービスパークで充電ができないのはやっぱり難しいよね。それでもこうやって参戦をしてくれるようになってきたのはいいこと。もっと台数が増えて環境が変わっていけば……」と話してくれました。
競技車のリフューエルの時間は3回用意されました。EVについてはホンダディーラーでの急速充電の機会が考慮されてはいたものの、時間は足りません。ちなみに国沢選手が参戦した際には、急速充電器を載せた給電用トラック「Q電丸」(関連記事)が帯同し、充電サービスを行っていました。
地方戦と違って、全日本選手権ですから競技区間も長くなります。今回は14kmを超えるSSが4本もありました。この季節ならばまだ気温上昇の影響を受けにくいということでの参戦だったようですが、天候が良かったことから熱対策も厳しかったようで、長いSSの後半では熱による出力制御の介入もあって思うようには走れなかった部分も多々あったようです。
それなりにエネルギーマネジメントをやりくりしながらのレースだったようで、58号車の結果はあえてここでは書きませんが、それでもこういった参戦が継続されていけば、国沢さんの言う通り、状況も変わっていくでしょう。期待して待ちたいと思います。
取材・文/青山 義明
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