Electrify America がボルボの電気自動車に最大250kWの急速充電を無料で提供

北米の電気自動車用充電インフラネットワークを担う『Electrify America』が、ボルボの完全電気自動車ユーザーに最大250kWの急速充電を提供し、1年間はボルボが利用者の会費を負担する契約に合意したことを発表しました。欧州だけでなく、アメリカもどんどん電気自動車シフトが進化しています。

Electrify America がボルボの電気自動車に最大250kWの急速充電を無料で提供

1年間無料充電の特典を提供

2021年7月19日、北米で電気自動車用充電ネットワークを構築する『Electrify America』から「Electrify AmericaとVolvoは、ボルボ『XC40 Recharge』などのドライバーに250kWの無料の全国高速充電を提供する契約に合意した」とするニュースリリースが発信されました。

【ニュースリリース】
Electrify America and Volvo Announce Agreement to Provide All-Electric Volvo XC40 Recharge Drivers with 250 kilowatt-hours of Complimentary Nationwide Fast Charging

対象となるのは、すでに欧州で生産が始まっているボルボ初の完全電気自動車『XC40 Recharge』(日本導入時期は未定)と、すでに今秋からの日本発売が発表されている『C40 Recharge』の2車種。

アメリカでこの2車種を購入したユーザーは、Electrify America が展開する急速充電器を『Electrify America’s Pass+』という会員料金で使うことができ、月額4ドルの会費も含めて1年間はボルボが負担してくれるというものです。

Electrify America では、635カ所以上の公共急速充電ステーションに2700台を超える150kWと350kWの高出力急速充電器を設置するインフラネットワークを構築しています。

海の向こうのサービスで、私自身は利用したことがないのであくまでも想像の世界ではありますが、なんとも羨ましい話題と感じます。

何が羨ましいのか整理してみる

日本でもジャガーやBMW、メルセデスベンツなどの高級輸入車EVには、日本版急速充電インフラである『eMPネットワーク』での充電に対して、期間を区切った料金の割引サービスが用意されています。ボルボが日本でどうなるのかまだわかりませんが、おそらく、似たようなインセンティブが提供されるのではないかと思います。

でも、羨ましいポイントは「無料で充電」ではありません。

日本の電気自動車ユーザーがこの話題で羨ましいと感じるのは、まず、Electrify America の急速充電ステーションが「635カ所に2700台」、つまり単純に割り算すると1カ所につき4.25台以上の複数台設置が進んでいることです。

また、設置する急速充電器の最大出力は150kWと350kWであることが明示されています。日本の現状は90kW器がようやく登場してきた程度。水冷式ケーブルの150kW器が登場すると言われつつ、まだ私は出会ったことがありません。

Electrify Americaでは、2025年までに1800を超える充電ステーションに1万台の150kW&350kW器を設置する「ブーストプラン」を発表しています。

アメリカの急速充電ステーションにはチャデモ規格も用意されていることが多いようですが、テスラのスーパーチャージャーとElectrify America などのコンボ規格の高出力器がズラリと並んでいる端っこに、最大50kWのチャデモ器が1台だけポツン、という状況を、友人のSNSで垣間見たこともあります。

電気自動車そのものばかりではなく、世界に先行したはずの急速充電規格においても、「日本発」はどんどん立ち後れていくようで、羨ましいを通り越し、なんだか心配になってしまうのです。

さらに、充電の利用料金。Electrify America(公式サイト)の料金設定はこんな感じです。

●Guest and Pass Members=$0.43/kWh
●Pass+ Members=$0.31/kWh(plus $4 monthly fee)

ボルボEVユーザーへの特典で適用される「Pass+」会員の充電は、日本円にして約34円/kWh、ゲスト料金は約47円/kWhです。従量課金で合理的、自動車メーカーなどによってまちまちの複雑な仕組みじゃないところがいいですよね。「Pass+」会員の月額会費は4ドル=約438円と、これも日本の充電カードの月額設定と比較すると圧倒的な納得価格。

ちなみに、充電終了後もプラグを繋ぎっぱなしにしていると、10分の猶予の後、$0.40/分の「Idle Fee」が課金されます。

ゲストはクレジットカードでの精算となるようですが、会員になるとスマホアプリでいろんなサービスがあったり、ケーブルを繋ぐだけで充電できる、いわゆる「プラグアンドチャージ(PnC)」にもほとんどの充電器が対応している、という報道を目にしたこともあります。

ちなみに、リリースでは「250kWの充電」となっていますが、UKのサイトでXC40 Rechargeのスペックを確認すると、最大150kW対応のようです。アメリカ仕様は250kWに対応するのか、確かなことはよくわかりません。願わくば、日本に導入されるC40 Rechargeも、チャデモ150kW対応でありますように。そして、早くXC40 Rechargeの導入が発表されますように、と思います。

VWをはじめとする巨大メーカーが電動化シフトの本気を表明し、IONITY(アイオニティ)が350kW急速充電インフラ整備を推し進める欧州はもちろん、アメリカもどんどん進んでいます。

がんばれニッポン、と祈るような気持ちが深まるニュースなのでした。

(文/寄本 好則)

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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