赤坂のホテル駐車場にテスラスーパーチャージャーなど設置〜スマートなEV用充電インフラとは

2021年3月21日(日)、Twitterのテスラジャパン公式アカウントで、東京都港区赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京にスーパーチャージャーが設置されたことがアナウンスされました。最大出力120kWのスーパーチャージャー4基と、最大12kWのデスティネーションチャージャー2基の利用が可能です。

赤坂のホテル駐車場にテスラスーパーチャージャーなど設置〜スマートなEV用充電インフラとは

世界で最もスマートな充電方法

赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京駐車場に設置されたスーパーチャージャーは、公称最大出力120kWのタイプが4基です。これで、テスラの公式サイトにラインアップされているスーパーチャージャーステーションは全国で27カ所目となります。

公式なアナウンスがあったばかりですが、YouTubeで検索してみると、『A PIT AUTOBACS SHINONOME』で開催された電気自動車イベントの際にインタビューさせていただいたテスラオーナーのテスカスさんが、早速『赤坂スーパーチャージャーへの行き方』という動画をアップしてらっしゃいました。

カメラの揺れ方から察するに、駐車場の入口から歩いて撮影したようです。奥のスーパーチャージャーに行き着く手前の壁面には、いわゆる普通充電器、最大12kWの「デスティネーションチャージャー」も設置されていることがわかります。

さて、赤坂スーパーチャージャーのオープンをアナウンスするテスラジャパンのTweetもご紹介しておきましょう。

この記事の画像は、このTweetから引用させていただきました。

今回、ピックアップしておきたいのは、Tweetの前半部分。「世界で最もスマートな充電方法は自宅充電とテスラ スーパーチャージャー」というメッセージです。

はたして「自宅充電とスーパーチャージャー」の、何が賢明でイケてるのか。これ、実は日本ではまだ根強い電気自動車への誤解から解き放たれるためにも、けっこう大切なポイントです。

EVは「自宅充電」が基本

電気自動車の充電は、次の3つのシチュエーションに大別できます。

●自宅充電(基礎充電)
拠点となるガレージで行う普通充電が「自宅充電」です。「基礎充電」と呼ばれることもあります。日常生活における一般的な走行距離であれば、電気自動車の活用は自宅充電だけで十分であることがほとんどです。

集合住宅に住んでいて、その駐車場や借りている月極駐車場に充電設備がない。設置するのもいろいろ困難。といった状況があることは承知しています。集合住宅の駐車場や賃貸の駐車場にも、電気自動車用充電設備を設置するのが当たり前、という世の中になっていくよう、EVsmartブログでも情報発信に力を入れているところです。

【関連記事】
「自宅充電・マンション充電」記事アーカイブ

●経路充電
ドライブの途中などで行う充電を「経路充電」と呼びます。目的地に到達するために不足する電力を補給するための充電なので、充電速度を重視した「急速充電」を行います。

●目的地充電
宿泊施設やショッピング、レジャー施設などで行うのが「目的地充電」です。一泊とか、数時間の滞在時間中に行う充電なので、交流200Vの、いわゆる「普通充電」とするのが一般的です。

テスラの「デスティネーションチャージャー」はまさに「目的地充電器」という意味ですね。日本における一般家庭の普通充電は出力3kWが基本、所有する車種によっては6kWの充電器を設置する程度です。でも、この「赤坂」のデスティネーションチャージャーは出力12kWと高出力であるのもポイントです。ただし、高出力の普通充電は車両側が対応していることが必須なので、テスラでも全ての車種が12kWの普通充電ができるわけではありません。

というわけで、電気自動車はまず「自宅充電を基本にするのがスマート」ということを認識しておきましょう。

そして、経路充電のための「スーパーチャージャー」や、目的地充電のための「デスティネーションチャージャー」のネットワーク作りを、独自に、しっかりと構築しつつあるところは、テスラのスマートなところでもあります。

スーパーチャージャーは「スマート」なのか?

次に、テスラ車専用の「スーパーチャージャー」は、どのあたりがスマートなのでしょう。テスラ「スーパーチャージャー」は、直流の高出力で充電する、いわゆる急速充電器です。日本国内では日本が提唱する「チャデモ」規格の急速充電インフラ整備が進んでいますが、スーパーチャージャーとの違いは明白。この「違い」こそ、スーパーチャージャーがスマートなポイントであると言えます。

●高出力での充電が可能
まず、スーパーチャージャーは高出力である点です。急速充電そのものが「高出力」規格なのですが、チャデモ充電インフラの急速充電器では現状90kWが最大で、高速道路SAPAではおおむね最大40〜50kWが中心となっており、道の駅やコンビニなどには20〜30kW程度の「中速」と呼ばれる充電器が設置されているケースが少なくありません。

テスラスーパーチャージャーのほとんどは最大120kWという文字通りの高出力で充電することが可能です。「V3」という最新規格を採用した埼玉県川口市の川口スーパーチャージャーでは、最大250kWという超高出力を提供しています。東京都江東区東雲の「東京ベイ」や、京都府京都市の「京都」(リーガロイヤルホテル京都)では、出力72kWの「アーバンスーパーチャージャー」が設置されていますが、それでも広く普及しているチャデモ器に比べると高出力です。

急速充電器の出力はあくまでも「最大」であって、実際には車両側の電池残量などによって出力は変動し、常に最大出力で充電できるわけではありません。それでも、最大出力の大きな急速充電器を使えば充電時間を短縮することができるあたりが「スマート」であるということですね。

●複数台設置がデフォルト
次に、1ステーション当たりの急速充電器(スーパーチャージャー)設置台数です。テスラでは世界中で複数台設置がデフォルトで、日本でも1ステーション当たり4〜8基のスーパーチャージャーが設置されています。

一方、チャデモの日本充電インフラ網では基本的に1カ所1基の充電器しかありません。そのため、都市圏に近い休日の高速道路SAPAなどでは、しばしば「充電渋滞」が起こり始めているのです。

電気自動車に乗っていて最大とも言えるストレスが、この充電待ちかも知れません。チャデモ充電網の場合、1回の利用時間は30分と規定されているところがほとんど。つまり、自分の前に1台充電するEVがいたら、30分は待つ覚悟をしなきゃいけないからです。

驚愕の値下げを敢行したモデル3が販売絶好調なようで、日本でもテスラ専用のスーパーチャージャー利用者が増えるでしょうが、あらかじめ複数台設置を進めているスーパーチャージャーステーションでは、チャデモ充電網に比べて充電待ちのリスクが低いという点で「スマート」であると言えます。

●充電終了後の放置にも課金
日本国内でチャデモ規格での公共充電インフラ整備を進めてきたNCS(日本充電サービス ※4月からe-Mobility Powerに移行)のネットワークでは、1回の急速充電時間を30分と規定しています。でも、テスラのスーパーチャージャーには時間の制約はありません。ただし、満充電になって充電器がストップしてもそのまま充電区画に車両を放置していると、経過時間に応じて課金が積み上がっていく仕組みになっています。

チャデモ充電器は、充電量に関わらず30分で自動停止しますが、その後ドライバーが車両に戻らず放置されていたとしても、課金などのペナルティを課す方法がありません。そのため、急速充電に慣れない方、あるいは「どうせ次の車は来ないだろ」といった勝手な思い込みで充電区画を占拠したまま放置するドライバーと、そのために迷惑を受けるドライバーとの間に険悪な空気が……、なんてことも起こりがちです。

おまけに、スーパーチャージャーでは充電口にプラグを繋げば自動的に認証されて課金される仕組みになっていて、専用の充電カードによる認証なども不要です。テスラ車専用として独自の充電インフラネットワークを整備しているからこそのこととも言えますが、チャデモ充電網に比べて、テスラの充電インフラネットワークはいろんなところが合理的で「スマート」であるのです。

さらなるスーパーチャージャー設置も進行中

ちなみに、日本のNCS(eMP)ネットワークで「1回30分」というレギュレーションが生まれたのは、急速充電インフラ整備が始まった2010年代当初、日本ではEVの中心的な車種だった日産リーフ(24kWh)を基準に策定されたのではないかと推察できます。たとえば、出力50kWhの急速充電器で30分充電すればおおむね20kWh程度の電力を補給できるので、リーフの電池を20〜80%=14.4kWh充電するのは十二分でしょ、というロジックです。

その後、最大出力50kWでの急速充電網整備が進んでしまったがために、大容量電池を搭載した輸入車EVも軒並み「チャデモ対応は最大50kW」が基準になってしまっているのも悩ましいところです。たとえば、90kWhや100kWhという大容量電池を搭載して一充電航続距離が500kmあったとしても、一度電池残量が減ってからの急速充電では50kW器で30分充電しても走れる距離は100kmちょっとにしかならず、こまめな急速充電を繰り返しながら距離を延ばしていく必要があるのです。

1回あたりの時間制限がなくてちゃんと高出力なスーパーチャージャーであれば、ステーションに立ち寄るついでに食事がてら1時間ほど充電して、再びほぼ満充電に回復! というあたりも、スーパーチャージャーが「スマート」なポイントです。

テスラジャパン公式サイトの「テスラ専用 スーパーチャージャー ステーション一覧」ページには、金沢(石川県)、新潟、筑波(茨城県)、栗東(滋賀県)、飯田(長野県)、郡山(福島県)などにも「coming soon」であると告知されています。「いつまでに」とか、詳細なアナウンスはないところがテスラ流ではありますが、充電インフラネットワークの「スマート」さが日本でもテスラの魅力を増幅していることは間違いありません。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)6件

  1. テスラのサイトで設置予定と書かれている金沢のスーパーチャージャー、地図表示が富山県の小矢部砺波ジャンクションになっていて、本当に金沢に設置されるのかすら疑問なんですが…。

  2. テスラmodel3に乗っていますが長距離ではもっぱらチャデモを利用しています。
    なぜかと言うと経路上にSC(スーパーチャージャー)が無いことがほとんどだからです。確かに本文中にもある通りSCの新設が謳われているのですが、一年前から「coming soon 」のままです。これが日本のSCの現実です。
    しかし、それがひどく不便ということもありません。SA/PAごとにチャデモがあることはむしろ便利です。
    今後の課題は複数台同時充電に対応することだと思います。そのためにはSA/PAに複数のコネクターを持った高出力の急速充電器の設置が望まれます。できれば6kW程度の普通充電器も併設して。

  3. テスラは車輛と充電環境をセットで推進している所が自動車メーカーというよりは総合エネルギー企業なんでしょうね。テスラとポルシェ以外はチャデモ50kw充電で30分で100kmしか走行距離が増えないなんて状況が早く変わって欲しい思ってます。
    過去記事の「中国は電気自動車充電インフラのカバー率でアメリカを大きく上回る」https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/china-ev-charging-infrastructure-much-denser-than-usa/
    にもありましたが、日本の電気自動車普及率が低いのは、充電環境だけでなく電気業界時代が後れていることが原因ではないかという思いを大変強く持っています。
    電気事業法を問題視されている方も居られますが、本当にそうなのか是非記事で取り上げて頂きたいと思っています。充電環境がお粗末なのは国の法制度が時代遅れなのか電力会社が原因なのか、他国と是非比較した記事が欲しいです。
    日本の電力業界が大変お粗末だということは、最近肌身で感じております。
    同じ国内で50Hzと60Hzに別れていたり、街にあふれる醜悪な電柱だったり。無電柱化がコストが掛かると言って中々進みませんが、海外で当たり前に出来ていることが日本では中々出来ないのは、日本しか見ないで何も考えずに仕事というか作業をしてきた電力業界自体がお粗末なのではと思ってます。
    海外に2度駐在した際に感じたのですが、日本の電力業界で唯一まともなのが停電が殆どないことぐらいでしょう。
    逆に殆ど停電が無い日本でV2Hを重視される方が多いのも正直不思議です。停電が無いからこそ不安なのでしょうか。しょっちゅう停電があるところに住んでいれば大き目の自動車バッテリーにDC-ACインバーター位は家にあって冷蔵庫位はなんとか持たせるようにしているのは割と普通だったりします。せいぜい数万円で済みますし。
    私は自宅屋根で7.5kwhの太陽光発電をしており、今年は低圧太陽光発電所購入予定程度の電気知識しかありません。オール電化住宅に住んでおり、年間の消費電力量よりも多い発電量があります。ですが家に蓄電池やV2Hを付けようとは現在は思いません。所詮冬に停電したら給湯での消費電力が多いのでV2H程度では足りないからです。
    取り留めなく書いてしまいましたが、自動車のような国際商品は簡単に比較出来、輸入することが出来ますが、電力インフラや法律やらは簡単に比較しにくいのは事実だと思います。興味のある方も少ないでしょうし。
    世界がEVに舵を切っているのに電気環境が世界基準にならないことで日本の自動車産業が壊滅することだけは避けたいと思っています。製造時のCO2規制で関税掛けられたらたまったもんではありません。

    1. メーオさんに同じく太陽光発電のある一戸建住まいです。
      自身電気工事士・電気主任技術者の両資格でフリーランス転向した身分として一言、正直日本の政財官はあまりにも無知すぎます!!(爆)せっかく電気事業法を制定し停電の少ない体制を持っていながら逆に制度改定が出来ず電動かで墓穴ばっか掘ってるやないですか!?
      さすがにV2Hが普及せん以上当家は蓄電池導入に踏み切りました!!7kWhとはいえ充電設備をいじる必要ないですし。さらにポータブル蓄電池EFDELTAもあり200Wミニソーラーから充電できる簡便さもありまして…これをi-MiEV(M)に積めば仮に電欠しても10km分補えますよ。フリーランスの仕事で大型ポータブル蓄電池が必要なんでこうしてます。
      電力会社が身動きできへんのは原子力発電に投資しすぎたからやん!!(爆)防波堤を作ってまで再稼動させるより蓄電所でも作って停電防止に努めたほうがよっぽど得策。
      電気事業法にしたって低圧給電最大49kWの壁は取り払うべし!電線地中化は風害停電防止のため推進すべきですし。
      それらを本気で変えたければ事なかれ主義で逃げてばかりの政府行政を恨んで下さい!そして政府与党に不信任を示し投票は野党に入れるべし…以上辛辣にして唯一の解決方法と考えます。
      昭和末期の音楽にも「この支配からの卒業」「わかり始めたMyRevolution明日を乱すことさ」「何も変わらない者は何も変えられない」ってあったでしょ!?今も不変の民主主義キーワードですよ!?
      ※もうIP制限かけられてもエエです、これは不変のテーマなんで書き換えるつもりありまへんから。

  4. いつも有益な情報をありがとうございます。

    テスラのプラグアンドチャージ素晴らしいですね。VWグループも導入予定というニュースだったような。チャデモの良いニュースが早く聞こえてきてほしいです

    いい話もありますが、これからEV普及の中で充電時トラブルが急拡大しそうですね。
    EVSmart含め、充電ステーションサイトでのレビューでの晒し行為も目立ちます
    マナー違反に怒りを覚えるのももっともですが、テスラの充電後課金のようにスマートな解決法がより拡大してほしいです

    1. ガソリン太郎氏に同じく充電後課金に賛同します。充電後も課金がなされれば大概のEV/PHVオーナーは用心して早めに充電を切り上げますから。
      そもそも50kW以上になると必須の高圧受電設備はkW基本料金が高く従量料金が安いですから利用効率を上げるためにはなるべく数多くの車両を充電する必要がありますよ。日産がZESP3の時間単価を高くしたのも放置防止の意図が含まれてますから。
      そして急速充電と普通充電の併設もあって然るべき。道の駅はその典型例、経路でも目的地でもある特性上急速1台普通2台あってもおかしくないですが、多くは急速1台のみ…それでは充電器が混んで当然。普通充電器併設ならどっちかが普通充電を使い次の充電器まで走れるようにすれば不満はすくしでも解消できるはずですよ!?

      最近は街中も観光地もガソリンスタンドの閉鎖が相次いでますが、その廃施設に充電器を設置することも考えるべきやないですか!?仮に低圧受電だとしても中速30kW+普通3kW*4台のシステムは構築できますし(新電元サイトで紹介されてます)。

      問題は以下4点にあるでしょう!
      1.ユーザー側の意識、ガソリン車の給油と同じ感覚が残ってる
      2.施設側の事情、主に費用面がクリアできてない
      3.行政側の認識不足、特に法体系が旧態依然のまま進展してない
      4.変化を好まない保守的な日本人の悲しい性(これ重要!!)
      …もっともこのEVsmart読者各位は該当しないと思いますが?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

執筆した記事