テスラモデルSで長距離旅行:東京-大阪編

世界初の長距離電気自動車であるテスラモデルSですが、長距離旅行するのがどんな感じなのか、イメージできていない方もいらっしゃると思います。私も最初の1300kmの旅行はなかなかコツがつかめず、多少苦労しました。今回レポートするのは私にとって二回目、東京から大阪への旅行です。途中で京都と奈良に寄るという修学旅行のようなルートです(笑)。これから、何回かに渡って、片道400km、往復800kmを超える旅行の記録をお伝えしていきたいと思います。

テスラモデルSで長距離旅行:東京-大阪編

まずモデルSについて少しだけご紹介しておきます(写真は東名阪御在所SA下りの充電スポットにて)。テスラモデルSにはバッテリーの容量により、60kWhモデルと85kWhモデルがあり、私のは85kWhモデルとなります。モデルSの電池の残量は%やkWh(キロワット時、これは電気の量の単位です)であまりあらわさず、「標準値」という単位で表示することになっています。この標準値が400kmの場合、「標準的に走れば400km走行可能ですよ」という値になっています。もちろんさまざまな条件で、標準値で示される距離を走行できるかどうかは変わってきますが、ヒーターが入っていなければ、ほぼ標準値を達成することは難しくないと言えると思います。今回の旅行は11月でしたのでヒーターはほとんど使用せず、山間部など少し寒いときはシートヒーターのみ使用しています。次回以降、冬場のレポートもお送りしたいと思います。また今回のデータには電費を記載していますが、テスラでは電費はWh/km(1kmあたりのワット時)で表します。日本では逆にkm/kWh(1キロワット時当たりのkm)で表すことが多いですね。例えば200Wh/kmは5km/kWhとなります。ちなみに、モデルSにおける標準値を達成するための電費は187.5Wh/km(5.3km/kWh)です。さらに参考までに、昼間の電力料金で1kWhはおおよそ30円くらいと仮定すると、大体150円で26.7kmくらい走行できることになります。
モデルSは、テスラの設置するスーパーチャージャーを使うことにより、今回よりさらに快適に、簡単に旅行することができます。しかし、2014年11月現在、東名エリアにはまだスーパーチャージャーは一基も設置されていません。そのため今回は既設のCHAdeMO(チャデモ)規格の急速充電器を、テスラのチャデモアダプターを利用して使用しました。これらの急速充電器は標準規格で、電気自動車やPHEVで急速充電に対応している車種ならどの車種でも利用できます。

電気自動車で長距離の旅行をする場合、充電計画が必要となることは以前の記事でお伝えした通りです。今回の充電計画は比較的簡単です。

  1. 出発地ではできる限りレンジチャージ(モデルS用語で、満タン充電のこと)する
  2. 走行250kmまでの間で必ず30分から90分の間、満タンになってもよいから充電する
  3. 目的地の近辺で充電が難しいことも想定し、目的地の直前の経路で翌日に必要な分を充電しておく

今回は、2番目のルールに基づき、最初の充電スポットは「新東名高速道路の浜松サービスエリア下り」としました。するとそこからホテルまでは275kmあまりとなるため、3番目のルールで、今回のルートの最後の経路充電器である「東名阪自動車道の御在所サービスエリア下り」を二回目の充電スポットとしました。ここからホテルまで、高速道路上には急速充電器は設置されていないのです。
またチャデモ急速充電器を利用する場合、他の方が利用していた場合のことも少し考えておいたほうが時間の節約になります。今回は、以下のようなバックアップを考えておきました。

  • 浜松SAが使用中だった場合、「伊勢湾岸自動車道の刈谷パーキングエリア下り」323kmも予定。ルール2に違反する形となるので、浜松SA以降は消費電力に注意。浜松SAで充電せず刈谷PAに来た場合は、待ちがあっても充電が必要。
  • 御在所SAが使用中だった場合は待たずに、ホテルにチェックイン。その後ホテル近辺の急速充電器で充電。

実際には、浜松SAも御在所SAも待ちがなく、また浜松SAでは30分経過時点で充電器が自動停止しますが、その時点でも待ちが出ていなかったので、29分追加で充電し、計59分充電しました。浜松SAは充電している場所が休憩場所のカフェから見えるので、2セッション目(おかわりと言うようです)の最後の方でリーフの方がいらっしゃったため、そこで切り上げて出発しました。

こちらが走行記録です。走行可能距離381km(標準値)で13:28に東京をスタート、大阪のホテルに到着したのは20:20で、計6時間52分かかりました。

1日時出発地到着時刻到着地走行可能距離実走行距離消費電力電費
211/21 13:28東京15:49新東名浜松SA下り134km233.8km47.4kWh203Wh/km
315:49(充電)16:48(充電)337km
416:48新東名浜松SA下り18:32東名阪御在所SA下り214km130.8km23.2kWh177Wh/km
518:32(充電)18:53(充電)283km
618:53東名阪御在所SA下り20:20大阪のホテル132km144.6km28.5kWh197Wh/km
711/22 00:09KIモータープール(充電)00:39(充電)218km

東名阪 御在所SA下り 虎屋のういろ御在所SA下りは非常にユニークなお店が多く、伊勢名物の和菓子「ういろ」の老舗虎屋さんの「ういろ」のお店も出ていました。

大阪 曽根崎新地 Vin樹亭のフロマージュ大阪到着後、Vin樹亭にてちょっと変わったお好み焼き。写真はお好み焼き(実は、本当のお好み焼きとは素材が違うそうです)に玉ねぎをワインで煮詰めた甘酸っぱいソース、二種類のチーズをかけた「Vin樹亭焼きフロマージュ」。ここのお店は繁華街、曽根崎新地にありますが、比較的落ち着いた感じでおススメです。あ、ワインもかなりこだわっているそうですが、私は飲めないので分かりません(爆。曽根崎新地と言えば桜橋駐車場の急速充電器(!?)ですが、、残念ながらここはテスラモデルSでは充電できませんでした。まだまだテスラのチャデモアダプターには問題がありそうです。

DSC_0206食事を済ませてホテルに戻りましたが、翌日は京都往復の予定。片道約60kmなので、残132kmではちょっと心もとない。京都では御池駐車場の急速充電器を予定していましたが、この時点では使えるかどうかが不明なため、安全策を取って、ホテルから最も近いKIモータープールへ。出発前に電話して急速充電器は24時間利用可能であることを確認していましたが、着いてみると駐車場自体は夜間は無人で急速充電器は駐車場の外にありました。写真は充電を開始した時点でのモデルSのインスツルメント・クラスターと呼ばれる、スピードメーターとかが表示される画面です。画面は英語にしてありますが、もちろん日本語表示も完璧です。また画面上部に37kW 352V 106Aと表示されています。本来は出力44kWの充電器なのですが、それは電池の電圧が400Vのとき。電池が満充電でないときは電圧は低くなるので、充電できる電力もそれに応じて下がります。30分で充電を切り上げてホテルに戻りました。

翌日は京都へ移動、走行可能距離135km(標準値)で到着。京都では車を使わず観光、夜は先斗町に行くので御池駐車場へ。ここは一応目を付けてあったのですが、急速充電器は50kWで時間無制限。一基しかないので、緊急で急速充電器を利用する人がいる可能性も考えて、フロントガラスに携帯の電話番号を残してその場を後にしました。ここは京都の電気自動車旅行者の最も重要ポイントになるかも知れません。55.2kWhを123分42秒で充電。モデルSはレンジチャージ(満タン充電)することができ、走行可能距離は396kmになりました。食事後大阪のホテルに。

最終日、復路は走行可能距離334km(標準値)で大阪のホテルを出発。奈良を経由して観光しつつ名阪国道経由で東名阪自動車道へ接続。奈良出発時点での走行可能距離は286kmでした。この名阪国道、自動車専用道路なのですが峠を越える関係もあり、最小R=150m・勾配最大6%となかなか急な道路です。そしてだんだん気温が下がってくるのに56.4kmの間、全くトイレがないので要注意です。

名阪国道 伊賀PA上り 急速充電器トイレ休憩のため伊賀SA上りに入るとなぜか急速充電器が。出力は25kWとそれほど急速ではありませんが、せっかくなので利用させていただくことにしました。
復路の充電計画は以下の通りです。

  1. 名阪国道経由の場合、東名阪自動車道御在所SA上りか伊勢湾岸自動車道刈谷PA上りで、できる限り90%まで充電
  2. 標準値が100kmを切ったら、東京までの残距離に翌日分50kmを加えた距離まで充電

伊勢湾岸道 刈谷PA上り 急速充電器途中で伊賀SA上りで少し充電したこともあり、御在所SAは飛ばして刈谷PA上りで急速充電。ここの急速充電器は出力50kWのはずなのですが、なぜか44kWしか出ないようで、あまりスピードが出ませんでした。がっかりしたのですが、せっかく休憩のために入りましたし、次の浜松SA上りまで行くとさらに85kmあり、休日なので浜松SA上りの急速充電器にその時点で先客がいる可能性もあったので、約55分充電しました。モデルSは標準値が310kmあたりから充電速度が低下するので、このままもう一回おかわりして充電するよりは、もう少しバッテリーを空にしてから充電したほうが効率がよいというのもあります。
最後に駿河湾沼津SA上りにて走行可能距離が100kmを切ってしまったので、そこで少し充電するつもりが、なかなかお土産物が充実していたせいもあって、ついつい30分も滞在してしまいました。サービスエリア内にスーパーがあり、そこで野菜なども普通に売っていたのですが、今はこういうのがノーマルなのだろうか!?驚いてしまいました。

1日時出発地到着時刻到着地走行可能距離実走行距離消費電力電費
211/23 17:28奈良18:44名阪国道伊賀SA上り204km74.1km15.4kWh208Wh/km
318:44(充電)19:05(充電)240km
419:05名阪国道伊賀SA上り20:24伊勢湾岸道刈谷PA上り157km92.8km15.6kWh168Wh/km
520:24(充電)21:19(充電)331km
621:19伊勢湾岸道刈谷PA上り23:08新東名駿河湾沼津SA上り94km202.6km44.8kWh221Wh/km
723:08(充電)23:38(充電)199km
823:38新東名駿河湾沼津SA上り11/24 01:01東京69km

帰りは7時間33分かかりました。伊賀SA・刈谷PA・駿河湾沼津SA上りそれぞれの急速充電器では「待ち」はありませんでした。結論から言うと帰りは名阪国道でスピードが出ていない点、休憩が3回になっている点で、行きより時間がかかっています。しかし、刈谷がもし44kWだと分かっていたのであれば、また伊賀SAで少し充電できると分かっていたのであれば、実は浜松SAですごく遅い夕食を兼ねて1時間強休憩してしまうのが最も効率が良かったのだと思います。テスラのスーパーチャージャーが浜松近辺に設置されれば、東京-大阪間の行きも帰りも充電休憩は30分に短縮されます。充電中に食事を取る時間もなくなってしまうかも知れませんね。

DSC_0219今回の総括。写真の「TRIP METERS」のAのところが、出発から到着までの全体のデータとなります。総走行距離1184.1km、消費電力237.3kWh、平均電費200Wh/km(5km/kWh)でした。この消費電力はすべて昼間の電気料金に換算すると、7119円となります。150円あたりおおよそ25km走行できたことになりますが、無料の充電器も利用しているので、実際にはこの半額程度かなぁというのが実感です。

この記事のコメント(新着順)7件

  1. モデルS保有者です。フル充電を昼間にすると1000円(夜間800円)と聞いて購入(担当、平野さん)したのですが150円で26.7kmという事は電気代は無い状態からのフル充電で約3000円の費用が掛かるという事ですか?

    1. こんにちは。コメントありがとうございます。
      フル充電というのがどのくらいの容量かにもよると思うのですが、一般的に、85kWhのモデルSは79kWhくらいの電力量を充電できると言われています。そのため、昼間電力で東京電力の場合、30円/kWh程度ですから、30×79=2370円くらいではないでしょうか?1000円ということは昼間の電力料金ではあり得ないと思います。ご参考までに:
      http://www.tepco.co.jp/e-rates/individual/data/chargelist/chargelist01-j.html
      従量電灯Bが通常の家庭の料金。30円というのは、この第3段階料金を言っています。料金は電力会社やプランによっても変わります。

  2. テスラモデルSの長距離レポート大変興味深く拝見しました。
    QCの相性で充電不可と言うのは困りますが、余裕を見て
    充電計画すれば問題ないのですね!
    大阪迄3回の充電で行けるようですが、リーフやi3でも3~4回で到着出来るので、然程時間の差はなさそうと思いました。
    やはりテスラはスーパーチャージャーがないと本来の実力を発揮出来ないのでしょうね。
    チャデモの隣にスーパーチャージャーが設置されることを願いますね。

    1. くまさんさん、コメントありがとうございます!そうですね、誰も急速充電器使ってないような深夜なら、1回の長時間充電でも行けるんですが、やはり待ち時間が出る可能性や、おかわり時に他の方がいらっしゃる可能性、そして目的地充電がない状況を考えると、現状は2-3回の細切れにしておいたほうが良いみたいです。モデルSは電費悪いほうなので、それで充電量が増えてる面もあります。理想形としては、スーパーチャージャーが経路にできて、かつホテル側に目的地充電があれば、おそらく経路10分充電して残りは目的地で、、ということになると思います。

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この記事の著者


					安川 洋

安川 洋

日本アイ・ビー・エム、マイクロソフトを経てイージャパンを起業、CTOに就く。2006年、技術者とコンサルタントが共に在籍し、高い水準のコンサルティングを提供したいという思いのもと、アユダンテ株式会社創業。プログラミングは中学時代から。テスラモデルX P100Dのオーナーでもある。

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