電気自動車の最高峰がついに日本でもデビュー
テスラのフラッグシップセダンである『Model S(モデルS)』と、高性能SUVの『Model X(モデルX)』は、新車価格1000万円を超える超高級車ながら、世界のEV普及の主役を務めてきた車種と言っていいでしょう。
2021年には、アメリカで両車種ともに大幅なアップデートした「新型」となり、Plaid(プラッド)と名付けられた最上級グレードはトライモーター(駆動用モーターを前車軸に1つ、後車軸に2つ搭載)AWDによって、0-100km/h加速がモデルS Plaidは2.1秒、モデルX Plaidが2.6秒という圧倒的なスペックで発売されました。
とはいえ、日本では長らく「先行予約」ができるのみ。予約すると見積もりは送られてきたようですが、通りすがりでは価格もわからず、今までの常識的な「注文」はできない状況(先行予約を含めて、テスラ的販売手法が広がっていることを感じます)が続いていたのですが……。今回、晴れて正式にオーダーできるようになったという次第です。
まずは、発表された日本仕様の価格(2023年5月16日現在)を表にしておきます。
車種名 | 価格(税込) | |
---|---|---|
Model S | デュアルモーターAWD | 12,969,000円 |
Model S PLAID | トライモーターAWD | 15,969,000円 |
Model X | デュアルモーターAWD | 14,469,000円 |
Model X PLAID | トライモーターAWD | 16,669,900円 |
ともに、Plaid ではないベースモデルでもデュアルモーター(前後で2つのモーターを搭載)のAWDとなっています。モデルSでベースモデルとPlaidとの価格差は300万円、モデルXでは220万円くらいの差しかないので、どうせならプラッドがいいなと思ってしまうのですが、私には価格差分くらいのヤツしか買えないなぁという現実が切ないところではあります。
ヨークステアリングを選ぶかどうか、悩んでみたい
テスラではレガシーメーカーのような「フルモデルチェンジ」とは言っていませんが、実質的にS&Xはアップデートによってフルモデルチェンジしたと評価していいでしょう。外観の印象はあまり変わっていないようにも見えますが、アップデートによって、Cd値がモデルSは0.208、SUVのモデルXでも0.24へと向上しています。
インテリアも刷新されており、最も注目のトピックは標準の円形ステアリングだけでなく、レーシングカーのような「ヨークステアリング」が選択できるようになったことです。最終的には「個人の好み」ということになるのでしょうが、「ヨークステアリングにするかどうか」で悩める方がうらやましいです。
そして、何はともあれ要注意のポイントが、注文できるようになったモデルS&Xは、ともに全世界共通の「左ハンドル仕様」となっていることです。
ご承知のように日本の自動車は右ハンドルが基本。まあ、左ハンドルも慣れてしまえばさほどの問題はなく、むしろパーキングメーターなどでの路上駐車時に運転席から下りやすい(ドアが歩道側になるので)くらいのことなのですが、右ハンドルに慣れた方には少々抵抗があるかも知れません。
ライバルとなる超高級EVたちの価格は?
昨年、メルセデス・ベンツが「電気自動車に、最高峰を」というキャッチコピーでテレビCMを展開していました。ほかにも居並ぶドイツメーカーを中心とした「日本で買える高級電気自動車」はいくらで買えるのか、これもざくっと一覧表にしてみます。
メーカー | 車種名 | 価格(税込) |
---|---|---|
メルセデス・ベンツ | EQS (MP202302) | 15,630,000円〜 |
アウディ | e-tron GT quattro | 14,940,000円〜 |
アウディ | RS e-tron GT | 18,990,000円〜 |
ポルシェ | Taycan | 12,260,000円〜 |
ポルシェ | Taycan Turbo | 20,860,000円〜 |
テスラのS&Xを含めて、いずれ劣らぬプレミアムEV。おおむね1200万〜2000万円くらいの価格帯で激戦です。どの車種も70〜100kWh以上という大容量バッテリーを搭載して400〜500km以上の実用的な航続距離を誇るクルマなので、細かなスペック比較は割愛します。
どのEVが「最高峰」なのか。選択基準としては、どのブランドに魅力を感じるかということになろうかと思います。
一点、モデルS&Xのアップデートの大きなポイントが、テスラ独自規格の急速充電インフラであるスーパーチャージャーで、従来のS&Xは最大出力200kW程度の対応(イヤーやモデルによっては120〜225kW)だったのが、モデル3やモデルYと同様に最大250kW対応となったこと。しかも、スーパーチャージャー網は日本でも着々と拡大し、69カ所332基(2023年4月末時点)という至便なネットワークを構築しています。
チャデモ対応のドイツメーカー車は、既存のチャデモ公共インフラに依存するので、急速充電の出力はおおむね50kW以下、高速道路SAPAには90kW以上の高出力器設置が進みつつありますが、テスラスーパーチャージャーと比べるとあまりに非力です。アウディやポルシェといったフォルクスワーゲングループでは独自に最大150kW出力を標榜する「Premium Charging Alliance(PCA)」構築を進めていますが、チャデモ規格の事情で現状は高出力急速充電器でも最大90kWでの運用(この春以降150kWへアップデートとも発表されています)となっています。
また、PCAの高出力器は都市部を中心としたディーラーへの設置例が多いので、高速道路を使ったロングドライブ時の利便性ではテスラスーパーチャージャーと比べてまだ見劣りするのが実情です。「急速充電はEVにとって大切な性能」というべきポリシーで当初からスーパージャージャー網を整備してきたテスラ車にとって、250kWの超高出力で充電できるスーパーチャージャー網の存在が、高性能EVだからこその大きなアドバンテージと言えそうです。
テスラの公式サイトを確認すると、新しいモデルSの納車開始は8月ごろ、モデルXは10月ごろになる見込みとのこと。街で出会うのが楽しみです。
文/寄本 好則 写真提供元:Tesla, Inc.