目次
エクステリア
テスラモデルSをデザインしたテスラチーフデザイナーの「Franz von Holzhausen(フランツ・フォン・ホルツハウゼン氏)」によれば、モデルSは世界で最も美しいセダンかも知れない(下の動画、12:30あたりから)、とのこと。
ちなみにフランツ氏は今年の3月にAutomobile誌により「世界で最も素晴らしい自動車デザイナーの25名」に選ばれています。
この動画は2012年のモデルSの最初の納車式です。フランツ氏は9:20くらいから登場し、モデルSをデザインするにあたり、最初から「セダンという概念にはマッチしない条件のリスト」を渡されたと語りました。
- 7人乗り
- どのセダンよりも高効率
- どのセダンよりも低重心
- どのセダンよりも0-60マイルが速い(発進加速が速い)
- ベストな機能
- 世界で最もカッコ良い車
確かにセダン=トランク付きの乗用車は普通は5名乗車ですし、低重心化・カッコを良くするために車高をあまり低くしてしまうと乗り込みにくくなり、加速の良さと効率は相反するしで、デザインは大変だったのだと思います。ただフランツのチームはこれらを可能にしただけでなく、世界で最も安全なセダンという評価も得ることができました。
デザインの好き嫌いはあると思いますが、特に21インチホイール装着時に車高をLOWに下げると、なかなかよいデザインではないかと思います。
この流線形のボディにより、空力を表すCD値は0.24と非常に優れているのですが(CD値が低いと空気抵抗が低く、高速道路での燃費が良くなります)、その代わり大型セダンとしては後部座席が低め・狭めです。また7名乗車を実現するためハッチバック、すなわちトランクと後部座席を物理的に隔てる壁がなく、それが気になる方もいらっしゃるかと思います。そしてグローバルカーとしての幅の広さは駐車場によっては致命的である可能性もあります。
ボディの品質について、全体にチリは甘めという問題はあるものの、それを除けば大きな問題はないと思います。
幅についてですが、ミラーを閉じた状態で196cmとなります。最近の大型機械式駐車場では205cmまでのものが多いので、実は横幅はそこまで問題になりません。それよりタイヤ幅です。純正の19インチホイールでタイヤtoタイヤが194cm、21インチホイールでは196cm。機械式駐車場に駐車される予定の方は、パレットのサイズを確認ください。私は19インチで機械式に駐車していますが、隙間はほとんどありません。一般的には、平置き駐車場が必要となると思います。
私は東京都内ですが、自宅以外では機械式駐車場には駐車していません。コインパーキングは今まで一つもNGだったところはありません。案外東京はビルが大きく、機械式しかないところはそんなに多くないんですよね。
インテリア
ドイツ車・イタリア車・日本車のようないわゆる豪華さは無縁です。内装はレザーが基調となりますが、布シートも選択可能。シンプルでモダンな内装ですが、液晶ディスプレイが17インチもありますので、その分ハイテクな印象を強く感じます。イタリア車などではデジタル時計やナビゲーションのハイテク感を嫌って搭載が非常に遅れましたが、完全に逆方向の雰囲気となっています。
このカラー液晶ディスプレイとウッド系の組み合わせはマッチングが難しく、好みの分かれるポイントではないでしょうか。
収納は、フロントトランク、ダッシュボード下のスペース、液晶ディスプレイ下のスペース、フロントの左右シートの間、トランク、そしてトランク下の6か所(+ドリンクホルダーx2)しかありません。これで全部です。容量的にはSUV並に大きいわけなのですが、小分けされていないので、若干使いにくく感じる面もあるかも。ダッシュボード下はドアが付いていますが上下がなく、車検証くらいしか入れられません。液晶ディスプレイ下の収納は小さく、ここにETCも入るのと、前にフタがないので加速すると中身が飛んでいってしまいます。
活用のポイントはフロント左右シートの間。コラムシフトなのとドライブシャフトがないので、前席のシートとシートの間は広いフロアが広がっています。ここには女性の方はバッグを置かれると思いますが、中くらいのサイズの旅行ポーチのようなものを置いて収納にするのが便利だと思います。私は海外で見つけたTUMIのAstor Cooper Travel Kitというのを置いています。
3列目シートがある方はトランク下もなくなってしまいますが、装着していなければ、トランク下にもかなりの荷物が入ります。私は傘とか工具、パンク修理キット、充電ケーブルなど汚れそうなものはそこに入れています。トランクには何も入れていません。
フロントトランクはデュアルモーター車の場合は少し小さ目になるようですが、シングルモーターなら広々ですので、クーラーボックスを一つまるまる入れることができます。
走行性能
私のテスラモデルS P85は停止から時速100kmまでを4.4秒で加速するタイプ。ブレーキ踏みながらアクセル、とかトリッキーなことをしなくても、誰でも加速できます。こんな機能、街中では使う必要がなく意味がないのですが、運転していると最初は異次元の感覚。そのうち慣れて、もうエンジンの車には乗れなくなります。
フランツ氏のインタビューでもありましたが、バッテリーが底面にありますので、重心が非常に低く、カーブを曲がってもロールがあまりないですし、重厚で安定した走行です。一般的な重量級のスポーツセダンと比較しても遜色ないですが、2.1tの車重がありますので、山道などでは重さを実感すると思います。
ハンドルは重さを可変できますが、一番重いスポーツ設定にすると、重量級スポーツセダンよりちょっとだけ軽めとなります。そういう車のお好きな方はスポーツ設定で大丈夫なはず。女性で力のない方は一番軽い設定であれば、軽々と取りまわせます。
サスペンションはエアサスとバネが選択できますが、エアサスの場合は高さを設定で変更可能。Low/Standard/High/Very Highの4段階です。また設定した車速に達すると自動的に電費を向上させるため車高を下げる設定や、GPSで指定した場所に来ると自動的に車高を上げる設定など、細かいギミックもあります。日本の綺麗な道路では、Lowに固定のままでほぼ問題なく、段差の大きな立体駐車場や急な坂などでは、直前でVery Highをタップすれば下回りをこすらずに走行できます。もちろんVery Highを手動で選択しても、その場所を離れれば自動的に元の車高に戻してくれるのも気が利いています。ただし、サスペンションの硬さは変えられません。
大型車ですので回転半径は大きいです。2車線道路でのUターンは切り返しが必要です。この辺りは日本車とは全く違うところですが、慣れれば、、自信のない方は何度かUターンを練習してみるとよさそうです。
電気自動車なので街乗りではギクシャクが全くなく、あくまでスムースにフラットに走行します。高速道路に入って時速100kmまで加速しても、何の変化もありません。多少風切り音とタイヤからのノイズが入ってきますが、横風・雨・雪・加減速など様々な状況において、安心して運転できると思います。
実際に台風の中や新雪を何度か走行していますが、不安を感じたことはなかったです。安定性に関しては特筆すべきものがあると感じます。
乗り心地
乗り心地は19インチホイール・21インチホイールでかなり違うと思います。
私は19インチなのですが、こちらのほうが少し硬めに感じます。首都高速などでは継ぎ目を感じますし、硬いほうが安心感はあるのですが、同乗者は疲れてしまいますよね。個人差があると思いますが、硬いのが嫌な方は気を付けたほうが良いように思います。
21インチホイールのモデルSは何度か乗ったことがありますが、19よりさらにしっかりした感じ。19インチの310kPaに対し21インチは290kPaと空気圧も少し低いのもあると思いますが、こちらのほうが好みという方も多いと思います。
乗り心地とは厳密には異なりますが、テスラモデルSの後部座席には、乗り込む際に掴むハンドルやつり革の類がなく、高さもあまりありません。年配の方はちょっと乗り込みづらいと思いますし、後席メインで使われる方には、乗り心地の点ではあまり合わないかも知れません。
電費・航続距離
テスラモデルSには当然ですがガソリン残量計はなく、代わりにバッテリー残量計があります。バッテリーを充電して走行するわけですが、ガソリンと大きく異なり、充電には時間がかかります。そのため、家で満充電されているモデルSに乗り込んで、往復バッテリー容量の範囲でドライブして戻ってくる場合は何も考えなくてよいのですが、それ以上の距離のドライブや旅行をする場合には、事前にある程度の計画が必要です。これを充電計画と言います。
とはいってもそれほど大変なものではなく、充電時間を待たなくてよいよう、充電のタイミングと休憩・食事をうまく組み合わせるというものです。休憩・食事のときに充電する、と考えてもよいと思います。
モデルSはバッテリーの容量が大きいので、急速充電器が設置されているSAやPAなどで休憩する場合には必ず充電器をチェックし、開いていれば充電開始してから休憩します。充電開始にかかる時間は1分くらいのものです。トランク開ける→チャデモアダプターを取り出す→キーのトランク部分を長押しして充電ポートを開ける→充電器からケーブルを外す→充電器のケーブルをチャデモアダプターと接続する→チャデモアダプターをモデルSに接続する→NCSカードなどの認証カードで認証する→STARTボタンを押す、という流れです。8ステップですね!ちなみに、テスラ独自のスーパーチャージャーでは、スーパーチャージャーからケーブルを外す→ケーブルの先のボタンを押す(自動で充電ポートが開きます)→ケーブルをモデルSに接続する、これだけで充電が開始されます。3ステップ。ちなみに、家庭で充電する場合も同じく3ステップなので5秒もあれば充電開始できます。
通常テスラモデルSは約380kmくらい走行できます。じゃ380/2=片道190km以上のところは充電が必要で、満タンにするのに何分かかるの?とよく聞かれます。「満タンにはしない」のです。例えば、往復400kmの日帰りドライブを計画していたとします。ちなみに東京から片道200kmは、南は伊豆半島をはるかに超えて静岡県藤枝市まで(大井川手前くらい)、西は八ヶ岳も諏訪湖も超えて長野県岡谷市まで、北西は関越トンネルを超えて苗場山の向こう側の新潟県南魚沼郡湯沢町です。家についたら30kmくらい残っていることを想定すると、380-400-30=-50ですから、50km分充電が足りません。
50km分、途中で充電すればよいのです。行きと帰りには1回ずつ休憩位しますよね。仮に高速道路にある、急速充電器(40kW)で10分ずつ充電しましょうか。1回の10分間の充電で30km航続距離が伸びます。往復計20分の充電で、往復400kmの走行ができます。もちろん、一か所のSAPAで20分休憩してもよいのです。
冬はちょっと事情が異なります。暖房を多く使用する場合、往復で計45分くらいの充電が必要となります。行きは15分の休憩、帰りは30分の長めの休憩で大丈夫です。
多くの方が体験する、400km未満の長距離ドライブでは、片道10-15分の休憩を1-2回取るだけで、わざわざ充電のために待つということはほとんどないのです。
テスラモデルSの夏季の電費は、私も他の方も多くの方が200Wh/kmを達成しています。冬は240Wh/kmと、2割くらい多く電気を使用するようです。私は1年間で、平均214Wh/kmとなりました。これには高速道路や、毎日の東京都心部での通勤が含まれています。都心部の渋滞の中を、夏季にエアコンをつけて走行すると、おおよそ275Wh/kmくらい。冬の都心部も似たような感じです。都心の渋滞の中しか走らないということになると、モデルSは276kmくらいしか走れないことになります。しかし、ガソリン車と比べてみてください!都心部と高速道路の燃費の差は倍くらいありませんでしたか?それと比べると、夏冬の電費の違いは驚くものがありますが、渋滞一般道と高速道路の差は少な目です。
もう一つ面白いのは高速道路の渋滞です。電気自動車ではそれほど電費は悪化せず、同じ距離を走行しても、むしろ時速100kmで走行するより少ない電気しか使いません。そのため、ドライブの帰りが渋滞していたりすると、逆に充電する必要がなくなったりします。これは、高速で走行すると、空気抵抗に打ち勝つために必要なエネルギーが、走行プラス空調に必要なエネルギーより大きくなり、電費が悪化するからです。
モデルSで桃狩り
レビューだけでは電気自動車でのドライブ・旅行のイメージができにくいと思いますので、先日行ってきた桃狩りのデータをご紹介したいと思います。
今回行ったのは丸山フルーツ農園さん。8月はちょっとシーズン外れのはずなのですが、ここでは減農薬栽培なだけでなく、9月上旬まで桃狩りができるのです。農園はこのあたり。そしてせっかくなのでついでに紅葉で有名な昇仙峡にもちょっとだけ行ってみようということになりました。もちろんこちらはもっと季節外れです。
充電計画ですが、東京から見ると昇仙峡(双葉スマートICアクセス)はおおよそ片道146km、丸山フルーツ農園(一宮御坂ICアクセス)はちょっと手前になりますから、往復の距離自体は146×2で292km。現地でいろいろ走り回る余裕を見て+50km、安全のための余裕として+20km(冬の場合は、距離を1.2倍して安全を見ます)。計362kmでフル充電380kmなら余裕のはず。しかし一応何かあった際に充電器を調査しておきます。
高速道路上は中央道石川PA下り39km、談合坂PA下り71km、双葉SA下り134kmの三か所。山を越えて山梨県は勝沼近辺以降で比較的長い時間使える急速充電器は関東三菱 甲府店122km、甲府市中道交流センター・風土記の丘農産物直売所(公式)122km、甲府市役所133km、日産プリンス 笛吹石和店117km、甲斐日産自動車 本店126kmなどになります。中でも農産物直売所には急速充電器が2基設置。甲府南ICアクセスで使いやすいだけでなく、トイレやレストラン、コーヒーショップも農産物直売所もあるということで便利です。何かこのあたり、道の駅がほとんどないのはどうしてなんでしょうね。
今回、出発時は満充電ではなく、292kmからの出発となりました(汗。そのため、362-292=70km分の充電が必要となります。しかしバックアップも余裕!トリップメーターAをゼロにリセットしてスタートしました。
1時間30分後、双葉SAに到着。昇仙峡へはSA内にあるスマートICを利用する予定ですが、その前に充電器をチェックすると使用中。少しだけ休憩し、適当にB級グルメを食べて移動開始しました。残距離は147km、大まかに予定通りです。
昇仙峡ではちょっとだけ観光し、あとは紅葉時のお楽しみに取っておき、すぐ桃狩りに移動しました。桃狩りは木を指定されて、そこから好きな桃をもいでよい、というもの。1500円で3個まで取ることができました。木になっている桃なのでものによってはまだ硬い桃もありましたが、気に入ったやつを枝から軽く引っ張ってゲット。あとはいったん受付のテーブルのあるところに戻って、お土産用の桃を4つ追加でもらって帰るという感じでした。計7個。
受付は大きなぶどう園の一部にもなっており、巨峰やシャインマスカットがたくさんなっていました。桃は多分ですが木によって生育状況が異なるので、すでに収穫してある桃と木の桃の数のバランスを見ながら体験させているようでした。やっぱり自然が相手だから大変ですね。
帰路は例の農産物直売所です。到着時点では残は83km、結構走行しています。早速備え付けの電話(!!)で係の人を呼び、充電開始です。おもむろに中に入りお店を見ましたが、、かなり商品が売れてしまっていて、品揃えが今一つでした。ついでにコーヒーなどをちょっと飲んで、夕食のために勝沼に向かいます。充電時間は43分(ここは無料)、走行可能距離は200kmまで回復です。
渋滞を避けるために勝沼で比較的ゆっくり食事をして、そろそろと帰路につきましたが当然のように中央道は渋滞。午後8時ごろ勝沼から高速に乗り、次の大月で降り、国道20号を上野原まで走って再度高速へ。渋滞は高井戸近辺まで続いていますが、東名の渋滞が解消しつつありましたので、八王子からは圏央道へ迂回。結局渋滞は上野原から八王子までの24.5kmでした。圏央道厚木PA内回りに付いたのは21:30。ここまで1時間半もかかったことになります。トイレ休憩6分の間も充電器が空いていたので充電(笑)。残109kmですので充電の必要はないですが、さらにちょっとだけ充電して帰宅。家についた時の残は76kmでした。
このドライブでは340kmを191Wh/kmで走行、消費電力は64.9kWhでした。途中で無料充電(総消費電力の43%くらい)もしていますが、全部家庭用の電力で賄ったと仮定すると30円/kWhで1947円。レギュラーガソリン1リットル120円くらいと仮定して、16リットル強。燃費に換算すると約21km/lとなりました。
※2015/8/28追記:米国の消費者情報誌Consumer Reportsで、テスラモデルSが2013年の99点に続き、103点を獲得したそうです。Consumer Reportsは広告がなく、記事広告もない、紙400万部の月刊誌です。
自宅マンションのパレットが無理矢理測って、191cmでした。
やっぱり厳しいでしょうか?
Mikihiko様、コメントありがとうございます。モデルSですか、私の住んでいるところのパレットが195cm、モデルSの19インチ標準ホイール装着(245/45R19 8J)でタイヤ幅、実際には後輪タイヤの左端から右端を測って194cmでした。パレット191cmですとちょっと乗らないと思います。これでオフセットもほぼぴったりくらいですし、これ以上リム径を小さくして7.5Jにすることもできません。実は、私は最初195cmのパレットの機械式駐車場に停めていたのですが、身障者用の平置きが空いたのでそちらに移りました。もちろん身障者の方が引っ越してこられて駐車場を契約される際にはまた機械式に戻る必要がありますが、もし平置きがあればそちらを交渉してみてはいかがでしょうか。
私の場合自宅はまだ充電設備交渉中なのですが、オフィスのほうでは月極駐車場なのですが充電設備を交渉して設置しています。案外貸しビル内にある月極駐車場などの場合、設置費用さえ負担すれば充電設備を付けるのは案外簡単だな、という印象を受けました。その駐車場には、モデルS以外にもBMW X5e PHEVやBMW i3、そしてプリウスPHVなども停まっていたりします。