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電気自動車「テスラ モデルX」で豪雪地帯ロングドライブ/EV充電インフラ網の改善を実感

電気自動車「テスラ モデルX」で豪雪地帯ロングドライブ/EV充電インフラ網の改善を実感

今までにも数回にわたり、マイカーEVのテスラ「モデルX」で北海道など寒冷地でEVの使い勝手を検証してきた八重さくら氏が、豪雪地帯の「奥日光~新潟~飛騨高山」を含む1,000km以上をロングドライブ。EV充電網の改善を実感したレポートです。

目次

日本のEV充電網は本当に進化しているのか?

今回の旅のきっかけは、1月にEVsmartブログでお伝えした、EV充電エネチェンジの公共充電器が1万口を突破したというニュースでした。EV充電エネチェンジの公式Xアカウントを見ると毎週のように新しい充電器の設置報告が投稿されていて、例えば2026年1月30日には、1週間で58か所への設置が報告されています。

注目すべき点は、設置数の増加だけではありません。今回新たに設置された58か所のうち、ちょうど半数にあたる29か所が宿泊施設である点が重要です。宿泊施設への普通充電器の設置は、EVにおける移動の自由度や利便性を大きく高めるものであり、これまで筆者が強く提言してきた内容です。

1万口の達成やこのような具体的な設置報告は大きなインパクトがありますが、特に充電インフラの重要性が高い豪雪地帯において、本当に利便性は向上しているのでしょうか。

筆者はこれまでにも数回にわたって北海道など寒冷地でのEVの使い勝手をレポートしてきました(関連記事)。今回のレポートでは、このような普通充電環境を検証するため、実際に豪雪地帯を含む1,000km以上を走行した結果を報告します。

今回の旅の経路(出典:Google/TeslaFi)

なお、EV界隈では1,000kmをいかに短時間で走破できるかを測る「1,000kmチャレンジ」が注目されがちですが、筆者はあえて「1,000kmチャレンジ」は行いません。これは「急いで目的地に向かうEVや充電網の性能」を測るのではなく、より「一般的な使い方における利便性」を確かめることが重要だと考えているからです。

ホテル探しから実感した「飛躍的な改善」

筆者はEVで遠出をする場合、必ず200Vコンセントや普通充電器が設置されている宿泊施設を利用します。そのため、目的地が決まったらまずはEV充電エネチェンジ(EVsmart)やGoGoEVなどのサービスを使い、充電器の設置状況を確認するのですが……。

例えば、中禅寺湖や奥日光だけでこれだけ多くの普通充電器付きの宿泊施設があったのです。当時の画像はありませんが、ほんの2~3年前とは比べ物にならない数に「進化」を感じさせられたと同時に、この時点で「EVでの旅がより身近になった」ことを確信しました。

そして、設置数だけではありません。その多くが「出力6kW」かつ「複数口設置」という点が、利便性を語るうえで非常に重要です。近年のEVは多くの車種で60kWh以上の大容量電池を採用しており、3kWでは一晩でも半分程度しか充電できません。一方で6kWなら、ほぼ確実に翌朝には満充電で出発できます。そして複数口の設置なら先客がいても利用可能であり、後述するようなトラブル時にも、想定外の「充電できない!」を大幅に減らせるのです。

地吹雪を潜り抜けた先の充電器はなんと凍結……

今回は関東で大雪が降った直後ということもあり、いろは坂は雪で覆われ、強風による地吹雪で視界がほぼゼロになる場面もありました。ただしカーブや上り坂でも体感できるような空転はせず、必要に応じて一時停止したり、ゆっくり走ることで、安心して上りきることができました。

そして宿にたどり着き、充電しようとしたところ……、充電コネクタが挿さらない!?

宿の周辺は、気温マイナス12℃。コネクタ内部を見ると奥に氷が詰まっていて、簡単には取れそうにありません。これは「もうダメか?」と充電を諦めかけました……。

でも、目の前には充電コネクタが「4口」も並んでいます。落ち着いて別のコネクタを確認すると、氷や異物はなし。やはり豪雪地帯や寒冷地において、複数口の設置が非常に重要であることを再確認できました。

ところで、今回は運よく4口すべてが空いていましたが、必ずいつでも予備があるとは限りません。このような状況にどのように備えるべきか、X上で意見を募集したところ、以下のようなアイデアが集まりました。

まずは電気式のカイロ。安価で普段使いできて、以下のような実績もあり、一番現実的だと感じました。

次は、家庭向けのドライヤー。こちらも安価で入手性が高いものの、100Vコンセントが必要です。近くにコンセントがない場合はV2L搭載車やポータブル電源が必要であり、多少ハードルが上がります。

そして、電池式のヒートガン。多少値段が張りますが、車種や使用場所を問わず、素早く確実に氷を溶かすことができるでしょう。

これらの装備がない場合は、暖房の風量を最大に設定し、コネクタにしばらく温風を当てる方法もあるかもしれません。最終手段としては、宿泊施設ならお湯を用意できるはずなので、これも一つの方法でしょう。ただし火傷やコネクタ破損、もし通電していた場合は感電のリスクもあるので、むやみにはおすすめできません。試す場合は「ヤケド」せぬよう(いろんな意味で)温度やかけ方に注意し、くれぐれも自己責任で……。

ルートインホテルズの「革命的」なサービス

ひと口に普通充電器が設置されている宿泊施設といっても、その設備や運用方法によって、使い勝手は大きく変わります。設備としては「出力3kW」を「1口設置」よりも、前述のように「出力6kW」を「複数口設置」されている方が、使い勝手は圧倒的に向上します。

一方で、より確実に充電可能にする運用として、予約が可能な宿泊施設もあります。例えばルートインホテルズでは普通充電器の予約が可能になりました(関連記事)。ホテルによって予約方法や対応は若干異なるものの、今回宿泊した「ルートイングランティア飛騨高山 和蔵の宿」では、下の写真のように予約者の氏名が記載されたパイロンを設置。他の車が間違えて止まってしまう可能性を、限りなく下げています。

このような出力6kW充電器の複数口設置、そして予約可能な運用は、EVの利便性を大きく向上させます。多くのEVオーナーは真っ先にこのような宿泊施設を選択するので、より多くの宿泊施設に同様の取り組みが広がることに期待です。

このような運用は「宿泊施設への負担になる」という声も聞こえてきそうですが……、これはあくまで「黎明期」の一時的な「集客ツール」のような工夫だと思います。

例えば、今どきスマホを充電できない宿泊施設は珍しい存在でしょう。ほとんどの宿泊施設では、USBコンセントやケーブル、充電器が常備されています。いつかEVもスマホのように普及し、ほぼ全ての駐車場で普通充電器の設置が「当たり前」になれば、こうした「特別な運用」も不要になるでしょう。

検索サービスに掲載されていない充電器も

充電器の検索にはEV充電エネチェンジやGoGoEVのような検索サービスが便利ですが、このようなサービスにも掲載されていない充電器が存在することにも触れておきます。

例えば今回の旅では、たまたま立ち寄った「道の駅 親不知ピアパーク」にテラチャージの急速充電器が設置されていました。ところがEV充電エネチェンジには掲載されておらず、GoGoEVやGoogle Mapでも、テラチャージに切り替わる前の古い情報が掲載されていました。

たまたま切り替えのタイミングで掲載が遅れているだけ、と考えてEV充電エネチェンジのアプリから報告したのですが…。

後日、サポート担当者より返事があり、テラチャージを含め、いくつかの事業者の充電器について「担当部署で調整中」であり、掲載予定は未定との回答。どうも、そう簡単な問題ではなさそうです。

そして、残念ながら、EVオーナーとしてできることは多くありません。例えば1つではなく複数の検索サービスを利用する、あるいは主要な充電プロバイダーのアプリを直接チェックする……など。今回の場合、テラチャージの公式アプリを確認すれば、当然ながら掲載されています。

EVオーナーにとってこのような情報の分断は好ましい状況とはいえません。国の補助金を活用して設置したはずの急速充電器が、多くのEVオーナーが活用しているアプリに掲載されていない状況にも疑問を感じます。検索サービスと充電事業者の間において、迅速な情報連携の仕組みが構築されることに期待したいと思います。

テスラのナビを補完するスマホアプリ

ところで、筆者の事務所で使用しているテスラ車には、標準でカーナビが搭載されています。このカーナビは大画面でUIも洗練されていて、目的地までの充電計画や残量予測などの便利な機能が多く搭載されていますが、国内の道路環境で使用する場合、以下のような不満点もあります。

● 走りにくい・不自然なルート案内(購入時からは多少改善)
● 高速道路の料金が表示されない
● 1分の短縮のために遠回りな高速道路を使おうとする
● 到着時間を最優先する(有料道路の除外は可能)
● SAPAの詳細情報の表示がない
● 数個先の交差点を含めた車線案内がない
● VICS連携に対応せず、最新の規制や通行止め情報が考慮されない

このような悩みを解決すべく、今回は車載のカーナビに加え、トヨタ謹製のスマホアプリ「moviLink(モビリンク)」を試してみました。

結果は…大満足!!!

まず、ルート検索が(同じ検索ロジックを使用しているはずなので当然ですが)国産車のカーナビ並みに優秀。もちろん走りにくい不自然なルートは案内せず、高速道路の使用も、通行料金と短縮できる時間のバランスが非常に秀逸です。5分の短縮に数千円を払えるコスト度外視の方には無用かもしれませんが、筆者のようなケチケチ人間は泣いて喜びます。

次に、数個先までの交差点の車線案内。しばらく先で右折車線になる場合も、事前に車線変更が可能になり、よりスムーズで安全に走行することができます。SAPAの詳細情報も表示されるため、入ってみたら「充電器や飲食店がない!」という悲劇も避けられます。

そして、設定で「電気自動車(EV)」を選択すると……。

このように、現在地周辺やルート沿い、目的地周辺の充電器の情報も検索・表示可能になります。まだまだ検索結果の一覧表示が見づらい、出力が分かりづらいなどの課題はあるものの、ここは今後の改善に期待です。

「でも、お高いんでしょう?」

いいえ、なんと「moviLink」の主要機能は完全無料。しかも、会員登録やログインなしでも使えちゃうんです。プローブ情報(いわゆるビッグデータ)を集めたいという意図があるのだと思いますが、なんとも太っ腹ですよね。

もちろん「moviLink」にも弱点がないわけではありません。例えばトンネルでは車載ナビよりもズレが大きくなりがちで、スマホのセンサーの精度に依存します。ただ、スマホでは車速情報が取得できないので、ここは責められません。

寒冷地とEVの利便性

毎年冬になると、SNSでは恒例行事のように「EVは寒冷地、豪雪地帯に向かない」といった意見が散見されます。この言説は、本当なのでしょうか?

筆者はこれまで北海道・東北・北陸(以前住んでいた)を含む寒冷地・豪雪地帯での長距離ドライブを通じ、むしろ「EVの方が向いている」と感じています。そして、これから自宅や宿泊施設など、普通充電の環境が増えればますます便利になるでしょう。

EVの利便性は、当然ながら充電環境や乗り方によって個人差があります。北海道の一部地域など、地域によっては充電インフラ整備が不十分な場所もあります。集合住宅や月極駐車場では、必ずしも普通充電器や200Vコンセントを設置できるとは限りません。いま国内で発売されている車種では、休憩せずに1,000km走るような使い方には対応できません。

ただ、今SNSなどで指摘されがちな課題は、本当に事実なのか。それはEVであることによって得られるメリットよりも重要なのかという視点で考えれば、豪雪地帯でも「EVの方が向いている」という意見を理解いただけるのではないでしょうか。

そして今、寒冷地や豪雪地帯でもEVの方が便利と感じ、使いこなしているオーナーは少なからずいらっしゃいます。これまでの「自らの知識」だけで自分には向かないと決めつけるのでなく、定期的にこのようなオーナーの声に耳を傾けてもよいかもしれません。

なお、冬場の航続距離低下を指摘する意見も多いですが、最新のEVなら、エンジン車やHVの低下率と比べて大きな違いはありません。そもそも車両の航続距離が伸びていることもあり、筆者の経験上、航続距離が問題になることは滅多にありません。

充電インフラは日々拡大しています。車両の性能もどんどん向上しています。

寒冷地だからEVはダメといった古い観念に囚われることなく、「EVの方が幸せになれる」という人がたくさんいらっしゃることに気付いて欲しいと思っています。

取材・文/八重さくら

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この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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