ギガベルリンファクトリーツアーに参加! ドイツ訪問で実感した「EVシフトが進んでる!」

アジアのテスラオーナーズクラブとして初めてテスラの電気自動車生産工場ギガファクトリーベルリンのファクトリーツアーに参加することができました。また、ベルリン市内のNIO、ポールスター、テスラのストアを訪問するなどして満喫したドイツでの気づきをテスカスがレポートします。

ギガベルリンファクトリーツアーに参加! ドイツ訪問で実感した「EVシフトが進んでる!」

異例のファクトリーツアーが実現

通常、ギガファクトリーベルリン(以下ギガベルリン)のファクトリーツアーは地元の住人やヨーロッパのテスラオーナーズクラブに所属している人しか参加できない特別なプログラムです。

今回はテスラオーナーズクラブシンガポールのダレン氏による懸命な働きかけにより、APAC(アジア太平洋)のオーナーズクラブの中からシンガポール、マレーシア、台湾、日本の合計28名が参加しました。日本からは私も入れて7名が参加しました。

最初の目的地はスーパーチャージャーV4に設定

1日目はベルリンのホテル到着が23時頃だったためそのまま就寝。

翌朝、モデル3パフォーマンスとモデルYパフォーマンスのレンタカーを受け取った後、日本チーム一行は「最初の行き先をどこにするか」をまず話し合いました。「とりあえず異国の地で充電してみよう」という話になり、それならばと、まだ日本に導入されていないテスラの急速充電器スーパーチャージャーV4へ向かうことが満場一致で決定。

もちろんまだ誰も見たことがなく、生粋のテスラオタクである我々はV4が19基ずらりと並ぶスポットを車内のテスラナビから発見。どうやらテスラが運営する食事スポットやカフェのようなものがあるらしいと分かり、皆のテンションは一気に急上昇。すぐにそこへ向かうことにし、期待に胸を膨らませながらナビに従って車を走らせました。

向かった先はなんとギガベルリンだった

この日のため国際運転免許証を取得した我々はベルリン市内から50分ほどテスラを走らせ、スーパーチャージャーV4へと向かいました。道中は日本で使用することが出来ないテスラの運転支援「ナビゲートオンオートパイロット」でハイウェイの分岐を半自動でレーンチェンジ。初めて左ハンドルの車を長時間運転しましたが、日本で同じ車に乗っているためか、大きな違和感なく走行できました。

速度無制限区間で時速200kmオーバーで走行してみると、今まで聞いたことのない場所から風切り音が発生。この速度で走行しても車体自体はかなり安定していて、日本では体験し得ない気づきがありました。

キャッキャ騒ぎながら向かっていると、あっという間に目的地付近に到着。

スーパーチャージャーV4が設置されているはずの施設を車の中から見てみると「TESLA」と書かれた大きな建物を発見。「あれはなんだ? サービスセンターか? それとも大型のテスラストア?」などと皆でソワソワしているうちに、敷地内に到着。壁一面に描かれた巨大なウォールアートを見つけ、そこがテスラの生産工場「ギガベルリン」であることに気づきました。

当初の予定ではこの日はドイツの充電器やEVディーラー巡り、翌日にギガベルリンのファクトリーツアー、最終日にフォルクスワーゲンの工場見学というスケジュールでした。なので、この日行く予定ではなかったギガベルリンが目の前に現れ、一同大興奮。

ギガベルリンのウォールアート。

スーパーチャージャーV4は私の身長よりも大きく高さ約195cm。コネクタの規格は北米充電規格(NACS)ではなくCCS2で、他メーカーのEVでも使用できるようにクレジットカードリーダー、通常のV3と比べ若干太いケーブルなどなど、ネット上で得ていた知識を現物と照らし合わせ、全員で夢中になりました。

早速V4を車両に接続しましたが、バッテリー残量は58%だったのでそこまで速度は上がらず。ともあれ、そうなる事はあらかじめ分かっていた我々は充電エリアを覆うソーラーパネル付きの屋根、すぐ隣の建屋に設置されたタッチパネル式の自動販売機、クレカで決済しないと入れないトイレ、などなど日本のスーパーチャージャーにはない設備を隅々までチェックしてまわりました。

テスラの社員駐車場内を見渡すと、ギガベルリンでしか生産されていないオリジナルカラー「ミッドナイトチェリーレッド」のモデルYを発見。赤のような紫のようなとても深みのある色でした。とにかく何もかも日本で見ることが出来ない代物ばかりで、終始大興奮。

誰かが「もっと工場に近づいてみよう」と言い出し、私たちはちょっとした罪悪感と共に恐る恐るあの大きな看板の下へと移動。壁一面に「GIGA」と書かれた場所を見つけ記念写真を撮ろうとしていると、テスラ社員と思われる強面の男性が我々に近寄ってきました。内心「追い出される?」と思ったのですが、笑顔でカメラマンを引き受けてくれました。

撮影してくれている親切なテスラ社員(の足もと)。

ロボットアームがお出迎え

レセプションルームではロボットアームによるコーヒーのおもてなしを受けることが出来ます。この赤いロボットが備え付けの紙コップを器用にキャッチし、奥にあるエスプレッソマシーンでコーヒーを淹れてくれます。抽出中はアームを手に見立て、こちらに振ってきて愛嬌いっぱいです。写真左側に見えるのはビールの注ぎ口なのですが、この日はオーダーを受け付けていませんでした。なぜなのか聞いてみると「ベルリンでの酒類販売免許がまだ取れていない」のだとか。実にテスラらしい理由です。

クイックシルバーのモデルY。
オリジナルグッズが売られている自動販売機。

この2階建ての開放的なレセプションルームは誰でも入ることが出来ます。1階には休憩するためのソファーやテーブル、ベルリンで生産されたモデルY、オリジナルグッズの自動販売機が置かれてあり、テスラ好きにはたまらない空間。

トイレは独特な趣向が凝らされており、ものすごく重い扉の先には暗く前衛的な雰囲気が感じられる手洗い場、明かりは全て間接照明、トイレユニットと手洗い場は全てステンレス製で統一されていました。

2階にはテスラ製人型ロボット「オプティマス」の展示とギガベルリンを俯瞰してみることができる模型が置かれています。プロジェクションマッピングでサッカーコートの映像が投影され、工場の大きさを実感することができます。(工場の建屋だけでサッカーコート31面分)

ギガベルリンの模型。

日本よりEVシフトが進んでいることを実感

ギガベルリンの詳しい様子などは動画でも紹介しています(記事末尾にリンクを貼っておきます)ので、今回の記事では、ベルリン市内で気づいたことをいくつか書いてみます。

自動車王国ドイツの首都ベルリン。この街を走るタクシーをよく見てみるとEVとPHEVが案外多いことに驚きました。国際エネルギー機関のIEAによるとドイツの2022年自動車販売台数におけるEV・PHEV比率は31%(関連サイト)。日本がおよそ3~4%であることを考えると10倍ほどの差があります。

プリウスやRAV4のPHEVを中心に、モデルY、bZ4X、IONIQ 5といった最新のEVまで、多様な電動車が街を走行していました。タクシー以外でもフォルクスワーゲンのSUV「ID.4」やコンパクトハッチバック「ID.3」も数多く走っており、市民にとって実用性の高い選択肢としてEVが定着しているようでした。テスラに関しては生産拠点がベルリンにあることも影響していると考えられますが、かなり多くのモデルYを見かけました。

一方でテスラモデル3や日産リーフはほとんど見かけませんでした。ドイツでもSUVの人気が高く、2024年4月の新車販売のうち、28.6%がSUVとなっており、他のセグメントと比べて突出して多いことがわかります。

出典:KBA

路上駐車スペースの普通充電スポットが多い

路地に入ると赤い屋根の家々が並び、緑豊かな中庭や小さな公園が点在する住宅地(集合住宅が多い)が広がっています。隣接する道路は住民が路上駐車できるようになっており、エリアごとに普通充電器が点在しています。充電器1基につき2台が充電できるようになっていて、支払いはWebサイトからのビジター払いやローミング事業者が提供するアプリ、充電カードに対応しています。

11kWと高出力な普通充電器なのですが、日本とは違って充電ケーブルはドライバーが持参する必要があります。充電後にケーブルが道路にはみ出るようなことがないので、ある意味合理的なのかもしれません。

充電器の設置運営は、ベルリン市が設立した公営企業であるBerliner Stadtwerke(ベルリナー・シュタットヴェルケ)によって行われています。この企業は、学校や住宅へのグリーンエネルギーの供給、充電インフラの整備など、環境保護および持続可能な都市開発を推進しています。

ここ以外にも、事前に調べず偶然入った駐車場で普通充電器が12基ずらっと並んでいるなど、ドイツはEVやPHEVドライバーにとって非常にフレンドリーな環境でした。

急速充電スポットはヨーロッパならではの特徴が

この写真はハイウェイのサービスエリアに設置されたE.ON Driveの急速充電器です。一つの充電器でCCS2とCHAdeMOの2種類の規格に対応しています。駐車スペースに注目してみると、かなり広く作られており、ヒッチキャリアを考慮していることがわかります。

ドイツではキャンピングカーやトレーラーを牽引して旅行することが一般的です。なので駐車スペースが狭いと駐車や充電が困難になります。主要な自動車メーカーは、多くのモデルでヒッチオプションを提供しており、一般的な装備となっています。写真のように広いスペースを用意することで、様々な車両が充電できるわけですね。

ベルリン訪問では、ドイツの電動化とそのインフラの進展を直接体験することができました。EVsmartのYouTubeチャンネルではギガベルリンについての詳細な説明や、NIO、ポールスター、テスラのストアを訪問した様子などを公開しています。ぜひチェックしてみてください。

【レポート動画Part 1】
ドイツでテスラを充電しようと思ったらまさかの場所へ!!(YouTube)

【レポート動画Part 2】
テスラの工場「ギガベルリン」のファクトリーツアーに行ってきた!(YouTube)

取材・文/畑本 貴彦

この記事のコメント(新着順)1件

  1. ドイツではBEV補助金が打ち切られたことにより、5月は前年比31%近いマイナスとなった。
    他の国でも補助金がなくなれば同じような現象(減少)になるだろう。
    ICEと同じ価格帯になって初めて真価が問われる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					畑本貴彦

畑本貴彦

1986年生まれ。福岡県出身。テスラモデル3注文を機にテスラに関する情報を集めだすも、日本語での情報が少ないことに気づき、2019年からテスラ専門ブログ・フォーラム「テスカス」を立ち上げる。

執筆した記事