ジャガー『I-PACE』の実力をポルトガル試乗で検証

ジャガー初の市販EVとなるI-PACE(アイペイス)。2018年秋に日本国内で受注が始まり、19年前半にはデリバリーが開始される予定だ。最高出力294kW(約400ps)、総電力量90kWh、航続距離は377km(EPA)を誇るラグジュアリーEVの実力はどうなのか。昨夏ポルトガルで試乗したEVsmartブログチームの塩見 智がリポートする。

ジャガー『I-PACE』の実力をポルトガル試乗で検証

ボンネットフードが低い精悍なルックス

I-PACEにポルトガルで試乗してきた。I-PACEはジャガーの既存モデルのEV版ではなく、新しいモデルとして開発された。同社のSUVであるF-PACE用の前後サスペンションが流用されていること以外は専用設計だ。

全長4695mm、全幅2011mm、ホイールベース2990mmと、全長は短い割にホイールベースが長く、幅は広いのが特徴的といえる。全高は1565mmとサルーンと思えば高いが、SUVとしては低い。車名に「PACE」と付いていることからわかるように、ジャガーはこのクルマをSUVに分類している。

顔つきこそほかのジャガー現行モデルに近いが、嵩張るエンジンを搭載しないため、シルエットは他のどのモデルとも異なっている。まずボンネットフードが低く短い。いわゆるキャブフォワードというスタイルだ。Cd値は0.29。少しでも航続距離を稼ぐべく、エアロダイナミクスを追求したデザインとなっている。

車幅の広さとホイールベースの長さは、その数値を掛け合わせてできた床面積にリチウムイオン・バッテリーを収めるためだ。12セルが1単位のモジュールが36個(432セル)。90kWh分が敷き詰められている。水冷。前後車軸に同じ仕様の電気モーターがそれぞれ備わり、最高出力400ps、最大トルク696Nmを発揮する。車重は2133kg。0-100km/h加速はアウディe-tronの5.7秒(ブーストモード)を上回る4.8秒というスペックだ。

<I-Paceに関するアーカイブ記事>
『ジャガーが正式に電気自動車I-Paceを発表』(2018年3月3日)

堅牢なボディが印象的

試乗したのはポルトガルの高速道、一般道、サーキット、それに特設のオフロードだった。加減速、操舵ともにレスポンスが素晴らしく、ハンドリングも非常に素直で、場面を問わず気持ちよく走らせることができた。

ハンドリングのよさは50:50と理想的な前後重量配分に加え、F-Paceよりも130mm低い重心も効いているはずだ。EVの特性である強い回生ブレーキを活用したいわゆるワンペダルドライブは、このクルマでも味わうことができる(車内で強弱を選択可能)。

印象的だったのは、とにかくボディが堅牢であることだ。高い負荷がかかるサーキットを含めどこをどんなペースで走らせてもボディは音を上げない。オフロードでもそう。アップダウンが繰り返される雨上がりのグラベルロードでも、ボディは一度も低級なきしみ音を発することはなかった。

大人の膝くらいまである深さの水たまりを難なく進むこともできた。最低地上高は142mmだが、オプションのエアサス仕様なら50mm車高を上げて腹を打ちにくくすることができる。

車内は大人5人が快適に過ごせる室内空間と656リッターの広大なラゲッジ容量が確保されている。フロントにも容量は27リッターの小さなトランクが備わる。

充電について、ジャガーは「200V(7kW)の普通充電で100%まで13時間、80%まで10時間(日本では3kWであれば約30時間、6kWなら約15時間)。100kWの急速充電で80%まで回復させるのに要するのは40分」と説明があった。ただし、アウディe-tronの記事でも触れたように、本記事執筆時点で100kWで充電可能な充電器は日本には存在しないため、当面はCHAdeMO(チャデモ)規格で普及している最大出力50kWの充電器を使うことになり、80%への回復には40分の倍、1時間20分前後が必要な計算となる。

価格はファーストエディション(豪華装備の限定モデル)が1312万円、HSEが1162万円、SEが1064万円、最廉価のSが959万円。車両登録日から5年間、走行距離無制限の新車保証がつく。車両登録日から8年以内または走行距離が16万km以内(いずれか先に到達した時点まで)で、かつバッテリー容量が70%を下回った場合を対象にバッテリー保証を付帯する。

安全性能も高級車らしく万全で、ユーロNCAP(The European New Car Assessment Programme=ヨーロッパの新車安全テスト)で5つ星を獲得している。

テスラ・モデルS、モデルXのみだったラグジュアリーEVカテゴリーにようやくI-PACE、e-tronという選択肢が登場してきた。

刺激的なパフォーマンスとADASで一歩進むテスラ。走らせて軽快、オフロード走行も得意なI-PACE。上質なインテリアと優れた乗り心地のe-tron。3モデルの中からどれを選ぶか、さらにメルセデス・ベンツEQCやポルシェ・タイカンを待って決めるか。ラグジュアリーEV選びが楽しくなってきた。

ラグジュアリーEVスペック比較

ジャガー I-PACEテスラ モデルX ロングレンジアウディ e-tron
車両価格959万円〜1,073万円〜$74,800(約840万円)〜
日本発売2019年夏頃納車開始予定販売中詳細未発表
全長×全幅×全高
(全幅はミラー閉じ)
4682×2011×1565mm5037×2070×1684mm4901 x 1935 x1616mm
ホイールベース2990mm2965mm2928mm
バッテリー容量90kWh100kWh95kWh
最大出力294kW404kW(推測値)300kW
最大トルク696Nm596Nm(推測値)664Nm
車両重量2208kg2459kg2490kg
0-100km/h4.8秒4.9秒5.7秒
一充電航続距離
(EPA)
377km475km328km

(文:塩見 智)
(写真:ジャガー・ランドローバー・ジャパン、塩見 智)

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					塩見 智

塩見 智

先日自宅マンションが駐車場を修繕するというので各区画への普通充電設備の導入を進言したところ、「時期尚早」という返答をいただきました。無念! いつの日かEVユーザーとなることを諦めません!

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